その日の夕方。いよいよショータイムの時間を迎えた。
俺は射程ギリギリの位置でバレットM82を構えていた
どうやら相手はまだ動いていない。上空で静止していた
亡国機業がどこまでやるつもりかは分からないが。最悪の状況で行動する必要があった

「さて、亡国機業のお手並み拝見といこうか」

その時だった。後ろに何者かの気配を感じとっさにホルスターから銃を抜いて草むらに向けた

「誰だ!」

「一夏さん!撃たないでください!」

現れたのは更識簪だった。どうやら後をつけてきたらしい

「どうしたんだ?」

「何かお手伝いをしたくて」

まったく物好きだなと思った

「分かっているんだろうな。手伝うという事は相手を殺す事もあるんだぞ」

そう、俺の仕事を手伝うということは人の命を自らが決めることになる
さらに今回使用する対IS弾の場合、絶対防御は貫通する。今回はあの暴走ISが無人であることは予想していた。
無人とはいえ、初弾で命中させなければこちらが死ぬリスクが上がる
まさに一発勝負なのだ。ただ狙撃には1人よりかは補助をしてくれる人がいる方が良い
1人が距離や風向きなどの補佐的な役割を担ってくれたら効率が良いからだ

「覚悟はできています」

「良いだろう。俺のアタッシュケースに狙撃補佐用の機材が入っている。それで風速と相手の距離を正確に測ってくれ」

了解ですと言うと彼女はすぐに機材を用意して腹ばいになってスタンバイした

「ずいぶんと手慣れているがどうしたんだ」

すると彼女は教本を読み漁ったのでと言った。
まったくこっちの世界に染まらないでほしいと思っている姉がいるのに
彼女はますます深みにはまっているようだ。
どこまで続くかわからないが。望むならいろいろと手助けはしてやる
彼女はいろいろな意味で筋が良い。磨けばかなり腕のいい狙撃者となることわかる

「どうだ。状況は?」

「今のところ動きはありません。いっそのこと、今片付けませんか?」

確かにだ。今、処理すれば楽だろう。だがせっかくのイベントをぶち壊すのはあまりにもったいない
それに亡国機業との立場もあるしフェンリル先生のお楽しみを取るのは失礼だ

「まぁ、多少は喜劇を楽しまないとな。観客席から状況を見れば面白いかもしれない」

「楽しんでいるんですか?」

「まぁな。こんな戦闘状況は久しぶりだ。少しはストレス解消に貢献してもらわないとな」

簪はそんなにストレスが溜まっているんですかと聞いてきた
俺にとって警備の仕事は暇だからな。戦場で居る方が落ち着くと
確かに俺にとって戦場でいる方が居心地は良い
その時だった。俺が持っている携帯情報端末に映し出されているレーダー画面に反応があった
専用機持ちが動きを見せたのだ。俺はスコープでのぞいていつでも発砲できる状況でスタンバイした

「簪、リアルタイムで状況を伝えろ。手伝うのが本気であるならな」

「分かっています」

そしていよいよショータイムが始まった。地上と上空からの攻撃をしたものの、軍事運用を目的のISに手こずっていた
亡国機業は徹底的にやるつもりだ。箒たちにむかってかなり派手に攻撃していた
俺も狙撃体制に入った。距離は1kmも離れている。簡単には発覚しない
ただし初弾で命中させなければこっちは死ぬだろう

「簪、いつでもISを展開できる状況にしておけ。俺はすぐに逃げるがな」

「死ぬ覚悟はできています」

長生きできないぞというが簪はかなり強くなったようだ
どこまでも付き合いますと言ってきた