林間合宿から戻って数日が経過したころ。夜に訓練に行く前、楯無が俺がいる警備室に押しかけてきた
もちろん話題は言うまでもなく、可愛くて仕方がない妹のことだ

「織斑一夏!あの子をたぶらかさないで!」

「まるで母親だな」

IS学園に戻ってから、ほぼ毎日射撃訓練をしていた。
最初は小型のリボルバーだけだったが、今は9mmのオートマチック拳銃を撃たせるまでに進歩した
短時間でこの急成長ぶりはなかなかのものだ。いろいろな意味で簪は成長している
そういったことで成長することを最も望んでいないのは姉である楯無だ

「いったい私をどこまで苦しめたら気がすむの!」

「まったく、簪は自立を目指している。それを尊重してやれよ」

「自立するのは良い事なのはわかるけど。そのために私よりも汚い世界を見せるなんて!」

確かに俺のいる世界は楯無のいる世界よりも汚いかもしれない
そんな中でも生きていくことができるというのは覚悟が必要だ
それでも彼女はそれを望んだ。だったら俺は手伝うだけだ
道案内として。たとえ途中で道を変えるならそうすれば良い
俺は強制はしない。本人の意思を尊重するだけだ

「人は自ら決断して歩むものだ。誰かに強制されたらそれは道ではないんだぞ」

「うっ‥‥‥‥‥‥」

「俺はまた訓練に行くからな」

俺はそう言うと訓練のために予約しておいたISのスタジアムに向かった
途中でバレットM82を取りに行っての上での行動だ。12.7x99mm NATO弾を100発持ち出した
今回はこいつを撃たせようというのだ。狙撃銃でも良かったのだが。
林間合宿での狙撃補佐の冷静な判断能力を見てこれを選んだ
スタジアムに到着するとすでに俺が彼女に渡した迷彩服を着用していた

「今日はこいつだ」

「それって対物ライフルですよね」

「ああ、バレットM82。言っておくが反動を吸収しきれなかったら体を痛めるがやめておくか」

「いえ、何事も訓練と実践ですから」

俺は最初はこんなものを撃てと言われたら断ると思ったのだが、どこまでも強くなったものだ
簪の心の整理と覚悟はできているようだ。それと俺が教材として与えた銃の取扱説明書をよく見ているらしく
分解した状態のバレットM82を渡すと自分で組み立てていった

「よく勉強しているし、ここ数日で大きく成長したな。いろいろな意味で」

「教本はしっかり読んでいます」

そんなことを言いながらも数分でバレットM82を組み立て終わった。
俺は空のマガジンと弾を渡した。簪は1発ずつ込めると銃に組み入れマガジンを装填してスライドを引き1発装填
今回は人型のターゲットを1km先に設置した。
俺は双眼鏡で的の状況を確認しいつでもいいぞと合図をすると簪は迷うことなく的の頭部に命中させた
さらに次弾はターゲットの胸に命中させた

「よし1撃必殺。上出来だ。だがこれは地面での発砲だ。ヘリなんかを使ったら振動などを考慮に入れなくてはならない」

そうだ。地面に接地しているからまだ楽なのだ。これがヘリでの狙撃となると様々な要素が絡んでくる
ヘリによる上下左右の微妙な振動だ。それでも1発で仕留めるのことができればかなり腕が良いと言える

「今度夜に時間があったらもっときつい訓練をさせてやるが」

「お願いします」

「そうだな。近接格闘術についても学んでみるか?」

人に教えるという事は俺自身も実力を確認することができる
自分の技術を高める事にもなる

「体力が必要だが」

「もし習得できるなら、頑張ります」

「わかった。明日の夕方に警備室に来ると良い」