やってみるかと言った俺の言葉に簪は良いんですかと聞いてきた
「別に人に当てるわけじゃない。あくまでも脅しが目的だ。経験を積むならこの機会を十分活用すれば良い」
分かりましたと簪は言うとヘリの機内でバレットM82の狙撃スコープを覗いた
慎重に照準を合わせていった。俺は距離と風向きを伝える補佐役を担当した。
「ターゲットのそばの壁掛け時計を狙います」
「いいぞ。撃て」
次の瞬間、反動にも慣れてきたのか。発射された弾は多少それたが時計には命中した
「もう1発撃ちますか?」
「いや、警告はした」
ターゲットは明らかに動揺の表情を見せていた。依頼としては文句のない仕事だ
俺はヘリのパイロットに駐車場にヘリを戻すように依頼した
その途中でレーダーマップにある事が表示された。
「簪、お前の姉さんが怒りに来たぞ」
「大丈夫です。もう迷いません」
気持ちは決まったようだ。このまま俺の訓練を受けていくと
どんどんと強くなりたいと
俺達は結局、ヘリの出発地点に着陸するとすぐに楯無のISも到着した
「姉さんにしっかり言ってやれ」
「はい!」
覚悟を決めたことは彼女の表情からすぐにわかった
もう隠すつもりはないと。自ら宣言するつもりなのだ
歩みを止めるつもりはない。
「簪ちゃん!」
「お姉ちゃん。私は決めたの。このまま一夏さんと共に歩む!ISだって返してもいい。代表候補生のポストだって捨てても良い!」
「どうして」
さすがに彼女の意志の強さに楯無は相当なショックを受けていた
「一夏さんはいつも私の意思を尊重してくれた。強制はせず、自らの意思で決めろって。そうすればやがて道は開けるって」
「でも、人殺しになるんだよ!」
「すべての人が法律で裁けるわけじゃない!それにお姉ちゃんだって似たようなことをしているのに私だけいつも仲間外れ」
そんなことはもういやなのだと簪ははっきりと意思表示をした
確かに俺は強制はしない。本人が共に歩みたいなら歩みを手伝ってやる
それに簪の言う事は正論だ。楯無の家は代々暗部をやっている。なのに自分だけ除け者にされたらいやな気持ちになる
俺にもその気持ちはよくわかる
「楯無、どうやらお前の負けのようだ」
「織斑一夏!」
「言っておくが彼女の言うとおり、俺は強制していない。来る者は拒まず、去る者は追わずというのが俺の考えだからな」
俺はこっちの世界に本気で興味があるなら支えてやる。
それが俺にとっては最高のパートナーになるからだ。今後仕事をして上でパートナーがいる事は重要だ
「だからってどうして!」
「お前が彼女のことを思っているなら態度で表すべきだった。それだけの話だ」
俺は内心ではすでに手遅れだがなと思った。初めから時計の針は狂っていた。
その狂いを少しでも直すようにもっていかなかったからこそ、こういう結果を招いた