「すべて手後れだってこと。つまり時間切れだ」

俺と簪はその後、駐車場に止めているバイクに乗って帰ろうとした
その時、携帯情報端末が警告音を出した
俺は簪を引っ張って素早く駐車場の中にある工事用の鉄骨を盾にして隠れた
その直後銃弾が飛んできたが、そのほとんどが隠れた俺達と楯無の両方に向かっていた。
狙いは俺達か、それとも楯無か。かなり判断が難しいところだ
それに亡国機業なら俺に敵対する事は今のところないはずだ

「自分の身は守れるな」

俺はヘリから降ろしたばかりの対物ライフル、バレットM82を渡した

「大丈夫です!」

「俺がバイクを取りに行く間、援護しろ。方向は分かっているか」

「だいたいは」

「よし、気をつけろ!」

俺は急いで駐車場に止めているバイクに乗り込むと素早くエンジンを始動させて簪のところに向かった
その間にも発砲の音はやまなかった

「お姉ちゃんは大丈夫ですか」

「ISの絶対防御がある。大丈夫だろう」

簪は素早くバイクの後部に乗り込んだ。俺はアクセル全開でその場から脱出していった
楯無も急いで引き上げていった。ところがだ。バイク走行中の俺達に照準を合わせられていた
亡国機業じゃない。狙いは間違いなく俺達だ

「簪!しっかりつかまっていろ!」

俺は急停止させて、大木の陰に隠れた。簪からバレットM82を受け取ると狙撃スコープで確認した。
相手は1km先にいた。迷彩服を着用していた。どう見ても猟犬の俺を狙っているようだ

「簪、こんな汚い世界でも入りたいか。泥沼になるぞ」

警告するように言うと覚悟はできていますと意思表示をはっきりした
まったく、何か決めるまではハツカネズミのようにぐるぐる回るのに物事を決めると肝が据わっている
俺は狙撃の補佐を頼むと対物ライフルを構えて発砲した。それも2発を

「直撃です」

俺はあえて両腕を狙った。腕が使い物にならなくなったら殺し屋としては終わったも同然だ

「腕を狙ったんですか?」

「そうだ。殺すと面倒になるからな」

どうしてですかと聞いてきた簪に警告だと答えた
俺に手を出したらこういう目に遭うということを伝えるのだ
殺してしまうとそのメッセージを伝えることができる人物がいなくなってしまう
そうなればまた狙われる可能性が高くなるだけだ

「他にはいないみたいだな」

俺は簪に言った。
こんな汚い世界を自ら望んで歩むことに悩みはないのかと
すると彼女はこういった。覚悟を決めたら強いんですと
なら徹底的に仕込んでやるまでだ

「明日から毎日夕方からトレーニングをするか?」

「お願いします!」