簪と水野ユウ一等陸佐との格闘術はかなり続いていた。
身長などの不利なこともあったと俺は思っていたが、簪をそれを逆に利用していた
細かに動いて確実に仕留めるためにナイフ戦を展開していた
ある程度訓練をさせると休憩のために、一休みの時間を取ることにした

「もう限界だろ」

俺はそういいながらミネラルウォーターのペットボトルを渡した

「はい。正直に言うと隙がなくて」

「まぁ俺も近接戦闘は苦手だ。銃での狙撃が多いからな。だが体を鍛えておいて損はない」

特に俺と同じ道を歩むなら、殺気を感じられるほどの敏感な感覚がなければ死ぬだけだと警告した
簪はまだそのあたりはわからないだろうと俺は思っていた。そんなに簡単に得ることはできない
こういうのは長年の訓練と実戦を経験しなければ難しい

「一夏さんはどうやって?」

「俺は最も過激な方法だったな。眠っているところに銃を突き付けてきて突然発砲だ。危うく死ぬことになりそうになった」

「過激ですね」

簪の言うとおりだ。あまりに過激だが短期間で会得するにはそれが最も効果的だ
親しい友人ですら常に味方だとは思うなというのが先生から得た重要な教訓だ
特にどこから銃弾や始末屋が来るかわからないということをいやというほど叩き込まれた
おかげでこんなに敏感なセンサーが身についた。
だからこそ生きているのだ。もし違っていたらとっくに天国で楽しくしている

「まぁ、簪はゆっくりと教わると良い。確実に習得しておかないとろくなことにならないからな」

簪に俺がそういうと彼女はわかりましたと言った
今はまだ実感がないかもしれないが、戦場で頼れるのは自分だけだ
生き残るためには自分が持っている能力をフルに発揮する必要がある
そうしければ待っているのは死だけだ。そうなりたくなければ徹底的に訓練をしていくしかない。
そして戦場でそれらを発揮しなければ認められないのだ
すべては究極なトラブルに備えて行動する。常に周囲を警戒して危機意識を持ち続ける。
自らを生き残らせることができるのは己の実力を常に向上させていくことを続けるしかない

「もう1度だけでも良いので戦闘訓練をしてもらえますか?」

「問題ない。それに一夏君の実力が落ちていないかしっかり確認するためにも見ておきたい」

俺は簪からゴム製の訓練用ナイフを受け取ると近接戦闘訓練を始めた
さすがは常に鍛えられている猛者だ。
銃による狙撃訓練が中心にしか最近はしていなかったので体が少し鈍っていた
しかしすぐに気を引き締めると戦闘訓練を続けた

「ここまでにしよう」

彼がそう言ってくれたところで俺との戦闘訓練は終了した

「さすがはフェンリルの弟子だな。その若さでそれだけの戦闘能力。自衛隊で働かないか」

俺はまだ未成年ですと反論するが。
表舞台からは姿を消しているなら問題ないぞとフォローするかのように言った
確かにそうだ。俺は表舞台ではほとんど知られていない。一部では死亡説が出ているほどに
ここにいる事を知っていることは限られた人物だけだ。
情報を漏らすものがいなければの話だが。裏社会でその情報が回ったとしても
一般生活をしている人々にその情報が回ることはまずない