午前10:24 中央パトロール本部庁舎 8階捜査部オペレーションルーム

シエルはラジェット達が乗った車を港湾パトロールのヘリから送られてきた映像で確認していた
小さな異変も見逃さなないように監視していた

「シエル。今のところラジェットは無事だね」

ウルの言葉にシエルは彼は有能な部下だから失うわけにはいかないとして最優先で支援体制の強化を指示した
ラジェットは捜査部1係の実質的なトップである。
職責上はシエルは捜査部1係のトップという役割は現在はラジェットが担っているところが大きい
ラジェットが失われることは極力最小限にすることが求められる

「でもいつ何が起きるかわからないから警戒は怠ることはできないわ。常に警戒監視が重要よ」

『港湾本部から中央本部へ。フローレンス州内にある魔力精製炉発電所の発電出力が低下しつつあり』

『イーストフローレンス基地管制センターから港湾本部。フローレンス州内の電力供給に支障が出る可能性あり』

今は停電はしていないがいつなるかは全く予想することはできない。
フローレンス州にある火力発電所をフル活用して不足している電力供給を継続する
時間的余裕がどこまであるかはわからない。
おまけにフローレンス州でもAMF装置が魔力精製炉発電所の近くにある
装置を撤去しない限りは発電出力が回復することはあり得ない
魔力精製炉発電所の出力が失われているなら火力発電所をフル活用、
どんな方法を使ってでも電力供給の需給バランスをコントロールしなければならない
フローレンス州でも石油・天然ガス・石炭が豊富に埋蔵されている
今は州政府が鉱物資源開発費を州政府に収めることで環境基準を守るなら採掘が行われている
フローレンス州からクラナガン市には原油や天然ガスを運ぶパイプラインが存在している
それらを利用することで資源開発企業は迅速にクラナガン市に運べる。
またタンカーなどを使えばクラナガン市の港からウエストミッドチルダ大陸だけでなく、
イーストミッドチルダ大陸やセントラルミッドチルダ大陸に輸送されていく

「フローレンス州でも電力供給の危機が現実になりつつあることは最悪ね」

シエルの言う通りだ。
クラナガン市内の発電能力での電力供給にトラブルがあると首都であるクラナガン市の安全保障に影響は大きい
近隣州からの電力供給を受けることである程度は問題解決になるかもしれないが、
近隣州の発電所も断たれるとクラナガン市の電力の安定供給に影響が出る
最後にはブラックアウトになってしまって、重要な各種ライフラインの維持ができなくなるかもしれない
それだけは許されないことである。クラナガン市には数多くの次元世界国の大使館がある
クルック地区と近隣地区には国際政治の次元世界連合本部と多くの国際組織の本部もある
だからこそクラナガン捜査局が担っている任務は最も重要なのだ

『クラナガン市政府が緊急の記者会見を開催。市内の経済安定に5京ミッドを生活困窮支援に一定金額を支給すると』

今のクラナガン市の財政状況なら5京ミッドを用意するのは簡単なことである
市内の財政に与える影響はほとんどない。
財政に問題がないならクラナガン市上下院議会の審議は簡単に通ると思われているが、
それだけのお金、つまりクラナガン資金が納税してくれた大変貴重なお金だ
お金に余裕があるからと言って簡単に支出するわけにはいかない
支給される理由や支給の対象になる企業や市民が受け取る理由があるのか、
問題ない組織や個人であるかをクラナガン市議会での審議が必要になる

「認められるかどうかは難しいでしょうね」

シエルはクラナガン市上下院議会の過半数を平和党があるからと言っても、
同じ政党に属していたとしても議員として本当にそれが必要なのかは市議会議員が自らで判断する
クラナガン市上下院議会の過半数の議席を持つ平和党に属する市議会議員であっても、
全員が賛成するは義務付けられていない。自らの信念として必要なら反対する市議会議員もいることは事実だ

『クラナガン市長が市上下院に早期賛成と採決を求めていますが、かなり難しい問題であることは間違いないです』

何度も言うが、時空管理局から大量リストラされた退役時空管理局員は再就職はかなり難しい
その影響がどこまで出てしまうのかは想像がつかない状況にあった
大量リストラされた退役時空管理局はほとんど退職金を受け取ることができず。
おまけに退役後に受け取ることができたはずの年金資金の運用をしていた投資会社、
それらの違いで受けとれる金額は大きく変わってしまう。
もしかしたらほとんど受け取ることができないために退役後の生活も困窮している状況にあるのだ

『ベルカ州政府はベルカ開発銀行から州内の道路や鉄道などのライフライン建設のために多額の融資を行うと』

ベルカ州内はまだまだ道路網・鉄道網・鉄道・電力供給の送電網整備のために、
州内の郡政府や市政府などに低金利で融資を行っている
現在2000兆ミッドを州内の自治体に融資している。
今後、さらなる融資がされていくことはほぼ間違いない状況であると考えられている
ベルカ州内では数多くの公共事業が行われている。連邦政府も財政面でベルカ州政府の支援を行っている。
電気・ガス・上下水道・通信網のライフライン関係の整備は急務の状態だ
ベルカ自治区時代はさまざまな資源開発は禁止されていた。
今のベルカ州では州政府に採掘などを行う時にその鉱物資源開発寮に連動する形で税金を州政府に収めている
州政府はその歳入を使って公共工事を大幅に増加する。州内の経済は今や好景気どころかバブル経済になりかけている
政府は税率の引き上げなどを行ってバブル経済にならないように対応している
それでも限界というものがあるので、かなり難しい線引きでギリギリの状態なのだ

『ベルカ州政府はバブル経済になることを抑制するための金融政策について連邦政府と協議を行うとしています』

「ベルカ州政府は大変ね。景気が良すぎてストッパーが欲しいのに、それができない状況になるとなおさら」

連邦準備銀行はさらに政策金利の引き上げを検討している。
しかし急激な政策金利は避けるべきことではある。
政策金利を引き上げを行うとベルカ州だけの問題だけでなく、ミッドチルダ連邦国内すべての州に影響が出る
経済のバランスを取るのは難しい課題である

『連邦準備銀行は預金準備率の引き上げを検討に入っています』

預金準備率というのは国内にあるすべての銀行に対して一定預金額をその国の中央銀行
ミッドチルダ連邦の場合は連邦準備銀行に一定の金額を預金させる
こうすることで国内で流通する資金をコントロールすることができる
その結果は金融機関は一般企業に対する融資をしている資金を回収して連邦準備銀行に預金しなければならない
金融機関が自由に扱える金額が限定されてくる。金利が上昇することにもつながる

『預金準備率を引き上げた場合、国内の金融市場の資金量が大幅に制限されることが想定されます』

『これが実行された場合、金融市場で大きな影響が出ることは間違いないでしょう』

ただ問題なのは聖王教会についてのトラブルだ。
安全保障理事会で聖王教会の強制捜査。今後何が起きるか想像できない
すでに一部の聖王教会支部で問題が大きなトラブルが出ていることはわかっている

『多くの次元世界国では聖王教会に支部への強制捜査で問題が頻発しています』

『クラナガン商品取引所でクラナガン原油先物価格は1バレル8000ミッドに上昇。今後も上昇する見込みです』

『この事態を受けてあまりにも急上昇することは好ましくないとクラナガン市政府は何らかの対応措置に入ると』

クラナガン市政府が行える方法はそれほど多くはない。
だがクラナガン市政府が備蓄している原油備蓄基地から備蓄原油を商品市場に流す
クラナガン商品取引所に市政府が放出した原油が流通すると供給量が多すぎて商品取引所の原油価格が下落する
実際にどれほどの影響が出るかはわからない。原油取引価格が上昇しすぎるのは好ましくない
確かにペットボトルなどを作る際の石油製品であるプラスチックのリサイクル量は国内では極めて高い
国内で取引されているプラスチック製造の原材料の内、リサイクルプラスチックの使用率は5割ほどになる。
つまり残りの5割は新規の石油製品で製造されたものを使っている

『マリネット州政府とラクロス州政府も備蓄原油をそれぞれの州にあるそれぞれの州商品取引所に流す』

マリネット州とラクロス州にも豊富に石油や天然ガスが埋蔵されている
JS事件前は価格が大幅に安かった。JS事件後は各州にある州商品取引所の取引量が大幅に増加している
特に原油などの鉱物資源を取引する州商品取引所の取引量は大幅に増えている
今後もどれくらいの影響が出てくるかは想像つかないため、政策は慎重さが求められる

「今のクラナガン市と近隣州の景気は好景気だから良いけど、状況が一気に変わるかもしれないわね」

シエルは首都であるクラナガン市の経済状況によっては大きな変動が出ることを想定していた
もし好景気から不景気になると犯罪発生率が高まることを危惧していた。
何が起きるか全くわからない状況になることを想定していた

『連邦準備銀行は急激な景気過熱を抑え込むために政策金利を7%に引き上げることを審議することが分かりました』

いったいどころからこの情報が漏れたかわからない
政策金利を動かす前に口先介入のつもりなのかもしれない。
今の政策金利は6%。今日だけでも既に0.5%も上昇させた。
そこをさらに1%も上げるとかなり急激な金利引き上げである
実際に介入したらどれくらいの影響が出るかの判断材料になるのかを予想しているのかもしれない
本当に資金を運用して介入する前に見るつもりことも予想できる
1度に一気に1%も引き上げるとなると国内経済に大きな影響が出ることが想定されてくる
急激な利上げになることは大きな影響が出ることはわかっている。
できれば急激な景気低迷になることは避けつつも経済バランスのコントロールをしなければならない
これは極めて難しい判断が迫られる状況であることは確かだ
今日だけでもかなり経済情勢は大きく動いている。元々ワンワールドグループ企業が大きすぎたことが大きな理由だ
そんな大企業が倒産すれば国内経済出かけでなく国際経済にも影響が出る
おまけに国内の政治だけでなく国際政治などへの影響も激しい動きを見せている
さまざまなことの原因がすべて時空管理局関係である。
彼らの影響が大きすぎたので金融市場はの動きも激しいのは当たり前である

『ワンワールドグループ企業が破綻したことにより金融市場では保有していたた株式や債券などを売却』

『ワンワールドグループ企業の破産処理のための費用にすることを確保のためとしています』

ワンワールドグループ企業の破産のためには傘下の銀行・証券会社・投資ファンド・保険会社、
彼らが保有していた株式や債券などのあらゆる資産を売却していた
少しでもワンワールドグループ企業が抱えていた赤字の穴埋めに使うためである
だが、あまりにも赤字の金額が大きすぎるので対応にはかなり苦労をしているのが現実である
ワンワールドグループ企業は多くの次元世界国の国債や自治体が発行した公債を金融市場に売却
それだけではなく民間企業が発行していた株式や社債も売却。
少しでも現金確保のために必死な状況にある

「景気が良くなることは良いけど、州によって大きく異なるのは問題ね」

ベルカ州政府は州内の経済が好調になりすぎることをかなり危険と判断している
もしバブル経済の状況になったりしたら大変だからだ。大変な事態になることが想定される

「連邦準備銀行も必死なのは当然だよ。今はベルカ州だけ。でも国内全域に広がったら抑え込むのは大変」

ウルの発言の答えはあっている。もし間違いがあれば大変だ。最悪の事態になる前に抑え込まないといけない
彼はニュース専門報道番組を空間モニタで見ながら状況を見ていた。
ミッドチルダ連邦の景気もかなり好景気であり絶好調だ。一気に拡大すると抑え込むのは簡単ではない
政策金利の引き上げや公開市場操作を行うことである程度のコントロールをすることはできる
しかしすべての問題になることを対応することは難しい。簡単に解決する問題ではないのだ

『クラナガン市内の電力供給を行っていた魔力精製炉発電所でAMF装置の影響で発電ができない状況にあります』

『クラナガン市と近隣州の送電網を管理しているミーミルパワー社は現在の電力供給に支障が出る可能性は低いと』

『しかし万が一に備えてクラナガン市内から近隣州に送電していたが逆の方向で送電される場合があると発表』

「送電網が機能停止にならないことを祈るだけね」

シエルがもしクラナガン市内の送電が停止したら近隣州にも影響が出る。
それはウルが見ている報道番組でも言われているし、ライフラインの管理運営をしている民間企業はわかっている
危険なシナリオの方向に向かうことがなければ良いがそんなことは希望的観測かもしれない
常に危険性があるとして予測を行って行動しなければならない

『クラナガン市西区の停電ですが、おおむね送電を再開するとともに復旧作業が完了したとの情報が入りました』

『なぜ送電停止になった理由については後日発表を行うとミーミルパワーが声明を出しました』

「ウル。当然よね。停電した理由がわからないとまた同じことが起きるかもしれないから」

シエルの言葉にウルはそうだねと返答した。原因の解明が完全に終わらないと再度発生するかもしれない。
送電網が機能停止になるとリスクを背負うことになってしまう
同じトラブルは起こすわけにはいかないのだから、問題になるポイントがあるなら素早い対応が必要だ

『西区の停電についてですが、クラナガン市政府は送電網を管理しているミーミルパワー社と情報交換を行っていると』

クラナガン市政府は上下水道と光ファイバーなどの通信ケーブルをクラナガン捜査局と常に連携して管理している
クラナガン市内の光ファイバーなどの通信回線の管理は形式上はクラナガン市政府が行っている
しかし実際のところはクラナガン捜査局中央パトロールで運用・管理を行っているのだ
不正アクセスはコンピュータウイルスチェックなどを行っている。
1つでも不正アクセス行為が確認されたら速やかに捜査を行う。
同時に不正アクセスのターゲットにされている企業や政府機関などのシステム管理部門、
そこに連絡して機密専門通信回線のネットワークから切り離すように指示する
もし軍事部門の通信ネットワークに問題が生じたら最悪になってしまう
電気・ガス・上下水道に障害が発生したらクラナガン市民だけでなく、国内全域にまで影響が出るかもしれない
経済的影響も大きくなってしまう。

「ウル。念のため市内のライフライン情報を再度チェックして。共同溝管理センターと協力して」

共同溝管理センター。
それはクラナガン市政府が各種ライフラインがある地下共同溝の管理を専門に行っているセンターだ
クラナガン捜査局と常に連携して対応している。
共同溝管理センターでは様々なところに監視カメラなどの各種センサーがある
監視カメラなどで何らかのトラブルがないかなどを監視している

「わかったよ」

『中央本部から各員へ。緊急行動指令を発令する。警戒態勢に入れ。今回は訓練ではない。総員警戒態勢へ』

「またなの?」「いつものことだけど」

シエルとウルは呆れていた。訓練でなくてもJS事件以降は発令する回数は増加している
市内が危険であることは確かだが、何度も発令されると迷惑と感じることが当たり前のようにある

「ギブリ。今日の非番以外の捜査官に警戒態勢を敷くように指示を出して」

シエルの指示に従って捜査部オペレーションルームの管制官をしているギブリに指示を出すように命令した
ギブリもすぐに通達を出すと答えた。


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東区中央区域 クラナガンハイウェイ4号線(東線) 西行

ラジェットや機動六課組が乗った車は順調にクラナガンハイウェイを走行していた。
ただし、緊急行動指令の無線を聞いて緊張感を持った対応が行われている。
護衛役をしている港湾パトロール海兵隊員やラジェットはいつでも拳銃をホルスターから抜ける用意をしていた。

「SA11から中央本部。こちらに影響するようなトラブルはあるか?」

『こちら中央本部。現在詳細な情報を確認している。何かあればすぐに連絡する』

ラジェットはその返答に少し状況は良くない状況であると感じた

『こちら中央本部。警戒要員をさらに配置する。できるだけトラブルがないように対応するように』

「具体的にどんなトラブルが想定されている?」

『ベルカ州西部地方で起きているクーデターの影響がクラナガン市内にも出ることが想定される』

クラナガン市内でも問題が発生することがあるとの情報がもたらされた
それはそれでかなり困ることは確実である。それを回避するために動く必要がある
緊急行動指令が発令されると問題はかなりひどいことが確実だと思われる
あらゆるトラブルなどの状態に備えて動く必要がある

『クラナガン市内にある連邦政府やクラナガン市政府機関の電力供給を通常送電回線から切り離す』

『ノースクラナガン堰とクラナガン堰に設置されている水力発電所からの電力供給を独占的に使用する』

この2つの堰の発電量の合計は最大で8000万KWになる。
クラナガン市内の重要施設への電力供給を行うことで市民に混乱を招かないようにしている
水力発電なら石油や天然ガスや石炭を燃料とする火力発電所と異なり、
化石燃料の供給に関するリスクはほとんどないに等しい
水力発電所なら水とある程度の高低差があれば安定的な電力供給ができる
またクラナガン自然保護区にある地熱発電所からも安定供給を受けることができる
地熱発電も燃料を必要としていない発電運用が可能だ
定期点検のために発電を止めることはあるが、それ以外は継続的に運用することができる
クラナガン自然保護区にある地熱発電所は最大発電出力は1億2000万KWにもなる
水力発電と地熱発電の出力の合計は最大2億KWにもなる
これらの電力で警察・救急・消防に必要な無線や携帯通信回線などの運用にも利用される

「電力供給に障害が発生しなければ良いがな」

ラジェットは長時間発生する停電。つまりブラックアウトにならないでほしいと願っていた
共同溝にある送電網に異常でもない限りは水力発電所から電力の安定供給ができる
おまけに水力発電は火力発電と異なり化石燃料である石油・天然ガス・石炭などの燃料コストほとんど必要ない
火力発電所なら惑星大気汚染物質を除去する環境汚染除去設備もほぼ必要ない
だからこそクラナガン市内のライフライン管理用の電力源として利用されている

『クラナガン堰とノースクラナガン堰で発電された電力は連邦政府施設やクラナガン市政府施設に供給する』

『また次元世界連合を含むクルック地区と近隣地区にも安定供給のために独立送電回線で送電を行う』

『通信回線も民間通信企業の管理回線を含むあらゆる通信回線の運用にも独立送電回線の電力で運用する』

これで通信回線への影響は最小限で済む。もし通信回線がダウンしたら大変なことになる
民間通信回線のダウンだけでも市民や国民だけでなく国内外の経済にも影響する
さらに政府機関関係の通信回線がダウンするとかなり問題が発生していく
そうなる前に行動開始をすることは極めて重要だ

『中央本部から各員へ。停電規模が拡大する可能性を考えて行動を開始せよ』

中央パトロールもブラックアウトになることを想定すると最悪の事態を覚悟しないといけないと思っていたのだ
クラナガン市政府機関であるクラナガン捜査局も同じ見解を持っていた

「何もなければ良いがな」

ラジェットは最悪の方向に話が進む事は嫌ではあるが、抑え込むことも重要である
厄介な方向に状況が進まないことは認められない。市内で反政府組織やテロ組織が動き出したら大変だ
それを何とかしなければならない。

「問題解決には何とかするしかない」

『西分署から中央本部。西区の停電は完全に復旧。完全に電力送電は開始された』

『中央本部から西分署へ。なぜ停電になったかについて原因を電力会社とともに調査を行って報告せよ』

『停電原因が分かり次第すみやかに報告を行う。異常西分署からの通信を終える』

「西区の停電が解消されたか。何が原因かが気になるところだな」

ラジェットは少し安心していたが今後どのような調査結果が出されるかを慎重に調べなければならない
何か小さなトラブルがあったらさらに重要トラブル事案になるからだ。
そういう事になることは避けなければならない。詳細な停電原因を調べることが求められる

『こちら中央本部。ミーミルパワー社から連絡があり、現在クラナガン市内の送電網の運用状況に注視していると』

『またクラナガン市内の魔力精製炉発電所の発電出力がAMF装置の影響で発電できない影響が出ると』

つまり火力発電所をフル稼働させて対応するということだ。
だがこれは火力発電所で利用される石油・天然ガス・石炭が消費量が増加することになる
クラナガン商品取引所で原油価格や天然ガスの先物価格が上昇することになる
燃料価格が上昇すれば少しの間なら問題ないが長期的にみると電力価格も少し遅れて上昇する
さらに自動車燃料などの燃料コストも上昇する。そのほかの石油精製商品の価格も上昇する
影響がかなり大きく出るので安定供給が求められるが、価格のコントロールは難しい

『連邦エネルギー省は国内の石油などのエネルギー資源の安定供給は問題ないと発表しました』

ミッドチルダ連邦エネルギー省は国内の石油・天然ガス・石炭などのエネルギー資源の管理を行っている
国内で採掘された様々な鉱物資源を国外の他次元世界国に輸出を行う場合はエネルギー省の許可をしなければならない
好き勝手に国外に資源が輸出されると国内の資源不足になることを起こさないためである

『しかしベルカ州でのクーデター騒動の影響でどこまで波及するかはわからないと』

「クーデターを起こした連中は迷惑なことをしてくれる」

ラジェットは今後のこちらの対応が影響することはわかっていた
それにクーデター騒動を起こしているのが聖王教会関係であると考えられている
ベルカ州内の電力供給にベルカ州西部地方に一時的に影響が出ていた
今はベルカ州内の電力網は西部地方との送電網を切り離して運用が行われているので、
州内全域のブラックアウトになることはないと判断されている。
それでもベルカ州内に数多くの発電所と送電網を持っているベルカパワー社という電力会社がある
ベルカ自治区がベルカ州政府に移行したとき、聖王教会は財政上に資金確保に動く必要があった
聖王教会はベルカ州証券取引所にベルカパワーの株式をすべて売却した
またミーミルパワー社もベルカパワー社と連携している。
ミーミルパワー社はベルカ州内の送電網の一部を保持している。ただしベルカパワー社と共同管理をしている
2つの電力会社は常に連携を取ることで停電にならないようにしている

『ミーミルパワー社はベルカ州と接続されている送電設備の運用を行うと発表しました』

『ベルカパワー社も互いに力を合わせてこの難局を乗り越えるために最大限の協力を行うと』

クラナガン市内にある魔力精製炉発電所の発電出力がほぼ0になっているため、
連係を取って対応することがベルカ州・クラナガン市・近隣州の電力供給に問題が出ないように対応するためだ

「クーデター騒動の影響がこっちにまで来なければ良いと思っていたが、今の状況では動く必要があるかもな」

ラジェットは最悪の状況を想定していた。常にリスク覚悟で対応する方法を考える必要がある
ベルカ州には穀物などの大規模農業が盛んな州だ。クラナガン市民の食生活を支える重要なポイントである
農業で収穫された農作物の供給が断たれるとすぐにクラナガン市民の生活の大問題になる
ベルカ自治区時代からその流れは変わっていない。今は鉱物資源開発も進んでいるが、主産業は農業である
ベルカ州政府からの農作物の供給が断たれると大きな問題になる

「ラジェット。ルートを変えるか?」

運転をしている港湾パトロール海兵隊員の言葉に今は問題ないだろうとラジェットは回答した

「SA11から中央本部。こちらの上空には攻撃ヘリが配置されているのか?」

『現在港湾パトロール海兵隊第12海兵航空団に属するAH-64Dが2機配置されている』

アパッチが配置されているということはいつでも攻撃ができる準備が整っていることの証だ
機動六課組に対する攻撃がいつ行われるかわからない。警戒と監視の強化は当然のことである

『中央本部から市内にあるすべての金融機関警備担当に通達。万が一に備えて警戒態勢を厳重に行え』

『金融機関に対する強襲の可能性が極めて高い。強襲されるということを想定した警備体制に移行せよ』

市内にある多くの金融機関の店舗では何が起きるかわからない状況にあることははっきりしている
警戒心を持っていつでも対応できるように警備するのは当然なのだが。

『クラナガン市内で再度停電などによるトラブルが発生することを念頭に入れて警戒活動を要請する』

「金融機関の警備担当は大変だな。いつ強襲されるかわからないから張り詰めた空気だろう」

ラジェットの言う通りだ。今は市内の金融機関をいつだれが強襲するかわからない
今日だけでも既に2件も発生している。さらに増加することは十分考えられるのだから

『中央本部からSA11。危険を感じたら速やかに中央本部に無線を入れるように』

「こちらSA11。了解した」

ラジェットはそんなことを言われなくてもわかっている。
必要ならどんなことでも支援要請を出さなければならない重要任務を行っているのだ。
無事に機動六課組を中央本部に連れていく。最も重要でミスが許されない任務である

「本当に中央本部は無茶を言うのが好きだな」

ラジェットは面倒なことが起きる前にトラブルの発生源を断つことを行えと、
中央本部はそういう事で無線連絡したことを瞬時に理解していた
確かにすでに2件の銀行強盗が発生している。これ以上問題を増やしたくないというのは十分わかる
だからと言ってこちらにすべての責任を現場に押し付けてくるのは無謀な行為とも言える

『SA33から中央本部。ユラザーク・ギャスシーがいるワンワールドバンクの支店で危険な動きを見せる可能性あり』

「アルシオーネも苦労しているようだな」

彼女が担当しているワンワールドバンクの支店で立てこもっている事案で大きな動きがあれば大変だ
今は人質も落ち着いているが少しずつパニック状態になることは容易に想像できる
そうなる前にアルシオーネは解決したい。だが彼女も現身動きが取れないから中央本部と無線交信をしている

『中央本部からSA33。現在のユラザーク・ギャスシーはどのような状態か報告を』

『現在はアサルトライフルで人質を脅迫している状態。いつ何をするかわからない』

『引き続き警戒態勢を維持せよ。人質も巻き込んで自暴自棄になる前には対処せよ』

『SA33。了解です』

「SA11からSA33。必要なら銀行の壁に穴でもあけてみたらどうだ?」

ラジェットはアルシオーネに無線でそう伝えた。あまりにも無茶な方法だが陽動には使える
被害を最小限にして立てこもり犯の警戒心を揺さぶるには良いかもしれない

『SA33からSA11へ。斬新なプランだけどかなりリスクが伴う作戦であることはわかっているの?』

「だが何もしないよりも良い方に転ぶかもしれないと思わないか?」

ラジェットの言う通りだ。もしかしたら良い方向に話が進むかもしれないしそうでもないかもしれない
こればかりは運の問題である。最悪の惨事を避けるためにも必要なら派手に仕掛けてみるだけの価値はある

『検討してみるわ。提案には感謝するけどかなり危険なプランだから慎重に対応する』

アルシオーネはそういうとラジェットの無線交信を終えた
ラジェットも自分で出したプランがかなり危険であることはわかっている。
しかし、いつまでも何もしないで行動しないなら動くきっかけになるかもしれない

「忙しいのですね」

フェイトがラジェットに質問するかのような表現で話しかけてきた

「こっちはいつものことだから気にしていない。いつもならもっとトラブルが大量に発生している」

俺たち捜査部捜査官は複数の事件捜査を行っているから慣れているとラジェットはフェイトの質問に答えた
捜査部捜査官はいくつもの事件事故捜査を担当している。ミスが許されないのが犯罪捜査だ
だからこそあらゆる角度から検証する捜査が求められている。難しい決断も迫られる時もある。
例えば市内で発生した事故事件において犯人が市外に逃げてしまった時は管轄が変わってしまう
クラナガン市外に逃走されると連邦捜査機関や逃亡先の警察組織に権限が移行する
もちろんクラナガン捜査局は近隣州や国内のすべての警察組織といろいろと友好的な関係を保っている
市外に逃げた犯罪者を追跡することは逃走先の州政府と連携することはできる
表向きは仲が良い関係であるとされているが、一部の法執行機関とは微妙な関係になっている

「時空管理局からリストラされた連中は大変だな。生活するための金もないなら余計に」

ラジェットの言葉にはやて達は何も言い返せなかった
機動六課が真実を暴いたところとんでもないことになってしまった
真相がわかったことで様々な災いが降りかかった

「お前たちはとんでもない真実の箱を開けたな。パンドラの箱と同じだ。あらゆる災いがが出てきたのだから」

『港湾本部から各員へ。ベルカ州西部地方の電力供給は現在もカットされている』

『ベルカ州西部地方と他の地方との送電網は切断されている。これ以上送電網の運用停止はないと思われる』

ウエストベルカ魔力精製炉発電所の発電出力は完全に0になっている
ウエストベルカ魔力精製炉発電所の最大発電出力は6000万KWだ
さらにウエストベルカ水力発電所では2000万KWになる
合計すると最大8000万KWになる。ベルカ州西部地方にとっては重要な供給源になっている

『ここでニュース速報です。ベルカ州西部地方でクーデター騒動を起こした過激派が声明を発表』

『ベルカ州政府を解体して聖王教会に権限を戻すようにと』

「バカな連中だな。聖王教会が実行したと思わせるだけの犯行声明を出すとは」

ラジェットは呆れていた。確かに彼の言う通りだ
ベルカ州西部地方のクーデター騒動を起こした関係者が聖王教会と関係があったと証明するようなものだ
自らの正体を関係先を表しているようなものである
自殺行為と言っても過言ではない

「本当にバカな連中だ。自殺行為をしているのと同然なのに」

『ベルカファーストバンクが無担保コール翌日物で100億ミッドを借り入れたと』

無担保コール翌日物は銀行を含む金融機関が銀行間取引をしている
名前の通り無担保で金融機関が資金のやり取りをしている。
無担保だけにもし返済できなかったからコール市場に危険な流れが生まれる

「どこの金融機関も必死だな。死ぬ前に何とかするために延命措置に走ったか」


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南区北部区域ハーディー地区5番街5丁目10番地 地区パトロール事務所

ユラザーク・ギャスシーが立てこもっているワンワールドバンクの支店はいよいよ危険な流れになっている
人質の精神状況にも影響が出てくることは間違いない。
早く解決したいが簡単にそういう流れに行くことはない

「何を考えているか気になるわね」

アルシオーネは問題行動を起こさないか警戒していた
仮にも時空管理局本局で中将というかなり上の階級にいたのだ。何をするかは想像したくない
あの男の目的は金を取り戻したいのだ。JS事件までは借金をしてうまく資金運用ができていた。
しかし時空管理局の規模が大規模縮小されたことによって保有していた時空管理局債は価値がなくなった
それによって金融機関から融資した資金の返済のためにお金になりそうなものはすべて差し押さえられた
差し押さえられた財産はすべて銀行が売却して融資資金の回収に充てられた

「支店に踏み込むのはかなり問題がある。仮にも金融機関だ。壁は分厚い。小規模の爆弾で穴は開かないぞ」

現場に来ていた南分署のSWATの隊員の言葉にアルシオーネはわかっていると返答した
もちろん支店のあちこちにSWATの隊員が見張りをしている
突入するときに効率よく制圧できる場所を探すために必死なのだ

「今の身動きが取れないという場では新たな対応方法を検討するのは難しいわね」

「アルシオーネ。どうする?」

彼女は踏み込むことを決断したいところなのだが、現実的な対応では難しいことはわかっている
いつ自爆するのかもわからない状況ではどうにもできない。手を出した瞬間に自殺行為をするかもしれない
いつもなら強行突入で解決したいが今回は難しい

『南分署からSA33。強行突入は最後の手段とせよ。大きな混乱が発生しないようにコントロールされたし』

「こちらSA33。現時点での強行突入は極めて危険と判断できる。引き続き警戒態勢を維持して状況把握を行う」

アルシオーネはリスクが高すぎる強行突入は最後の手段としておきたいのだ
仮にも時空管理局本局に所属していた魔導師だ。
周りから敵対行動が行われると考えたら暴走することは十分予測できる

「どうするべきか難しい判断が迫られるわね」

彼女は今すぐに行動開始というわけにはいかないことはわかっている。その時、別のある無線交信を傍受した。
あまりにも衝撃的な内容で発信者が諜報機関の港湾パトロール安全保障局であったこと。
余計に問題を複雑化にするものであったからだ

『港湾パトロール安全保障局から緊急通告。クラナガン市内の金融機関に対する攻撃情報を複数確認』

港湾パトロール安全保障局からそんな通達が出されるということはかなり危険性が高いのだ
クラナガン市内でも今は不動産バブルになるのではないかとクラナガン市政府は懸念している
そのため市内の建設許認可を審議しているクラナガン市政府機関ではある程度のコントロールを行っている
コントロールと言っても急激な不動産価格の高騰にならないように許認可申請に制限を設けている
つまりクラナガン市政府が建物の建設許認可をしない限りは好き勝手に都市開発はできない

「港湾パトロール安全保障局からそういわれるとここだけでは片付かないかもしれないわね」

アルシオーネは市内の金融機関に警備の状況を聞くため中央本部と無線交信を行った。
港湾パトロール安全保障局からの情報が正しいならさらなる立てこもり事件が起きるかもしれない
それを食い止めるのが中央パトロールの任務である
時空管理局員の多くが自らの資産運用のために時空管理局債を利用してきた
だがその時空管理局債は価格が暴落したことで資産運用ではかなりの赤字を出す結果になった
おまけに時空管理局の大規模組織縮小が拍車をかけるきっかけにもなっていた
自業自得言えばそこまでの話だが、彼らは日々の生活に必要な資金確保も難しい段階にいる
生活に困窮してつらい犯罪で生活に必要なお金を用意するしかなかった
だからこそ犯罪組織や反政府組織はそういった人材をリクルートしている
退役時空管理局員が持っている時空管理局の内部情報はある意味では非常に有益になるからだ

「大量リストラされて、退役後の生活資金がほとんどないとなると暴れる気持ちはわかるけど」

それでも犯罪という一線を越えることは許されない
犯罪行為を行う前に何とかできたかもしれないと考えることを諦める
だからこそどんな手段を使っても犯罪で生活費を稼ごうとするのだろうが
金に困れば人間という生き物はどんなことでもしてしまう
たとえそれが重罪行為であってもだ

「何とかするしかないわね」


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南区北部区域サウスハーディー地区2番街 無人ATM

ステラはATM荒しが起きた場所の現場確保と証拠になりそうなものを回収していた
とりあえず無人ATMの損害状況などを写真撮影していた
さらに近隣に設置されている街灯監視システムから犯人が撮影されていないかも確認した
しかし覆面姿だったので誰なのかをすぐに確認することはできなかった
犯人は近くの地下鉄の駅に入っていった。その後の足取りをつかむことは難しい
地上なら街灯観測システムの監視カメラの映像を利用して追跡するのは簡単だ
だが地下鉄などの公共交通を利用されたら追跡はほぼ無理だ
現場に残っている証拠だけが唯一の物証であり、犯人のところに導いてくれるはず
証拠を分析することで犯人を見つけ出すことができるのだ。
犯罪捜査は時間が必要だが、どれほど長い時間が必要でミスは許されない

「それにしてもかなり派手に壊されているわね」

無人ATMはかなりひどく損傷している。ステラは無人ATMに設置されている監視カメラ映像を確認した
しかし監視カメラにも覆面姿の人物が映像記録があっただけだ。
これでは犯人が男なのか女のか識別することはできない。
証拠としては採用されるにはかなり他に証拠を見つけて照合してみない限りはわからない

「真実を明らかにするにはかなりの時間と手間が必要になりそう」

ステラはため息をつきながらも現場鑑識チームが来るまでの間に証拠採取などを行った
どんな小さな証拠品であっても見逃すことは許されない。
小さな証拠品であっても時には一気に真実の解明につながる重要なものであるという証拠品にもなるからだ
だからこそ現場鑑識は必ず行わなければならない
無人ATMはかなり破損していた。だが現金には手を付けることはできなかったようだ。
ATMの現金が収められているところはかなり強度があるので簡単に破壊することはできない

「お金は奪えなかったみたいね。器物破損と窃盗未遂で立件はできるけど」

これで2ストライクだ。あと1つで三振法が待っている
ステラはここまで破壊しておいて現金を盗めなかったとはただの間抜けだと言えた

「それにしてもいったい誰がここまで破壊したのかしら?」

無人ATMはかなり損傷している。ここまで破壊しておいて金を盗むことができなかった
この機会が丈夫だったのか。それとも何か別の狙いがあったのか、徹底的に調べなければならない。
話は変わるがステラはラジオでその経済情報を聞いてため息をついた
原油価格が上昇すれば製油所で生産された自動車燃料などの石油製品も上昇してしまう

『クラナガン原油先物価格が1バレル9000ミッドまで上昇。石油精製製品の1つである自動車燃料価格も上昇』

『原油価格が上昇すればさらにひどい状況になる可能性があります。好景気が真逆になる可能性は十分あります』

今は好景気でも原油価格が上昇すれば経済に冷や水をかけるようなことになりかねない
そうなることを抑えるにはかなり苦労する。
おまけにベルカ州内でのクーデター騒動の影響で石油製品以外の物価も上昇することは十分考えられる
影響を最小限にするには国内で活動している資源開発企業が動きを見せなければならない

『石油採掘を行っているエネルギー資源開発会社やミッドチルダ連邦政府は会議を行いました』

『エネルギー資源開発会社は備蓄原油の一部を通常より早く放出すると連邦政府と話をまとめたとのことです』

「まったく。景気が悪くなると犯罪発生率も上がるから早急に何とかしてほしいわね」

ステラの意見は当たっている。犯罪というのは金に困るから行うことが多い
つまり生活費が十分に確保できる景気が良い状況なら犯罪発生率は下がる

『次元世界連合総会は時空管理局と聖王教会が求めている銃火器などの質量兵器の運用は承認できないと判断』

『また安全保障理事会でも議案として審議をしましたが現段階では承認することはできないと』

次元世界連合総会というのは次元世界連合全加盟国が参加する会議だ。
安全保障理事会と同じで総会で可決決議された議案を加盟国は2年以内に法整備を行うことが義務付けている
ちなみに銃火器やミサイルなどの質量兵器の運用は次元世界連合と質量兵器監視機構の承認が条件だ
2つの組織が行う審査は極めて厳しい審査になっている。

「時空管理局に銃火器の承認が下りるはずはないわね」

クラナガン捜査局に属する者なら誰もがわかっていることだ
まだ厳しい内部調査を受けている段階で簡単に質量兵器運用が認められるはずがない
仮に審査を求めたところで簡単に話が進む事はあり得ない
次元世界連合の時空管理局改革委員会・時空管理局調査委員会・時空管理局監視委員会の3つの委員会の承認が大前提だ
その3つの壁を超えない限りは質量兵器運用資格が与えられることは許されない
次元世界連合全加盟国の法執行機関と国防関係の組織に関しては毎年厳しい内部調査が行われている
抜き打ちで行われるため、少しでも問題のある兵器運用をしていたら資格停止やはく奪もある
だからこそ各国政府機関は厳しい検査を実施している。現地政府が抜き打ちで行うことも頻繁にある
それだけ質量兵器の運用は厳格な基準で運用されているということでもある

「時空管理局に銃火器の取り扱い承認が下りたらそれこそ奇跡のようなものね」

ステラは承認が下りるには数か月という単位ではなく、
数年という単位の厳しい部隊運用審査が必要であると理解していた
クラナガン捜査局でも毎年何度も抜き打ち検査が行われている。
もし検査で合格点をもらえなければ部隊運用の停止という処置が行われる
厳しい審査をクリアしなければ難しいことはクラナガン捜査局員なら誰もが理解している

『クラナガン商品取引所では電力価格も大幅に急上昇。前日よりも50%も値上がり』

「まったくどこのバカなの?ベルカ州でクーデター騒動の影響が多すぎるわね」

クーデターが起きた理由は多くの銘柄の取引価格の値上がりに見込んだ経済犯罪を起こすつもりなのかもしれない
騒動を起こすことで様々な商品取引の銘柄の値上がりを見込んで激しく売買しているのかもしれない
インサイダー取引を狙った可能性は高い。もしそれが事実ならかなりの人数が参加していることが想定される
真相究明を行うことが重要である。何としても真実を暴き続けるしか道がないのだ
それがクラナガン捜査局の任務なのだ。真実と民主主義を守ることが任務である

「今後の経済的影響がどこまで広がるかが恐ろしいわね」

クラナガン証券取引所の平均株価とクラナガン商品取引所の商品先物価格は国内の大きな銘柄に影響が出る
最大限の警戒監視が必要である。ここで取引された銘柄の平均値が多くの州証券取引所や州商品取引所に影響する
国内全域に影響が出る前に対応しなければ経済テロにつながる可能性がある

「経済的テロを起こすことが狙いなら取引所で多くの取引をしている者を中心に調べる必要があるわね」

インサイダー取引をしているならここ数時間で多くの取引をしている人物か企業があるはずだ
クラナガン市の近隣州の州証券取引所や州商品取引所の様々な銘柄に影響が出てくるだろう

「この状況が続くとインサイダー取引の可能性が高まるわね」

そうでなければここまで大きなことを起こすことは考えられない
インサイダー取引行為をするには事実が発覚する前に1人が大きく動くとすぐに証券取引委員会が察知する
多くの人数が参加することでインサイダー取引が成立する可能性は高まる
証券取引委員会が察知する前。つまり経済犯罪として捜査される前にはすべての資金を回収して逃亡する
事実がはっきりする前にすべての資産を隠し通せば、逃げることはできる。
ただしあまり表立った生活をすることはできないのが現実である
彼らは目立たないように生活しなければ追い掛け回される結果になってしまう

『金の取引価格ですが1gあたり9000ミッドまで上昇しました』

通貨に対する不信感が上がれば上がるほど金の価値は値上がりしていくだけである

『通貨ミッドの為替取引価格ですがミッド高から一変。急激な通貨ミッドが売りに出されています』

『通貨ミッドのミッド安の影響で多次元世界国の通貨の価値は上昇』

『次元世界通貨基金では市場が冷静さを取り戻すことを念頭に動く可能性があると』

次元世界通貨基金は各次元世界で使用されている通貨の為替相場の安定化を目的に創設された。
通貨の安定のために必要に応じて各国から出資された資金を融資し、
為替相場の安定化を図るのを主幹業務としている。

「国内の経済に影響が出ないことを祈りたいわね。苦労するのは現場にいる人間なのだから」

『ワンワールド保険は破産申請で企業が抱えていた価値がまだある社債や国債や株式を売却』

『これを受けて国内だけでなく、多くの次元世界国の証券取引所の平均株価が若干の下落を見せています』

『一方で優良企業とされる株も売却されているので売買件数は大幅に上昇しています』

ワンワールドグループ企業が保有している国債・社債・株などを一度に大量に売却したことが平均株価が一時的に下落
しかし今は優良銘柄の国債や社債や株式などの取引価格はすぐに上昇に転じた
ただし、時空管理局債の債券価値は全くなくなった影響はワンワールドグループ企業への影響は大きい
時空管理局債を使った取引を数多く行っていたが、価格が暴落したので企業買収はされなかった
リスクがあまりにも多すぎるからだ。少しでも何かメリットがあればまだ良いかもしれない。
でも現実にはそんなに簡単に片付くようなことではない
数多くの次元世界国で動いているグローバル企業が破綻するということは各次元世界国の経済に大きく影響する
実際に多くの次元世界国の経済に影響が出ている。どうなるかは全く予想がつかない状況である

『一方でワンワールドグループ企業の破綻により取引をしていた会社の経営に大きな影響があります』

ステラはニュース専門チャンネルのラジオを聴きながら大きなため息をついた
国内の経済が安定してほしいのに現実には難しいからだ。
不景気になれば犯罪発生率は高まる。一度犯罪行為に関与すると抜けるのは難しい
それにテロ組織や反政府組織に属するとなおさらだ。
彼らにとっては勝手に組織を抜けられることは大きなダメージになる
組織の情報が洩れたらテロ組織や反政府組織が潰されてしまう
そんなことになるとすぐに組織が摘発されてしまう。なら情報漏れになりそうな可能性をなくせばいいのだ
つまり殺すことによってそういった犯罪組織の内部情報が洩れる確率は大きく下がってくる
見せしめ行為として利用されることもある。組織を裏切ればこうなるのだというアピールだ
そんなものを見れば抜けることをやめようとするだろう

「ここまでATMを破壊しておいて金を奪えないとは機械が頑丈と言えるかもしれないけど」

無人ATMから金を奪うためにはかなり破壊しなければ奪うことはできないのだ
問題なのはどうやって犯人を捕まえるかだ。覆面姿で逃げた。
それも車などは使わず近くにある地下鉄の駅に入ったところまでしか確認できていない
そこから追跡するのは簡単なことではない。何としても犯人を逮捕したい。
しかし物的証拠になりそうなものはあまり期待できないと思われる
どうしたものかわからない状況にあることは間違いない

「一応生体認証ができるかどうか確認しましょう。ある程度は絞り込めるかもしれないし」

前歴があれば生体認証で追跡することが可能かもしれないが完璧ということはあり得ない
あくまでも希望的観測をしているようなものなのだから。今はどんな情報も見逃すわけにもいかない。
あらゆる証拠を分析して出た結果がどんなに無茶なものでも事実である

「ここの近くにある街灯観測システムの監視カメラの映像を使って照合して、どんな結果が出るの?」

ステラは携帯情報端末で監視カメラの映像を犯歴者のデータベースと照合した
すると10人ほどが類似しているという結果が出た。ここからはアリバイを確認するだけだ
10人の中で6人は市外にいることが確認された。さらに2人は刑務所で刑期を務めている
残りの2人は市内に住んでいる。1人目はエリック・ブラーテ。41歳。もう1人はネルバーク・ホイッツ。32歳。
2人とも現住所は南区北部区域ウエストハーディー地区7番街2丁目1番地502号室に同居している
犯歴は2人とも銀行強盗だ。10年前に使って2か月前に出所したばかりだ。
カムバックするにはかなり早いものだ。

「もしこの2人が犯行に絡んでいたら刑務所生活が好きなの?」

完全個室の刑務所だ。楽しいことなど何もない。
ただ1日中刑務所の個室で刑期が終わるか仮釈放になるまで外に出ることはない

「2人の行動記録を顔認証システムで照合させるしかないわね」

無人ATM破壊の近くにいたのかどうかを入念に調べることで、犯行に関与しているかを確認できる
もし関与していないことが分かれば角度を変えて捜査を行う
これだけのことをしてもお金をとることができなかった
リスクが極めて高いATM荒しをしてでもお金を抜こうとしていた。
そこまでするほど金を用意することが必要だったということでもある

『南分署から各員へ。南区北部区域ノースイーストハーディー地区で通報あり』

『歩道で倒れている人物がいるということです。付近にいるパトロール捜査官と刑事は急行せよ』

「かなり危険な展開になるかもしれないわね」

ステラは最悪の予想にならないことを望んでいるが難しいところである
その時、ステラが持っている携帯情報端末に緊急ニュースが入ってきた
話題はクラナガン市上下院議会で市内にある聖王教会に対する強制捜査など審議していたことだ

『クラナガン市上院議会は市内にある聖王教会の施設に対して強制査察を195人の議員が賛成。棄権が5人』

『クラナガン市下院議会でも550人が賛成。棄権の判断を50人に』

圧倒的多数の市議会議員が賛成に回ったことで棄権した市議会議員は聖王教会とそれなりに関係があったとされている
だが真実というのは読まれにくい。
棄権に回った市議会議員は聖王教会すべてが悪ではないという判断をしたのだ
聖王教会が運営している医療機関はそれなりの数があることが大きな理由だ
彼らが運営している医療機関をすべて廃院することは問題が発生する
だからこそ全面反対という立場につくことはできなかったのだ
教会が運営しているのは医療機関だけではなく学校などの教育機関も存在する
だからこそすべて反対というわけにもいかない。難しい決断を迫られる議員も存在する

「本当に問題が山積しているわね。市議会議員も聖王教会のすべてを悪と判断するわけにはいかないから」

正しく運営しているところがあるからこそ難しいのだ。
聖王教会の今後については次元世界連合の審議に託される
現在は次元世界連合安全保障理事会の聖王教会調査委員会で今までの聖王教会の活動に関して、
法的な違法性がないかを入念に調べている。
もちろん次元世界連合加盟国でも調査と捜査を各国の法執行機関で行われている
1つでも違法行為が確認されるとその次元世界国での聖王教会の活動は大幅に制限される

「聖王教会の問題がこっちにも出なければ良いと思っていたけど、次元世界連合の調査では疑惑がかなりでるかもしれない」

次元世界連合の調査でもどんな些細な問題行動が確認されたら大騒動になる

『次元世界連合の聖王教会調査委員会が行ってきた過去の行動について問題が複数あることを確認したと発表』

『この発表を受けて聖王教会債の取引を行っているクラナガン金融債権取引所での取引価格は急落しました』

『聖王教会債の額面が1万ミッドに対して取引価格は650ミッドに大きく値下がりました』

元々JS事件後には聖王教会債の取引価格は暴落していた。
今回のクラナガン市上下院議会で強制捜査に関する議案が可決されたことが最悪の結果を招いている

「聖王教会も大変ね。自分たちの財務状況が悪いから返済するのは難しいから」

それにそんな危険な債券に買い注文を入れるような投資家はかなり少ないはず
仮に安値で購入しても返済される保証があるわけではない。そんな危険なものに手を出す人間は探す方が大変だ

「信用収縮の状況になったら大変ね。まぁそれは時空管理局債と聖王教会債とワンワールドグループ企業関係だけど」

この3種類の部類の債券価格は暴落して値がつけることがほぼできない状況にある
時空管理局債に関しては次元世界連合が最も最安値の時に全体の9割を購入している
今の金融市場ではほとんど取引されていない。
次元世界連合が時空管理局債を購入することは時空管理局の財務問題を何とかするためだ
すでに時空管理局は独自に債券発行する権限はない。時空管理局の予算は次元世界連合で審議されて管理される
だから自らが好き勝手に時空管理局債を発行する権限は与えられていない
その権限を持っているのは次元世界連合に限定されている。

「醜い争いにならないことを願いたいわね」

ステラはそんなことを考えながらとりあえず現場鑑識チームが来るまで待機することにした。
本職にしてもらった方が角度を変えての捜査ができるからでもある
その間に再度近隣地区に設置されている街灯観測システムの監視カメラ映像をチェックした

「あの男はまさか・・・・・」

ステラはすぐに携帯電話を取り出すとある部署に連絡した

「時空管理局統合参謀本部に確認してほしいの。メイソール・ボリックは時空管理局からリストラされたか?」

メイソール・ボリックは時空管理局員だ。正確には元時空管理局員であるが
大量リストラされた時空管理局員でもある。しかし今は犯罪者として捜査が続いている
リストラされる直前に時空管理局からかなりのお金を自分の銀行口座に移していた。
金額にすると260億ミッドほど。これだけの金額を自分の銀行口座に移した後、銀行口座をすぐに解約。
現金をすべて金塊にした。金を追跡されることを恐れた作戦だった。それは見事に大当たりした。
時空管理局犯罪捜査局は追跡しているが痕跡がいくつか見つかっただけで追跡できない
260億ミッドの時空管理局の資金を移すとはなかなか無茶なことをしたと言える
金塊の購入に横領した資金を使った。おかげで銀行口座で追跡することはできない
その影響でどういう流れをしているのか。調べることは難しいし確認作業ができない状況にあるのだ

『時空管理局統合参謀本部も時空管理局犯罪捜査局と連携を密にして追跡している。ただ資金の流れがわからない』

銀行口座の金の流れが分かれば追跡は難しいことではないのだが、横領した金はすべて金塊にした
つまり銀行口座での追跡を気にする必要がないということである。こうされると追跡することは極めて困難だ。
次元世界連合の次元世界警察機構が加盟国に国を超えるような事案に関する情報共有をしている

「最後に確認された場所は把握しているの?」

『ミッドチルダ連邦捜査局からの連絡でクラナガン市内にいるとの情報があった。だがそれ以上の追跡はできていない』

ステラは大きなため息をついた。市内にいることは間違いないのだろうがどこにいるか
この広い首都であるクラナガン市内から1人の人間を探し出すのは簡単なことではない
その無茶を何とかしなければならないのがクラナガン捜査局の任務であり責務なのだ
何としても見つけ出して裁判を受けさせなければならない。それに横領した金も押収しなければならない
全ての作業が終わるまでは捜査を続けなければならない

「もし見つけたらすぐに私に連絡をしてほしいの。別の事件捜査でその姿を確認することができたから」

『奴には賞金がかかっているからな。賞金稼ぎも必死に追いかけている』

ミッドチルダ国内では法執行機関が犯人追跡のための人員を効率よく運用するため、
犯人に賞金が掛けられていることが多い。
賞金の金額はその犯人がどれくらいの事件に関与していたかで変化する
そのため犯罪者を確保して法執行機関に身柄を移管すると賞金を受け取ることができる
懸賞金は指名手配をかけた警察組織。つまり法執行機関によって異なる
今最も高い懸賞金が掛けられている犯罪者は10億ミッドのお金がもらえる
そのため懸賞金狙いの仕事を行っている賞金稼ぎを生活のためにしている者もいる

「懸賞金がこれだけかけられているのにまだ捕まっていない。かなり利口な方法で暮らしているみたいね」

『中央本部からSA11。警戒態勢を厳戒にして何があっても対応できるように』

「ラジェットも大変ね。まぁ私たち捜査部もお荷物背負わせられるから面倒だけど」

ステラはなのはとは少し関係がある。
一時期にはなのはと同じ時空管理局の所属。戦技教導官を担当していたからだ
それとは別の話だが、ステラはあることが原因で時空管理局を見限った
だからクラナガン捜査局に入局した。今は時空管理局に対する視線は厳しいものである
彼らのことを認めていないのだ。時空管理局が正義だと信じていたのに実際は違った
それはクラナガン捜査局に入局していやというほど理解した

『中央本部からSA34。応答せよ』

「こちらSA34。内容をどうぞ」

『そちらの現場に向かっている現場鑑識チームは急遽別の現場に向かうことになった。そちらに到着するのは遅れます』

「他の現場鑑識チームは手配できているの?」

『現在調整作業を行っています。少し時間をもらえると助かるのだが』

ステラはそんなに余裕がないことはわかっている。できるだけ素早い鑑識作業を行いたい
時間が経過することはあまり好ましいことではない。しかし今は待つしかない
ステラは携帯情報端末で経済ニュース専門チャンネルを見ていた

『ミーミルバンクはワンワールドバンクから融資に問題がない企業の再建について検討していると発表しました』

ワンワールドバンクはグローバル企業であったので、破産による影響は極めて拡大している
今後の展開では関係していた下請け企業に影響が出ることは確実である。

『ワンワールドグループ企業の下請け業務を引き受けていた中小企業でも資金難から破産申請をする会社が多発』

『旧時空管理局地上本部や首都防衛隊に数多くの物資納入で汚れた資金の流れがあったことは事実です』

『今後、次元世界連合全加盟国で企業倒産がかなり増加することが想定されています』

『次元世界連合全加盟国では加盟国によって国内景気が悪化していることがあり、今後の企業監視が必要かと』

ワンワールドグループ企業は数多くの中小企業が関係していた
時空管理局の規模が大幅縮小されることと時空管理局本局と地上本部の統合
おまけに時空管理局の給与基準が大幅に引き下がれた。さらに時空管理局に与えられた権限が大幅減少した
ミッドチルダ連邦クラナガン市に本社があるので、連邦破産法を適用されている
破産法の中でも再建型破産法ではなく企業をなくす清算型破産で処理する
ワンワールドグループの企業は完全に存在しなくなる。もちろん影響はかなり出てくる
ワンワールドグループ企業から取引をしていた関係会社ももう巻き込まれて連鎖破綻することに
すでにワンワールドグループの企業は破産申請をしている。
今は破産を行うために次元世界連合全加盟国では法執行機関が調査が行われている。
今後の展開についてはあまりいい景色を見ることはできないことは明確な事実である

『今回のグローバル企業の挟んであまりにも影響が拡大するため、破産処理を行うには多くの時間が必要と思われます』

『一方で下請けを受注していた企業にも影響は大きなものなり、一部の次元世界国内の失業率が急上昇することに』

当然のことである。今まで時空管理局との取引は一部の関係企業だけが競争入札ではない形で受注していた。
だが今は競争入札によって最も品質が高くて低価格で物資を納入する企業に大きく変更された
以前から時空管理局と取引があった企業は競争入札に負けてしまい負債が増える状況にある
物資納入の競争入札で納入事業の価格や品質などでほとんど負けてしまった。
こんな状態が続くと事業自体も行うことができない。
さらに利益を出すビジネスをすることができなくなり倒産はかなり増加している

「時空管理局の大きな改革でワンワールドグループ企業と取引をしていた企業の破綻は当然よね」

彼らとの取引の中に高額な取引が行われていないかを次元世界連合の時空管理局調査委員会が調べている
少しでもきな臭いにおいを感じたらすぐに関係者の身柄を確保して訴追に踏み切るようにしている
たとえわずかな金額の横領でも違反行為であることは間違いない。
調査が最も厳しい新たに組織された次元世界連合の時空管理局調査委員会によって時空管理局の内部調査、
不正と思われる事案に関わっているの犯罪行為を行っていないかを調べている

『今回のワンワールドグループの破綻によって次元世界連合は加盟国に対して警告を出しています』

「この街だけで2件も退役時空管理局員が立てこもっているのだから、他の次元世界国でも発生件数が増えるのは確実ね」

ステラの言う通りでクラナガン市だけでなく国内全域で銀行強盗などの金銭目的の犯罪行為が多発している
その事件に関わっているとして多くの次元世界国でも捜査が行われている。

『次元世界通貨基金が外貨為替レートの安定を行うために動きを見せると一部の政府関係者から話が出ています』

『現在、外貨為替レートは大きく値動きをしています。通貨ミッドはミッド高でしたが現在は大きな値動きは減りました』

『しかし今後はまだ予想がつかない状況になるかわからないため、次元世界通貨基金は急激な動きを抑える方向で動くと』

「本当に通貨の安定性もなくなったから大きな問題になる前に対応したいけど」

ステラはそんなに為替レートの調整をすることが難しいことはよく理解している
大きな変動があれば対応は素早さが求められるが不安になった多くのヘッジファンドが動くことになる
彼らは小さな変化でも投資する金額次第で大きな影響力を持っている
ミッドチルダ連邦政府は国民から社会保障税という名目で税申告を行っている。
社会保障税は医療や老後の生活資金のためにそれぞれの国民の収入に応じて徴収
現在の社会保障税の残高は7000京ミッドになる。去年は金融市場で300京ミッドの利益を得ていた。
その運用利益は社会保障税基金に編入。さらに一定金額を再度金融市場で運用している。
国民の医療費補助や国民年金という形で国民の生活支援を行っている

『今後の外国為替レートによって連邦財務省や各次元世界国政府や次元世界通貨基金はいつでも為替介入ができます』

『次元世界通貨基金はいつでも為替介入を行えるように待機中です』

『各次元世界国政府はいつでも外国為替レートに介入できよるとしています』

『ベルカ州でのクーデターを起こしているテロ組織にすぐに攻撃が開始するとされています』

確かにいつ攻撃されるかはわからない。
すでに港湾パトロール海兵隊と連邦海兵隊の部隊が向かっている
そこのクラナガン市の南側にあるラクロス州の経済報道番組が入ってきた

『ラクロス州西部地方のウエストラクロス油田の開発を行っているドッジエネルギー社が増産する方向で動くと』

ドッジエネルギー社はグローバル企業で次元世界連合全加盟国内で資源開発を行っている
経済的影響力では第3位の大会社だ。
ミッドチルダ連邦以外にも多くの次元世界国に支社があり資源開発をしている
ウエストラクロス油田では1日100万バレルの採掘を行っている
また同じところから採掘されている天然ガス田では1日で3000万立方メートルの採掘量になっている

『この発表を受けてラクロス州商品取引所の原油・天然ガスの商品先物価格は一時的に下落』

『またクラナガン商品取引所でも上昇を続けていた原油・天然ガス先物価格が下落基調に動きを』

クラナガン市の北側にあるマリネット州・南側のラクロス州・西側のフローレンス州。
それらを結んでいる原油と天然ガスのパイプラインがつながっている
これらのパイプラインを使うことで1つの州で原油や天然ガスでトラブルがあった時、
できるだけ素早く石油と天然ガスのやり取りを素早く行うことができる。
エネルギー資源の安定供給を行うことができるのだ。
クラナガン商品取引所の資源などの商品価格は国内全域の州商品取引所に影響する
クラナガン証券取引所の株価の影響は国内の各州に設置されている州証取引所の株価に大きく影響する
資源価格の上下価格変更の影響はじっくりと時間をかけて出てくる
慎重に対応しなければ経済の与える影響は大きくなる

『パイプラインによるクラナガン市の石油化学コンビナートでの原油や天然ガスのやり取りは大幅に増加』

『経済アナリストはこのパイプラインを使っての石油や天然ガスのやり取りでクラナガン商品取引所の価格に影響』

『今後の展開は一切分かりません。今後の需給バランスで再度影響が出ることが想定されます』

『クラナガン商品取引所でも原油価格が大きく値下がりました。今後の展開は全く想像できない状況に』

クラナガン証券取引所やクラナガン商品取引所の値動きはかなり広い範囲で影響が出る
何度も言うがクラナガン市だけでなく国内全域に影響が広がっていく
できるだけ取引所の値動きの幅を最小限にすることが重要である
クラナガン市の北側にあるマリネット州のマリネット油田とガス田などの資源開発を行っている。
サーストンペトロリアムという企業。ミッドチルダだけでなく次元世界連合全加盟国で事業をしている
ベルカ州で採掘された石油や天然ガスは東隣にあるマリネット州に向かってパイプアインが接続されている
原油は1日当たり最大500万バレルを。天然ガスは1日最大200億立方メートルを輸送できる

『ベルカ州商品取引所の原油価格は大きな変動をしているので今後の動向は慎重な判断が必要に』

今まさにヘッジファンドが暴れていることは間違いない。
彼らは小さなトラブルがあれば資金を投入して金融市場に大きな影響を与えてくる
影響を最小限にしようとしても1度始まった祭りごとを抑え込むのは簡単ではない
ベルカ州だけだが南側にあるフローレンス州やベルカ州東側のマリネット州にも影響が少しずつ出てくる
各州にある州商品取引所では鉱物資源・農作物・漁業資源の取引が行われている
また電力の数か月間にわたる契約のための先物取引が行われている

『クラナガン商品取引所では電力先物取引価格が現在上昇傾向にあります』

『石油・天然ガス・石炭などのエネルギー資源価格が急上昇した影響が出ている状況です』

『しかし多くの経済専門家は一時的なものであるので、影響が長時間にわたって出ることはないと』

確かに経済専門家たちの意見は正論だ。
今は一時的石油や石炭などのエネルギー資源価格の上昇が大きな要因である
今後はどうなるかまるで見当もつかないかわからないが、
鉱物資源価格が下落しているなら電力先物価格も下落する

「影響がどれくらい出てくるのかわからないというのは危険な兆候になるわね」

機関投資家などのヘッジファンドが今後どのように動いてくるか。
国内の各州にある証券取引所や商品取引所の値動きが激しくなることが大きく影響してくるだろう
ヘッジファンドにとってはそれは最も重要なことである

『マリネット州下院議会が港湾パトロールマリネット統合軍が安全確保のために部隊を要請するとを』

マリネット州下院議会の議席数は100議席あり、民主党と共和党はそれぞれ20議席
平和党という政党に所属している下院議員は60議席になる
マリネット州上院議会では50議席のうちに民主党と共和党はそれぞれ10議席。
残りの30議席は平和党に属している議員である

『州上院議会でも全会一致で賛成。今後新たな展開次第でベルカ州のトラブルの影響が出るかもしれません』

民主党と共和党も全員が賛成したので否決する議員はいなかった
これはマリネット州内の安全を守るためにはあらゆる方策が必要であると考えているからだ
必要なら政治的な道具に州内の人々を危険にさせることはいけない

『今回のマリネット州上下議会で聖王教会をターゲットであるような議決に聖王教会は否定的な披見が出ています』

ステラはそのニュース専門チャンネルのテレビ番組を見ながらため息をついた
彼女は聖王教会の立ち位置がかなり危険であるという認識をされていることを感じたからだ
今のベルカ州はただでさえ混乱した状況であるのに、さらに悪化するのではないかと危惧していた
今後の流れは全く想像できない。危険な立ち位置になることは明らかだ

「聖王教会は火消しに走っているわね。このままの状態が続くとかなり嫌な展開になりそう」

今の聖王教会はトラブルが起きれば連鎖破綻する可能性が高まる
だからこそ教会内部でも内部調査が行っている。でもリスクが高い真実が出ることがあれば最悪である

「連邦証券取引委員会と内国歳入庁は苦労しているわね」

証券取引委員会は聖王教会債の取引で不正がなかったかを調べている
内国歳入庁は連邦政府や州政府などに納められるはずの納税行為を適切に行っていたか、
かなり厳しい調査が行われている。時空管理局にも現役局員や退役局員が脱税がないかを調べている
ただしあまりにも金額と規模なので調査が完了するには数年は必要とされている
聖王教会と時空管理局の元幹部だった人物は銀行口座を閉じて多くの人間が失踪している
そういった人物の追跡はFBIなどの複数の連邦法執行機関が連携しながら続けている
また次元世界連合でも国際捜査を行う独立した捜査チームを作った。
その捜査チームは次元世界連合加盟国の法執行機関と連携して追跡している。
コールドケースにすることは許されない。たとえ長期にわたる時間が経過してでも調査をしなければならない

「聖王教会や時空管理局関係のトラブルが持ち込まれることは避けたい。こっちにも人員はたくさんあるわけではないし」

捜査部捜査官は少数精鋭でいつも事件捜査には全力で取り組んでいる
手を抜くことと政治的圧力には屈しないということが重要である
今後のことを考えるといろいろと努力しなければならない。機動六課組という爆弾を引き受ける。
それはいつ爆発するかわからない手りゅう弾を持っているのと変わらない
こちらの苦労について上層部は本当に理解しているのか検証したいところである

『中央本部から各員へ。クラナガン市内にある銀行などの金融機関への警備体制は厳格に対応せよ』

ステラは本当に迷惑なことになっているとすぐに理解した。
ワンワールドグループ企業が破綻してからというもの、毎日数多くの企業が破産申請をしている
ミッドチルダ連邦だけではなく、次元世界連合の全加盟国でも同様な動きを見せている
各次元世界国政府は破産企業の増加によって失業率が急上昇することで警戒している
今後さらにひどい状況になることは明らかな事実である
今後、クラナガン市内でさらなる強盗事案が起きることを1件でも減らすためには必要であることは理解できる
だがどのような状況に流れていくかは全く想像できるものではない
もしかしたら最悪の状態になることも想定される。警戒態勢を厳格にするのは理解できる

『クラナガン原油先物価格が1バレル9000ミッド近くまで上昇していましたが大量の売り注文で大幅に値下がりました』

『現在は1バレル7400ミッドまで急降下。今後のクラナガン原油先物価格はどのように上下するか不明です』

「経済事件が発生しなければ良いけど。あれを担当する仲間には言いにくいのはわかっているからなおさら」

インサイダー取引などの経済関係の犯罪捜査は極めて難しい
今の国内の経済状況はもちろんだが、他次元世界国の経済情報を把握していないと捜査はなかなか進まない
クロウする事案で誰もが担当することを嫌がる。
だが割り振られた以上は何としても対応するしか道はないのだ
これも仕方がない。捜査の担当する者は全力で事件解決のために動くしか道がないのだ

『ベルカ州西部地方でのクーデターの影響でベルカ州証券取引所では多くの株式銘柄に売りが殺到』

『一方でベルカ州商品取引所では原油や天然ガスなどのエネルギー資源の先物価格が上昇基調です』

『ベルカ州政府は早急に事態収拾を行わなければ、影響がより拡大すると州政府報道官が発言しました』

「どうしてベルカ州の事案の影響でこっちにまで迷惑をかけてくるのは嫌な話ね」

ただ1つの州だけの政治的な問題ではない。
ベルカ州で何か問題が起きれば近隣州にまで影響が拡大している
今後の展開状況で何がどうなるか全く想像がつかないことが問題であるのだ

『南分署からSA34。南区北部区域サウスハーディー地区2番街の無人ATM荒しの現場状況はどうなっている?』

南分署からステラへ無線連絡が入ってきた。もしかしたら何か危険なことがあるのかもしれない。
ステラは現状をありのままに南分署に報告した

「すでに大部分の証拠品の回収は完了している。ただし現場鑑識については鑑識チームの派遣を待っている段階である」

『了解した。南分署現場鑑識チームは間もなく到着する。現場鑑識の監督はできるか?』

ステラは問題なしと回答して、鑑識チームと連携作業を行うと伝えた
南分署の無線交信を終えた時に中央本部から無線連絡が入ってきた

『中央本部からSA34。サウスハーディー地区2番街で発生した無人ATM荒しの現場ですが、警戒態勢に入れ』

「こちらSA34。無人ATM荒しの現場の現場確保作業は完了している。何か特別な問題があるのか確認したい」

南分署からではなく中央本部から無線連絡が入ってくるということは何か緊急事態が発生した可能性がある
確認作業をするとステラがいる現場付近にギャングに属するメンバーがいるとのことだ

『顔認証で照合したところ、南区を拠点に活動しているサウスサイドのメンバーである』

警戒するようにとのことだった。つまり彼らが何らかの行動を起こすのではないかと懸念しているのだ
少しでも問題行動を起こすようなら応援を手配。
この付近に危険分子が近寄れないようにしなければならない
安全確保には全力で対応することが最も優先事項なのだから

「了解。警戒のために応援を要請する。至急こちらに部隊を送り込むように手配を求める」

中央本部はすでに南分署にパトロール捜査官と刑事を派遣しているとのことだ
いつ何があるかわからないので緊張感を持って対応が求められる

『港湾本部から中央本部へ。クラナガン魔石燃料工場からフローレンス州の魔力精製炉発電所に魔石燃料棒を輸送する』

魔力精製炉発電所で使用される魔石燃料は低濃縮魔石燃料棒だ
魔石燃料棒の魔石濃度は低濃縮魔石燃料であるため、魔力爆弾は簡単には作れない
できるだけ安全確保を早期に行い、輸送になる障害になるものは除外したい

『中央本部から各員へ。クラナガン魔石燃料工場から魔石燃料棒の輸送が開始されている。警戒されたし』

クラナガン市内では基本的には鉄道は開かずの踏切になることを避けるために立体交差事業が完了している
主要幹線道路とはもちろんだが、鉄道運行本数が多い鉄道路線の大部分は立体交差工事が完了している

「こちらSA34。中央本部。こちらに影響が出る可能性が高いかのリスク管理を実施するように」

リスク管理を行わなければ危険すぎる。
いつ何が起きるか最悪の状態になる前に障害物は潰すことが必要である

『中央本部からSA34へ。イーストフローレンス基地の港湾パトロール飛行隊の部隊がベルカ州に向かう予定とのこと』

イーストフローレンス基地には第6航空軍が配置されている。
F/A-18Eが16機。FRX-00が16機が配置されている。そのほかにも様々なタイプの輸送航空機が存在する
クラナガン市の西側からの攻撃されないように防衛拠点とされている
さらにイーストフローレンス基地にはE-4Bが配置されている
この航空機は大統領専用機であり、空中作戦管制機でもある
空中で作戦指揮をするために必要な電子機器が搭載され、作戦指揮管制センターが設置されている。
ミッドチルダ大統領が搭乗することを考慮し、大統領執務室が確保されている。
基本的には大統領専用機であるエアフォースワンとともに飛行することになっている
もしも軍事的な作戦が行われる時にはこちらに乗り換えて行うことが多いため国防の要でもある

「いよいよどうなるかわからないわね」

『ベルカ州西部地方の魔力精製炉発電所での発電出力は引き続き0である』

『現在、ベルカ州西部地方と他の地方や州外の送電網とつながっている電力送電網は連結されていない』

ベルカパワー社は今の州内の停電範囲がベルカ州の他の地方に飛び火することを避けようとしている
もし飛び火すれば大きな問題になる。被害を少なくするためにもベルカ州西部地方は送電網を切り離す
それが通常の手順であるのだ


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中央区東部区域セントラルパーク 中央区域

エバックはセントラルパークで性犯罪者の追跡を行っていた
幼い男の子をターゲットにしている性犯罪者だ。
別に性的差別をするつもりはないが性犯罪は絶対に許されない

「こちらSA39。セントラルパークで逃走している性犯罪者の身柄を捜索中」

『こちらセントラル分署。現在こちらでも安全確保のために動いている。警戒態勢を維持せよ』

不審人物の名前はジャラドシ・バームス。年齢は38歳
フローレンス州北部地方の出身だ。時空管理局地上本部時代から何度も追跡されていた
現在はフローレンス州警察がある事件で容疑者候補として名前が挙がっていた
FBIが追尾している真っ最中である。エバックは厄介な事になったと感じた。
しかしすぐに公園での捜索を行った。まだ身柄が確保胃押されたとの報告は受けていない

『中央本部から各員へ。ベルカ州ベルカ基地から戦略爆撃機のB-52が離陸した』

もしかしたらクラナガン市内でも動きがあるかもしれないとして警戒するようにとの無線が入ってきた
市内にある聖王教会施設から何らかのアクションがあるのではないか
中央パトロールは危険予測をしていたのだ。リスク管理をする上では当然であるが
戦略爆撃機であるB-52には多くの爆弾を搭載することができる
クーデターを起こした連中を殺すことになってしまう。
だがそれがベルカ州の安全保障だけでなく近隣州の安全保障にも影響してくる
ミスは許されない作業の1つである。その時にラジオで経済・政治ニュース専門チャンネルで状況確認をしていた

『クラナガン市政府は退役時空管理局員への再就職を支援するために今後の方針を検討中と発表しました』

『退役時空管理局員が犯罪組織に加入することを抑制するために再就職支援は重要であるということです』

『どういうの事例はクラナガン市やミッドチルダ連邦だけでなく、次元世界連合の全加盟国でも問題になっています』

『退役時空管理局員が再就職できずに犯罪組織に加入することを抑制するために全力で対応すると各次元世界国政府は発表』

ただし、時空管理局時代に不正行為に関与していないことが確認された者だけであると発表していた
当たり前と言えばそこまでの話だ。不正行為に関与した者に再就職させるのは問題がありすぎる
できるだけ早急に身元確認を行って犯罪行為に関与しているのか、
それともしていないのかのどちらかを判断しなければならない

「時空管理局も聖王教会も大変だな。自分たちは身を削られるばかりで生き残る道はかなり少ない」

今後さらに時空管理局の規模が縮小されることは十分考えられる
次元世界連合は慎重な判断が求められている。加盟国も同じだが

『連邦エネルギー省は3月の原油採掘量が1日平均で7500万バレルでした。他次元世界国から1000万バレルは輸入』

次元世界国をつないでいる次元空間航行貨物船を利用することで、
無人世界や次元世界連合全加盟国で採掘された資源の輸出入の量はかなり多い
原油や石炭などのエネルギー資源だけでなく、
様々な物の輸出入のために次元空間を航行する貨物船は運用されている

『国内の3月1日平均消費量は8000万バレル。連邦政府は過剰の採掘は価格に大きく影響すると警戒しています』

しかしいつまでも放置するわけにもいかない。エネルギー資源の価格の安定供給は最も重要な課題である
少しでも資源供給が断たれるような状況になると国内の物価が上昇する
それを最小限にすることがエネルギー資源開発をしている企業と連邦政府の強調した行動で表せることができる

『魔力精製炉発電所からの電力供給に依存していました。今はAMF装置により電源分散のため火力発電所の建設が増加』

火力発電所が増加するということは発電で使用する石油・天然ガス・石炭などのエネルギー資源価格が上昇する
それは電力価格の上昇価格にも影響する。電力の安定供給は最も重要である
電力供給ネットワークにダメージを受けると影響の範囲や深刻さより一層拡大して大問題になる
最悪のシナリオを想定して対応しなければならない

『ベルカ州内で採掘された原油や天然ガスをマリネット州の港まで結ばれているパイプラインは安全に運用されていると』

ベルカ州とマリネット州はパイプラインを使って原油と天然ガスはパイプラインを使ってマリネット州に運ばれる
マリネット州商品取引所では原油や天然ガスなどのエネルギー資源の供給ルートは重要だ
ベルカ州の騒動のおかげでマリネット州商品取引所の原油や天然ガスの先物価格が上昇している
エネルギー資源の先物取引が活発に行われているので値動きの幅は大きくなっている
以前ならあまり動いていなかったのに状況は一変している

『連邦政府は石油や天然ガスの国内の供給に問題はないと発表。現在は安定供給ができていると発表しました』

各州にある州商品取引所では小さな噂1つで商品価格は変動する
だからこそ安定供給には最優先で取り掛からなければならないのだ

「本当に迷惑だな」

エバックはニュース報道専門チャンネルのラジオを聴きながらそう思っていた
彼の意見は誰もが感じていることである。迷惑でしかないことは確かなことなのだから
状況が動いてくると面倒になってくる。
そんなことにならないことを願っていても経済というのはすぐに変化する
良い方に進むときもあれば悪い方向に進む事もある。
被害を最小限にするためには問題を増やさないことが大切なのだ

『セントラル分署からSA39。セントラルパークで発見されたジャラドシ・バームスだが身柄確保が完了した』

警戒態勢の解除を許可するとのことだ。
いったいどこから逃げたのかはわからないがとにかく問題は1つは解決した
他にここや近隣地区で問題が発生することは嫌な話である
その無線報告を受けてとりあえずは何とかなったことに安心した
今後の捜査にエバックが関わることにはなるがそれはセントラルパークの地区パトロール事務所で捜査を行う


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中央パトロール本部庁舎 2階事務部首席事務官執務室

リーザ・コンパーノは1冊の報告書を見ながらため息をついた
その報告書の題名は『退役時空管理局員に対する捜査状況』と記載されていた
退役時空管理局員が在職時に何かの犯罪行為や規則違反行為を実行していないかの調査報告である

「時空管理局犯罪捜査局の捜査部門の人間は大変ね。これだけ大量の疑惑があるとなると余計に」

時空管理局犯罪捜査局が担当している案件は数万件にもなっている。
全ての疑惑に対する確認や捜査を行うには多くの人員と長い時間が必要であることは明らかだ
真実を明らかにするには長い時が必要になるのは当たり前のことではあるが難しい難題が数多くある
それだけに現場では毎日のように様々な疑惑が持ち上がり担当する件数は増加するだけだ

『ピーピーピー』

「リーザ・コンパーノよ」

『お忙しいところすみません。ベルカ州警察のボースック・レイスドです』

彼はクラナガン捜査局が編成される前、つまりクラナガン捜査部時代から研修を受けていた捜査官だ
今はベルカ州警察で捜査官をしている。優秀な男である

「久し振りね。あなたは元気なの?」

『こちらは忙しいですが何とかしています。実は調べてほしいことがありまして。お願いできないでしょうか』

彼の口調に何か危険な空気を感じ取った。危険な案件を抱えているのだと察知した。
だから捜査部門にすぐに連絡するのは危険だと判断してリーザに連絡してきたのだろう

「内容次第ね」

『聖王教会の過激派がどれくらいの勢力がベルカ州に展開しているかを確認してほしいのですが』

過激派のメンバー構成について調べるには諜報機関に確認することになる。
だが州警察の捜査官では簡単に情報開示をしてくれるとは思えない
だがリーザなら幅広いコネを持っているから難しいことではない

「それくらいなら州警察で把握していると思うけど、どうして私に?」

『今はベルカ州政府機能は連邦政府が発令した州緊急事態管理法が適用されているので連邦政府機関の権限が優先的に』

つまり州政府が独自に動くにはいろいろと制約があるので時間がかかることになる。
だが今はそんな余裕など存在しない。だからリーザに直接連絡をしてきたのだ

「わかったわ。少し時間は必要だけど問い合わせてみるから。結果が出たら連絡する」

リーザ・コンパーノの支援に感謝しますとボースック・レイスドは言うと通話を終えた
彼女はすぐに港湾パトロール安全保障局の知り合いに連絡した
諜報機関であるあそこは数多くの機密情報を持っている。
もちろんそれらの情報にアクセスするには理由が必要になるが、彼女には問題はなかった。
大量に貸しがある人材を知っている。情報を引き出す理由がはっきりしているなら難しいことではない

『リーザ・コンパーノから連絡とは珍しいな。外事情報分析部に何か用事とは』

リーザがコンタクトを取った人物は外事情報分析部に属する人間だ
部署の名前の通りで外部の犯罪組織や反政府組織などの情報収集と分析を行っている
つまりクラナガン捜査局の管轄区域内にあるあらゆる敵対組織の情報を持っている

「聖王教会過激派がベルカ州でどれくらい展開しているのか調べてもらえないかしら?」

『それくらいなら今すぐにそっちの情報端末に関連データを送れる。だが何に使うつもりなのかだけ知りたいところだ』

「ベルカ州警察にいる友人からベルカ州内でどれくらいの勢力が動いているか知りたいそうよ」

『聖王教会の問題はこっちでも重視している。何が起きるかわからないからな』

港湾パトロール安全保障局でも今後の流れはかなり読みにくい状況にあることは間違いない
今は何とか停滞している状況ではある。だがいつ急激に変わるかはわからない。
いつ状況変更になっても対応できるように用意をしているとのことだ
港湾パトロール安全保障局も状況を何とか読み切ることが求められることは間違いない
だが政治や経済の流れを読み切るのはかなり難しいことはわかっている
経済的な問題ではミッドチルダ連邦準備銀行が設定している政策金利が上昇基調にある
今は好景気なので経済の異常加熱を押さえることが重要で、さらに政策金利を引き上げるかもしれない
好景気がバブル経済になるようなことは止めなければならない。
そんなことは連邦政府や連邦準備銀行もわかっているが難しいところであるのは事実だ

「ベルカ州内ではかなり危険な状況が続いているの?」

『リスクが高すぎるほどにな。こちらでも何が起きるかわからないから苦労している』

聖王教会の過激派がどの程度の規模なのかはある程度はわかっているが詳細な情報はまだ分析中だ
すぐに分析結果を明らかにすることは難しいが何とかしなければならない
警戒態勢を維持するには連邦機関の法執行機関だけでなく、ベルカ州政府行政機関の法執行機関も絡んでいる
常に警戒しなければならないことは多くの関係者がわかっている

「今後のことを考えるなら当然の判断ね。でも問題はいつまでそれが拡大し続けるか」

聖王教会の問題が拡大して膨大な数の不正行為が確認されたら、
それらを全て調べるには時空管理局が行っていた不正行為の調査と同じで長い時間が必要になる
調査のための時間が長期間にわたると真実を闇に葬られることになるだろう
真実を明らかにする頃には証拠がすべて消されていることも想定されてくる
捜査はまさに時間との戦いである。素早くスムーズに捜査を行わなければ証拠だけでなく関係者が逃亡する
真実を立証ができなくなるだけだ。そんなことになるのは防がなければならない
迅速な対応が求められることは確かな事実である

『こっちでも得られた情報の分析を行っているが時間が必要だ。港湾パトロール海兵隊には常に最新情報を提供している』

「今わかっている範囲で敵の人数は?」

『通信傍受から得られた情報によると100人ほどの魔導師で構成されている』

これは今わかっている範囲の情報であるため正確な数字はわからないとのことだ
いつ何が起きるかわからない状態のベルカ州はまさに弾薬庫のようなものであることは間違いない
リーザは何か危険な情報があったらこちらにも提供をと伝える。
そして港湾パトロール安全保障局との通信を終えた

「ベルカ州政府は大変ね。州内の権限の大部分は連邦政府の管理下にあるから」

ミッドチルダ連邦政府の権限が優先的に処理されていく。
つまりベルカ州政府の権限は少し後回しにされることを意味している。
今後のことを考えると何らかの政治的問題に発展する可能性は極めて高い。
聖王教会は国際組織であるが、次元世界連合は公式には認めていない。
今は審議中の真っ最中である。次元世界連合の管理下の中ではある程度は国際組織として機能するが
以前のように自由に権力を振り回すことはできない状況にあることは間違いない

「聖王教会の財務記録を調べてみましょう」

中央パトロール本部事務部のトップである首席事務官である彼女はさまざまな情報にアクセスすることができる
今後のことを考えると今の聖王教会の情報を確認するのは必要不可欠である
聖王教会の財務関係で最も問題なのは聖王教会が発行した債券だ
問題の最初の原因はJS事件が発端であった。
今までの聖王教会が自治を行っていたベルカ自治区内で数多くの違法行為を行ったことが発覚。
さらにベルカ自治区が週に移行することになり、ミッドチルダ連邦政府は州政府を立ち上げた時。
民主主義の大原則による選挙を行った。州政府がある程度形になったところで聖王教会の内部調査を実施
過去に様々な不正行為に関与していたことが発覚したので聖王教会債が債務不履行になるのではとなった。
最終的には聖王教会債が金融市場で売りが殺到。聖王教会債の債券取引価格は暴落した
今は聖王教会が債券市場で大幅に寝下がった聖王教会債を発行元である聖王教会が購入
何とか危険な状況になることを抑制することができている。すでに聖王教会は全体の9割を回収している
残りの1割については聖王教会が債券購入のための資金が容易できたらすぐに購入して償還する
聖王教会債の問題についてはとりあえず何とかすることができるだろう。
最大の問題は今後の聖王教会を運営するために必要な資金をどうやって確保するか
JS事件が起きる前までは聖王教会の関連企業や教会に信仰心を持っている者からの寄付金が大部分を占めていた
だが関連企業はすべて売却してしまった。そこから資金獲得することは難しい
さらに聖王教会の信仰者からの寄付金も減少している。これにより教会の財政は極めて厳しい状況である

「誰かが手厚い支援を受けないと聖王教会は危険なことになってくるわね」

リーザ・コンパーノも中央パトロール全体の事務部の最高責任者だ
彼女が行う業務は多岐にわたるのでいろいろと調整役などをしている
特に中央パトロールの予算関係に関して多くの管轄権がある。
さまざまな部署からの予算要求に対して調整することはかなり苦労する激務の1つである

『ベルカ州政府は西部区域に対する電力供給の停止について、州内の他の地域に安定供給するため遮断していると』

『クーデターを起こした勢力が発電所が運転停止中の影響が大きいとしています』

『また西部区域の電力供給を切り離しているのは、他の区域にも影響が出ないようするためであると州政府報道官が発表』

「しばらくは送電は止められるわね」

ベルカ州西部区域には石炭鉱脈やニッケル鉱脈や魔石鉱脈がある
ベルカ州にとっては重要な産業の1つである。資源エネルギー開発を数多くの企業が行っている
もちろん環境に配慮して自然環境に汚染が出ないように配慮することが資源開発をするための条件である
連邦法で資源開発について厳しく定められている。
少しでも違反したら資源開発の権利を失うという厳しい罰則がある

「ウエストベルカ水力発電所が機能停止になっていることは大きな問題になる可能性が高まるだけね」

ウエストベルカ水力発電所。発電能力は最大2000万KWにもなる
ウエストベルカ魔力精製炉発電所が停止しているだけでも問題なのにウエストベルカ水力発電所も機能停止中
再起動させるには水力発電所は水門を開けるだけですぐに発電を開始することはできる
だが魔力精製炉発電所は魔石燃料の発熱反応をコントロールするため制御棒をゆっくり引き抜くことが必要だ
つまり魔力精製炉発電所の発電能力がフル稼働させるのに時間がかかる
簡単に再起動はできないので面倒なのだ。電力の需給バランスのコントロールが必要になる
そういった関係からコントロールすることは電力会社は調整作業に苦労するのだ

「こっちにまで影響が出ないと良いけど」

『ベルカ州証券取引所では平均株価が急落。ベルカ州を主に営業範囲としている金融機関にも影響が出ています』

『州政府は緊急時に備えて金融市場に資金を提供する用意に入っています』

ベルカ州内で金融危機のような状況になることを避けなければいけない
最初は州内だけの影響で済んでいる。しかし経済状況というのは常に変わるものだ
長期にわたって影響するような経済問題になるとミッドチルダ連邦全域に影響が出ることは間違いない
そうなれば簡単に物事を解決することはできない

「とりあえず来年の予算の見積もりをしないといけないわね」

すでに中央パトロールの各部署から来年の予算に関する要求を受けていた
来年の予算要求は今年の予算金額とそれほど大幅な上昇していない
今年の予算は80兆ミッド。来年の予算要求額もほぼ同じ額になっている
クラナガン捜査局は予算の金額は昨年までは上昇し続けていたが、今年からは大幅に増えることはない
今まではシステムやネットワーク網の構築のために多くの予算が必要だった
だがそれも去年までの話だ。今は維持のための予算を求めることが基本となっている

「各分署からの予算要求は去年より少し減少したわね」

各分署や部署からの予算要求は高まることはなくなった。
昨年よりも減少したのだ。人件費は安定している。
システム運用のための予算要求が中心になっている

『ラクロス州商品取引所で原油先物価格が1バレル6000ミッドにまで上昇。現在国内全域で原油価格が上昇しています』

いよいよ危険になるかもしれない。ラクロス州はクラナガン市の南側にある州である
ラクロス州でも数多くの原油採掘が行われている。今後のことを考えると原油価格の安定化は重要に。

『国内全域で州商品取引所の原油先物価格は上昇基調にあります』

『一方でラクロス州政府は州債の発行について検討していることが分かりました』

『州政府関係者によると州債の発行予定金額は10兆ミッドを基本としている』

今の州内の好景気がバブル経済になることへの抑制するためであり、
金融政策で金融引き締めに利用するためである。
ちなみに国内すべての州政府では時空管理局が数多くの権限を持っていた時、
時空管理局からかなり厳しい予算要求を受けていた。今は大幅に削減されている
州警察などの組織編成に予算が多く必要かと思われていたが実際は大幅に減少することができた
今年からは州政府の予算は大幅な黒字になっている。時空管理局が予算を持っていた時とは大違いだ

『ラクロス州証券取引所では平均株価は資源エネルギー開発企業の株価を中心に大きく上昇』

『州政府が発行しようとしている州債ですが、金融市場で買い注文が多くあると思われます』

金融市場では新しい金融商品である州債の取引が激しい値動きすることは間違いない
銀行や投資会社などの金融機関は新しい運用先として州債や連邦政府が発行する国債などが重要になる

『国内の金融市場では資金運用先として州債や国債などに多額の資金が動いています』

時空管理局債が無くなったことで新しい投資運用の目的のために、
次元世界連合全加盟国が発行した国債などの金融市場にかなりの資金が流れている
多くの次元世界国では今まで時空管理局にかなりの予算要求を受けていた
しかし今は時空管理局の予算は次元世界連合の管轄になっていた
各次元世界国政府の国防や警察管轄権に関しては返還された。
JS事件前よりも大幅な予算要求を求められていないので財政的には比較的余裕がある

「金融市場はかなり値動きが激しいわね」

今後の展開次第ではその州だけでなくクラナガン市は国内全域に影響する
もし加熱投資の影響で大きく金融市場で影響してくることは日常的にある
急激な値動きは大きな問題になることは容易に想像できる。
影響を最小限にしなければ石油製品の値動きが行われる
ラクロス州内には豊富に石油が埋蔵されている。
ラクロス沖油田やウエストラクロス油田やサウスラクロス油田がある
豊富に埋蔵されているので原油価格が急上昇することは少ないはずなのだ。
しかし現実にはラクロス州商品取引所の原油先物価格は少しずつ値上がりしている
ラクロス州でも同じではあるが、時空管理局員の大量リストラと時空管理局の規模が大幅縮小された影響は大きい
現在は大量リストラされた退役時空管理局員の再就職を促進するために州政府はいろいろな政策を行っている
しかし州内の企業では機密情報が漏洩するのではないかという懸念から再雇用の道は厳しい
少しでも問題を抱えているとされている退役時空管理局員は再就職は極めて難しい段階にある

「それにしても毎年予算編成をするのにいろいろと利害関係が絡んでいるから苦労するわね」

クラナガン捜査局の予算はクラナガン市だけでなく近隣州政府が港湾パトロールの予算を一部負担している
これも安全保障の上では重要なことであるため近隣州政府は容認を続けている
反対の動きを見せる勢力はそれほど多くはいない。
港湾パトロールの部隊が駐屯していることで州内の安全性が確保され、大騒動の前に止めることはできる
そのように機能しなければ駐屯している意味は全くない。だから港湾パトロールの基地と部隊が存在する
配置されている地域の州政府にとっては安心できる材料になる
中央パトロールの各分署や部署の予算編成をする際に事務部でそれが本当に必要なのかを審議する
必要ではないと思われる予算要求項目は編成対象にならない。
クラナガン市民が汗水流して得た収入から収められた税金から編成されるので、
中央パトロールの予算編成には厳しく審査しなければならない
それが事務部がまずは予算編成を行うことになっているので難しいこともある
事務部だけでは判断ができないこともあるので、そういった予算編成については上層部の審議を求める
それが通常の手続きになっているのだ。少しでも予算額の圧縮は最大の課題である
低予算で最高な働きを見せることが重要なのである。それがクラナガン捜査局では最も重要視される

「とにかく来年の予算編成をまとめないと」

リーザ・コンパーノ首席事務官はそういうと予算編成のための作業に入った


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東区南部区域キャロル地区1番街2丁目 建設現場 不発弾発見現場

エルガは不発弾の状況を証拠写真として撮影すると一定の距離を保って待機していた
もし何かの衝撃で爆発したら危険だからである
何があろうと被害を最小限にすることが求められるのは当然だ

「早く処理チームが来てほしいが。まだなのか」

エルガはあまり良い気分を感じているわけではない。
いつ爆発するかわからない不発弾の監視任務など、緊張した空気が流れる現場であることは間違いない

『中央本部からSA12。まもなく処理チームが到着する。不発弾の無効化が完了するまでの指揮権をSA12に移管する』

中央本部は何か問題になるようなトラブルが発生した時、
エルガが迅速に指揮命令を行うことで影響を最小限にするつもりなのだ
つまり責任を押し付けてきたということと同じである。面倒な話ではあるが

「了解した。何か異常が確認されたら中央本部に連絡する」

エルガは中央本部との無線交信を終えると警戒のためにこの辺りにいるパトロール捜査官や刑事たちに命令した
とにかくこの近辺から人払いをするようにと。クラナガン市民にけが人や死者を出したら大変だからだ

「SA12から東分署。東区南部区域キャロル地区1番街での不発弾案件だが人払いは完了しているか?」

『退避エリア内に市民はいないと思われる。警戒活動は不発弾処理が行われるまでは続行する』

「SA12の指示があるまで市民の立ち入りは一切禁止しろ。こちらが許可を出すまでは避難指示を継続するように」

エルガは市民にけが人が出ないように最大限の警戒を行っていた
そこに爆弾処理チームが到着した。彼らは素早く不発弾の無力化の作業に取り掛かった
いつ爆発するかわからないのだから、早急に無力化にして運び出さなければならない
こういった作業はクラナガン市内では何件もあったのでクラナガン捜査局に属する人間なら慣れていることだ

『中央本部からSA12。不発弾処理が完了するまでは引き続き警戒態勢を維持せよ。危険な兆候があれば緊急連絡を』

危険な兆候というのはマスコミなどが集まって立ち入り禁止エリア内に民間人がいることだ
マスコミの報道によって不発弾処理作業が妨害されることは避けなければならない
中央本部はもしかしたらということを危惧しているのだ

「こちらSA12。退避エリア内には今のところ民間人は確認されていない。しかし継続して警戒活動を実施する」

『警戒態勢を維持せよ。何か問題ができそうならすみやかに連絡するようにするように』

「了解した。引き続き警戒態勢を維持する」

不発弾は今のところは危険性は確認されていない。
だがいつか何か動きを見せるかもしれないのでここで待機して見張りを続けるのは極めて危険性が高いことでもある
念のため熱観測装置を使って不発弾の状況確認も行っている
熱が発生すると不発弾が起爆するかもしれない。警戒しなければならないのだ

『東分署からキャロル地区事務所。不発弾処理に時間が必要になるかもしれないので要警戒』

『こちらキャロル地区事務所。現在、SA12の指揮下で行動中。ただし危険である状況であることが分かれば即時対応を』

東分署とキャロル地区パトロール事務所との通信を傍受して、
エルガは今後の行動についてどのような指揮命令を出すか考えていた

「SA12から中央本部。現在の不発弾に目立った行動が行われていないことは間違いない」

だからと言って警戒解除は危険すぎるとエルガは中央本部に伝えた
今は目立った動きを見せていないがどうなるかは全く想像できない
慎重に状況判断をしなければ自爆するかもしれない。
エルガは自分だけがまきこまれるなら良いが、不発弾が爆発したら近隣の建物も破壊されて人々の財産を破壊する
そんなことにならないようにするのが今のエルガの任務である

「SA12からSA11。応答を」

エルガはラジェットに無線で呼びかけた

『こちらSA11。不発弾の案件で何かトラブルか?』

「今のところは冷静な状況が続いているが何が起きるかわからない。SA11は機動六課組の移送について警戒態勢を」

エルガはもしかしたらこの不発弾が陽動作戦のために置かれたのではないかと考えていた
それが正解であるという確率は低いが可能性を検討するなら当然考慮するべき内容だ
情報をラジェットに伝えることで彼の安全にもかかわってくる
仲間を失うことを避けるためにも情報共有は必要なことであることはわかっていた

『情報提供に感謝する。SA12も警戒しながら対応しろ。不発弾で自爆することがあるなら即時退避を行え』

ラジェットの言葉はエルガは言われなくても理解している。
不発弾処理を行うには爆弾がある地区から市民を避難させることが求められてくる
万が一ということを想定しての判断だ。最悪のシナリオを常に想定して行動することが大原則なのだ

『東分署からSA12。3名の男性が立ち入り禁止エリア内にいるため、退避を行うように』

3名の男性が何の目的で立ち入り禁止エリアに入ったのかを確認しなければならない
不発弾処理のためには完全に法執行機関の職員しか立ち入ることを禁止している
港湾パトロールの不発弾処理は優秀であり、今まで不発弾が無力化作業で失敗したことは1度もない
ちなみにミッドチルダ連邦の国内には大量の不発弾があることはわかっている
だからこそ時空管理局地上本部が不発弾処理を行ってきた。
最近になって分かったことだが過去に何百件もの不発弾の無力化に失敗したことが証明された
次元世界連合の時空管理局調査委員会によると処理にあたっている途中で、
時空管理局員が不発弾の処理に失敗して死傷者を出していることもあった
今は国内の不発弾の処理はクラナガン捜査局の基地がある州内では港湾パトロールが担当
そのほかの国内では連邦軍が不発弾の無力化にあたっていた

「不発弾の無力化を妨害するためか。もしくは・・・」

エルガは最悪の方向に進むのではないかと予想していた。
不発弾を誘爆させるために侵入してきたのかもしれない。

「SA12からキャロル地区事務所。不発弾処理のために立ち入り禁止エリアに3名の男性が侵入している」

捜索するようにエルガは命令した。今は彼らに捜索してもらうことにした
エルガは不発弾がある建設現場の監視作業を継続して続行した


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南区北部区域ビューロー地区1番街3丁目 クラナガン市政府第3合同庁舎 61階クラナガン市長執務室

「石油を含む資源エネルギーの先物価格が急上昇していることは問題ね」

サンディ・マウント市長は首席補佐官をしているクロウ・フォードはあることを危惧していた。
それは市内の自動車燃料価格が一時的に上昇することを不穏な状態になるのではないかである

「クラナガン市はもちろんですが、近隣州の州商品取引所の資源エネルギー価格に大きな動きがなければ良いです」

クロウ・フォードの考えていることはサンディ・マウント市長も同じことを想定していた
もしエネルギー資源価格が不安定になると市内のエネルギー供給に大きな影響が出るかもしれない。
最小限にするには安定供給が継続的に行われることを投資家たちにアピールすることが重要だ
サンディ・マウントは経済ニュース専門チャンネルでテレビ報道を見ていた

『サーストンペトロリアムがガラックス島で採掘している原油について商品市場に影響が出ないようにしたいと』

サーストンペトロリアムはノースクラナガンコンビナートの沖合に1kmから20kmにあるノースクラナガン油田
それとサウスクラナガン港の沖合300kmにあるガラックス島油田で石油資源開発をしている。
この2か所の石油資源開発はクラナガン市だけでなく近隣州にも供給されるので重要な場所である
もしこの2つから一時的でも石油供給が途切れるとクラナガン商品取引所の原油先物価格は上昇する

「最大の課題は退役時空管理局員の問題ね」

大量リストラされた退役時空管理局員の毎日の生活費の確保ができているかを確認することは重要だ
市政府に生活保護を申請する者がどれくらいの人数になるかの確認も並行して行っている
退役時空管理局員の多くがクラナガン社会保障局に生活保護の申請をしていた
リストラされた退役時空管理局員はほとんど退職金を受け取ることができなかった
そのため毎日の生活に困窮している状況が進んでいる。
一部の退役局員は過去の優雅な生活が忘れることができず、
犯罪で得た金を使って裕福な生活状況に戻ろうとしている者も存在する

「連邦政府と連絡を密にして退役時空管理局員による大規模テロ行為が発生することを考慮に入れてシナリオ作りを」

『スタントン州で採掘されている石油先物価格がスタントン州商品取引所では大きく上昇しています』

『1バレル7400ミッドに上昇。今後さらなる上昇からスタントン州政府は備蓄石油の出荷を用意をしていると』

『今後の展開はどうなるかわからないためスタントン州政府は最大級の警戒をするとのことです』

スタントン州内では2つの地域に豊富に油田が埋蔵されている
もちろん天然ガスも埋蔵されていることから資源開発が行われている
スタントン島の北部と南部に豊富に石油と天然ガスが眠っていた。
積極的に採掘され始めたのは少し前、つまり10年程前からだ。
以前はノーススタントン魔石鉱脈で魔石燃料に使うための魔石の採掘事業の方が頻繁に行われていた
現在も採掘が行われている。スタントン州には連邦軍の基地が存在している
連邦海軍・連邦海兵隊・連邦空軍の3つ軍事部隊が同じ基地を利用している
クラナガン市の東側を守っている。スタントン州には数多くの海賊のような武装勢力が存在している
だからこそ連邦軍は常に警戒している

『スタントン州政府は州内の安全保障のために連邦軍に州内の警戒を最大限対応してほしいと要請』

『また今まで時空管理局からの予算要求に応じて州債の発行残高が40兆ミッドになっていました』

時空管理局の治安維持に必要なかなり無茶な予算要求が無くなったので財政赤字から黒字に転換していた
今後は州債を発行する必要が少ないことも明らかになっている
スタントン州では海賊行為を行う連中が多く存在した。
今は連邦軍は州警察などのさまざまな法執行機関により多くの海賊などの犯罪組織は大幅に減少した

「当然ね。スタントン州はただでさえ海賊行為が多発しているから当たり前だけど」

スタントン州の安全が無くなると大きな問題になることは間違いない
最悪の場合はクラナガン市にまで影響してくるのだ。
以前はスタントン州政府は港湾パトロールの部隊配置が検討された
だが当時のスタントン州知事は退役時空管理局員であることからそれを拒否した
3年前に州知事選挙で圧倒的多数で退役港湾パトロール海兵隊員のレイス・トーラットが圧倒的多数で当選
32歳の女性で選挙に立候補する前は港湾パトロール海兵隊員で退役前は中尉をしていた
彼女は港湾パトロールの部隊配置のための基地設置は今も断っている
安全保障のプロフェッショナルであった。州議会の上下院ともに平和党が半数以上の議員だ
ただ、平和党の州議会議員であってもそれぞれが持っている心情は異なる
政党に属するからと言っても、同じ政党の議員だとしても考えは異なるものだ
ただし無線中継所やレーダーシステムなどが設置されている。
ここで観測された情報は港湾パトロールだけでなく連邦軍にまで提供している

「スタントン州知事も大変ね」

サンディ・マウントも退役港湾パトロール海兵隊員だ。
所属していた部隊や階級は異なるがともに数多くの戦場で戦いを続けてきた
それだけに情報共有は常に行っている。クラナガン市はスタントン州などの近隣州として常に連携している
何か少しでも異常なことが確認されたら警戒しなければいけない。
今は可能性である段階だが何が起きるかは全く見当もつかない。

『スタントン州議会は退役時空管理局員の再就職支援のために資金提供をするか州議会で討論を行った』

『州上院議員の50議席に対して賛成したのは24人だけ。州下院議員の100人のうち賛成したのは45人』

可決に必要な半数以上の議員に満たされなかったので、議案は否決されることになった
スタントン州議会においても退役クラナガン捜査局員が組織した政党である平和党が過半数の議席を確保していた
スタントン州知事であるレイス・トーラットも退役クラナガン捜査局員であることから、
スタントン州議会で州知事が求めた政治的判断した議題に関してはほとんど州知事は議会を通過した後は署名していた
拒否権の発動をすることは今までそんなことはなかった。
だが軍事関係の問題については州議会も難しい判断が必要になる
同じ政党に属しているからと言ってすべてに賛成するわけではない。
州議会議員にもそれぞれ自らの判断を行って自決権をこうしすることは多い

「問題があるのはどこも同じ。次元世界連合全加盟国でも時空管理局の大量リストラの影響を受けているから」

大量リストラによって時空管理局の規模は大幅に縮小されて権限も限定された。
これにより時空管理局は基地施設の大幅圧縮が行われている真っ最中だ
次元世界連合時空管理局改革委員会や時空管理局監視委員会により彼らの活動に厳しいチェックが行われている
今後どうなるかは検討もつかない。この時空管理局の改革で効果がどれだけ出るのかは長い時間が必要だ

「クラナガン捜査局に市内の安全確保を最優先にしてほしいことを要請して」

クラナガン市のトップであるクラナガン市長として市民の安全を守ることが職責である
必要ならあらゆる行政機関に指示を出すとともに連邦行政機関とも連携することが必要になるなら、
市長として権限を行使して支援要請をすることを求めると彼女は話した

「市内で時空管理局や聖王教会に関係するトラブルが起きないかの警戒監視を続けなさい」

サンディ・マウント市長はそう指示すると市長首席補佐官のクロウ・フォードはわかりましたと答えた
そして市長執務室を彼は退室していった

『スタントン州議会議員はまだ次元世界連合の時空管理局に対する内部調査が終わっていないことが問題だと』

『州議会議員は時空管理局の不正行為の調査が終わるまでは州の予算での再就職支援はできないとのことです』


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ベルカ州中央地方ベルカ市郊外 聖王教会本部 教皇執務室

カリム・グラシアは教皇になってからというもの、聖王教会が極めて危険な状況にあることを把握していた
財政的なものはもちろんではあるが。聖王教会が自治権を握っていた際には数多くの犯罪行為を見逃していた
真実を知った彼女はあまりのことに驚いていた

「本当に大変ですね」

カリム・グラシアの補佐をしてくれているシャッハ・ヌエラも状況の悪さにこう表現するしかなかった
確かに今の聖王教会の状況はさまざまな状況で危険である。今後の行動次第でどうなるかは検討もつかない

「次元世界連合からの調査がこれから行われます。彼らからの調査は厳しい視線を浴びながら受けることになると」

シャッハは次元世界連合に派遣している聖王教会の連絡担当官からの報告があったと伝えた
疑いようのない事実であることははっきりしている。
今後の対応方法を考えるためにも最新情報を入手することは当然である

「今は次元世界連合の監査に対して適切に対応を。拒否をすると余計に何かを隠していると思われるから」

カリムは今の聖王教会の状況を十分に把握していた
今は何も抵抗するようなことを見せないことが聖王教会が存続し続けるためには重要である
もし何らかの調査に抵抗すれば大きな問題に発展することは間違いない。
トラブルになることを避けるためには次元世界連合による監査や調査などを素直に受けなければならない

『次元世界連合安全保障理事会が承認した聖王教会への強制捜査について、聖王教会の連絡担当官は最大限の協力をすると』

カリム・グラシアが次元世界連合のオブザーバーとして派遣している連絡担当官に、
今の状況を考えた上で次元世界連合や関係法執行機関に対する強制捜査の受け入れの結果を伝えていた
そのため聖王教会への強制捜査に抵抗することはしないとマスコミを通じて発表していた

「ですが、わずか数か月でここまで状況変化があるとは驚きですね」

シャッハ・ヌエラの発言はカリム・グラシアも同じことを考えていた
まるで事前にした準備ができていなければ簡単に事が進む事はないはずなのに世界情勢は大きく変化した
時空管理局の規模が大幅縮小されて管轄権限もかなり無くなった。聖王教会も同じような状況にある
今後の対応を少しでも読み違えるとどうなるか急激に危険な流れ手に巻き込まれることはわかっている
だからこそ警戒しながらも次元世界連合安全保障理事会が採決して可決された内容に、
全面的に協力することをすべての聖王教会の関係者に通達を出していた
拒否反応を1件でも見つけたら大きな影響が出てくる。良い方向ではなく、悪い方向にではあるが

「聖王教会本部にいる関係者には次元世界連合や法執行機関からの調査には全面的な協力を指示して」

カリム・グラシアの発言にシャッハはわかりましたと言うと教皇執務室を退室した
執務室からシャッハが退室したのを確認すると大きなため息をついた
今後どのような調査を受けるかはわからないが、協力しなければ敵対組織と認定される可能性もある
そんな事態にならないことが今は優先されるべきである

「本当に苦労する案件ではあるけど。ここを乗り切れないと教会が国際機関であることを認知してくれないわ」

カリム・グラシアは今の国際関係を十分に理解していた
聖王教会の立場もあまりに危険であることももちろんではある。
自らの判断を少しでも危険な方向に進む事になることもだ。
聖王教会が存続できるかどうかの境目であることはかなり覚悟していた

「ここまで急激な流れが変わるなんて誰も想像できていないでしょう」

カリム・グラシアは教皇執務室から外の風景を眺めながら考えていた


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中央パトロール本部庁舎 10階捜査長官執務室

ユウ・ミズノ捜査長官は自らの執務室に戻るとすぐに安全保障問題補佐官のイーサ・フィエルが報告をした

「安全保障理事会で可決された聖王教会の強制捜査とベルカ州で発生したクーデターに対応する部隊を展開中です」

今後の港湾パトロールの部隊運用について協議を行うなら、
敵対勢力についての情報収集は最優先することは当然である。

「クラナガン市への影響は現時点では出ていませんが、ベルカ州産の農作物の供給が断たれることは危惧するべきかと」

クラナガン市民の食を支えているのがベルカ州である。
すでにベルカ州商品取引所では穀物価格が少しずつ値上がりしている
クーデターの問題が解決しない限り、クラナガン商品取引所で先物価格が上昇基調であることは止まらない
さらにクラナガン商品取引所の石油や天然ガスや石炭などの資源価格の上昇も想定される
影響が広がり続けることを止めることが重要である事は政治家や法執行機関の幹部は把握している

「ベルカ基地に駐屯している港湾パトロール海兵隊が輸送機でベルカ州西部地方に向かっています」

フローレンス州東部地方にあるイーストフローレンス基地からも港湾パトロール海兵隊が輸送機で向かっている
ベルカ基地には5000人の部隊が配置されている。イーストフローレンス基地にも5000人が配置されている
全ての隊員を送ることは難しいが、一定の人数を派兵することは比較的容易にできる

「今はマスコミも盛んに報道していますが、クーデター勢力も動画配信サイトな度を利用しています」

動画配信サイトからはクーデター勢力が政治的権限を握るからこそ、
ベルカ州内に平和で安定した自治ができると自らのクーデター事案を正当化している
彼らにとってベルカ自治区で聖王教会が権限を握っていたからこそ好き勝手にすることができたのだ
甘い汁の供給が突然シャットアウトされたら、利権を持っていた連中にとっては死活問題だ

「問題は聖王教会の内情です。カリム・グラシアが教皇に就任しましたが組織運営をする影響力は期待できません」

「当然だね。カリム・グラシアはクリーンな人間だから利権をむさぼっていた連中からしてみれば邪魔な存在」

ユウ・ミズノ捜査長官は彼女を教皇に就任させたのはただのパフォーマンスだけであることは理解していた
彼女に聖王教会全体に影響力があるのかと質問したら政治関係を分かっているなら、
聖王教会全体にそれほど影響力がないことは明らかである

「今は沈んでいるけど、強硬派が力を取り戻したら傀儡としてしか見ないだろうね」

聖王教会での利権という名の甘い汁を取り戻すことは難しい
政治権限はベルカ州政府に移管されている。
ベルカ自治区時代は主に聖王教会と関係があった人物の多くが暮らしていた
JS事件後は聖王教会に多くのトラブルが発生。また関係者が次々と逮捕されていった
トラブルの主な内容は麻薬や銃火器などの違法密造や密売だ。
ベルカ自治区時代は聖王教会の幹部に金を渡すことで麻薬や銃火器の密造のために裏で手をつないでいた
だがJS事件後はそれらの行為を行っていた人物は次々と逮捕された。
彼らは今現在、裁判を待つために拘置所に収監されている
ベルカ州裁判所で裁判が行われたらおそらく長い刑期が待っているだろう

「聖王教会に関係するトラブルが多発することを想定して、市内の聖王教会施設の監視を強化するべきかと」

クラナガン市内には数多くの聖王教会施設があったが教会が財務問題が多くなってから、
多くの土地建物などの不動産物件の売却が進められている
聖王教会は運営資金確保に必死なのだ。このままでは聖王教会の財務が悪化して、
国際組織としての立場は失われて聖王教会そのものが破産することになる

「国際組織が破綻すれば、その影響がどこまで拡大するか。万が一に備えてのシナリオ作りは進めています」

イーサ・フィエルは万が一にあらゆる事案に対応できるように準備をすることが重要である事はわかっている
何があるかわからない以上、対応方法などのシナリオ作りをしておくことは重要である

「イーサ。次元世界連合と連邦政府機関と連携してクーデター騒動について対応シナリオ作りをしておいて」

ユウ・ミズノ捜査長官は指示を出す。イーサ・フィエルはわかりましたと言うと捜査長官執務室を退室した
彼はこの後に待っているであろうはずのトラブルがどれほど発生することになるかを考えると頭痛の種にしかならない
素早い対応が求められているが、実際はそれは極めて難しいのが現実なのだ
彼は執務机にある情報端末を使ってニュース専門チャンネルによる報道内容を確認した

『ベルカ州政府は州西部地方にある魔力精製炉発電所などの発電施設が陥落しているが州内全域の停電にはならないと』

『ただし州西部地方の送電網と他の州内の送電網とは切り離していると発表』

停電の影響が州内全域にはならないと州政府報道官が発表していた。
もし停電が州西部地方以外にまで発展すればベルカ州内の経済影響は大きなものになる
今はそれをさせないようにするために州西部地方の送電網と他の州内送電網から切り離すのは当然である

『ベルカ州商品取引所でノースベルカ原油先物価格が急上昇。1バレル9000前後で一進一退の状況です』

『これについてベルカ州内で資源開発をしている企業と州政府で会議を実施することが分かりました』

石油などのエネルギー資源価格の急な変動は経済に大きな影響が出てしまう
最小限にするためにミッドチルダ連邦国内では資源開発企業と州政府はエネルギー安定供給を行うため、
エネルギー資源の安定供給などに関する連絡会議を行っている
もしエネルギー資源価格の安定供給が途絶えると州内の経済影響が大きなものになる
AMF装置がJS事件によって広がったことが影響して魔力精製炉発電に頼ることは極めて危険である
そのため頻繁に国内の各州で資源開発企業と安定供給を維持するために会議をしている
特に電力会社と州政府との連絡会議は供給が不安定な州では定期的に開催されている

『ベルカ州政府は州内で資源開発や電力供給を行っている企業との連絡会議を行う』

「ベルカ州政府も最悪の事態を想定して動いていることは間違いないね」

『電力供給の安定を主な議題となると思われますが詳細なことについては会議終了後に発表するとのことです』

ベルカ州内の電力供給は主に州政府が出資しているベルカパワー社が送電網の管理を行っている
もちろん発電所もベルカパワー社が持っている。ただし送電網を発電を専門にしている企業に利用できる
もちろん自社で送電網を持っている電力会社もあれば、
他の電力会社が運用している送電網を借りて発送電をしている電力会社もある
送電網を保有しているからと言って他の発電所を保有している企業に送電網を利用させないのは連邦法違反だ
連邦電力系統開放法では一定の送電網利用代金を支払うことでその企業が運用している送電網を利用できる。
そのため発電だけを専門にしている電力会社があるのだ。
電力会社と契約する時に送電網と発電所の2つを保持している場合はその電力会社の身に電気代を支払うだけで良い
ただし発電所だけを保有して送電網を持っていない電力会社と契約する時は2つの契約を行う
まずは発電所の運用を行っている企業と契約を結ぶ。さらに送電網と発電所を持っている電力会社とも契約する
2つの電力会社と契約することで発電だけを行っている電力会社の供給が停止しても、
発送電の2つを持っている電力会社と契約することで安定供給を受けることができる。
もちろん発電を専門としている電力会社と契約して、その発電所の保有会社からの送電が停止することは少ない
基本的には安定的に供給されるので、送電網を保有している電力会社の発電所から送電を受けることが時々ある
例えば発電専門の電力会社を利用できないのは、契約している発電所の定期点検中だけがほとんどだ
そういった時以外は発電所だけを運用している電力会社からの送電を受けて利用している


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ベルカ州中央地方ベルカ市中央区 ベルカ州政府庁舎 会議室

そこではベルカ州内で電力の初弾や送電を行っている電力会社との会議が開催されていた
この会議にはベルカ州知事や州政府の主要幹部が集まっていた。
もちろん州内で電力会社の連絡担当職員も参加している

「皆さん。西部地方からの電力供給はブラックアウトになることを避けるためにシャットダウンしています」

ベルカ州知事のアルス・トーシンの発言に電力会社の連絡担当は州西部地方の送電網は切断していると発言した
州内の電力供給しているのはベルカオイルカンパニー・ベルカエネルギー・ベルカパワー・グリーンパワー。
州内で送電網を持っているのはベルカパワー社で他の企業は発電専用の電力会社だ
次に州内に送電網を持っているベルカパワー社の連絡担当が発言した

「我々が保有している送電網は現在ベルカ州西部地方とは切り離しています」

また州外の電力送電網とはいつでも接続することができるように、
ミーミルパワー社ともいつでも接続できるように用意をしていると
ちなみに大手の電力会社でベルカ州内で送電網を持っていないが発電を専門にしている電力会社は7社になる
州内で主要幹線送電網を持っているのはベルカパワー社だけである

「我々ミーミルパワー社が持っている州西部地方にある火力発電所と魔力精製炉発電所と太陽光発電所と水力発電所」

ミーミルパワー社が保有してベルカ州内の最大発電量は最大1億3000万KWほど
一部の送電網の変電所でベルカパワー社と接続されている独立した送電網を持っている。
今はベルカ州西部地方とは州内の他の地方の送電網とは接続されていない
これはブラックアウトを避けるための対策からで、
クーデター勢力から発電所と送電網を取り戻して安全確認できたら即時運用開始する
ベルカ州内では聖王教会が自治権を持っていた時から州政府になってから電力使用量は大幅に増加した
だからこそ発電所と送電網の整備がかなり進んでいる。
今後も電力消費量が増加しても対応できるように工事が行われている

「またベルカ州内西部地方の送電網は完全に機能停止しています」

ミーミルパワー社の社員の話に州知事のアルス・トーシンは何もなければ良いがと
確かに州知事であるアルス・トーシンは最大限の危機感を持っていた。何があるかわからない
もしミーミルパワー社が西部地方に保有している魔力精製炉発電所で炉心溶融などのことが起きたら大変である
原子力発電と異なり魔力精製炉発電は放射線などの人体や自然環境に汚染させることはない
環境には影響は与えないがJS事件で開発されたAMF装置を運用すると魔力精製炉の魔石燃料の発熱反応は停止する
つまり発電出力が最初は少しずつ低下する。最後には魔力精製炉の発電能力は0になるのだ

「我々ベルカパワー社も同じです。州西部地方に保有している発電所と送電網は機能停止中です」

他の電力会社も同じ意見を発言していた

「ベルカ州政府としてクーデターが終了するまでは、何があっても対応できるように用意をしておいてくれ」

州上下議会ではベルカ自由党が過半数を持っている。
この政党は元々反聖王教会派が組織した政治政党だ
ベルカ自治区時代には武装勢力だったが州政府に移行してからはあらゆる情報を
ミッドチルダ連邦のあるゆる法執行機関に対して提供した
そのため、過激すぎた武装活動をしていた関係者は刑務所に収監された
しかし、罪がそれほど重くないケースでは司法取引を行い政治政党を創設
おかげでベルカ州議会や州内の各郡議会などでも第1党になっている

「ドッジエネルギー社は何か懸念するべきことはあるか?」

ドッジエネルギー社がグローバル。企業の規模としては第3位の資源開発会社である
石油や天然ガスや石炭だけでなく数多くのエネルギー資源開発企業としては規模は大きい

「ベルカ州西部地方にある魔石燃料工場の警備体制は厳重にしています。何が起きるか不明です」

ドッジエネルギー社は州西部地方に魔力精製炉発電で使用する魔石燃料棒の製造と再処理加工事業をしている。
国内にある魔力精製炉発電所で利用される魔石燃料は使用済み魔石燃料の再処理で生産された魔石燃料棒、
混合魔石燃料棒が国内の全体の魔力精製炉発電所の7割で使用されている
ちなみに完全に魔石燃料を使い切るとただの石になるので放射線などの環境汚染はない
まったくの無害であることが最大のメリットだ。
1つ問題があるとするならAMF装置が使用されると魔石燃料棒の発熱反応は徐々に低下する
つまり魔力精製炉発電所からの電力供給が失われてしまうのだ。そこが最も重大な問題である
ちなみに国内で使用される魔石燃料は魔石濃縮度が20%以下である。
魔石濃縮度が高すぎると魔力爆弾の製造ができるので次元世界連合の関連国際組織が監視している
少しでも変な動きを見せると魔石燃料工場の運用停止という処分がある

「もしもの場合に備えて州西部地方にあるウエストベルカ魔石燃料工場の警備に港湾パトロールの協力を得ています」

ドッジエネルギー社の連絡担当職員の発言に今のところは問題は発生していない
しかし何が起きるのかがわからないのが世の中である
最大限の警戒をすることで経済的な影響が拡大することを抑制することができる

「我々ベルカ州政府としては電力などの安定供給を最優先で行っていただきたい」

州知事の発言に会議に参加していた電力会社の連絡担当官はもちろんですと返答した
もし停電が起きればベルカ州内が混乱することも想定できるのだから配慮が必要になるのは当然である

「今は州西部地方だけの送電網を切り離すだけで良い。だがそれもどこまで持つかわからない」

クーデター勢力が他の地方の送電網が接続してくることも考えられる。
他の地方との電力送電網接続変電施設などの警戒は警察組織だけでなく、
港湾パトロールなどの軍事部門にも要請している。
最悪の惨事になることを避けるために情報共有は常に必要である

「サーストンペトロリアム社が保有する発電所からの送電に問題は発生していません」

我が社は州西部地方と契約している需要企業や個人は少ないのでとサーストンペトロリアムの連絡担当社員が発言した
確かにサーストンペトロリアムは送電網をベルカ州内では限られたエリアでしか保有していない。
発電所の運用についても目立った影響は出ていないが、
何かトラブルがあれば需給バランスの調整するとも回答した。

「今は州内の電力や上下水道や通信回線の安定提供が最も優先することを州知事として養成する」

アルス・トーシン州知事の発言に分かりましたと会議に参加していた全員が発言した
そして会議は終了したのでライフラインの管理運営を行っている企業の連絡担当官は退室した
アルス・トーシン州知事は本当に嫌な展開になってきたことを考えていた
状況が悪化する方向に進んでしまうとベルカ州内だけの問題では済まないからだ
それに今は州緊急事態管理法でミッドチルダ連邦政府の権限が優先的に処理されている
州政府の権限は少し時間が必要になることは確実である


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クラナガン市中央区中央区域セントラル地区2番街 大統領府(ホワイトハウス) 大統領執務室

アンナ・ランシング大統領はベルカ州に向かっている連邦軍と港湾パトロールの部隊展開などを確認していた
これからベルカ州西部地方で起きているクーデター勢力を抑え込むのだ
クーデター勢力から情報を得たいのでできる限り生け捕りにすることを求めていた
もちろん簡単なことではないことは誰もがわかっているが、
他にも国内に敵対勢力がいるならそういう勢力に関する情報収集のためには必要である
執務室には国家安全保障問題担当大統領補佐官をしているマディソン・ビュロー、
そして大統領首席補佐官のクレイ・ファイエットと国防長官のエドガー・クロウフォードがいた
4人は連邦軍や港湾パトロールの部隊をどのように動かすかを会議の真っ最中だ

「大統領。すでにベルカ州の西と北にある州にある連邦軍基地から連邦海兵隊が向かっています」

国防長官のエドガー・クロウフォードの発言に次に予測される安全保障上の脅威になる問題がないか
そういう事について会議を行っていたのだ。

「問題は聖王教会が自治区時代に不法行為をしていたことがあるか確認するためにも証人を見つけることは重要です」

マディソンの発言は確かに重要なことである。
聖王教会の関係者が反政府組織や犯罪組織とどの程度の関係があったか、
それを確認するためにも資金の流れを調べることでかなりわかることもあるだろう
さらにマディソンはあることを調べることが重要であるとしていた
それは聖王教会が発行していたさまざまな企業の株式や債券の残高だ

「聖王教会が現在も抱えている株式や債券などの残高を確認することも重要です」

聖王教会が発行していた聖王教会債の取引価格が大幅に下落したことを利用しているので、
聖王教会債を利用した債券額面の金額。それを聖王教会の資産を差し押さえる形で回収するのだ

「連邦財務省にはどんな情報が入っているの?」

「聖王教会債の発行金額の1京ミッドのなかで債券市場を使って全体の9割を教会が自ら購入しています」

もちろん債券市場での聖王教会債の市場価格は大きく下落している
極めて少ない金額で聖王教会が買い注文を入れていた。
こうすることで聖王教会債を保有している債権者からの聖王教会の資産差し押さえを最小限にしていた
大統領の質問に首席補佐官のクレイ・ファイエットがそのように報告した

「かなり利口な方法ね」

必要最小限の費用で事態が最大限悪化することを抑制したのだ
アンナ・ランシング大統領の言う通り、かなり利口な方法であることは間違いない

「聖王教会はさまざまな財産を処分して聖王教会債の回収に動いています」

マディソンは今後の聖王教会債は債券市場で取引はなくなると大統領に報告した
今後の聖王教会の財務事情は極めて危険になることは間違いない
聖王教会そのものを存続させるためにあらゆる手段を使って教会がつぶれるような道を避けようとしている
だが聖王教会債の購入の必要な資金作りをするために、問題がない資金になるものを売却していた
このままでは聖王教会に残るのはかなり少ない限られた財産だけになる
聖王教会に残っている財産はかなり限定されてくる。
それらの売却にはいろいろと面倒な手続きが必要になる

「聖王教会の問題は大きな影響が出るかもしれないわね。教会は教育機関や医療機関を保有しているから」

ベルカ州内は当然であるが、クラナガン市内にも数多くの医療機関や学校などを持っている
それらの資産を売却したいと思っている聖王教会の幹部はいるかもしれない
だがそこには連邦法で医療機関や教育機関の運営権売却に関する認可を得なければ手放すことはできない
医療機関や教育機関の運営権売却には買収予定の企業や団体などが法的に問題がないこと、
そういった審査を受けて問題ないことの判定を得ることができないと認められない
これは医療機関や教育機関が不正行為のために利用されないために審査が行われている
その審査は極めて厳しく行われている。売却したいとする医療機関や教育機関の財務状況や人員などの調査
1つでも何かおかしな動きを見せているなら売却認可は下りない。
仮に認可を得ることができないで現在の運営企業や団体が売却できないときは、
州政府や連邦政府への無償譲渡という形になる。つまり売却で資金確保ができないということになる

「聖王教会の動きは常に監視を。特に金融市場で教会が何らかの動きを見せた時は市場の動きに警戒を」

アンナ・ランシング大統領は金融市場での影響を最小限にすることが重要だ
連邦準備銀行と足並みをそろえることで金融市場に大きな影響が出ないようにしなければならない

「連邦準備銀行に金融市場の監視を。それと短期金融市場の銀行間同士の資金のやり取りについても警戒を」

短期金融市場でもしトラブルが発生するとミッドチルダ連邦国内全域に影響する
また通貨ミッドは基軸通貨であることから外国為替にも影響している。
銀行や証券会社などの金融機関が資金のやり取りを行っている無担保コール翌日物で、
資金繰りのショートが起きることを抑制することが重要な項目である。
政策金利や中央銀行に銀行などが資金を預ける割合を示す準備預金率の調整で、
国内の金融機関の資金やり取り一定のコントロールすることでバブル経済や急激な景気悪化になることを抑制する
これらの金融政策の作成には連邦準備銀行と連携することが重要である
金融政策の作成にはさまざまな行政機関や国際組織との調整が必要になる

「外国為替相場で急激な相場の動きがあれば何らかの対策を実施するために素案作りを」

わかりましたとマディソン・ビュローが言うととりあえずの会議は終了した
あとはベルカ州でのクーデターの対応方法である。もう1つの問題は時空管理局の機動六課組に関することだ
とりあえずはクラナガン捜査局が受け入れをしてくれた。これにより時空管理局の暗部組織であるHRから守れる
守ると言っても簡単なことではないが、このまま時空管理局に残すと証拠隠滅のために抹殺されるかもしれない
JS事件の真相を確認するためにも機動六課組が抹殺されるような状況は好ましくない
真実が明らかになるまではどんな手段を使ってでも機動六課組を守ることは当然だ

「時空管理局の暗い闇が無くなることを願いたいわね」

今はまだ時空管理局に在籍していた時に不正行為に関与したとされる人物を見つけ出して調べる
小さなことから少しずつコツコツと不祥事を捜査する。そのために時空管理局犯罪捜査局が設置された
今までの時空管理局にあった監査部門では機能しないどころか、正常な浄化作用が機能しない
だからこそ外部から捜査官を投入して新しい内部捜査部門を創設して内部捜査をする

「政策金利は7%。さらに政策金利の引き上げが必要になるわね」

ミッドチルダ連邦国内の景気はかなり過熱している。
もし経済政策や金融政策を誤れば、好景気から一気に大不況になる
経済状況をうまく読み解くには冷静な判断が最も大切なのだ
時には難しい政治決断をしなければならないこともある。
その判断が極めて難しいことは経済に詳しい者なら誰もが理解している

「時空管理局の問題は頭が痛いわね。特に次元世界連合の総会や安全保障理事会で巧みな外交が必要になるから」

国際関係の縮図にもなっている次元世界連合。
総会やミッドチルダ連邦が唯一の常任理事国である安全保障理事会の判断も経済政策と同じで難しい

「本当にトラブル続きの状況を何とかするのが外交政策。激しい波を乗り切るためにも戦略を練ることが必要でしょうね」


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ベルカ州南東部地方 上空1万メートル C-37[ 航空機形式:ガルフストリームG550 ]

ミカはベルカ州内に入ってから港湾パトロール飛行隊や艦隊が運用しているF/A-18Eが3機警護にため息をついた
すぐにこれだけの警備体制があるということはベルカ州内では何が起きるかわからないことを示しているからだ

「本当に嫌なものね。久しぶりの戦場だけど、いつ攻撃を受けるかわからない状況となると心配になるから」

ミカは携帯情報端末を使ってベルカ州内の情報を確認していた
ベルカ州西部地方で起きているクーデターに関する報道をメディアは大々的に伝えていた

『連邦準備銀行は急激な経済過熱を抑えるため、連邦準備銀行は民間金融機関の準備預金率を引き上げる方向で動くと』

準備預金率。それは民間の銀行が中央銀行。
この場合では連邦準備銀行に預金をさせる制度のことである
準備預金率を引き上げると金融機関は保有資金の一部を連邦準備銀行にある口座に預けることになる
つまり金融市場にある資金の量を減少させることで急激な景気過熱を抑制。
この制度はミッドチルダ連邦の経済がバブル経済にならないために運用されている。

『準備預金率の引き上げの話が出てから、銀行などの金融機関は融資を控える動きが出ると思われます』

『また政策金利が7%に引き上げられたため融資の金利を多くの金融機関は引き上げる可能性があります』

ミカはそのニュースを見てため息をついた。ベルカ州内では多くの公共事業が行われている。
その関係で政策金利が引き上げられるとベルカ州政府が運営しているベルカ開発銀行に影響が出るかもしれない
ベルカ開発銀行の融資対象者は基本的には民間企業ではなく州内の郡政府や市政府などの行政機関だ
この銀行が創設された理由はベルカ州内の都市開発のために州内の郡政府や市政府に貸し付けを行っている
現在の貸付総額は2000兆ミッド。利子はないので州内の行政府は借りた資金だけの返済で良い
また貸付期間は最長で数年規模で申請することができる。
融資を行う際に問題のない利用目的で借り入れたかの監査を受けなければならない
今までベルカ開発銀行に融資の依頼を出してきたベルカ州内の行政機関のチェックで、
問題が出るような融資は確認されていない。そのためベルカ州内では多くの公共事業が行われている

『ベルカ開発銀行は民間金融機関とは異なり、融資対象が州内の公共事業を行う行政府機関であるため影響は出ないと』

「ベルカ州内は今は公共事業が多いから住民は増える一方ね」

『ニュース速報です。ベルカ州警察で教導官をしていたエバスト・ヴォルートがベルカ市で死亡したと州警察が発表』

『この事件捜査に中央パトロール本部捜査部捜査官が派遣されるという情報が入っています』

ミカはため息をついた。マスコミはどこから自分が向かっていることが分かったのか
それはそれで問題だ。こちらの手の内が犯人側にもれてしまうと捜査をする上で障害でしかない
こちらの捜査状況が漏れると犯人が逃走してしまう。

『捜査関係者が殺害に関与したとして元聖王教会騎士団関係者が確保されたとの情報もあります』

『これについてはベルカ州警察は認めていません。州警察は捜査に影響するため今は何も発表できないとコメントを』

『ベルカ州西部地方でのクーデターでベルカ州証券取引所や州商品取引所では多くの銘柄で大きな動きを見せています』

「まぁ当然よね。問題がクラナガン市への影響ができれば少ない方が良いけど難しいでしょうね」

ミカはベルカ州商品取引所でベルカ州で生産されている穀物やエネルギー資源の取引価格を確認。
穀物や資源の取引価格で大きな影響が出ていない。
しかしクラナガン市のクラナガン商品取引所の穀物や鉱物資源銘柄の価格は急上昇している
ベルカ州から東に向かってパイプラインで供給される原油や天然ガスの価格の影響が
マリネット州商品取引所の商品先物価格も上昇している
彼女は今後のマスコミとの対応も適切に行わないと犯人は永久に見つからないかもしれないと危惧していた
これからのさまざまな判断で捜査が進むかどうかは変わることは間違いない。
影響をお最小限にするためには捜査情報が漏れないようにすることが重要だ
おまけに捜査方針を失敗すると影響に犯人は捕まらないかもしれない
かなり面倒なことになることは確実である。何としてもマスコミより先に詳細な情報をつかまないといけない
それほど時間的余裕は残されていない

『ベルカ金融債権取引所では聖王教会と関係がない多くの企業の社債銘柄に買い注文が入っています』

『ベルカ州商品取引所で取引されている自動車燃料先物価格が1リットル110ミッドに上昇』

『ベルカ原油先物価格も上昇傾向にあることから、原油価格が下がるまでは難しいと』

『一方でベルカ州政府は60兆ミッドの州債を発行する用意に入っていると州財務省は公表しました』

ベルカ州財務省がなぜ今の段階で60兆ミッドの州債の発行に入ったのは、
州内の公共事業を行う予算確保のためだ。ミッドチルダ連邦の政策金利は現在7%
この後も政策金利が引き上げられるなら今のうちに州債を発行することが重要になる
金利が引き上げられてから州債を発行すると州債の返済時に返済する額が増加する
発行するなら政策金利がこれ以上上昇する前に発行する方が良い
ベルカ州では道路整備のために多くの費用が必要になる。州内にある高速道路はかなり少ない。
これも聖王教会が自然環境保護のために環境破壊につながる道路整備をしてこなかったからだ
高速道路は州内に2つしかない。一般道路もそれほど整備されていないため、あまり充実しているとは言えない
ベルカ州内の道路の大部分は片側1車線の道路で州経済が発展している今は多くの交通渋滞が発生している
鉄道会社もベルカ州内で路線拡張事業を幅広く行っている。
今まで単線しかなかったが複線化事業を行っている。単線では鉄道輸送に限界がある
複線なら多くの貨物列車の運行が可能に。また州内に空港の設備増設や新し空港の整備も進んでいる
これらの公共事業によって、州内では多くの建設会社などが州政府の競争入札に参加して事業を行っている

「本当にベルカ州は大変ね。いろいろと危険なことになることも想定しないと」

『ピーピーピー』

ミカの携帯電話に着信が入ってきた。
クラナガン捜査局員が持っている携帯電話は衛星電話としても機能している
ミッドチルダ連邦国内で地上の携帯電話基地局が無くても、人工衛星を利用しての通話が可能
そのためこの惑星の地上にいるならどこからでも携帯電話での通信が可能になっている

『ミカ主任。ベルカ州警察のハイディーツ・パラスティックです。ミカ主任自らの捜査に参加とは驚きです』

ハイディーツ・パラスティックはエバスト・ヴォルートの死亡した事案を担当捜査官だ
死亡したエバスト・ヴォルートはある事件の捜査を行っている中で、
何か大きな情報をつかんだと連絡したと報告してきた後に殺されたとのことだ

「エバスト・ヴォルートは何を調べていたのか把握していたの?」

『彼は聖王教会の幹部が起こした汚職がらみの捜査をしていたようです。かなり危険な案件であることは間違いない』

確かにその通りではある。聖王教会の不祥事の捜査をしていたことは大きな事案である
聖王教会関係のトラブルに関する捜査を州警察だけで行うにはかなりの無茶が必要になってくる
もし聖王教会関係の不祥事をネタに殺されたならかなりの問題事案になってくることは確実で、
素早い捜査が求められることはミカにでも十分理解できていた
同時に捜査をするのは数多くの利権の調整が必要になることも同時にミカもわかった
組織の不祥事を調べるにはその組織がどういう動きをしていたかを調べなければならない
捜査を担当するにはそれなりの覚悟が必要になってくる。もし波を読み違えると大きな落とし穴に落ちる
そんなことにならないようするには慎重に、内密に調べなければならない。
捜査担当者以外に情報が洩れることがないように。
仮に仲間であったり同僚であっても知られるわけにはいかないのだ

『エバスト・ヴォルートのデスク内の調査するために州裁判所に捜索令状を請求して確認しました』

デスクにはあるメモリディスクが入っていた。
もちろん裁判所から捜査令状を請求したうえで調べたので合法である
デスクから出てきたメモリディスクに保存されていた情報はベルカ州内で麻薬密造を行っていた犯罪組織、
その麻薬密造組織に関する情報が大量存在した。つまり州内で活発に活動していた犯罪組織の捜査をしていた。
これはかなり危険な案件だ。1人の捜査官で調べるにはかなり苦労があったはず
だからこそ捜査していることを外部の人間はもちろんだが、同僚にも話すことはできないはずである

「かなり危険な案件ね。どの麻薬密造組織が関わっているのか把握しているの?」

『ベルカ州内では聖王教会に金を握らせて密造工場を運用していたようです』

そして麻薬密造組織ではかなりのシェアを持っているアガレストいう組織が絡んでいた
アガレスは麻薬密造組織でミッドチルダ連邦国内では3割ほどの生産をしている
最近は銃火器などの武器密造も行っているので他の密造組織と対立関係にあるのだ

「聖王教会の闇を暴くつもりだった。危険な捜査になるから誰にも話さなかったのは当然の判断であるみたいね」

もし情報が洩れたら証拠や証人が潰されてしまうことは十分考えられる
同僚であっても話すわけにはいかないのは当然な判断になる

『セントラルベルカバンクの銀行口座を調べていたようです』

セントラルベルカバンクは今はミーミルグループのミーミルバンクが買収した
それも格安でだ。今はミーミルバンクの監査部門の社員がセントラルベルカバンクが抱えている不良債権など、
セントラルベルカバンクの財務状況の調査が行われている。元々は聖王教会の傘下の金融機関だった
聖王教会債を大量に保有していたことからその債権取引価格が紙くず同然になったことで、
セントラルベルカバンクの財務状況は極めて危険になっていた。

『ベルカファーストバンクに新たな銀行口座を開設するケースが増えている。証券取引委員会と連携して対応している』

つまりセントラルベルカバンクが破綻したことが主な原因だ。
絶大な信用があるミーミルバンクが格安で買収したからと言って、
利息が付く通常講座は1000万ミッドまでしか保護されない。
ペイオフ制度によってセントラルベルカバンクの口座に置いておくことを危険視している
無利息口座預金は全額が保護の対象である。それでも不信感からその口座の資金を他の銀行に移行している

「今のベルカ州はポップコーンのようなものね。何が起きるか予測することはほぼ不可能だから大きな問題になる」

『同意見です。ベルカ州内に拠点がある銀行などの金融機関では聖王教会と接点があった企業で破産する傾向にある』

聖王教会と取引をしていた企業は聖王教会債をそれなりに保有していた
安全資産扱いであったことから聖王教会債を担保として金融機関から融資を受けていた
JS事件後は状況は大きく変動した。聖王教会債の価値が暴落したことから、
それを担保などの名目で金融機関から融資を受けていた企業は速やかに融資した資金の返済が迫られている

「ベルカ州内で大企業の破綻はあるの?」

『州内で聖王教会で使われる物資納入を全体の5割以上をしていた企業が1つ破産した』

その企業はワンワールドグループとの取引があったことからその影響で破綻した
他にもいくつかの企業が破産申請をしている。負債総額は現段階で360ミッドになる
それらの企業に融資をしていた金融機関は破産によって融資した資金の回収のために財産を差し押さえていた
融資を行った金融機関も銀行自らが破産することになれば大きな影響が出てくる
ベルカ州では公共工事が必要なので州政府や郡政府や市政府が債券を販売している
どのような債券を発行するかについては償還年数や使用目的別に分けられている

「州内の経済は一部が危険というわけね」

『聖王教会債と同じで時空管理局債のデフォルトで価格が暴落。保有企業はかなり厳しいところもある』

そんなことは誰もがわかっている。取引価格が暴落して企業の財務状況が悪化。

「時空管理局債と聖王教会債の運用失敗でどこもつらい立場。経済的損失の規模はあまりにも大きすぎる」

『我々にとってはそのおかげでマネーロンダリングや経済犯罪を過去に多くしていた人物を発見することができた』

どのような道をたどろうといづれかは真実は明らかになっていたのではと
ハイディーツ・パラスティックはミカに発言した。確かの彼の言う通りだ。
今まで隠蔽されてきた様々な不祥事の真実が明らかになった
その結果がこれだけの大きな問題を生み出した。時空管理局や聖王教会が自由にすることはできなくなった
時空管理局には次元世界連合の傘下に入るしかなかった。従わないと何かを隠していると思われ続ける
今も時空管理局の暗い過去について内部捜査が行われている。あらゆる不法行為を摘発している。

『我々の仲間が聖王教会の闇に何かの真実を見つけることができたから殺されたとなるなら大きな問題だ』

聖王教会の暗い闇を知ったから殺されたのなら、法執行機関として真実を明らかにしなければならない
暗い過去の存在が事実なら徹底的に捜査を行い真相を調べなければならない。

「エバスト・ヴォルートがどんな危険なことを捜査していたかを突き止めるしかないわね。真実の扉を開けるには」

『誰にも知られないように隠密で何を捜査していたのか。確かめるのは重要であることは間違いない』

いったいどれほど捜査を進めていたかを確認して、殺された彼の捜査を引き継ぐことで真実を暴く
州警察としても重要なことであることは誰もが認識していた。
どれだけ時間が必要でも捜査を行って暴かなければいけない

「州警察で最近は金融市場を利用した事件を多く扱っている話は聞いているけど。状況としてはどうなっているの?」

『金融が絡んだ事件はかなりある。元々聖王教会と繋がりが深かった企業では汚職行為に関与していることもある』

自治区から州政府に移行してからはかなりの違法行為に関与していた記録が見つかっているのは、
州内の警察組織や連邦組織でも連携を取ることで1つずつ着実に捜査を行っている

「ベルカ市に到着したらより詳細な情報を確認する必要があるわね」

ここで機密に関する情報交換するのは危険すぎる。暗号回線でこの通話を行っているわけではないのだ
ベルカ州警察でも機密情報を数多く持っていることはミカは十分にわかっている。
クラナガン捜査局中央パトロール本部捜査部の幹部であるミカも数多くの機密情報を扱っている
そんな情報をこの場で話すのは問題があることはミカもハイディーツ・パラスティックもわかっている
暗号回線を使っての通信でも傍受されて解析されたら、影響が出る範囲はかなり広くなる
そのため機密情報を扱う時の大原則として直に会って話をするのが規則で定められている

「あと1時間もあればベルカ市の空港に到着する予定だから。あとの話は直接話しましょう」

ミカがそう言うとハイディーツ・パラスティックもそうだなと言って通話を終えた
どれほど危険がある状況であるかはわかっている。真相究明には時間が必要になる
事実が明らかになった時に何が起きるか、苦労する案件になることは間違いない

「今は州警察本部庁舎に向かうことを優先しないと」


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東区東部区域ハリーファックス地区1番街7丁目 ハリーファックス中学校

死亡した中学生の名前はフェレス・コーギル。レックスは現場に到着すると刑事たちと情報交換を始めた
いじめの加害者をしていた同級生は東分署未成年犯罪課の刑事が中学校にある会議室で事情聴取を受けていた

「子供が死亡する案件を見るのはつらいな」

何の罪もない子供が死ぬ道を選択した。
レックスの言葉と同じで本来守られるべきはずの子供が犯罪を起こしたり、
巻き込まれて犠牲になる事件は悲しいものだ
間接的にもいじめなどで人が死亡した事件は殺人事件として扱われる
いじめをしていた子供はもちろん罪に問われてしまう。未成年者の犯罪の場合は未成年刑務所に収監される。
刑期に関しては成人犯罪者と異なる扱いになる。
こういった事件捜査はさまざまな情報を集めて総合的に判断することが求められる
1つのミスが子供の人生を大きく狂わすこともあるから余計にだ。
慎重な捜査をすることで同じ学校で同様の事件事故を防ぐこともできる

「それでいじめをしていた子供の証言はどんな感じだ?」

「ほとんどすべての子供が何も知らないの一言です。いじめなんて知らないと」

それはいじめをしていた中学生の逆襲を恐れているのだろう
しかしすでにクラナガン児童局や中央パトロールの未成年犯罪課が調査が行っている
いじめについては重大事項である。加害者の年齢は15歳である。
いじめは重犯罪行為に該当するのでクラナガン未成年犯罪法で刑事訴追される

「それでじめをしていた中学生の名前は?」

「名前はジュジス・ボーラッド。年齢は15歳。中学3年生です。両親はともに時空管理局に在籍していた」

刑事からの報告にまったく親の権限を使って好き勝手していたのかとため息をついた
親が時空管理局に所属していたことで自由にしていた事例は数多く存在する
多くの時空管理局は在籍時に不正行為などを行っていたことが
確認されたら時空管理局犯罪捜査局などが捜査をしている
今回のいじめの加害者の子供の両親についても時空管理局犯罪捜査局が捜査をしている
ボーラッドの両親は数多くの不正に関与していた。その大部分は経費の無断使用だ
総額にして40億ミッドになる。まさに時空管理局の金でかなり好きってしていた
最後に在籍していたのは時空管理局本局の事務担当部門だ。
それも予算部門で予算作成を行う部門にも関与していた
だからこそ時空管理局犯罪捜査局が捜査を行っているのだ
40億ミッドとはかなりの無駄遣いをしてきたと言える
おまけに親族が彼らの力を利用することで経営している企業が時空管理局と数多くの取引を行っていた
今はその会社は倒産していた。会社のほとんどの仕事は時空管理局関係が全体の8割を占めていた

「時空管理局の物資納入部門とコネがあるようだな」

JS事件の前までは運送会社と手を組んで、ミッドチルダ連邦国内に銃火器や麻薬の密輸を行っていた
ひどいというにはあまりにも問題のありすぎる行動である。
これらのことについても時空管理局犯罪捜査局や各次元世界政府の捜査部門が捜査をしている
あまりにも件数が多いので全容解明にはかなりの時間が必要になる
ただしすでに関係者の身柄は拘束している。逃げられる心配はないので問題はない

「子供や両親の知り合いまでもが時空管理局を利用してかなり汚いことをしていたようだな」

ここまで『汚れて』いると捜査はかなり苦労することはわかっている
問題がありすぎることは事実だ

「死亡した中学生の両親から聞き取りを。時空管理局犯罪捜査局には俺から連絡してどんな権力を利用したのか」

レックスは自分で時空管理局犯罪捜査局の知人に確認すると刑事に伝えた
問題はどれだけ陰湿ないじめ行為にしていたかが重要である
死ぬことが分かるような陰湿ないじめをしていた場合は最悪の場合は殺人罪が適用されるケースもある
それだけに慎重な捜査が必要になる。確認のためにどんな情報でも調べなければならないのだ

「子供のいじめに関する捜査は本当にやりにくいな」

加害者のいじめ首謀者に関する調査をする時、同級生から証言得ることが難しいことは数多くある
反撃を恐れて証言を拒否することが多いからだ。JS事件までは特に子供が親が時空管理局に在籍していたら、
特に証言拒否をすることが多かった。すべては報復を恐れていたのだ
いじめ問題に関する捜査をするのは極めて難しいことがあまりにも大きすぎることはわかっている
問題が拡大する前に真実を明らかにして全容解明しなければならないのだ

「とにかく加害者がどんな行為をしていたことを入念に調べろ。子供を自殺に追い込んだ行為は重罪行為だからな」

そのようにレックスが指示を出すと刑事たちは了解と返答した。
レックスは現場鑑識を行うために向かった。親の影響は家族や親族はそれを利用して利益を上げようとする
好き勝手に利用することでともに甘い汁を味わっていくのだ。
問題がありすぎることは今になって十分にわかっている

「いじめの調査をするのはかなり大変になるな」


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クラナガン市西区西部区域 クラナガンハイウェイ7号線(南西線) 北東行き

エイミーが運転しているSUV車は中央本部に向かっていた
自然保護区の事案はあちらに任せた。自然保護区の事案に関する対応は彼らの担当である
エイミーも捜査に加わった方が良い時と悪い時があることは把握している
複雑な問題になる前に管轄をどうするかを決めることは重要である

「それにしてもストレス発散に自然保護区でハンティングをするなんてひどいわね」

密猟行為は重罪である。
ただ時空管理局が多くの権限を握っていたころの栄光が忘れることができない。
彼らもまさか時空管理局の規模が大幅縮小されて、
現役時空管理局員と退役時空管理局員に厳しい捜査が行われることに不満を持っている者は多い
問題を抱えることになるとはだれも想像していなかったはずだ
捜査を担当する時空管理局犯罪捜査局もあまりの捜査件数が極めて多く存在しているので苦労している

『中央本部からクルック分署。クルック地区と近隣地区の警戒レベルを厳重に行え』

『西区東部区域クルック地区と近隣地区に攻撃が予想される。万が一に備えて行動を行うように』

エイミーはその無線を聞いてため息をついてしまった。
仮に次元世界連合に対するテロ攻撃をするなら大きな問題になるかもしれない。
被害を最小限にするためにはトラブルが起こさせないように対応方法を迅速に進めることが重要だ

『ウエストレール運行指令センターから通報を確認。ウエストレールの列車から負傷者の通報あり』

ウエストレールという鉄道運行会社は名前の通り西区で鉄道運行をしている鉄道会社
路線数は全部で35路線ある。現在新たに3路線の新規路線建設を行っている
エイミーはすぐに西分署に無線連絡を入れた

「SA37から西分署。こちらからの支援は必要か?」

『こちら西分署。そちらが対応できるならウエストレールで発生した事案についての支援を求めます』

「了解した。トラブルが発生したウエストレールの列車の現在位置はどこなの?」

『負傷者が発生した列車は西区西部区域セイラム地区にある駅です。列車の駅で停車中』

「SA37から西分署。現場までは緊急走行で向かう。到着予想時間は10分以内と思われます」

エイミーはすぐにサイレントワーニングライトのスイッチを入れて緊急走行を開始した
彼女は中央本部に連絡してさらに詳細情報が入っていないかどうかを確認した
列車での負傷者発生は鉄道を利用したテロの可能性があるからだ

「SA37から中央本部。ウエストレールが管理している西区西部区域セイラム地区駅に急行する」

『こちら中央本部。現場ではすでに4台の救急車が向かっている。さらに負傷者は3人です』

エイミーはその無線連絡を聞いて大きな問題になるかもしれないと懸念していた
もしかしたら反政府組織や犯罪組織が実行したのではないかという可能性である
何が原因で行動をするのかを調べることが重要なことだ。
テロ攻撃を仕掛けてきているなら、今後の捜査で犯罪組織の内部情報を集めることが必要に。

『西分署からセイラム地区事務所へ。現在のセイラム駅での状況はどうなっているかの報告せよ』

『負傷者の3人ですが死亡する可能性は低いとの救急隊との情報共有を行っている』

負傷者の3人がもし死亡するなら大きな問題になる。

『負傷者ですが、負傷者が出た列車の通路に何らかの液体が漏れて、白い煙のようなものが車両内にある』

その液体に降れたことでやけどなどの負傷者が出ている
セイラム地区駅で対応に当たっているパトロール捜査官からそのような情報を聞いて、
エイミーは何かの薬品が漏れたことが原因かもしれないと考えた

「SA37からセイラム地区事務所。化学薬品による攻撃の可能性がある。現場の駅を速やかに封鎖せよ」

もし化学テロでも起こされたら大変である。ほかにも同様のトラブルが発生するかもしれない
影響が拡大しないように最大限の警戒が必要である

「テロ攻撃でなければ良いけど」

ミッドチルダ連邦の首都であるクラナガン市でテロが発生すれば経済的な影響はかなり大きなものになる
クラナガン証券取引所で株価の急落。さらに通貨ミッドの為替変動がどうなるかは想像したくもない
ヘッジファンドがどれほどの動いて国内の経済に影響が出てくるのか。
それは全く想像できないのが現実である

『中央本部からセイラム地区事務所。警戒態勢を厳重にすることを求める』

さらに港湾パトロール艦隊の第93NBC対策対応団を派遣すると。
この部隊は核兵器・生物兵器・化学兵器の対応を行う専門部隊である。
核兵器は製造にはさまざまな物資が必要になる。しかし備えのための部隊を編成することは重要だ
ただし核兵器よりも魔力精製炉発電所の燃料である魔石の方が簡単に収取できる
それに核兵器は製造や管理には放射線対策が必要であるが、
魔石を利用した魔力爆弾の方が製造や管理に核兵器のような防護服は必要ない。
『クリーンな大量破壊兵器』であることは誰もが知っている。

「現場では一瞬の気の緩みを持つことは許されないわね」

『港湾本部から中央本部。西区西部区域セイラム地区に向かってすぐに第93NBC対策対応団の隊員を向かわせる』

「状況は最悪ね。列車を完全に隔離しないと」

もし何かの化学薬品が原因になっているなら真相解明をしなければならない
首都に化学テロを起こされるわけにはいかないのだ。仮に発生したなら素早い対応が求められる。

『中央本部からセイラム地区事務所。港湾パトロール艦隊から対応チームが派遣されている。到着予定は10分前後』

エイミーはますます危険な状況であることをどうにかしなければならない


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西区南部区域ヒルズボロ地区5番街5丁目10番地 地区パトロール事務所

エディはそこで待機していた
すでに西区中央区域クーズ地区8番街4丁目16番地の倉庫にあるウエストサイドの拠点に対する強制捜査が行われている
彼はそこで強制捜査をしている刑事やパトロール捜査官からの報告を待っていた。
ウエストサイドの活動状況を確認することは極めて重要だ
退役時空管理局員のエリバード・ツージとどんなつながりがあったかを確認することも必要である

「それにしても退役時空管理局員は何をするつもりだったのか気になるところだな」

ウエストサイドに何を売って金を受け取ったのか。

「ウエストサイドが何か行動を見せる前に抑え込むしかないな」

エディは問題が複雑になっていることにはなりたくない。
うまく事を進めることができれば問題解決することを願っている。

『中央本部からSA38。ウエストサイドが受け取ったものが判明。麻薬の原材料です』

正確にはメタンフェタミンを製造な材料を購入したということだ
金に困っているなら協力した方が良いぞと少しのお金で釣ったのだろう

「数百万ミッド欲しさにリスクを冒すとはバカな奴だ。ある意味で自殺行為だ」

エディの言う通りだ。あまりにも危険すぎる。麻薬製造に必要な材料を購入したら違法行為だ
そんなリスクを起こすことは許されない重罪行為なのだ
麻薬製造には大金が必要になる。密造には材料と電力が必要で常に監視している
材料に関してはさまざまな法執行機関がマーケットを監視している
電力の大量使用も同様である。麻薬製造には大量の電力と設備を設置する場所の確保が必要に

「問題が多すぎる」

『クラナガン金融債権取引所で聖王教会債と時空管理局債の金融市場での取引を停止すると発表』

取引停止の根拠は金融市場に出回っている債権額が金融市場運営法に達しなくなったことだ
連邦法では金融市場で取引するには一定の量が売買されていないと金融市場での取引が停止と定められている
2種類の債権は金融市場で流通している量が大幅に減少したことが原因である
エディはさまざまな報道チャンネルでクラナガン市と近隣州の経済情報などを確認していた
金融市場はちょっとしたことで大きな動きを見せる生き物であるのと同じでどうなるかはわからない
ちょっとした噂話であっても状況変化につながるようなものなのだ。
最大限の警戒をしながら金融市場を浴したら些細な情報も確認しなければならない

『聖王教会が以前に保有していた企業の株式が売却したのでベルカ州証券取引所で取引されています』

『教会が保有していた傘下の企業はすでに民営化されている。今後の影響がどうなるかはまるで見当もつきません』

『クラナガン市と近隣州に設置されている商品取引所では原油先物価格の取引量は大幅に上昇』

『クラナガン商品取引所では原油先物価格は1バレル7000ミッドになっています』

少し前は1バレル9000ミッド前後だったが大きく値下がりを見せた
下がるような珍しいニュースなどはなかったが何かの情報が影響を出していることは間違いない
今後の動向はまるで分らないのが大きな不安材料になる

『近隣州にある州商品取引所の原油先物価格も不安定な値動きをしています』

『一方で魔石燃料先物価格は1Kgで6000ミッドになっています』

以前は1kgで数万ミッドの時もあったが大きく値下がりを見せた
これは魔力精製炉発電所はAMF装置の影響で魔力精製炉の発電能力が停止することが出てきたからだ
AMF装置が密売や密造されてから電力資源として安定的なものではないと判断されたことによって価格は大きくなった。
それも以前はある程度の高値で魔石燃料が商品取引所で売買されていたが今は暴落に近い時の価格もある
魔石燃料よりも火力燃料のための石油や天然ガスや石炭に投資する投資家が増えた
エネルギー資源の取り扱いに関してはほかにも石油や天然ガスや石炭などの天然資源での取引が増加している
火力発電所で使用される燃料に投資を変更しているヘッジファンドは大幅に増えた
だからこそそれらの取引価格は大きく上昇しているのが現状である

『中央パトロールは先ほど、クラナガン市西区を拠点に活動している犯罪組織。ウエストサイドに強制捜査を行いました』

『一部関係者からの話によると退役時空管理局員が関与しているという情報が入っています』

「どこから漏れているんだ?マスコミに発表するのは最後にしてほしいところなんだが」

エディはこちらの捜査情報が漏れることは好ましいことでないことを十分わかっている
情報が漏れると証拠を抹消するために動くからだ。そうなると捜査が難しくなる
それはそれで問題になってくる

『西分署から各員へ。西区南部区域ウエストハーニー地区2番街2丁目と3丁目の間の通りで男児が倒れていると通報』

対応できる職員がいればすみやかに向かうようにとの指示だった
男児が倒れてるということは何か問題を抱えている可能性は十分ある
もしかしたら虐待などのケースもあるかもしれない
子供が絡んでいるトラブルは優先的に対応しなければならない
親の虐待によって子供が追い詰められた状況になると子供の親には大きな罪で処罰される
最も大きな罪で逮捕された場合には仮釈放なしの終身刑や死刑判決になることもある
捜査をする時にも慎重に物事を進めることも重要である

『港湾パトロール気象局から中央本部。西区西部区域で雨具が徐々に発生している。事件事故での現場保護は慎重に』

港湾パトロール気象局はクラナガン捜査局が管轄している区域だけでなく、
ミッドチルダ連邦全域で気象観測をしている。国内の気象観測は軍事作戦に影響が出るためだ
クラナガン捜査局が保有運用しているすべての人工衛星や気象レーダーを使って気象観測を行っている
気象情報は民間にも提供されている。人工衛星や気象レーダーで観測した情報は常に提供している
ミッドチルダ連邦国内では人工衛星による気象観測は最も精度の高い観測技術を保持。
そのため民間企業や国内の連邦政府や州政府などに人工衛星観測データを利用した気象情報を配信している

「SA38から西分署。こちらは西区南部区域ヒルズボロ地区にいるので現場に急行する」

エディは無線で西分署に報告すると地区パトロール事務所の前に止めているSUVに乗り込んで現場に向かった
子供が巻き込まれたトラブルは速やかに解決することは最も重要だ。
なぜ男児が路上で倒れているかを究明することは当然である

『こちら西分署。西区南部区域ウエストハーニー地区2番街の男児が倒れている現場には救急隊が到着済み』

男児は心肺停止状態であるため救急措置を行っているとのことだ
心肺停止の状況とは穏やかではない。今後に何があるか全くわからないので警戒するのは当たり前である

『ハーニー地区事務所から西分署。男児のブラート・ズシック。5歳。両親は元聖王教会騎士団に属していた経歴あり』

つまり両親は問題を抱えているということである。最悪に備えて対応することが必要になる
両親が逃亡生活をするのに邪魔であると判断して放置した可能性がある
そんなことがないと思いたいが想定しないわけにはいかないことは確かである
常に最悪の事態に備えて対応しなければならないのは子供が関わっている事案の鉄則だ

「SA38から西分署。西区南部区域ウエストハーニー地区2番街の男児の事案についてさらに情報を」

『救急隊は蘇生処置を行っているが心肺停止の時間がかかる場合、現場で死亡判断が出る可能性がある』

つまり殺人などの事案として処理される可能性がある
今はなぜ幼い子供が心肺停止の状況にあるかが気になるところだ。
子供の親を急いで見つけて、事情聴取を行うことが最優先である

「自分の子供をなぜ放置したのか調べないとな。聖王教会にいた人間となると面倒になるかもしれないが」

聖王教会に籍を置いていたからと言って不法行為に関わっていると断定されていることではない
教会の内部抗争に巻き込まれて騎士団から外れたとなるとそれについても確認しなければならない
トラブルに巻き込まれているなら、そのトラブルについても確認が必要になる

『西分署からSA38。ブラート・ズシックの両親がサウスクラナガン空港からの航空機に乗り込んでいることが確認された』

サウスクラナガン空港は滑走路が2本ある空港だ。
エディはすぐにどの航空機に乗っているのかを知りたかった。
必要なら港湾パトロール飛行隊や港湾パトロール艦隊の空母で運用されている戦闘機をスクランブルさせる
安全確保のために必要になるかもしれない。仮にもし暴挙に出て自爆されたら大問題になる

「どの航空機に乗っているのか確認できているのか?」

『ノートンエアライン3208便に搭乗しています。すでにサウスクラナガン空港から離陸している』

その航空機の行き先はクラナガン市の東隣にあるスタントン州にある空港に向かっている
エディはすぐに対応方法について考え始めた。速やかに逃走劇を終わらせなければならない

「港湾本部に連絡して戦闘機による沖合にあるクラナガン市の島にある空港への着陸要請を」

子供を放置して逃げるような親を簡単に逃がすわけにはいかない
必ずその罪から逃げることができないことを分からせなければ、こちらの警戒態勢は緩いと思われる
クラナガン捜査局に追われたら逃げることができないことを分からせなければならないのだ
港湾パトロールに連絡して戦闘機での警護付きで沖合の島の空港に着陸させる。それが最も確実なプランである。
ただこちらの動きで航空機をハイジャックされたら良い結末を迎えることはない

『港湾パトロール飛行隊の戦闘機をスクランブルさせてまでの警護が必要なのか?』

戦闘機をスクランブルさせるということは敵対行動をすれば撃墜するということだ。
もしそれが実行されたらとんでもないことになる。後始末は楽ではない。

「見逃すわけにはいかない。何としても身柄を確保するんだ。必要ならこっちから海兵隊の戦友に根回しするが」

エディは港湾パトロール海兵隊で大佐の階級にいた。海兵隊では特殊部隊に在籍していた
戦闘のプロと言っても過言ではない。港湾パトロール海兵隊はもちろんだが、様々な部隊にコネを作っている
それらを利用することで問題解決に近道をすることはできる

「問題解決にリッチモンド基地を本拠地としている第2航空軍からF/A-18Eをスクランブルさせてくれ」

本来であれば中央本部捜査部捜査官が軍事指揮権の行使をすることは認められていない
ただし状況が危険であるというなら、あとで緊急事態であることを証明できれば良い。
自衛権の行使という名目で軍事部隊をの運用要請をすることはできるからだ
次元世界連合でも戦争行為は禁止されているが自衛権の行使による専守防衛は容認されている
時には人々を守るためには部隊を迅速に動かして対応しなければならない

『リッチモンド基地に配置されている戦闘機をスクランブルさせ、ガラックス島かサフォーク島の空港に着陸させる』

スタントン州の州領域に入ってしまうと管轄権でもめることになる
あちらに入る前にクラナガン市内の管轄区域内で確保すれば、複雑な手続きを省ける

「ノートンエアライン3208便に対しては安全管理のためであると通達しろ。念のための着陸としてである」

『こちら中央本部。了解した。クラナガン航空管制センターにもそのように通達を出す。安全確保を最優先とする』

もしハイジャックされるようなことになれば大きなトラブルになる
そんな状況になることは避けることが求められる

『第202戦闘飛行隊がリッチモンド基地からスクランブルに入った』

第202戦闘飛行隊はリッチモンド基地に配備されているF/A-18Eが16機が配備されている
さらにFRX-00が16機配備されている。合計すると基地には32機の戦闘機がある

『戦闘機の識別コードはバンシー1とバンシー2です』

「バンシー1とバンシー2に対しては表立って行動しないように要請を出しておけ」

『さらに早期警戒管制機のE-767を向かわせる。リッチモンド島周辺空域を特別空域に指定する』

通常であれば連邦航空局の航空管制センターが民間航空機の航空管制を行っている
特別空域に指定された空域は連邦航空局航空管制センターの管制官とは別の航空管制と異なる
特別空域に指定された羅その空域の航空管制は連邦航空局の航空管制の管轄から外される
クラナガン捜査局の管轄空域になると港湾パトロールの管轄になる
そのため、民間航空機は特別空域の飛行はされなくなる

『西分署から各員へ。西区北部区域の一部が停電したとの通報あり』

「また停電か。こんなにトラブルが多いのは困る」

停電しているエリアは西区北部区域だけだ。それでも問題であることは確かだ

『ドッジエネルギー社は昨年度の利益は過去最高になったことを明らかにしました

『またサーストンペトロリアムも過去最大の利益になったことを発表』

エネルギー資源開発企業は過去最高なのは魔石燃料ではエネルギー資源価格が大きく上昇したからだとのことだ
一方、エネルギー資源開発会社でシェアナンバー1の企業であるミーミルエネルギーは非上場企業である
そのため証券取引所に上場していない。しかし企業の透明性を維持するために財務情報を公表している
なぜ公表しているのかは企業の透明性を保つためである。
今年度のミーミルエネルギーなどのグループ企業の利益は税引き前利益は3200京ミッドになる
ミーミルグループは多くの次元世界国で活動しているグローバル企業だ。
またグループ企業には金融機関や様々な分野の企業や工場がある。
また銀行などの金融機関などのありとあらゆる分野に携わっているため。利益が極めて大きい
今後はさらに利益は増加すると見られている。
ミーミルグループ企業は質量兵器である銃火器・戦闘機・軍艦の製造技術を保有している企業であるからだ
今年に入り数多くの次元世界国政府から戦闘機や軍艦の建造を引き受けている
受注している金額も極めて大きいので今年度の利益はさらに上昇するとされている

『ミーミルグループは来年度の利益は素晴らしいものになると公表しています。ただ証券取引所への上場の予定はないと』

もし上場したら株価は極めて高い価格で動くことは間違いない
今は上場する必要は全くないとして予定はされていない。
だが以前ミーミルグループ企業で仕事をしていた元社員が独立した会社を経営している
それらの企業の多くは州証券取引所などに上場しているのでミーミルグループの企業の株式として取引している
クラナガン市と近隣州ではウエストラクロスコールとマリネットコールの2社がある
この2つの企業は石炭鉱脈の開発を行っている。

「ミーミルグループが非上場企業で喜ぶべきなのか悩むところだな」

エディは戦闘機による護衛で最優先で対応しなければならないことを理解していた

『聖王教会の教皇についたカリム・グラシアはベルカ州西部地方のクーデターに現勢力は一切関与していないと』

『次元世界連合や各次元世界国の内部調査は全面的に受け入れるとも発表しました』

「聖王教会関係への内部調査で問題部分を見つけたらどうなるか」

エディは今回の聖王教会への調査で何かトラブルを発生したらどうなるか。
あまり大きな問題に発展するような事案を確認されたらとんでもないことになるかもしれない
最悪の状況に陥ることを避けなければならないのだ

『ベルカ州西部地方で発生している停電ですが。当面の間は継続すると思われる』

クーデターを起こしている勢力は電力供給を断つことで様々なライフラインに影響を出すことが目的だろう
今は携帯電話などは通信基地局に設置されているバッテリーで運用しているが
長時間の運用にはあまり向かないことである。少しでも早い外部電源を復旧させることが求められる

「外部電源の供給がないと携帯情報端末での通信に影響が出るかもしれないな」

法執行機関などが運用している携帯情報端末は人工衛星を経由した通信で対応しているので、
地上通信基地局に影響が出たとしてもそれほど問題はない
しかし民間向きの通信基地局にはいつかは影響が出ることははっきりしている

『ベルカ州商品取引所でベルカ原油価格が少し上昇。マリネット州商品取引所でもマリネット原油価格が連動して上昇』

ベルカ州とマリネット州にはパイプラインがあり、
ベルカ州で採掘された原油と天然ガスが東隣りのマリネット州にパイプラインを経由して運ばれる。
つまりベルカ州で何かトラブルがあれば大きな問題になる。
マリネット州商品取引所での原油先物価格にも影響が出る

『ベルカ州内では自動車燃料の価格もベルカ州商品取引所で急上昇。1リットル125ミッドまで上昇』

『クーデターが終息するまで燃料価格が上昇することは間違いないとされています』

『大きな影響がどこまで出るかについては詳細にわかアないことも市場関係者は不安材料でしかないと発言しています』

確かにその通りだ。燃料や電力の安定供給が断たれると大きな問題になることは確実だ
特に電力に関しては何としても早期に停電状態であることを解消しなければならない
停電によってさまざまな地上通信回線が使えないとなると大きな問題になる
そうなる前に何とかしなければならないのだ

『ベルカ州内を営業範囲とするベルカパワー社は送電網と発電所は安全としています』

『クーデターが発生しているエリア以外は問題ないと発表しています』

「それでも影響は出てくるだろうな。そのとばっちりがこっちに来なければ良いが」

エディは最悪のシナリオを考えていた。すでに軍事部隊が派兵されている
この後に何が待っているのかは簡単に想像することができる。
クーデター勢力がさらに攻勢をかけてくるかもしれないということだ
停電がベルカ州西部地方だけでなく州内全域に発展するかもしれない

『ベルカ州内で設置されている原油や天然ガスのパイプラインに関しては州西部地方に向かっているルートは停止中』

ただしベルカ州西部地方にもパイプラインで供給されている原油や天然ガスの備蓄基地がある
それを利用することですぐに影響が出ることはないと多くの経済評論家が発言していた
長時間によってパイプラインで原油や天然ガスの供給が停止すると問題にはなる
備蓄ではしばらくは対応することで安心することは重要だ

『ベルカ州知事のアルス・トーシンは州内のエネルギー安定供給に置いて州西部地方以外は問題ないと』

『金融市場に対して冷静な判断をしてほしいと発言しました』

『実際のところはさらに状況が悪化するのではないかと危険視を感じながら取引が行われています』

その報道を聞いてエディは確実にベルカ州の問題がクラナガン市にまで影響が出ることを覚悟した
聖王教会の関係者がクーデターを仕掛けているということはこちらにも何か問題がある
そうなればクラナガン証券取引所・商品取引所・外国為替取引所・債権金融取引所にも大きなうねりが出てしまう

「聖王教会の財務状況はかなり危険だな」

教会の勢力を維持するために必死になっている
すでに聖王教会の財務記録は大幅な赤字で、引き続き教会を維持していくには財産確保をしなければならない
財産確保ができなくなれば、聖王教会はどんなことをしてでも対応しなければ教会組織が崩壊する

『西分署からSA38。ブラート・ズシックの心肺停止ですが、救急隊から蘇生は無理であり死亡と認定したとの連絡あり』

これで子供が死亡したということが確実に。殺人案件の可能性がある
そのあたりを慎重に見極めることが求められる。何が原因で子供死んだのか

「こちらSA38。了解した。現場鑑識チームと検死官の派遣を要請する」

死亡が確認されたとなると事故では済まない。立派な事件になる
幼い子供がなぜ死亡したかについても詳細に調べ上げて全容解明を行うことが求められる
もし殺人事件なら殺人犯も何としてでも見つけないといけない

『中央本部からSA38。リッチモンド基地から戦闘機がスクランブル。同時に特別空域指令を航空管制センターに指示した』

クラナガン市内と近隣州の航空管制業務を行っているクラナガン航空管制センター、
連携対応しなければ特別空域の指定は難しい。エディは次にどんな手を打とうか考えていた
その時にエディに対して通信が入ってきた。彼は安全のために車を路肩に停車して通信に出た
発信者はリッチモンド基地統合軍司令官をしているスカール・ホルトからだった

『トラブルを起こしてくれたわね。エディ』

彼女はエディが通信に出ると早速苦情を言ってきた
確かに迷惑なのかもしれない。もし民間航空機がハイジャックされるようなことが起きたら最悪の結末が疑われる

「だが何をしてくるかはわからないのは危険だと思わないか?」

『それはそうだけど。危険な賭けになることはわかっているわよね?』

そんなことはエディはしっかり理解している。
だが簡単に事件を起こした関係者を逃がすわけにはいかない
時にはどんな手段を使ってでも犯罪捜査を行うことが求められる
証人を確保するために必要なら何が何でも身柄を取り押さえる

『ノートンエアライン3208便は基地管制から無線で針路変更を通達』

『針路変更の理由については救護者が出たという形でリッチモンド島の空港に向かわせている』

「慎重に対応しておいてくれ。もし真実を察知してハイジャックなんて結末は嫌だからな」

そんなことはスカールもわかっている。もしハイジャックされたら民間航空機を撃墜ということになる
そんな状態になるまでに対応しなければいけない。秘密裏に動くしかないのだ

『中央本部からSA38。ブラート・ズシックが死亡した現場に検死官が急行中。到着は5分以内』

エディはそれを聞いてかなり素早い動きだと感じた
もしかしたら別件で検死官が近くにいたのかもしれない
そうでもなければ5分以内に現場に到着するのは早すぎる

『西分署からSA38。男児の両親は巨額の借金を作って踏み倒したことが確認された』

生活に必要なお金も残すことができなくなり売れるものはすべて売却しているとのことだ
ブラート・ズシックは2億ミッドも融資を受けていた。それも銀行ではなく高利貸しからであった
そんなところから借り入れをしていたということは借金を返済するためにすべてを売却した
金になるものすべてを売却。その中には小児性愛者に対して自分たちの子供を売ったのかもしれない
最悪なことをしたものだ。自分たちが結婚して誕生した子どもを金を稼ぐために小児性愛者に売った
あまりにも腐った両親だと評価できる。そんな親は子供など作るべきじゃなかった
それに借金を返せないなら自己破産をすればよかったはずだ。破産したら借金はなくなる
ただし今後の生活ではクレジットカードの作成などの金融面で制約は出てくる。
子供を金が欲しいからと言って小児性愛者に売却するなどあまりにもひどすぎる

『E-767による航空管制に特定区域が移行された。すでにこちらではいつでもどんなことでも対応できるようにスタンバイ』

「慎重に対応してくれ。相手は仮にも聖王教会騎士団に在籍していた。魔導師であることから異変を察知されたら危険だ」

エディの言う通りだ。もしかしたら自爆することも想定される。
危機管理で重要なのは相手にこちらの手の内が見られないことだ
少しでも異変を察知したら危険すぎることになるかもしれない


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港湾パトロール本部基地の沖合800km リッチモンド島南部区域 リッチモンド基地 基地管制センター

港湾パトロールが運用している基地にはそれぞれの管轄区域が設定されている。
基地に配備されている部隊の司令官をしている統合軍司令官は、
基地が担当する区域内で何らかのトラブルがあった場合は速やかに部隊を動かすことができる
もちろんトラブル発生が確実に起きることがあれば、
早期に手を打つことで問題を大きくしないために部隊を動かすことが容認されている
もちろん活動することが認められるような緊急案件であることが確実であるという

「バンシー1とバンシー2。針路を方位190度に。高度4000mまで上昇せよ」

基地管制センター内にいる管制官はノートンエアライン3208便に向かっているF/A-18Eに指示を出していた

『こちらバンシー1。現在高度3500mを飛行中。高度4000mまで上昇する』

「ノートンエアライン3208便は高度8000m、針路012度を取り、リッチモンド空港に向かっている」

ブラート・ズシックの両親が搭乗していることについての報告を管制官たちは報告を受けていた
もし両親が彼らの動きを抑え込むために行動していることを知られるわけにはいかない
子息が死亡したことの捜査のためにRichmond空港に向かっていることが分かれば、
彼らは自分たちの保身のために敵対行動をすることが想定される

「ノートンエアライン3208便の乗客に知られないように慎重に行動しろ」

リッチモンド島は港湾パトロールにとって重要な拠点なのだ
港湾パトロールが運用している基地の中で最も東側にある基地。
東側からの攻撃が確認されたら真っ先に部隊を動かすことになる
そのため港湾パトロール海兵隊はリッチモンド基地に1万人が配置されている
まさに東側から攻撃されたら真っ先に臨戦状態に入る重要な拠点なのだ

「それにしても時空管理局と聖王教会関係のトラブルが多すぎる」

基地管制センターの男性管制官は迷惑ばかりかけてくれると愚痴るかのように発言した
確かに問題を抱えているという点では間違いないだろう。
時空管理局も聖王教会もどちらも大量の問題を生み出し続けている
そのトラブルを1つが片付いた後にすぐにまたトラブルが発生する。
もしくは1件のトラブルが解決する前にまたしてもトラブルが発生してしまう
こんな状況が続いていたらクラナガン捜査局や国内の法執行機関、
そしてミッドチルダ連邦以外の次元世界連合加盟国のすべての法執行機関も同じだ
どの組織も問題を抱えていることに間違いはない。

『こちらノートンエアライン3208便、現在リッチモンド島のリッチモンド空港に向かっている』

「こちらリッチモンド基地管制、ノートンエアライン3208便は速やかに高度を4000mまで降下。針路010度に取れ」

『了解。直ちに高度4000mまで降下する』

リッチモンド基地管制センターの管制官はスムーズに事が進むように動いている
不審に思われるような行動が確認されて、それがノートンエアライン3208便の乗客に漏れたら危険な状況だ
もちろんハイジャックといった場合に備えて対空ミサイルでの攻撃などの用意は進めている
そこまで状況が悪化することは許されない。それが現実になればクラナガン捜査局の組織統制に問題がある
そのように評価されてしまう。危険な状態になる前に物事を解決する。重要なことだ


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港湾パトロール本部基地の沖合800km リッチモンド島 南の30km地点 

そこには港湾パトロール艦隊に属する9300t級駆逐艦[サフサ/アーレイバーク級ミサイル駆逐艦 ]が展開していた。

「艦長。リッチモンド基地管制から万が一に備えて対空攻撃ができるようにスタンバイするようにと」

副長の男性は艦長に報告した。艦長は状況が極めて危険であることを示していることを察した

「副長。俺がCICで指揮を行う。些細な変化も見逃すな」

艦長はレーダーだけでなく目で確認することで通常では異なる情報が得られることもある
目視確認による情報収集も重要である事は過去に何度も会ったので当然の指示だ
了解という副長の言葉を聞くと艦長はCICに向かった
艦長がCICに到着するとすでに管制官が様々な情報を確認して注視していた
今はいつ対空ミサイル発射がされるかわからない状況だ。
常にイージス艦に搭載されているレーダーを使って情報収集されている
それに哨戒活動などの任務執行中は常にどんな状況にでも対応できるようにするのが任務である
警戒活動をすることでクラナガン市と近隣州を守るために動いている
ミスをすることは許されない。1つでもミスをすると誰かの血で代償を払うことになるのだ

「艦長。ノートンエアライン3208便は順調にリッチモンド島に向かっています。ただしいつでも攻撃できる用意は完了」

管制官たちは自分たちが乗り込んでいる9300t級駆逐艦のレーダーだけでなく、
港湾パトロールが運用している人工衛星や様々な所にあるレーダー施設から得られた情報を分析して確認していた

「レーダーに感あり。方位183度。リッチモンド島東部にあるイーストリッチモンド港へ向かう貨物船です」

管制官からの報告に艦長は念のため警戒監視を継続するように指示した。
いつ何が起きるかわからないのなら当然であり、実戦配備中なのだ
当然の対応である。どんな状況であろうと国民を守ることが義務である
必要なら泥をかぶるつもりで対応しなければならない。それがクラナガン捜査局の存在理由だ。

「イーストリッチモンド貨物港に向かっています。貨物船の運航会社はミッドコンテナシップ」

ミッドコンテナシップはミッドチルダ連邦国内すべての港をカバーしている貨物船舶運航会社だ
船の大部分はコンテナ船である。所有している貨物船は総数で100隻以上になる規模の多い企業である

「コンテナ貨物船にこの海域からすみやかに離れるように指示しろ」

艦長の指示にCICの管制官はあのコンテナ船が任務の妨害行為をされるわけにはいかない
すぐに民間舶無線でこの現場ら早期にはなれるように通達を出した。
それにもしかしたら表向きは貨物船であるが、何か危険なものをコンテナで輸送していることも考えられる
リッチモンド島にある港湾犯罪捜査部の支局に対して安全点検を名目に確認作業を求めた
港などのクラナガン市内の港湾施設エリア内の警察権限は中央パトロールと港湾パトロールの共同管轄である

『クラナガン市財務長官のイオスコ・マコームは市内を営業範囲としている金融機関へある通達を出しました』

『クラナガン市を拠点とする金融機関に準備預金率を引き上げることを決定しました』

準備預金率は中央銀行に預ける預金額を示している。
つまり国内にある金融機関が自由に使うことができる資金量の調整ができる
これは本来はミッドチルダ連邦では中央銀行である連邦準備銀行のことを示している
しかしクラナガン市政府が運営しているクラナガン市準備銀行も連邦準備銀行とともに行動することがある
そのため、クラナガン市内に拠点がある金融機関はクラナガン市準備銀行に連邦準備銀行と同じように、
特別な口座を持たなければならない。そしてその口座に預ける準備預金は景気動向によって市政府が定めている

『この発表を受けてクラナガン証券取引所では市内を主な営業拠点とする金融機関の株価が急落しました』

『フローレンス州内で発電事業を行っているフローレンスパワー社は電力の安定供給に最大限努力すると』

発電事業を専門に行っている企業は多い。発電専門の電力会社は自ら単独で運用している送電網を持っていない
そのため送電網を運用を行っている電力会社に手数料を支払って利用させてもらっている
ミッドチルダ連邦国内では珍しいことではない。こういった発電を専門に行っている企業はかなり多い
発電を専門に行っている電力会社と経営することで電力利用者は時には通常よりも安く電力を調達できる
しかしうまく電気代の先物取引ができないと通常よりも高い電気代を払わないといけないこともある
極めて難しいことはかなり頻繁にあるのだ

『ミーミルパワー社はフローレンス州とベルカ州を結ぶ送電網をいつでも利用できる準備は完了していると』

フローレンス州とベルカ州を結んでいる送電網は通常は緊急時以外は使われることはない
元々ベルカ州内の送電網を管理運用しているベルカパワー社の送電網を利用するからだ
ミーミルパワー社もベルカ州内全域の送電網は全体の3割ほどしか保持していない
残りはベルカパワー社の送電網を利用することで州内の電力安定供給を行っている

「連邦政府もクラナガン市政府も大変だな。首都を守る我々も同じだがな」

『ベルカ州西部地方のクーデター勢力はベルカ自治区時代のような状況に戻らない限り攻撃を続けると』

『この声明を受けてベルカ州証券取引所の平均株価は大きく値下がりを続けています』

『クラナガン市政府は市内の電力供給などには影響はないとしていますが。クラナガン証券取引所では平均株価は下落』

『一方でクラナガン商品取引所の穀物先物取引価格が上昇しています』

クラナガン市にはベルカ州や近隣州から穀物を含むさまざまな農作物が輸送されてくる
またクラナガン市の沖合の島々では様々な農作物が生産されている。
クラナガン商品取引所では基本的にはクラナガン市内で生産されている農作物の取引をする時の指標だ
しかしベルカ州などを含む近隣州にも設置されている州商品取引所でも農作物先物価格に大きな影響が出る
リッチモンド島はクラナガン市内の領域であり農業や漁業を主要産業としている
クラナガン市から東の市管轄区域内にある島々では農作物や漁業が主要産業である
ここで生産された農作物や漁業で得た食糧はクラナガン市の本土に数多く送られている
クラナガン商品取引所で先物取引されている穀物などの取引価格は、
これらの島々の農業や漁業で得られた食糧の取引価格になる
もちろんこれらの島々の生産された農作物だけではクラナガン市民の食量をすべて賄っているわけではない
近隣州で生産された農作物などの供給を受けることでクラナガン市民の食料を賄っている

「新たに貨物船を確認。船舶識別コードでは主要貨物は小麦などを運搬する穀物貨物船です」

管制官はレーダーで探知された貨物船の情報収集を素早く行った
イーストリッチモンド港から出港した貨物船。島で生産された穀物をクラナガン本土に運ぶことになっている

「警戒態勢を取れ。レーダーによる監視を継続的に行え」

艦長は万が一に備えての対応を指示した。今は何が起きるか全く想像できないのだ
警戒厳重にすることは当たり前である
艦長は常にクラナガン市と近隣州に安全保障においての脅威が出ることを警戒していた
何があろうと安全を守るためには最大限の行動をすることが当然のことである
必要であれば連邦政府や州政府。さらに次元世界連合などの国際組織とも足並みを揃えなければならない
艦長の指示1つで世界情勢は大きく変わる。あらゆる情報を得て、世界情勢を把握するべき
国防の任務を行う時にはありとあらゆる情報を知っておかないと優秀な指揮官として活動することはできない
特に軍艦の艦長や司令官をするなら、常に最新情報を手に入れて部隊の指揮命令をしなければならない
どれだけ難しいことであってもできなければ守ることはできないのだ