午前10:28 北区西部区域 ノースウエストクラナガン貨物ターミナル パトロール事務所

サイノスは貨物ターミナルで引き続き貨物列車の確認作業を行っていた
今のところは不審な貨物列車はない。しかし貨物列車の出入りが激しいことはわかっている
最大限の警戒のために貨物ターミナルに出入りする貨物の確認を続けなければいけない

『ノースウエストクラナガン貨物管制からターミナルへ。引き続き警戒態勢を取れ』

「迷惑な話だね。聖王教会関係のトラブルはおまけがつくぐらいに」

『中央本部からSA25へ。ベルカ州に向かって自動車燃料を満載したタンク貨物列車が通過する』

そのタンク貨物列車は全部で45両の編成になっている。
積載物は連絡があった通りに自動車燃料を満載しているタンク貨物である。
クラナガン市からベルカ州南部地方にある貨物ターミナル駅に運ばれることになっている
ベルカ州内でも油田や石油化学コンビナートがいくつもあるので、わざわざクラナガン市から輸送する必要はない
だがベルカ州のエネルギー資源の安定供給のためには必要と判断されて輸送される

「ノースウエストクラナガン貨物ターミナルで停車予定になっているのか確認はできているのかな?」

『一時的ではあるが貨物列車の積み荷確認のために運行停止指令を発令している。ただし10分前後で確認作業を行え』

10分で45両のタンク貨物のすべてをチェックするのは難しい。
しかし貨物列車の運行に影響が出ることはあまり良いとは言えない
指示されたタイムで何とか調べるしかないのだ。サイノスは了解と返答する

「無理を言ってくるのはいつものことだけど」

彼はそんなことを愚痴りながらもこの貨物ターミナル駅に入線次第すみやかに貨物チェックを行うことにした

『クラナガン市政府はクラナガン市準備銀行が保有していた多くの次元世界国の国債を金融市場に売却』

『連邦準備銀行も同じような動きをしたことで、金融市場にはかなりの金額になる債権が流動してる』

『これによって国内の通貨供給量が大きく減少すると見られている』

本当にそれができれば良いのだが、実際にはそれが難しいことはわかっている
それでもバブル経済を抑制するためには必要なことであることはわかっている
何がなんでも問題解決をしなければ大きな影響が出ることは確実であることは間違いない

「トラブルが拡大しないことを願いたいけど現実的には難しいね」

ちなみにベルカ州とクラナガン市の間には石油と天然ガスのパイプラインが設置されている
運用しているのはミーミルエネルギー社であり、原油は1日で300万バレルを輸送することができる
ベルカ州とクラナガン市の石油や天然ガスの安定供給のために運用されている
ベルカ州内で採掘された原油などは昨年までは東隣のマリネット州へパイプラインで供給されていた
その他にもベルカ州の南隣にあるフローレンス州にも向かってパイプラインが存在していた
しかし今後の安定供給を継続的に行うためにミーミルエネルギー社は石油と天然ガスのパイプラインを建設。
今年からベルカ州とクラナガン市を直通で結ぶパイプラインの運用が開始された
これによりベルカ州内では新しい石油や天然ガスを安定供給することができる
それに関してはすぐに効果は出ないことはわかっているが、
運用に問題が生じないで安定供給できれば石油や天然ガスの安定供給に貢献が可能になる
クラナガン市にとっては以前はフローレンス州やマリネット州を経由する供給で行われていた
今回の新たなパイプラインの運用開始によって安定供給にかなりの貢献になることは間違いない

「とにかく貨物列車の積み荷チェックを最優先で行うしかないね」

サイノスは忙しくなることはわかっている。積み荷チェックには10分以内で行わなければならない
難しいことはわかっているが何とかするしかないのである。
こちらは警戒態勢を最大級に引き上げて対応しているのだが、
時間的余裕がないならなおさら大きな影響が出るかもしれない

『こちらノースウエストクラナガン貨物管制。まもなくベルカ州に輸送される自動車燃料を積載した貨物列車が入線』

入線すると同時に10分以内で貨物チェックを行うようにと指示が出された。
鉄道運行に支障が出るようなことは最小限にすることは当然である
クラナガン市とベルカ州を結んでいる鉄道路線はもう少しで完全複線化ができる
今は途中でいくつかの信号場を運用して可能な範囲で列車運行の便数を増加させている
それでも限界があることはサイノスもわかっている。何とかするしかないことも十分なほどにである

「少しは作業が簡略化されたら良いんだけど、ここを出入りする列車が多いのは仕方がないよね」

『北分署から各員へ。ノースウエストクラナガン貨物ターミナルに爆弾を設置したとの通報を受電』

大至急確認するようにとのことだった。
問題がさらに増えたことにサイノスは面倒なことが増えたことにため息を出した
こんなトラブルが今日だけで一体何件も発生しているのかと

『ノースウエストクラナガン貨物管制から各員へ。自動車燃料を積載しているタンク貨車45両が入線する』

「SA25からノースウエストクラナガン貨物管制へ。入線は何番線になる?」

『21番線に入線する。入線完了後は10分間の一時停車後、この貨物ターミナルを出発する』

本当に10分しか時間がないことは明らかである。その短時間で問題があるなら調べなければならない
この貨物ターミナルはベルカ州だけでなく、北隣にあるマリネット州や西隣のフローレンス州にも路線がある
他も貨物ターミナルと比べると少し広さなどの面では小規模になる。
それでも広さは南北2km×東西3kmになる。これを狭いと考えるかは人それぞれではあるが
サイノスはかなり広いと認識していた。実際に貨物コンテナを使った麻薬や銃火器などの密輸は多い

『SA25へ。33番線で停車している貨物列車に異常は確認されていない。出発許可を要請する』

33番線にいる貨物列車はフローレンス州北部地方に向かう
主な積載物は家電製品となっていた。パトロール捜査官や刑事たちがあらゆる方法で確認したが異常はなかった
ならもう運行を止める理由はない。速やかに迅速に運行再開を指示することは当たり前である

「こちらSA25。出発を承認する」

『こちらノースウエストクラナガン貨物管制。33番線の貨物列車の運行を再開する』

それと入れ替わるように21番線に貨物列車が入線してきた。
サイノスはすみやかに貨物列車の積み荷確認を行うように指示を出した
今はまさに時間との戦いなのだ。貨物列車のコンテナであってもコンテナ内に何があるかはわからない
確認が必要なことがあるならすべて確認するしかない。
短時間でも実行しなければならないことはサイノスも把握している
問題解決のためには必要なことであることは間違いない

『ノースウエストクラナガン貨物管制から各員へ。21番線に貨物列車が入線中。警戒せよ』

サイノスは確認作業を素早く行うようにと指示を出す
その一方で彼はニュース番組を見ていた

『次元世界連合安全保障理事会は聖王教会から提出された強制捜査の一時停止について審議を行った』

結果は言うまでもない。否決された。

『安全保障理事会と次元世界連合総会は全会一致で否決決議を出しました』

『また安全保障理事会は聖王教会の国際組織に関する特例を一時的に停止するべきではという審議が行われています』

国際組織という立場を失えば聖王教会は完全に機能停止などになることが想定される
聖王教会は国際組織という立場を失うことを恐れている
もし次元世界連合が国際組織という権限をはく奪、あるいは一時的に停止すれば大きな影響を受ける
それだけに国際組織という立場を失うことを何としても防ごうと必死なのだ
国際組織という立場を失う条件として次元世界連合総会や安全保障理事会で可決決議が必要になる

『次元世界連合では総会や安全保障理事会の会合で聖王教会の国際組織の権限はく奪を議論』

もうこれで何度目になることになるか。
同様な議論は何度も行われているが聖王教会は今は国際機関である。
国際組織の権限はく奪についての議論を求めるのは当然だ。
すでに聖王教会へ与えられている国際組織としての権限を一時的に停止されることはほぼ確実。
次元世界連合加盟国の150国の内、現在次元世界連合総会では125ヵ国が可決に動いている

『次元世界連合総会で加盟国は聖王教会の活動制限を検討していることもあるようです』

活動制限がかかってしまうと大きな影響が出てくることは間違いない
今は聖王教会の活動は次元世界連合の調査を受け入れることで一定の承認を得ていた
さらに活動制限がかかってしまうと大きな影響が出ることは当然である

『聖王教会から次元世界連合に派遣されている外交官は聖王教会への調査を認めるとしています』

これは聖王教会の国際機関としての権限はく奪を阻止するために交渉に出ているのだ
もし国際機関としての立場を失うと聖王教会の活動に大きな影響が出るのは間違いない
はく奪されてしまうと、国際機関としての立場に戻るまでには多くの時間と手続きが必要になる

「聖王教会は今や権限を失うかどうかの瀬戸際だから必死だね」

サイノスは金融市場で聖王教会債の取引について確認した
JS事件後からずっと聖王教会債の取引価格はかなり暴落している。
次元世界通貨基金が安値で買い上げた時空管理局債と異なり聖王教会債の取引に参入する投資家は存在しない
仮に購入を検討している投資家がいたとしても召喚されずに債務不履行になれば投資額の回収も難しい
そんな危険な債権を誰が引き受けるものか。
債務不履行になることが分かっている債権で取引するのはよほどのチャレンジャーである
実際のところ聖王教会債の取引価格は暴落が続いている。そのため売りが殺到して取引価格がつかない状況。

「誰が後始末を引き受けるかが問題になることは確実だけど」

サイノスは今後のクラナガン市内にある聖王教会関係施設で大きな動きがあるのではないか考えた
今はベルカ州西部地方での騒動だけで何とかなっている。
万が一、市内で状況が悪化すれば大きな影響が出ることは確実になってくる
そうなる前に対応するのはクラナガン捜査局の任務である。
クラナガン市と近隣州の防衛を担っている港湾パトロールはさらに混乱することは事実である

『中央本部から各員へ。クラナガン市内に存在する聖王教会関係施設の監視を強化せよ』

その無線を聞いて彼は大きなため息をついた。いよいよ本格的なトラブルになることが確実であるからだ
問題をできるだけ小さなうちに対応しないと大きなトラブルに発展することは確かである

「危険になることは間違いない」

『クルック地区分署から中央本部。こちらの警戒配置のために応援人員を手配の要請を出す』

次元世界連合本部や次元世界連合関係組織だけでなく時空管理局本部が存在するクルック地区、
その地区や近隣地区の警戒を厳重にするのは当然である
もしここでテロが起きたらとんでもないことになりかねない。
国際機関が多く集まっているだから当たり前の判断であるが

『中央本部からクルック地区分署へ。現在西分署から200人のパトロール捜査官を手配中。さらに必要か?』

『状況判断では極めて危険とクルック地区分署は考えている。さらに応援を要請する』

どこまで問題が拡大するか想定して対応しなければいつかは暴走してしまう
問題解決のためには安全確保が求められることはわかっている。
だがそんな準備をしている時間があるかと聞かれると難しいであることはわかっている

『中央本部からSA25。緊急行動指令の発令が想定される。スタンバイされたし』

緊急行動指令という指示にサイノスは思わずかなり状況の危険度が最高レベルになるかと感じた
どれほどのトラブルが発生してくるかは全く想像できない。
ちなみに緊急行動指令のことをクラナガン捜査局に属した者であればある略語で分かる
通称:EAM。緊急行動指令はそのように言われている。
これが発令されるとあらゆる業務より最優先で対応することが求められてくる

「こちらSA25。EAMの内容は開示できるのかな?」

緊急行動指令の内容によっては大きな変化があるかもしれない
被害を最小限にするためにも状況を把握するのは当然である

『EAMの内容はノースウエスト貨物ターミナル内でのテロ攻撃の恐れがあることが想定されるためである』

この連絡を聞いて本当に危険地帯のど真ん中にいることが分かった
テロ攻撃が本当に実行されたら極めて危険である。どのようなテロ活動をしてくるかわからない

「何が起きるかわからないというのが一番困った問題になりそう。ここは知り合いに連絡してみるしかないね」

サイノスが言う知り合いとは諜報機関に所属している友人である
正確には港湾パトロール安全保障局などにいる人脈だ。今はそれを使う方がいろいろと都合が良い

「ノルマン・ディーズ部長に連絡してみるしかないね」

ノルマン・ディーズは港湾パトロール安全保障局でテロ対策部の部長をしている
テロの情報関係であれば彼の耳に入っているはずだ。そこから情報を得ようというのだ

「電話に出てくれると助かるけど」

サイノスは少し無理があるかと考えながらも連絡を取ってみた

『早速連絡してきたか。さすがはトラブルのど真ん中にいる人間は違うな』

ノルマン・ディーズはサイノスからすぐに連絡が入ってくると考えていたようだ
さすがはテロ対策部長をしている。情報の命は鮮度。
先を見据えて行動することが求められるだけに素早い反応である
サイノスがいる場所はいつ何が起きるかは全く想像できない状況で、
リスク回避のために安全確保が求められることは間違いない

「ノースウエストクラナガン貨物ターミナルでどんなテロ攻撃が想定されるのは間違いないのかな?」

『情報によると間違いないだろう。警戒しろよ。貨物ターミナルでは何が起きるかわからないからな』

港湾パトロール安全保障局がテロ情報をつかんでいるならほぼ間違いなく何かのトラブルが起きることは確実である
被害を最小限にするためにも連係プレーが必要になることは確かになってくる
管轄権争いをしている暇などがあるはずはない。
今はクラナガン市内の安全保障を守るためには何としても対応が必要だ

『ノースウエストクラナガン貨物ターミナルに入線する貨物列車に爆弾を積載しているとな』

それはあまりに穏やかな話ではない。何が起きるかは全く想像つかない
もしここでテロ攻撃が実行されたら、何が起きるかはわからないとなるならなおさらである
問題解決のためにはいろいろと手を尽くすことが求められてくる

「こっちで問題解決するには時間がかかるけど、最新情報では何かつかんでいる?」

『何もわからないことが大きな問題になることは確実で、何としても問題解決のために必要な方法が必要だ』

クラナガン市内でテロが起きれば犯罪やテロなど、
それらのトラブルにクラナガン捜査局として抑止力に効果がないことを証明することになる
そうなれば更なるテロ行為が起きるかもしれない。
だからこそ何としてもテロにつながるなら起こされる前に止めなければならない

「こっちでもなんとか対応できるように手配をかけてみるけど、どこまでの攻撃を仕掛けてくるかわからないと」

手の打ちようがないことはサイノスもわかっている。
どれほど難しいや無謀な事案であっても抑止力のある法執行機関として見せつけなければならない
クラナガン捜査局は犯罪やテロ行為の抑止のために存在することを、
攻撃をしてくる犯罪組織や反政府組織に分からせなければならない

『中央本部からSA11。機動六課組の移動に関して警戒態勢を厳重せよ』

「ラジェットも本当に大変だね。彼らの警護を行う立場だけに負傷させたら彼の任務遂行ができないから」

サイノスの意見はしっかりとしている。
もし機動六課組に少しでも傷がつけられるようなことになればラジェットは任務遂行ができなかった。
そういうことになるから何が何でも負傷させることは許されない。
確実に安全な状況で中央本部に移動させなければならない

『SA11から中央本部。こちらはクラナガンハイウェイから一般道を利用して中央本部に向かっている』

その方が安全であることはサイノスもすぐに理解した。
クラナガンハイウェイを利用して中央本部に向かえば時間的には早く移動することはできる
だが安全性を考慮すると危険になることは多く発生するかもしれない
そんなことになる前に止めなければならないのだ


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中央パトロール本部庁舎 8階捜査部オペレーションルーム

『ミッドチルダ連邦上下院は大統領から要請があった国債の発行を可決決議を出しました』

『これを受け連邦財務省はすみやかにミッドチルダ連邦国債を発行するとのことです』

連邦政府が発行する長期国債は額面金額で300兆ミッド
1年物の短期国債は100兆ミッドになる。合計すると1度の400兆ミッドの国債を発行する
多くの投資家は連邦国債は極めて安全性が高いことから購入希望が殺到している
国債への買い注文が多すぎて金利は長期国債は10%だが、現状ではかなり少なくなっている
短期国債も同じで買い注文が殺到していることから金利はそれほど高くない
今後の動きはまだわからないが買い注文が殺到し続けることは投資家から見れば明らかだ

「ワンワールドグループ企業に投資をしていた投資家は苦労するわね」

シエルは正面スクリーンに映し出されている報道番組を見ていた
金融事件が発生することが予想されるだけに情報収集を行うのは当然である
このような国債などの発行に関連してインサイダー取引が行われることは頻繁にある
もちろん金融事件の捜査は連邦捜査局などの担当になるが、
中央パトロールでも市内に拠点を持つ金融機関に関係するなら捜査を共同で行うことは珍しい話ではない

「ああ、ワンワールドグループ企業が破綻して多くの財産を失った投資家はかなりの人数だからね」

ウルも同じようにオペレーションルームにいた。
確かにワンワールドグループに投資をしていた金融機関や個人投資家はかなりの負債を抱えるケースもあった
最も負債を抱えた個人投資家の中には自殺という道を選ぶ者も存在した
負の遺産は今も多くの人々に影響を出している

「ワンワールドグループに投資をしていた人物や金融機関は大変ね。聖王教会と密接な関係があった企業もそうだけど」

シエルの言う通りだ。どちらについても多くの財産を失った人物や投資企業もは多い
自己破産を選ぶしか道がなく、プライドでそれができなかった関係者はすべてを失って自殺した

『ミーミルパワーはクラナガン市とベルカ州を接続している送電設備が完成したことでベルカ州に電力供給ができると』

それはベルカクラナガン超高圧送電ラインが2つの送電ラインが完成。
1つ当たりの送電能力は最大1億6000万KWになる。それが2つもあることで最大3億2000万KWを送電できる

「ベルカ州内で発送電が停止中は州の西部地方だけね」

クーデターを起こしている連中はベルカ州西部地方の各種発電所と送電を完全に停止している
今は携帯情報端末を使った通信については無線基地局のバッテリーで稼働している
しかしそのバッテリーは通信基地局で利用される通信量によっては対応想定時間は短くなってしま
つまり通信基地局の機能も電力供給が完全に止まると機能停止になるのだ
それは極めて危険な状況になることを示している

「シエル、何を考えているのかな?」

「私はどんな手段を使っても捜査部の仲間を守るわ。今は最も懸念しているのはミカだけ」

ミカはベルカ州に向かっている。
エバスト・ヴォルートがかなり危険な状況にあったことはわかっている
犯罪組織の摘発にはかなりの苦労がある。下手をすればあらゆる証拠と証人を抹消してくる
消されてしまうと組織犯罪の捜査は極めて難しくなるのは当たり前である
それに聖王教会の関係者と関係があったならこちらがどの程度の情を持っているかが知られる恐れもあることは事実だ

「ベルカ州でクーデターを起こしている彼らにミカが殺されると?」

ウルの質問にシエルは可能性は捨てきれないと回答した
シエルは機動六課組の身柄がこちらに移る準備をしているタイミングと連動するかのように騒動は起きた
裏で何かがあるのかもしれないと考えるのは当然である

『ワンワールドバンクは破綻したことを受けて、同銀行に預金をしていた顧客は連邦地方裁判所に当時の幹部を告発』

ワンワールドバンクに預金をしていた顧客はペイオフによって1000万ミッドまでしか預金が保護されない
もちろん多くの預金者は1000万ミッド以下の顧客も多い。
だが1000万ミッド以上の預金をしていた顧客にしてみれば財産を失うことになる
預金保護が行われる1000万ミッド以上の預金を何として取り戻したくて仕方がない
金を奪われるということはそういうものである。自分の財産が減る状況に納得する者はいないだろう
だからこそ必死なのだ。少しでも良いから財産を回収したい
だからこそ、ワンワールドバンクの幹部に対して民事訴訟を起こしたのだ

『連邦地方裁判所に告発したことを受けて次元世界連合は一時的な資産の流失を抑えるために財務保護命令を発表』

裁判の結果が出るまではワンワールドバンクが保有している様々な財産の売却を一時的に停止する
これは次元世界連合の全加盟国が参加している金融危機対応条約に基づくものだ
金融危機対応条約にはさまざまな次元世界国で活動しているグローバル企業を対象とする告訴が発令された場合。
その企業の資産などの流出を止めるために規定が定められている
裁判で結果が出るまでは告発された企業の財産処分はすべて停止することを国際条約で定めている
金融危機対応条約に加盟している次元世界国に存在する告発された企業の財産売却が禁止される

『次元世界連合経済社会理事会では緊急会合が開催されて次元世界連合の全加盟国に対して財産保護を要請しました』

『また次元世界決済銀行も緊急の議論を開始。判断結果が出るまではワンワールドバンクのすべての資産凍結を発令』

次元世界決済銀行は各次元世界の中央銀行間の通貨売買・預金の受入等が主幹業務。
次元連合加盟国よりも多い国が加盟している。また次元世界間の資金の決済も主幹業務となっている。

『次元世界通貨基金でも緊急会合が開催。ワンワールドバンクのすべての資産凍結を行うことでおおむね一致しています』

ここまでになるとワンワールドバンクのすべての財産保全が決定である
本来であれば引き出すことができる1000万ミッドまでの引き出しも無理になる
国際機関での議論が終了して問題ないという判断が出るまではだが

「クラナガン市内にあるワンワールドバンクの支店で騒動が少しずつ起きていることを考えると警戒は必要ね」

シエルの発言にウルも同意した。問題はワンワールドバンクが抱えていた大量の預金だ
時空管理局員の給与振込先として最も多くの時空管理局や関係者が利用していた
それだけにグループ企業が破綻するとすぐに預金を引き出そうとする者はかなりの人数になったが、
次元世界連合がまずは財産保全準備命令を発令したことから引き出しは完全に止まった
おまけにワンワールドバンクは大量の時空管理局債を抱えていたことも悪影響につながる原因でもあった
紙くず同然の価値しかなくなった時空管理局債での資金運用に失敗して、
ただでさえ財務状況がJS事件後に悪化していたことから預金引き出し準備資金の確保ができなかった
おかげで影響は拡大していた。元々時空管理局の影響が強い企業グループだ
ワンワールドグループの企業には多くの退役時空管理局員が天下りをしていた
つまり簡単に汚職ができる状況であったことで無駄なコストがかなりの金額になっていたのだ
今の時空管理局は天下り禁止に関する取り決めがされているので退役時空管理局員の天下りはすべて禁止されている
今後の展開についてはほとんど決まっていないが、天下りした退役局員は汚職などで調査を受けている

「天下りを容認してきたなんて無駄なお金をどぶに捨てるようなものね」

「同意見だよ。組織というのは時間が経過すればするほど腐敗してくる。シエルも予想できていたことだよね?」

「まぁね。クラナガン捜査局規則には天下り禁止規定があるから簡単にはできないけど」

クラナガン捜査局規則では勤務中及び退役後に関しても様々な規則が定められている
クラナガン捜査局員でも時空管理局員と同じで天下りをすることを許さないためである
ちなみにクラナガン捜査局と取引があった企業への再就職に関して、
5年以上が経過しなければその企業に雇用されることを許されない
もし天下りをした場合は厳しい罰則が待っている。
例えば罰金や年金を受け取り続けることが認められなくなる

『港湾本部から各員へ。ベルカ州内の航空管制を連邦航空局から一時的にベルカ基地に移管する』

国内の航空管制は通常は連邦航空局の担当である。
しかし軍事的な目的な動きがあると連邦軍や港湾パトロールが担当することになる規則
国家の安全保障に影響されるような事であると連邦国防省と港湾パトロールに管轄権が移管されてくる
そのように規則が定められていることは、国防官僚をしている政府高官は理解している

『フローレンスパワーネットワーク社は新たに900兆ミッドの社債の発行を決めたことが関係者から流れています』

フローレンンスパワーネットワーク社はフローレンス州内で送電網の管理運営を行っている
基本的には送電網の管理運用が中心の業務である。しかし新たに発電所の建設を行い発電業務も行おうとしている
簡単に言えば事業拡大を狙っているのだ

『この社債の発行理由はフローレンス州内の送電網の拡充に使うためであると』

シエルとウルは同じことを考えていた
国内の発送電に関してミーミルパワー社が多くの事業を行っている
ただし他の電力会社も発電だけなら送電網の整備や送電網の運用を専門に行っている企業は送電網の設置を行っている
そのために必要な資金確保のために多くの電力会社は社債などの発行を大幅に増加している

『国内の債券取引を行う金融市場では活発に取引が行われていることは間違いないと』

『今後の動きに関しては全く想像できないことから金融市場への影響がどこまで出るかは予測は難しいと』

ミッドチルダ連邦国内にある金融市場では数多くの民間企業が発行した社債の取引が増加。
何度も言うが、ワンワールドグループが破綻したことで、
新しい投資先として電力会社や資源開発企業が発行する社債や株式に買い注文が殺到している
JS事件後は時空管理局に物資を納める企業の競争入札が頻繁に行われることから、
入札によって事業拡張に必要な資金確保のために社債や新規株式の発行が大幅に増加。
多くの金融機関や個人投資家による売買は極めて活発に行われている。

『クラナガン金融債権取引所で行われている取引額は以前に比べて3倍以上に跳ね上がっています』

『ミッドチルダ連邦準備銀行は過熱しすぎる取引については一定の制限を設ける方向で議論が進んでいると発表』

クラナガン金融債権取引所はミッドチルダ連邦国内での債券取引を中心に扱っている金融取引所。

「経済関係の事件が起きる可能性は極めて高いね」

債券市場を利用した経済事件が発生すると大きな動きになることは間違いない
ワンワールドグループ関係のトラブルだけでも対応に苦労しているのに、
さらにトラブルが増加するととんでもないことになりかねない。
そうなれば規模が大きな事案が発生するかもしれない。

『ベルカ州政府が発行した州債の取引が活発に行われています』

「ベルカ州内の法執行機関でも、経済事件の対応を行ってもらわないといけないわね」

「ミカは大丈夫かな?」

「ミカが簡単に死ぬような人間だと思う?仮にそれしか道が無くても必ず最後の通信はあるはず」

シエルが言った最後の通信とは遺書めいた発言のことを示している
そんな通信を受けたらその通信内容をすべて記録。後の捜査に役立たせることになる
もちろんそんなことにならないことで動くが常にリスクは付きまとうものである
最悪の場合はそういったことが起きることを大前提にして行動することが求められるのだ
それが法執行機関の役割であり捜査の役に立たせることができる

『ベルカ基地管制から港湾本部。ベルカ州西部地方で発生しているクーデター騒動に対抗するための配置が完了』

『港湾本部からベルカ基地管制へ。ベルカ州西部地方でクーデター騒動を起こしている集団に対して攻撃準備を維持』

いつでも攻撃できるようにスタンバイするようにとの指示が出ていた
一方である経済専門のニュース番組ではある情報が報道が行われている

『ベルカ州北部地方のノースベルカ油田で数多くの資源開発企業に警戒情報が出されています』

ノースベルカ油田にはベルカ州政府の出資企業だけでなく、民間企業も資源開発を進めている
ベルカ州政府が出資している企業はベルカオイルカンパニーと言われている。
ノースベルカ油田だけでなくノースウエストベルカ油田の資源開発も行っている
ベルカ州内のエネルギー資源安定供給には欠かせない存在であるのだ

『ベルカ州上下院議会は連邦政府と連携して州内の武装勢力に対抗するための軍事展開を要請』

『港湾パトロールにも州内の安全保障を維持してほしいと』

「ベルカ州内の状況は最悪ね。もしこのままの状態が継続すれば原油取引価格の上昇は確実であることは事実よ」

「シエル。まさかと思うけどあれを発動させようと思っているのかな?」

彼女はあることを考えていた。それはシエルが政治に介入することだ
もちろん許されることではない。法執行機関の人間が政治に関与するのは厳禁とされている
しかしクーデター騒動がベルカ州の他の地域で起きた場合の対応策を考える必要がある

『ベルカ州商品取引所では石油や天然ガスの取引価格が高値で動いていることから警戒をしています』

『一方でベルカ州証券取引所では資源開発企業の株価は大きく上昇。今後の展開が全く予想できない状態です』

「まぁ投資家っていうのは生き物だから、そこに利益があれば食らいついてくることはわかっていたけど」

確かにシエルの言う通りで投資家というのはわずかな商機があるならそこに参入することは当たり前のことである
だからこそ、そこに投資をすることは当然であるが。それにしても大きな値動きをしているとシエルは考えていた
一部の企業の株価は1.5倍にまで上昇しているケースもある。
これだけ株価が値上がりすると反動も大きなものになってくることは、
少しでも経済のことを分かっている者なら理解しているはず。
それほどまでに大きな動きをしているのだ

「それにしても問題を抱えていることは間違いないね。ベルカ州では」

ウルの言葉は的中している。今のベルカ州にある州商品取引所や州証券取引所では様々な取引が行われている
銀行や投資銀行だけでなくヘッジファンドもかなりの資金を動かしている。
その情報は連邦証券取引委員会からの報告書を見ているのでよく理解している

「連邦証券取引委員会は不正な取引がないか監視をしているそうだね」

「ええ。一応こっちでも監視をしているわ。連邦証券取引委員会には秘密でね」

「相変わらず彼らの秘密主義には困ったものだね。まぁ元々彼らの縄張りをおかすこともあるから当然だけど」

時空管理局が閉鎖主義であったことはそれは他の組織でも当てはまる
だが時には互いに手を組んで捜査を行う。その際に管轄権でもめることは日常的に発生する
こればかりは仕方がないとしか言えない。管轄は事件の内容によっては大きく異なってくる
もしくは同じ管轄をしている法執行機関同士なら余計にである。
問題を抱えるのは当たり前なのだ

「SECは何て言っているのかな?」

「彼らの言い方は1つよ。こちらの管轄内を好き勝手にするな。いつものことよ」

ウルはそれはそうだねと回答した。法執行機関同士の対立ではよく言われることだ
管轄権争いをして事件捜査が遅れることもあるのだから

「金融関係の事件捜査は連邦捜査局か証券取引委員会の管轄になることが当然だから」

彼らの言いたいことはよくわかっているつもりよとシエルはため息をつきながら話した
確かにそうかもしれないが問題が出ないように対応することが私の職務だから、
あとは交渉次第ねとシエルは言うとオペレーションルームを出ていった

「ずいぶんと物分かりが良いな。シエル首席のことだから何かとんでもないことを考えているのかもしれないな」

オペレーションルームの管制官であるギブリの言葉にウルもそうだねと話した
いつもなら少しは文句が出るところが。
それがなかったということは何か恐ろしいことでも考えているのかもしれない
シエルは叩かれたとしても何も抵抗しないで引くような人間ではない。
必ず何か奥の手を用意をしているはず。それも誰もが驚くような対応方法をしてくるかもしれない
そんなことは日常的なことなのだ。

「ウル主任はどう考えているのか教えていただけますか?」

ギブリは機動六課組の受け入れについて捜査部内であっても良い思いをしていない者がいることはわかっている
誰だって邪魔なお荷物を抱えるようなことはしたくない。ましてや機動六課組というまるで不発弾のような人材だ
教導担当になるものにはすでに個人データを渡している。あとは彼らの対応次第だ
任された以上は殺されるような危険地帯に送り込むようなことはしないだろう
だが何を仕掛けてくるかは全く想像できないことは事実である
任務達成が最も求められるのが捜査部であることはわかっている。
表面上は取り繕っていたとしても実際には邪魔な存在だと考えている捜査官が多いことも事実だ

「僕は捜査部3係の責任者だから明確な立ち位置について話せる立場にないよ」

もしウルが受け入れ拒否を行えば賛同する同僚は多い。クラナガン捜査局に属する者は真実を。
時空管理局にある巨大な闇を解明するために必要なことであると割り切れる者もいる
しかし、そのように割り切れない者も存在する。
機動六課組の受け入れに関しては厳しい判断を求められる者もいることを知らなければならない

「どうして捜査部はいつも貧乏くじを引くようなことになるのかわからないものだな」

ギブリはそういうと情報収集を継続した

「こればかりは僕に言われてもね。最後に決定を下すのは国民が選んだ政治家だから。僕たちがあらがうことができない」

民主主義をはっきりと主張してこなかったからこそ時空管理局が暴走することになったのだ
今こそ国民が選挙で選んだ政治家によって民主主義が必要である

『連邦上下院議会では自動車燃料税を現在の1リットル20ミッドに対して増税を行うことで審議に入るとされています』

現在の自動車燃料税は連邦税として1リットル20ミッド。
州税として高いところでは10ミッドを課税していることが多い
国内で使用されている自動車燃料には石油製品が含まれているので、
原油価格が上昇すると自動車燃料も連動して高くなる。
クラナガン市内ではおおよそでは自動車燃料価格は1リットルあたりで100ミッドになっている
連邦上下院議会だけでなくクラナガン市議会でも増税を検討している
連邦議会は1リットル当たり10ミッドほど。クラナガン市議会では5ミッドの増税を検討している
増税されるかどうかは今の段階ではわからない。だが増税の可能性が全くないとは言えない

『クラナガン市上下院議会でも市自動車燃料税に関して5ミッドの増税を検討しています』

『増税法案が可決されるかは不明ですが、今後の検討次第では大きく動くことも想定される』

石油に対する税金はいくつかある。
採掘している石油そのものにクラナガン市政府は1バレル当たり200ミッドの課税をしている
1バレルは約150リットルであることから、1ミッドから1.5ミッドの税金が課税されている
これは石油資源採掘でほぼ同時に採掘される天然ガスにも1立方メートルに5ミッドが課税されている

『この増税法が審議されるかどうかについてはクラナガン市議会の財政・税制委員会で審議がされてからしています』

『一部の市議会議員では増税によって市内の景気がバブル経済になることを抑制する効果があるとしています』

だが増税に踏み切れば市民の人気は下がることはわかっている。
次の選挙にも影響することから慎重な判断が必要になる
今後の動きがどうなるかは全く想像できない。結果が出るにはそれなりの時間が必要になる
議員も増税に踏み切れば次の市議会選挙で落選する可能性は高まるだけだ
簡単に増税法案をは良そうですと容認するわけにはいかない。
しっかりと議会で審議を行って正当性が認めることができれば法案から法律に制定される

『クラナガン市議会議員は増税法案についてしっかりと議会で審議を行うとしています』

『市長は増税法案が市議会で可決されれば、速やかに承認するかは議会でどれほど賛同を得られるかによると』

つまり市議会でどれほどの賛同する議員がいるかによって速やかに承認するかはわからない
サンディ・マウント市長は慎重に検討するとのことだ。
仮に市長が賛同しない時、市議会で3分の2以上の議員が再可決されれば強制的に法案は承認される

『自動車燃料税のさらなる増税に関してサンディ・マウント市長は慎重な判断をしなければならない法案であると』

「市長は大変だね。政治の駆け引きは軍事組織の駆け引き以上に苦労する事案だから」

軍事組織内の駆け引きと政治の駆け引きは大きく異なってくる

『連邦議会では、さらに連邦消費税率の引き上げについても検討していることが分かりました』

ミッドチルダ連邦国内の連邦消費税は現在は10%になっている。
州政府・郡政府・市政府も消費税を課税している。国内の基本的な消費税は15%から20%になっている
連邦政府はさらなる消費税の引き上げを行うことで国内の景気過熱を課税という財政政策で止めようとしている
自動車燃料税と同じで簡単に進む事ではないが、今後の展開は全く予測できないことは間違いない

「国内はもちろんだけど、時空管理局の影響があった管理世界の政府は時空管理局よりの政治家が多かったから」

時空管理局が様々な権限を握っていた全盛期の時には管理世界の政治は時空管理局よりの政治家が多かったことは事実だ
彼らは次元管理党という独自の政党を立ち上げて時空管理局の活動が行いやすい政策を作ってきた
しかし時空管理局の闇が明らかになったことで、次元管理党という政党は時空管理局員という強力な後ろ盾を失った
それだけではなく、時空管理局から数多くの政治献金を受けてきたその中には違法な資金も含まれていた
摘発捜査は多くの法執行機関で行っている。

『FBIはミザート・ペイスト元連邦下院議員を政治資金の違法収集に関する汚職で摘発したことを発表しました』

『ミザート・ペイスト氏は連邦下院議員として職務遂行をしていた際に時空管理局員から多額な献金を受けていました』

『政治資金として報告していた金額よりも多額な資金提供を受けていたことを示す明確な証拠を確保したとのことです』

「政治家も大変だな。今までは時空管理局というバックがあったが、それが大きな懸念材料になって摘発されている」

ギブリの言う通りで判断を誤ったがために政治家人生を失った者は多い
今後の道はかなり厳しいコースになってくる。政治家生命どころか、刑務所に放り込まれることにもなる
そうなればもう2度と政治家として戻ることなどできるはずがない
今後の身の振り方を考えて保身に走るしかないかもしれないが、それもまた愚策になることは確かなことである
捜査によってあらゆる違法な資金は押収されてしまうのだ。
つまり今後の生活資金も失って何も残らなくなってしまうことは確実である

「摘発する立場から言わせてもらうなら、波風が荒立つ方が何かと好都合だけど」

証拠を消すような行動をすれば、それが法執行機関に察知されて身動きが取れなくなっていく
まるで首を絞められるのと同じで息の根を止められていくのだ。
最後にはすべてを失い何も残らない

「本当に厳しいね」

『次元管理党は政党活動に関して様々な捜査を受けています』

時空管理局とべったりとした関係だった次元管理党に属する人物はすべて捜査対象になっている
またJS事件後に行われた様々な選挙で次元管理党の議員は当選することはなかった
影響はミッドチルダだけではなく、時空管理局の影響が強かったすべての次元世界国に該当する
今は時空管理局と関係を持っていたとマスコミに報道されたら政治家生命は消えてしまう
それどころかあらゆるあら捜しを法執行機関によって行われて、軽犯罪だとしても大々的にマスコミは騒ぎ立てる
状況は極めて悪化する一方であるのは事実である
今後の状況次第ではどれほどの影響が出るかは全くわからない

「ウル主任はどう考えているんだ?次元管理党によって多くの次元世界国政府議会は影響を常に受けていたことは?」

「民主主義が機能していないとしか言えないね。政治家はどこから政治献金を受けているかは気にするものだから」

確かに政治家を続けるにはさまざまなお金が必要になる
だからこそ政治活動資金を獲得しようと必死なのだ。
それができなくなるということは極めて大きな問題にもなる
お金がなければ政治活動は難しくなるのはすべての政治家に当てはまることだ
また政治家は特定の企業や組織を維持するために動くことは許されない
罪なき人々が平和に暮らせるように活動するのが政治家なのに、特定の組織のために動くというのは愚策だ
その行動自体は極めて危険なものになってくる

「平和党も確かに退役したクラナガン捜査局員が作った政党であることは事実だけど」

平和党は確かに退役クラナガン捜査局員が設立した政党であるが、
退役時空管理局員が設立していた次元管理党とは大きな違いがある
それは選挙で選出された以上は人々に平和をもたらすために政治活動をしている。
特定の組織のために動いているのではないというのが次元管理党とは大きく異なるものだ
それに時には超党派で議会運営を行い民主党や共和党とも連携して不正行為の摘発のため、
政治活動のために審議を行っていることも確かだ。
すべては人々に安全で平和な暮らしをもたらすために政治活動をしている

「次元管理党が時空管理局の活動しやすいように地盤補強を行っていたところと大きく異なるからね」

平和党はあくまでも人々に平和をもたらすために政治活動をしている
もちろん連邦議会は多くの地方にある州議会でも民主党や共和党と連携して対応する時もある
常に人々に安心できる生活ができるように政治活動を行い続けている

『民主党と共和党は平和党が提出した次元管理党の関係者が行っていた活動に不正がなかったかを調査する方向で一致』

『今後はあらゆる角度から法執行機関が捜査することを容認する議案を承認しました』

3つの政党が賛成することが決めたらもう反対する議員はいない
もちろん捜査を行うのは法執行機関であるあらゆる捜査機関が連携して行われる
完全な捜査結果が出るにはかなりの長い時間が必要になるがこればかりは仕方がないことだ

『連邦上下院議会では金融引き締め政策を実行するために連邦準備銀行と連携するべきではと議論があります』

『これに関して連邦財務省は無駄な国債の発行は重い積み荷を背負わせる結果になりかねないと否定的な意見が多いです』

本来、必要がないのに国債の発行を行うのは国民にあとあとに借金という重い荷物を持たせることになる
そんなことは許されるべきではないことは財政を知っている者なら誰もが分かるはず
本来であれば今回の300兆ミッドの長期国債の発行も否定的な意見が多くあることは事実であり、
それに国債発行を行う場合はその国債の償還時期に来た時に備えて資金確保も必要になる。
だからこそ乱発した国債発行は許されない。
量的緩和政策として金融市場に資金を供給するために債権を中央銀行が買い入れを行うには一定の制限がある
制限とは連邦準備銀行は国債を好き勝手に大量に買い入れることを認めていない
国債を買い入れするには連邦政府と協議を行い、発行済み連邦国債の50%以下までしか買い入れを認めていない

「まぁ。政治はシエルの仕事だからね。僕は助言をするだけの立ち位置を維持しないと」

ウルは政治的駆け引きをするのは当たり前のことだと考えていた

『中央本部からクルック分署へ。クルック地区と近隣地区に警戒を引き続き維持せよ』


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南区北部区域ハーディー地区5番街5丁目10番地 地区パトロール事務所

ユラザーク・ギャスシーが立てこもっているワンワールドバンクの支店では今も目立った動きはない
何が起きるかは全く予測できないだけにアルシオーネも対応方法に苦慮していた
どんな展開になるかがわからないのは、警戒態勢を維持することになる

「自爆しなければ良いけど」

ワンワールドバンクの支店で立てこもっているユラザーク・ギャスシーが爆発物を持ち込んでいる可能性は極めて高い
もしも備えて近隣地区には避難命令を発令している。
爆発物の規模によってはどれほどの損害が出るかわからないことが最大の理由だ

「財産を失って、もうどうでも良いと思っている退役時空管理局員は多いことはわかっていたけど」

アルシオーネはここまで大騒動を起こすなんてバカとしか評価できない
あまりにもリスクが高すぎることを。ここまで大騒動に起こしたら刑務所生活はわかっていたはず
それだけにどれくらいの武装を保持しているかが最大の問題である

『次元世界連合総会でワンワールドグループの金融関係部門に関して金融封鎖を継続して行うと発表』

金融封鎖というのはワンワールドグループ企業が保有するすべての資産を凍結することを示している
次元世界連合が承認しない限りはワンワールドグループ企業が保有する財産は動かすことを認めない
これは次元世界連合総会が決議した議案なので加盟国は実施が義務付けられる
安全保障理事会と総会で可決された決議案は次元世界連合全加盟国に実施が義務付けられる国際条約と同じだ
問題を抱えているワンワールドグループ企業に関して入念な調査が必要になってくる

『次元世界連合総会の決議を受けて全加盟国はワンワールドグループ企業の財産保全命令を発令』

「ますます後始末が面倒になることは間違いないわね。政治家は現場の苦労なんて知らないのは当然だけど」

アルシオーネの言う通りだ。政治家は無茶な要求をしてくる
現場が対応するにはいろいろと課題があるとしても実行しろと無茶を言ってくる
決断するのは確かに人々が選んだ政治家だ。だが対応する側の立場のことも考えてほしいと誰もが思っている

『クラナガン捜査局から全局員に通達。ワンワールドグループの企業と関係施設に対して緊急行動指令を発令する』

彼女はその無線を聞いてますます問題が複雑になったことを感じた。
緊急行動指令が発令されると対応順序は1番に行うことが求められる
他の作業は一時停止して対応する必要が生じる

『次元世界連合総会で可決された今回の議案に対して反対する加盟国は0であることに関係者からは当然の措置だと』

『いずれにしても金融市場に影響が出る可能性が出ることを想定して各次元世界国政府は対応に追われています』

「状況はかなり危険になったわね。それも今まで以上に」

アルシオーネはため息をつきながら話した。
だがそれはクラナガン捜査局員だけでなく多くの人々が思っていることだ
ここ影響が拡大してくるとはあまり想像できていなかったことも事実である

『連邦財務省はイーストフローレンスバンクが1800兆ミッドの回収が困難とされている不良債権があることを発表』

『この発表の以前からイーストフローレンスバンクには回収不能とされる不良債権があったことは予測されていました』

『しかしこれが確かな事実であることを受けてフローレンス州証券取引所ではほかの金融機関の株式にも売り注文が増加』

『この事案について連邦準備銀行は緊急融資に踏み切るかどうかについては審議を行ってからしか回答できないと』

そのニュース速報を聞いてアルシオーネがどこまで飛び火するかを考えないといけないことを理解した
他の銀行などの金融機関にまで影響すると状況はかなり危険になるかもしれない

「SECの知り合いに情報を引き出してもらうしかなさそうね」

証券取引委員会ではどの程度の情報を把握しているか調べてもらった方が良い
さらに危険な状況になる前に『堤防』を作るためにも

「さすがは捜査部ですね。人脈は恐ろしいほどあるようで」

地区パトロール事務所にいるパトロール捜査官の言葉はまさにその通りだ
捜査部捜査官になる過程では人脈作りは極めて重要になってくる
コネがなければ捜査部捜査官として任務遂行は難しいことも多い

『中央本部からSA33。そちらは依然として動きは確認されないか?』

「こっちは対応方法をいろいろと検討している。だが相手がどのような動きを見せるかは不明な状況が継続中」

今は待機するしかないとアルシオーネは中央本部に報告した
できればこの状況を一気にひっくり返すことができる大きなプランがあれば良いのだが、
現実はそんなに甘くないことは事実。一気に状況改善に必要なプランが必要であることはわかっている。
しかし、そんなプランが簡単に出ることなどありえない

「中央本部へ。強行突入に踏み切るのは危険と判断して警戒態勢を維持する」

『中央本部からSA33へ。もしもの場合には強行突入に踏み切れ。人質の生命を最優先にして行動せよ』

立てこもり犯が簡単にこちらの予測通りの行動に入るかはわからない
もしかしたらとんでもない行動を起こすかもしれないのだ。
人質の生命を最優先にするにはある程度の行動を予測する必要がある
こちらはどのような理由であっても安全を最優先にすることが求められる

「SA33から中央本部。私が乗り込むわ。承認してくれるか確認したい」

乗り込むというのは事実上の撃たれ役を行うことだ
撃たれ役というのは交渉を行う交渉人として活動することを示している
最も犯人と接近する役割なので極めて危険な職務である
人質救出を最優先をしなければならないことは当たり前のことだ

『SA33へ。あまりに危険すぎるので承認するのは難しいと判断する』

当然である。いくら交渉人だからと言ってもあまりにも危険すぎることはわかっている
最悪の場合は自爆することが予測されていることからリスクを膨らませることは少しでも減らすことは重要だ

「1発で大きな動きができるような行動でもしないと承認されないことはわかっているけど」

交渉人は最も危険な行動であるのだ。職員の安全を守ることも管制センターも重要であると考えている
だからこそ簡単な決断ではないことは間違いないということはわかっている
少しでもリスク回避のために、人質の安全確保を今は優先することも重要だ
これでは身動きが取れない状況が続くことは確かなことである

『港湾本部から弾道ミサイル潜水艦に対して弾道ミサイル発射に関する緊急行動指令の準備を発令する』

もし緊急行動指令が準備命令が正式なものになれば港湾パトロールが運用している弾道ミサイル攻撃になる

『クラナガン市政府は市内に拠点を持つ金融機関の動きに注視。金融不安が起きた時は金融市場に資金供給を行うと』

クラナガン市政府が運用しているクラナガン市準備銀行からコール市場に資金供給を行うことで、
金融機関にトラブルが起きた際の影響を少しでも緩和できる可能性を作り出すためだ

『中央本部から各員へ南区西部区域で雷雨の可能性があるので安全確保のために行動を行え』

もし南区で路上犯罪が発生すれば雨によって証拠が流されてしまうことは確実である
そのため、クラナガン市内の気象情報は港湾パトロール気象局が気象観測を行っている
この気象観測で得られた情報は極秘事項にはほとんど該当しないので問題ない範囲で情報を見ることができる
もちろん観測された気象情報は民間企業などにも配信されて利用されている。
情報を民間企業や組織が利用する場合でも費用はかからない。
そのためこの気象観測情報を使う企業や組織はかなり多い

『クラナガン自然保護区分署から中央本部へ。トラブル発生。至急保護区のゲート封鎖を開始する』

『こちら中央本部。内容を送れ』

『内容は自然保護区内で密猟者がいることが確認されたためである。なお捜査部捜査官の派遣要請を求める』

密猟行為を許すわけにはいかないのだ。
何としてもトラブル発生を阻止するためにも自然保護区の出入り口に設置されている検問所の一時封鎖は当然である

『こちら中央本部。自然保護区内の地熱発電所の運転状況を報告せよ』

自然保護区内には数多くの地熱発電が設置されている。市内の電力供給においては重要である
幸いなことに自然保護区内の地熱発電所に問題はない。それは今の段階ではあるが
もしもの場合に備えて対応することが求められることは理解している
自然保護区にある地熱発電所の最大発電出力は1億2000万KWにもなる
環境に影響を与えることがない自然エネルギーを利用した発電なのでコストは低コストで済む
火力発電や魔力精製炉発電などと異なり燃料調達コストがほとんどかからないのが最大の強みだ
低コストで電力の安定供給ができるため重要電源の指定を受けている

『自然保護区にある地熱発電所の警戒態勢は厳重に行われている。今のところは発電そのものに影響はないと判断できる』

仮に自然保護区内にある地熱発電所が止まると大きな問題になる。
そんなことは許されることではない。電力の安定確保は極めて重要だから
地熱発電所を建設して運用しているのはミーミルパワー社だ。
一方でクラナガン市内にある4か所の水力発電所も重要だ
水力発電所を建設して運用しているのはクラナガン市政府である
この水力発電所の最大発電出力は8000万KWにもなる。こちらも重要な電源である
またクラナガン市内から排出されるごみを焼却処分する施設ではその焼却熱を利用して発電している
最大発電出力は2億KWにもなる。こちらも重要な発電施設であり、クラナガン市政府には売電収入がある
売電収入はクラナガン市政府にとっては重要な収入だ。
税金と異なり安定的な収入確保ができるからだ。税金の場合は人口や市内の経済動向によって上下する
しかし売電収入はある程度は安定的な輸入を確保できる。
だからこそ市政府が運用している発電所の売電収入は大切である

『クラナガン市政府は電力の安定供給そのものには影響がないことをミーミルパワー社などの電力会社と確認』

『引き続き電力の安定供給に貢献するとしています』

『ベルカ州西部地方で発生しているクーデター騒動ですが州の北隣と西隣にある別の州の連邦軍基地から連邦軍が出動』

『また港湾パトロールも港湾パトロール海兵隊と飛行隊が展開中。平和的交渉が完全に息詰まると攻撃を開始する』

『この事案については聖王教会本部は教会は一切指示していない。また聖王教会の関与はないことも発表』

もし本当に聖王教会が関与していることになれば大きな問題になることは間違いない。
今後の部隊展開にはどのような動きが出るかは全く想像できないことは事実である

『ベルカ州証券取引所では州内で活動している資源開発企業の証券取引が活発に行われています』

『特に電力会社が新たに発行した社債に買い注文が殺到している状態が続いています』

電力会社や様々な鉱物資源開発を進めている企業の株価はかなり上昇している
魔力精製炉発電所に頼り続けていた電力供給は分散させることで電力の安定供給を維持しなければならない
もし電力供給が停止するとその州の経済に深刻な影響が出ることは間違いない

『この動きはベルカ州証券取引所でなく国内にあるすべての州証券取引所で同様の動きをしています』

多くの投資家は新しい新規投資先を探しているのだから当たり前であることはわかっている
今後の動き次第ではどうなるかは全く想像できないことは事実である

「こういう状況になると金融事件が発生するのは間違いないわね」

アルシオーネの言いたいことは正論だ。
経済活動が活発になればインサイダー取引などによる金融事件が発生する
金融事件は金額などを計算することが重要なのでかなり操作が難しいケースに該当する
簡単に解決する殺人事件や強盗事件などの方がまだ苦労は少ないことは確かで、そこが大きな違いだ
金融事件は金額の計算にかなりの時間がかかってくることが複雑化する最大の要因である

『クラナガン市下院の聖王教会・時空管理局監視委員会で市内で行われる聖王教会が活動を行う場合のルールを作成』

『聖王教会がクラナガン市内で集団活動を行う場合は政治的行動を起こすことを許されないと定めた法案が下院で可決』

『市上院議会でも審議が行われていますが上院でもルールについては問題はないとしています』

宗教活動と政治活動を同時に行うことを容認しない方向で見解が一致しているのだ
政教分離の原則がミッドチルダ連邦だけでなく次元世界連合の全加盟国で実施することが条約で定められているからだ
この条約は現在次元世界連合の全加盟国で実施されている

「政教分離の原則は当然ね」

宗教活動による内戦や戦争が起きることは過去の歴史を見ればわかっているので、
国際条約で政教分離を行うことは極めて重要である
宗教と政治が密着すればいいことが起きる可能性は大幅に下がってくる
おまけに宗教的感情で政治的権限が行使されたら戦闘になってしまうのだ
だからこそ政教分離は絶対に行わなければならない。
聖王教会はベルカ自治区であったことは政教分離の原則が機能しなかった
だから問題が乱発していたのだ。民主主義による政治が行われなければ大きな問題になる

『クラナガン商品取引所でのクラナガン原油先物価格は1バレル8400ミッドまで上昇』

『原油先物価格の急激な上下はベルカ州内でのクーデター事案が大きな要因とみられています』

ベルカ州とクラナガン市の間には新たに原油と天然ガスのパイプラインが接続されたことが原油価格の上昇理由。
今まではベルカ州とクラナガン市を結ぶ直通の原油や天然ガスのパイプラインはなかった
だが今年からベルカ州とクラナガン市の間には原油と天然ガスのパイプラインが新設された。
だからこそベルカ州でトラブルが起きれば、クラナガン商品取引所の原油や天然ガスの取引価格に影響が出る

『銀行や保険会社などの機関投資家はかなりの資金を動かしていることは事実であると証券取引委員会は発表しました』

さらにヘッジファンドなどもかなりの資金を動かして売買を行っている
投資家は小さな動きであってもそれが利益につながるようであれば資金を動かす
それが仕事なのだから当然ではあるが。投資家は金を少しでも増やそうと、
法的な抜け穴があればグレーに近い行為を実行してくる。もちろん抜け道をいつまでも放置することはしない。
すぐに穴はさまざまな法律で封鎖するが利益が生まれるなら別の抜け穴を見つけてくる
完ぺきなものなど存在しない。必ずどこかに抜け穴ができるものである

「投資家は小さな利益を最大にするために手段を選ばないから経済的混乱が起きるものだから仕方がないけど」

『聖王教会傘下だったセントラルベルカバンクの財務情報によると不良債権が3000兆ミッドよりさらに増えると』

不良債権の主な内容は聖王教会債や時空管理局債の取引によって大赤字になった
それだけに多額の不良債権を抱え込むことになった。

『聖王教会の予算編成で聖王教会債の発行ができない状況であることから削減できる費用を削る作業を行っています』

聖王教会の予算は以前は聖王教会債によって足りない分を補填するために発行していた
しかし今はその聖王教会債の発行が難しい。仮に聖王教会債を発行できても高い金利をつける必要がある
金融機関はリスクがあまりにも高すぎる聖王教会債を購入するのは危険すぎると判断してくることは間違いない
つまり実質的に購入希望がないことが分かっているのだから発行するだけ無駄。

「聖王教会も大変ね。自分で自分の首を絞めているから。今は組織を維持するのが限界」

『聖王教会の財務状況が悪化し続けた場合、聖王教会が運営している教育機関や医療機関の維持が難しくなると』

『教育機関や医療機関の維持が難しくなった場合に備えて対応する次元世界国政府は動いています』

「さすがに教育機関と医療機関が機能停止になれば最悪になるのは事実ね」

どちらにしても必要な組織である。
最悪の場合は多くの次元世界国政府が支援を行うことで動く必要が出てくる

『ミッドチルダ連邦政府は聖王教会の教育機関と医療機関に財務支援を行うかはまだ判断できないと』

『仮に支援を行う場合には聖王教会で様々な改革が行われなければ難しいと連邦政府高官は証言しています』

当然である。理由もないのに支援を行うのは認められるはずがない
そんなことをすれば政府は国民から支持されることはない。
政治家も人々から支持されないことをするわけにはいかない

「聖王教会も大変だけど退役時空管理局員も最悪ね。退役した後は明るい未来があったはずなのに」

アルシオーネの言葉通りのことである。今までは時空管理局を退役した後は金に不自由のない生活があった
しかしJS事件後は大量リストラされて、JS事件前はかなりの金額になる退職金と年金があった。
だが事件後は本当に少ない退職金と年金での生活になる。
退役後の生活は極めて困窮していることで年金生活ができない状況が続いている
退役後もアルバイトをして生活に必要なお金を稼ぐしか道はないのだ
年金の受取金額が大幅に減少した最大の理由は時空管理局員が属していた時の年金運用を任せていた金融機関。
基本的に時空管理局とワンワールドグループ企業とはべったりと密着した関係だったことから、
時空管理局員のほぼすべてがそこの金融機関に運用を任せていた
だからこそワンワールドグループが破綻すると年金を受け取ることができなくなった。
その結果は本来受け取れるはずだった年金はほぼ0に近い状況に追い込まれていた
だからこそ退役時空管理局員はアルバイトで仕事をしていることが大幅に増えた
しかし仕事と言ってもデスクワークではなく、肉体労働を中心とした仕事が多い

「退役時空管理局員はとんでもないお返しをもらっているわね」

本来なら優雅な生活のはずだったのに天国から地獄に落ちてしまった。まさに最悪と言っても過言ではない。
もちろん利口な考えで資金運用を任せていた退役時空管理局員は以前よりも高い配当金をもらっている者もいる
判断能力が適正であった人物は良い思いをしている。そのため、そういった人物が襲われるケースもある

『中央本部からSA33。現在の状況はどうなっている?』

今のところは膠着状態が継続中であるとアルシオーネは報告した
立てこもり犯であるユラザーク・ギャスシーが少しずつ情緒不安定になっていることが監視カメラ映像でつかんでいる
このままでは危険すぎる。早急に対応するためにSWATが支店の裏口で待機している
彼女が合図を出すと強行突入に踏み切る。
ユラザーク・ギャスシーが暴れだしたら人質が負傷することは確実。

「何とかしないといけないわね。人質の生命もそうだけど、精神的ストレスも考えると」

人質の安全を最優先にしなければならない。
できる事なら犯人を生け捕りにしたいが無理と判断したら射殺命令を出すしかない
状況判断が極めて難しい現場ともいえる。少しでも判断を誤ると人質の生命にもかかわってくる
それだけに必要なら素早く対応するしか道はないのだ

『中央本部からSA33。攻撃を許可する』

「生け捕りにしなくて問題になるのでは?」

『すでに時間が経過し続けている。安全確保のためにも行うように』

既に青信号が出ていることを示している。ただし銀行の窓は防弾仕様だ。
かなり威力の強い弾丸を使わなければならない。そうしなければ一発で仕留めることはできない
あるいはSWATによる強行突入に頼るしかない。

『強行突入に関しても容認する。速やかに安全確保を行え』

ため息をついた彼女は了解と返答すると突入準備に入った
合図1つでSWATが踏み込むことになる。まさに一瞬の判断が生死を決める
冷静な状況判断が求められる

「準備はできたの?」

『裏口から突入をできる体制に入っている。合図を待っている』

アルシオーネはいつでも突入できるようにスタンバイするようにと指示を出した。
問題はどうやって隙を作るかだ。奴にこちらの動きを知られないことにするのが突入時に重要である
情報が漏れたらチャンスを失うことになる。それだけに時間的な余裕は生まない方が良い

「SA33から中央本部。突入準備は完了した。タイミングを見て一斉に踏み込む」

『了解した。人質の生命を最優先にして対応を。もはや時間的余裕はないと判断し問題ない』

中央本部が承認したなら迷うことはない。これからは1発勝負である
それしか方法もなければ余裕もない。それだけは確実なのだ
アルシオーネは強行突入のためにタイミングをはかり始めた

「中央本部へ。突入をまもなく開始する」

アルシオーネは中央パトロール管制センターに無線で通達するとすみやかに動かすことを決定した
問題を速やかに円滑に解決するにはタイミングを揃ええることが最も重要なのだ
少しでも読み間違えると負傷者や死人を生むことになる。そんなことは絶対に許されない
すみやかに任務完了を行わなければならない。そうでなければ危険すぎることは誰もが知っている

『突入を開始せよ』

その無線通告を聞くとすみやかに部隊を動かすことを決定した
突入作戦の開始の時間よと無線で伝えると一斉にSWATが突入していった

『犯人を確保。肩と右足に被弾で押さえました』

さすがは特殊部隊。腕は相変わらず素晴らしいものだ
人質は幸いなことに傷はつかなかった。ただし精神的ケアは必要かもしれないが
アルシオーネはすぐに救急車で緊急搬送するように手配した

「とりあえずは立てこもり事案は終了したけど、今後の捜査は大変になるわね」

できれば早期解決することが好ましいが現実の話をするならそれはかなり大変になってくるのは間違いない
今後の捜査でどこまで真相を知ることができるか。立てこもり犯は証言するつもりはないだろう
彼らはいくら自らが助かるためだとしても簡単に自供することはない。
証言すれば仲間からどれほどのひどい目に合うかはわからないのだから
それだけに証言などしたくないだろうし、真実を話せば他の犯罪組織から追い掛け回されることも事実だ
そんな険しい道を誰が好んで歩んでいくかを考えた時にはあり得ない話である
だが捜査のために必要な情報を集めるのは当然である

『ミーミルパワーはマリネット州で水力発電所の運用をしているマリネットウォーターパワーの社債を引き受けてもらう』

発行する社債を買い入れたことを発表した
社債や株式などを含む金融商品の大量売買が行われた場合は証券取引委員会に報告することを義務付けている
金融商品の大量取引の情報を公開することでインサイダー取引などを起こさせないために必要である

『社債のすみやかな売買が決まったことで、マリネットウォーターパワー社の株価は急上昇』

『マリネットウォーターパワー社は新たな水力発電所の建設に必要な資金確保のために一時的な業務提携だと』

社債を発行するにはそれなりの手続きが必要になるので付き合いがある企業に社債発行を引き受けてもらう
金融市場に社債の売りに出したとしてもすぐに買い手がつくかはわからないというのが最大の課題である
だからこそ関係があった企業と協議を行って素早く社債を買ってもらう

『マリネットウォーターパワー社の600億ミッドの社債をミーミルパワー社が引き受けるということが決まりました』

ミーミルグループ企業は証券取引所に株式を上場していない非上場企業だ
グループにはあらゆる分野の企業があり、資源開発会社からスーパーマーケット店舗の経営まで
国や企業を相手にしたビジネスから一般顧客を対象にした分野まで、幅広く活動しているグループ企業だ

「また経済犯罪が起きなければ良いけど」

数字の羅列を見るとうんざりするのだ。ホワイトカラー犯罪というのはそういうことである
極めて膨大な情報を調べて、確認することが必要なのだ
殺人や強盗などといった犯罪と異なり経済犯罪に関しては捜査が完結するのに、
何年もの時間が必要になることは珍しいことではない
だからこそ経済犯罪の捜査を行うのはある意味では地味な仕事であるが重要な職務であることには変わりはない

『一方でミーミルグループの証券取引所での株式取引が過去に何度かあるのではという意見もありました』

『しかし証券取引所への上場は現段階では考えていないと表明しています』

非上場企業であっても問題はないのだ。だからこそ安定的な企業活動をすることができる
問題があるとするならミッドチルダ連邦の政策金利が10%。
つまり社債を発行する時には高い金利をつける必要がある
マリネットウォーターパワー社が発行する社債の金利は7%にしている。
金融市場で社債を購入者を集めると政策金利と同じ程度の金利をつけることが必要になる
発行する側の企業にとっては高い金利をつけて発行するのであまり良い状態にならない
なら直接引き受けをしてくれる企業と直接交渉を行うことで、比較的低い金利で社債の発行が可能だ
だからこそ金融市場で社債の流通をさせるのではなくて直接購入してくれる企業を探せば、
社債を発行する企業にとっては比較的低金利で発行できる

「本当に金のことでは頭を使わないといけないわね」

『中央本部からSA33へ。別の応援に参加できるか確認したい』

内容は機動六課組の護衛任務とのことだ。彼女は嫌な役回りになることはわかっている
だが時間的余裕があることは違いない。この現場対応に捜査部がこれ以上首を突っ込んでいるのは好ましいとは言えない
それにラジェットに何か問題が発生したら極めて危険であることも把握している。
そのリスクを考えると今はそちらに対応した方が良いことも正論だ

『SA11の警備援護のために人員を配置したい。なお問題があるようならあらゆる手段で報復を実行せよ』

「相変わらず過激な話ね。必要なら殺しを認めるのだから」

妨害が行われるならあらゆる対抗措置に踏み切って守ることが最優先事項である
もし守ることができなければ影響は大きくなってしまうのはわかっている。
危害が加えられるならどんな方法を行使してでも機動六課組を無事に中央本部に向かわせることが必要だ

『SA11からSA33へ。こちらの護衛任務に就くことができるか確認をしたい』

ラジェットからの無線を受けてアルシオーネは対応できると返答した
幸いなことにこちらにはSWATがいるので連携して対応することもできる

「SWATがいるけど、彼らにも協力要請を出すつもりがあるなら動かすけど?」

『連携して護衛任務のサポートを依頼したい』

この返答を受けて彼女はラジェットがかなり慎重な対応をしていることが分かった
もしもに備えてどんなことを使ってでも対応するのは確かな方策でもあるのは間違いない

「少し時間がかかるからそれまでは何とか頑張って。もちろん緊急走行で向かうからできるだけ素早く動くつもりだけど」

『ああ。こっちも港湾パトロール海兵隊の護衛がいる。簡単には突破はされないだろうが警戒はする』

ラジェット達には港湾パトロール海兵隊員が警護のために乗り込んでいる
もしもの場合にはあらゆる対応ができるだろう。もちろん爆弾などが設置されているなら話は変わるが
外部から攻撃されることはあるかもしれないが、やすやすと突破されるわけがない


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南区北部区域サウスハーディー地区2番街 無人ATM

ステラは一通りの現場鑑識を終わった。
ただ、現場保全のために今日は昼までは立ち入り規制をかけていた

「あとは犯人を見つけるだけね」

現場鑑識チームの到着が遅れたのでステラが自ら現場鑑識を行った
時間が経過すればするほど犯人は逃げていくことはわかっている。
それを阻止するためにも犯人につながる証拠を集めることを優先しなければならない

「無人ATMだから指紋を識別するのは苦労するけど」

誰もが自由に利用できるのだ。犯罪組織の構成員ならデータベースに指紋が登録されているので識別は簡単だ
仮に犯罪組織の構成員ではなくても監視カメラがある。追跡することは難しくない

「すぐにヒットすればいいけど」

付近の街灯観測システムにある監視カメラ映像も同時に調べていた
顔認証システムで犯罪者がヒットするかどうかを調べるのだ
ステラは監視カメラに記録されているカメラ映像を顔認証で照合していた時に驚く人物が記録されていた

「バラクス・フェリッカよね?」

その人物はある政府機関に所属していた人間だった。だが3年前に死亡していることをステラ自らが確認していた
嘘ではないかと思い、何度も照合して入念にミスが無いように確認したがすべて一致していた
だれかのそっくりというわけではない。本人である

「あいつがどうして?」

バラクス・フェリッカはミッドチルダ連邦国防省の傘下の情報機関に属していた。
正確にが海上安全整備局という組織だ。JS事件がまでは独立連邦組織だったが今は国防省の傘下に移行している
国防省の傘下に入ってからも諜報活動を行っているが連邦海軍に影響が出るような情報収集を行う組織になった
もちろん連邦組織である中央情報局や国家安全保障局も以前からあった。
JS事件の後からは大統領直属の情報機関が大きく活動を増加させた
ステラはクラナガン捜査局に入る前は時空管理局本局の戦技教導官をしていた
つまりなのは・高町とは同僚であり少しは交流があった。時空管理局を退職したのは弟が快楽殺人者に襲われた
その時に独自に捜査をしようとしたが時空管理局の上層部から圧力を受けて捜査に参加できなかった
時空管理局の活動に限界を感じて退役してクラナガン捜査局中央パトロールに転職した
入局する前にかなり厳しい審査を受けて難しい任務をこなしたことで信頼を勝ち得た
だからこそ中央本部捜査部の捜査官に異動することができた
時空管理局で勤務をしていた時のことをステラはひどく嫌っていた
管理局が正しい組織ではないことが証明されてからは特にだ
退役する前に交流があった時空管理局の同僚の多くが汚職などによって摘発されていた
だからこそ時空管理局時代の友人とは交流は一切してこなかった。
今は時空管理局に在職していた頃にあった不正行為の捜査協力は熱心すぎるほどに行っていた
その捜査協力の中で親しくなった。だが1年前に行方不明になっていた。
バラクスは死亡したとされてお葬式が行われるはずだった。ところがそれを止めた人間がいた
ステラはその葬儀を止めた人物を調べようとしたがシエルから何も探るなという命令が下されていた
もちろん表面上は了解と返答した。実際にはこっそりと調べていた。
人脈やコネを利用して一部の記録にアクセスすることはできた。
もちろんすぐにその情報を閲覧したが、すぐに抹消された。
もう1度その情報を調べようとしたがすべて消されていた

『南分署から各員へ。クラナガン堰での水力発電所で一部電力発電に影響が出ています』

クラナガン堰で行われている水力発電所では最大発電能力は4000万KWにもなる。
クラナガン市政府では電力の安定発電ができるからこそ市政府に多額の売電収入が入るのだ
クラナガン市内のライフライン維持のために主電源とされている重要発電所であることから、
基本的には24時間1年中いつでも発電を行っている。
仮に民間企業である電力会社から電力供給が停止しても、
携帯通信中継基地や電気・ガス・水道・通信などのライフラインを維持している
民間企業から電力供給ができなくても市政府組織や連邦政府組織の各種設備の運用が出る

「今はどこにいるの?」

ステラは市内のすべての街灯観測システムの監視カメラ映像を使って顔認証システムで照合作業を開始
まずはこの付近から初めてジョジョの検索範囲を広げていった。
ここで記録があるということはまだ市内にいるはず。
調べるのは難しいことではあるがどこかにはいることは間違いない。しかし広い市域のクラナガン市だ。
高性能なスーパーコンピュータを使っても時間がかかることはわかっている
だが時間的な余裕もないことも事実である。何が何でも調べていくしかないのだ

『東分署から各員へ。SA11の機動六課組警護の警戒厳重に行え。不審な動きをする人物や車両を見つければ職質を』

どの分署でもラジェットの安全確保は当然と言ったところだろう
それだけ彼には人望があることを示している。ラジェットには幅広いコネや人脈がある
だからこそいろいろと影響を受けえる人数は多い

「彼もそんな役割を任されているわね。賢い人間にうまく利用されているから」

ステラが言った賢い人間というのはシエルのことである
シエルは常に幅広いコネを持つラジェットにこの任務を任せたことはあらゆる対応ができる人材は限られるからだ
ラジェットほど幅広い様々な法執行機関にコネがある人間はいない
影響力は極めては大きいことを示している
ちなみにクラナガン捜査局で使用している各種無線通信や設備維持のためにも利用されている
法執行機関であるクラナガン捜査局のあらゆるシステムが止まってしまうと大問題になってくる
それを阻止するためには各種設備を運用では電力安定供給がなければ最悪だ

『連邦証券取引委員会はワンワールドバンクが抱えている不良債権の数字をある程度はわかってきたことを発表』

『不良債権の金額は最低でも200京ミッド以上になることは間違いないとしています』

不良債権の金額が多いことは大問題になる。
ワンワールドバンクに口座を持っている顧客に返還する貯金の金額に影響するからだ
仮に不良債権が少なくて優良資産が多ければその優良資産を売却することで、
顧客に対して返却することができる金額も増える。
だが逆に不良債権が多ければ預金保護法による口座にある預金の1000万ミッドまでしか渡せない
それだけに正確な不良債権金額を調べることは極めて重要なのだ

「こっちは金融商品を利用した犯罪捜査をしなければいけないのは苦労するわね」

捜査経験があるなら誰もがわかっている。経済事件に関する捜査はいろいろと大変なのだ
膨大な帳簿や数字を使って検証しなければならない
苦労が多いことは誰もがわかっていることだ

『次元世界連合経済社会理事会ではワンワールドグループ企業の破綻処理に関する合意文書の作成を行っています』

経済社会理事会は経済・社会の問題を扱う理事会。理事国は総会で選出され、任期は2年となっている
総会・安全保障理事会と違い、可決決議に拘束力はないため、拘束力を持たすために総会で再可決の必要がある
グローバル企業が破綻した場合には対応方法を審議することが国際条約で定められている
次元世界連合で可決された国際条約は基本的にはすべての次元世界連合加盟国内で実行することが義務付け得られている
もし守らなければ次元世界連合から何らかの制裁を受けることになる

『関係者の話ではワンワールドグループ企業のすべての資産凍結が解除されるまで数年が必要とされていると』

その報道はまさに的中している。簡単に資産凍結命令が解除されることなどありえない
なぜなら凍結された資産の中には大量の不良債権となっている時空管理局債がかなり多く占めている
JS事件までは優良資産であったが時空管理局の組織規模が大幅に縮小された影響で、
今まで時空管理局が大量に発行してきた時空管理局債が債務不履行。
つまりデフォルトになったことで発行された時空管理局債、
その債権の40%を保有していたワンワールドグループ企業の財務状況は大幅に悪化した
不良債権になり金融市場でも取引価格が大幅に悪化したことで影響は極めて大きくなっている
取引価格が暴落したことで次元世界連合の国際組織がほぼすべての時空管理局債を買い入れた
その購入に必要になった費用はあまりにも低かった
つまり時空管理局債を売却した組織は大幅な赤字を抱えることになった

「状況は大きく変わったことは事実ね。私はさっさと時空管理局を抜けて大正解だった」

ステラがさっさと時空管理局を退官しなければ、今頃どんな人生を歩むことになっていたか想像したくないと
それは確かである。時空管理局を退官しないで今も続けていたら再就職に苦労していた
今は捜査部捜査官として重要な職務遂行を行っている。今この立場にいることは正しい
時空管理局を退官していなかったらどんな立場に追い込まれていたか
予想できない状況になっていたことだけはわかっている
JS事件までは時空管理局と取引があった企業の大部分は時空管理局債という不良債権を抱えていた
だがこれも資本主義である。得をするところもあれば損をするところもある
どちらになっていたかは当時の時空管理局と関係があった企業の経営者の判断次第だ
企業経営者は経済の流れを読めなければ経営している企業がつぶれることになる
それが資本主義経済なのだ。これだけは変えることができない

『時空管理局債を保有していた数多くの企業の多くは大量の不良債権を抱えているケースが多いです』

『大量の時空管理局債を保有していた企業は再建のために社債などを発行する方向で動いています』

不良債権を抱えているということは資金不足になることが確実である
だからこそ当面の資金確保を行うために社債や株式の新規発行で資金を集める必要になっているのだ
だがそんな企業の社債や株式を購入する投資家はかなり限定されてくる
赤字の企業の資金確保のために資金を出す投資家が多くいるとは考えられない
仮に確保するならかなり高い金利をつけなければ買い手がいないことも想定される
難しい選択に迫られることは間違いない。さらに問題なのがJS事件まで時空管理局と取引をしていた企業、
彼らは退役した時空管理局員の天下りを引き受けてきた
天下りを引き受けていた企業は代わりに通常よりも高値で時空管理局と取引をしていた
しかし競争入札が義務付けられたことによって入札に負けることが多発した
つまり企業活動は大幅に減少している。取引が減少したことで企業財務状況もかなり悪化している
そういった企業も改革が行われている時空管理局と同じようにリストラを行うなどしている

「別のトラブルが発生することは確実ね」

ステラの携帯電話に着信が入ってきた。
それは相棒でありリィンフォースツヴァイと同じであるユニゾン魔法デバイスのマイアだ。
マイアはステラにとっては背中を預けるほどの信頼がある相棒だ

『マイアです。こちらである人物が顔認証システムで検索をかけていたところ5分前にある人物が合致しました』

ステラはマイアが言う前に名前を出した。
それは先ほどステラが見つけたバラクス・フェリッカと合致したのだ。

『さすがは主です。その通りです。どうします?』

マイアは海上安全整備局に報告するべきかと質問してきたのだ
ステラは少し考えて今は上に報告しないように指示した
諜報活動でどこかの組織に潜入捜査をしているなら知らせない方が良いことは多い

『こちらが知っていることを知らせない方が良いと?』

「海上安全整備局にも時空管理局から潜入しているスパイがいることも想定すると知らない方が良いこともあるはずよ」

情報収集活動はたとえ同じ政府組織内であっても情報戦が行わている
だからこそこちらがこの情報については知っているということを知らない方が良いこともある
報告しなかったことを責められることはあるかもしれない
だがこちらが知らないと主張すれば問題がないだけの話だ
報告する義務が必ずあるわけではないことも事実である

『了解です。情報はすべて削除しておきます』

マイアとの通話はそこで終了した
あとはサウスサイドが本当にこのATM荒しに関与しているかどうかだ
現場鑑識は終わったが詳しく調べるにはラボで作業を行う

「それにしても海上安全整備局も国防省の下部組織になっても相変わらずね」

諜報活動というのはたとえ同じ連邦政府の組織であっても開示されることはない
情報を開示すれば諜報活動ができなくなる。だからこそ秘密裏に動くことが求められるのだ
何も知らなければ幹部は何も把握していなかったという言い訳も成り立つ
言い換えてしまえば諜報活動をしている職員の生命よりも諜報活動で得られた情報の方が重要である
その情報の正確度やどの程度の情報を持っているかが極めて重要であるのだ

「彼のことは見なかったことにしておきましょう。こちらで状況把握ができていると知られたら困るかもしれないから」

もし諜報員の情報がすべて把握していると知られるのは、後々問題になりかねない
ここは黙って知らないふりをしている方があちらに貸しができる

「シエル首席にも秘密にしておきましょう。知らなければ捜査部の運用に影響が出ることはないはず」

本来であれば最低でもシエルに伝えておくべき情報である
何度も言うが知らなければ何とでも言い訳ができる。知らないことが幸せという言葉があるように
あとはステラで対応するだけ。マイアはステラが最も信頼できる魔法ユニゾンデバイスである
そしてステラが最も信頼する大切な相棒だ。お互いの連携能力は抜群でもある
彼女は携帯電話を取り出すと港湾パトロール安全保障局にいる友人に連絡を取ろうとした。
しかし番号を途中で入力をやめて、情報拡散は避けるべきと判断した
何度も言うが知らない方が何かと都合が良いこともある
完全に自分の中で納めておくことにした。

『中央本部から各員へ。サウスクラナガン廃棄物処理施設で侵入者がいることが想定される警報が作動した』

クラナガン市内にはごみなどの廃棄物処理施設が5か所設置されている
基本的にはそれぞれ各区ごとに1つがある。また廃棄物処理施設では燃えるごみなどは焼却処分になる
その際に発電事業も行っている。これにより得られる売電収入もクラナガン市政府の収入になる
市政府にとってクラナガン市政府が運用している水力発電所や廃棄物処理を利用した燃焼による火力発電、
それらによって極めて高い売り上げになる売電収入は市政府にとっては重要な収入にもなる
また、廃棄物処理施設ではアルミ缶やガラス瓶などを回収することでそれらをリサイクルするために売却している
これもまた重要な市政府にとって貴重な収入になってくる。
連邦法ではごみなどの廃棄物を出す時に多種の分類を義務付けている
だからこそ国内のリサイクル率は極めて高いのだ
次元世界連合で調印されて合意された条約でもごみ問題に関する国際条約が規定されている
次元世界連合加盟国で発生したごみなどの排出物は条約で環境汚染が出ないように、
処理やリサイクルを行うようにとなっている。
さらにリサイクルについても可能な限りリサイクル事業を行うことを国際条約で定められている
リサイクルによって新たに同じような製品を作る際に様々なリサイクル事業を行って、
問題がなければそのリサイクル部品を使って製品で製造する
連邦法ではリサイクル事業で得た資源を再使用することで新規の資源を使う量を削減することにつながる
だからこそリサイクル事業は極めて重要なのである。都市にある資源鉱脈。
見た目はごみかもしれないがリサイクル事業によって再利用が出る様々な原材料を製造することができる
例えば貴金属やペットボトルなどの石油精製で得られた石油製品の再利用にもつながる
石油製品資源を新しく使うのではなくリサイクル化で得られたリサイクルプラスチック原材料、
そういったことを使うことで大きなリサイクル効果がある
環境汚染を少しでも削減するには最も有効なことなのだ

『南分署から中央本部へ。サウスクラナガン廃棄物処理施設への侵入者を示す警報に対応するために人員派遣を』

中央パトロールは今は人的余裕がない。
時空管理局や聖王教会関係のトラブルを想定して動かせる範囲で良いのでその人員をフル活用している
そのため問題があるからと言って、人員確保を速やかに行うのは簡単ではない
今の段階で動かせる人員をさらに効率よく運用することで対応する
それで今は一時的にカバーするしかない

「できれば廃棄物処理施設で死体が見つかったなんてことにならなければ良いけど」

以前から廃棄物処理施設で人や動物の死体が見つかって捜査が行われていた
発見された死体の身元を確認した時にすぐに退役時空管理局員であったというケースは多かった
JS事件が起きる前から犯罪組織と繋がりがあった現役時空管理局員と退役時空管理局員の死体が見つかっていた
死亡する原因になった最大の理由は犯罪組織に徹底的に利用された後に始末するために組織が抹殺しようとしたのだ
見つからなければ行方不明という形だけで対応する。それだけで済んでいたからだ
しかし今は大きく異なっている。クラナガン市内だけでなく、ミッドチルダ連邦国内。
さらに範囲を広げて時空管理局の影響があった次元世界国で活動していた犯罪組織が、
自らの情報が漏れないように証拠隠滅をするために関係者を殺す事案は大幅に増加している
死体になってしまえば証拠を探すのはかなり大変になる。闇を調べるのは簡単ではないので苦労する
特に犯罪組織が絡んだ事件では証言がなければ調べるのはかなり難しい

『次元世界連合ではベルカ州でのクーデター騒動の議論を進めた結果、聖王教会過激派と関係があると決定』

『ミッドチルダ連邦政府は当事国であるので投票には棄権。しかし他次元世界理事国は全会一致で武力行使を容認』

これで何度もの似たような議論を続けるのかはなぜか。
それは聖王教会の外交担当大使が時間の引き延ばし工作とみられる議論を求めていたことが原因だ。
しかし国際組織としても無視はできないので何度も安全保障理事会で議論を行っていた

『安全保障理事会は聖王教会からの再審理要請を受けたとしてもすでに議論は終了していると発表』

つまりもう同じ内容の審理をすることはないという宣言だ。もう何も議論することはない。
安全保障理事会で当事国であるミッドチルダ連邦政府が棄権するのは理解できる。
当事国であるミッドチルダ連邦政府が議論には参加しても決議について国際政治のことを考慮すると、
賛否投票に参加しないのは公平性から考えて当たり前である

「厄介な事になりそうね。捜査部にはとんでもないお荷物を背負うことになったからなおさら」

ステラは時空管理局に所属していた時は時空管理局は正義の味方だと信じていた。
だが退役してクラナガン捜査局に転職、JS事件後に真実を知ってからは心情は変わった。
かつての『正義の味方』だ思っていた時空管理局には汚いものを見るかのような気持ちを持っていた

「なんで私たち捜査部が機動六課組を受け入れないといけないのかしら。殺されたとしても良いはずなのに」

ステラは機動六課組に対しても良い感情を持っていなかった
彼女たちは確かに正義を貫いた。だから時空管理局を中心とする世界は大きく変わった
今はまるで彼らの存在が時空管理局にとっては大きなお荷物でしかない
さっさと切り離しておかなければ、もっと大きな問題になることも想定されてくる。
それを避けるためにも時空管理局としてもしばらくの間は他の組織で預かってもらう道を選んだ
これも政治と言われると仕方がないことではある。現場は確かに人々の安全を守るために活動している
だが管理職などの上層部の幹部になれば話は大きく変わってくる
理由はただ一つ。組織のトップになるには政治的駆け引きが重要だから
現場の立場よりも自分たちの利益につながれば、どんな方法を使ってでも権限を得ようとする
政治的駆け引きというのはそういうものである。仕方がない

『次元世界連合総会が緊急開催され、加盟国150ヵ国の大使がワンワールドグループの破綻処理について審議』

『加盟国150ヵ国の中でワンワールドグループが大量に抱えている不良債権処理について審議を開始』

ワンワールドグループ企業にあるかなりの大赤字の状況。元々時空管理局との関係が深い企業グループだ。
それにより退役時空管理局員の天下りと大量の時空管理局債を保持していた
だからこそ、協調した対応が必要になってくるのだ
大きな問題に発展される前に対応することが求められる
グローバル企業の破綻をスムーズに行うには強調した対応が必要になってくる
連携した対応を行うために次元世界連合で協議が行われてきた

『ワンワールドグループの金融部門の銀行・証券会社・投資ファンド・保険の今後についてある程度が工程表が完成』

『これらの金融部門のグループ企業はかなりの赤字を抱えています。次元世界連合加盟国の中央銀行総裁も協議に参加』

次元世界連合加盟国の中央銀行が参加したのは理由があった。
それは次元世界連合加盟国の中央銀行が『最後の貸し手』という特別貸し付けを行う。
その行動は各次元世界国の金融市場に対する大きな影響が出ないようにするためである。
中央銀行が『最後の貸し手』として無制限に破綻した金融機関に貸付を行うのは簡単に容認することはできない
その国の次元世界国政府や国際経済などに生じる影響を考慮に入れて行動しなければならない
だから『最後の貸し手』として国内経済の見極めが重要であり必要になってくる

『総会ではワンワールドグループに次元世界連合加盟国は緊急融資を行うことなく破産処理を行う方針で動いています』

『まもなく次元世界連合総会での決議案が可決されるか否決されるかが決まります』

安全保障理事会での可決決議を出すには理事国の15か国の内、
最低でも9か国以上の次元世界国政府の容認がなければ否決される
ただし次元世界連合総会で可決されるには少しハードルは下がってくる。
次元世界連合総会では過半数以上が賛成した議案は、
次元世界連合全加盟国では2年以内に国内で法整備が義務付けられている。

『旧第3管理世界、現在のヴァイゼン合衆国政府は急激なミッド高の影響を抑え込むために対応すると』

為替レートの問題については次元世界通貨基金で会議が行われる。
次元世界連合に加盟している多くの次元世界国の経済はミッド高が続いている
ミッド高が続くというのは良い場合と悪い場合がある。それだけに慎重な判断が必要になってくる
ヴァイゼン合衆国は次元世界連合安全保障理事会の特別理事国に選出されている
特別理事国の任期は4年となっている。安全保障理事会の特別理事国になったので慎重な外交政策が必要になる

『他次元世界国政府も急激なミッド高の影響を抑え込むために行動を開始すると』

外国為替レートの急激な乱高下は好ましいとは言えない
一定の範囲内での為替レートの変動は容認できるが急激な変動は好ましくない
そのためにも影響は最小限にすることが極めて重要である
ミッド高を抑え込むには通貨ミッドを売りに動くしかない。
つまり各次元世界国政府が抱えている外貨準備金などを使って通貨ミッドを売りに動く。
それしか行動できないかもしれないことも想定される

『次元世界通貨基金は国際為替レートの急激な変動はできるだけ抑え込むことも重要としています』

『ただし資本主義の中では政府による協調介入は難しいとする意見も経済アナリストから意見が出ています』

それは当然である。経済というのは市場に任せるべきことである
それが資本主義経済であるのだから当然であるはずだ
資本主義による急激な変動を抑制のために次元世界国政府がコントロール目的として行動することは極めて重要だ
しかし簡単にコントロールすると言っても難しい。
多くの次元世界国政府が連携して介入する協調介入なら単独介入と比較すると効果は出る
通貨ミッドがミッド高になっている最大の理由は金利が高いからだ
今のミッドチルダ連邦の政策金利は10%。他の次元世界国政府と比較した場合はミッドチルダの方が金利が高い
その影響を受けて他次元世界国で資金を借りて通貨ミッドに買い注文を行うことが大幅に増加している
低金利な次元世界国で資金を借りて通貨高のミッドで運用することで利益を得ることができる
同じようなことが多くおきている。通貨ミッド高が大きく上昇している傾向にある。
もちろんミッドチルダ連邦準備銀行も分かっているので、外国為替レートの変動を押さえようとしている
しかし単独での対応はかなり影響が限定的になる。政策金利の引き下げはバブル経済になるだけ
経済のコントロールは極めて難しいのが現状である。

『次元世界通貨基金で緊急の会議が開催されるとの情報があります』

『ミッド高を抑制するために対応措置が行われることになるかもしれません』

『現段階ではどのような動きになるかは見通しはできていない状況です』

為替介入などを自由に行うことはできない。
もし政府が好き勝手に経済に介入すれば国内だけの問題では片付かない。
国際問題になることは確実になるので、できれば金融市場に任せるのは当然になる

「これからかなり多くの経済犯罪が発生するわね」

株や社債などの売買を利用したインサイダー取引などの金融事件を含む、
ありとあらゆる経済犯罪が発生することは誰が評価しても同じだろう
経済事件というのは景気が過熱気味になっていけばいくほど件数は大量に発生する
もちろん連邦捜査事案に該当するので証券取引委員会が金融市場を常に監視
インサイダー取引などの事件を察知すると迅速に対応する
経済事件の捜査はかなり難しいことは法執行機関の人間なら誰もがわかっている
経済事件が発生したとされる時から24時間以内にすべての証拠と証人を確保しないと真実は闇に葬られる
こういった問題があるので事件解決はかなり急ぐ必要になってくるのだ

「今日だけで一体どれくらいの事件が発生するのか知りたくもないわね」

法執行機関として自分たちの仕事が減るということは事件が少なく低平和の証なのだが
現実はそのような方向で話が進む事はあり得ない。必ず犯罪というものは起きるものなのだ
人の中には邪悪な感情があるから犯罪行為を行う。それを許さないことが法執行機関の職責である
どんな理由があっても犯罪捜査を最優先にしなければならない。これは法執行機関に属すものなら誰もがわかっている
休日だろうと緊急事態が発生したら休みを返上して任務遂行を行う。
そして罪のない人々を守るために仕事をするのは当たり前だ

「こんな仕事が無くなれば良いんだけど。そこが難しいところなのも事実ね」

犯罪をすべてなくすことなどできるはずがない。必ずどこかで起きるものなのだ
小競り合いというもの事案。その事案が大きく発展して大規模犯罪行為に成長していく
いくら取り締まりをしたところでいたちごっこのようなものだがやめるわけにはいかない
公正な犯罪捜査を行い、犯人を刑務所に放り込むことが必要なのだ
だからクラナガン捜査局という組織があるのも事実である

『連邦準備銀行は政策金利を12%に引き上げることを決定。国内経済を引き締めるに必要と判断したと』

『また公開市場介入で連邦準備銀行が保有している多くの次元世界国で発行された国債を金融市場で売却』

今国内に流れている資金を中央銀行に戻させる売りオペ(資金吸収オペレーション)の実施するのだ
これで国内で流れている資金減少が可能になる

『連邦政府の新規長期国債で金利10%を300兆ミッド。1年物短期国債を100兆ミッド発行が決まり買いが殺到』

ミッドチルダ連邦国債は格付けランキングで最も安全資産とされている
今の国内の財政状況を見るとそれは当然である。
数千兆ミッド程度国債発行なら金融商品格付けでは最も安全と評価される
理由は簡単だ。今回の新規国債の発行理由は金融市場に流動している大量の資金を吸収することを目的なのだ
それに連邦政府には数千京ミッドの基金があるので国債償還が難しくなるということはあり得ない
さらに10%という高金利を付けた国債のために活発に取引されている。だから安全資産であるのだ

『また連邦準備銀行へ金融機関が準備預金として預ける資金の割合も高めることにするとしています』

準備預金の割合を高めることで金融市場に流動している資金の量を減らすことができる
様々な手法を使って国内の金融引き締めの方向に動いている

『高金利がつけられた国債ですが、追加発行が出てくるのではないかと経済評論家がコメントを出しました』

国内の景気過熱を少しでも抑え込むために連邦準備銀行が政策金利の大幅な引き上げ、
さらに連邦準備銀行が保有していた他次元世界国の国債を金融市場に流すことで金融引き締めに動いている

『連邦財務省は国内の金融市場に関する動きに注視すると声明を発表』

政策金利は今日だけで何回目の引き上げになるか。
おまけに引き上げされた政策金利は12%になることは確実
金融引き締めを行いバブル経済になることを必ず止めることが求められる
バブル経済になれば、急激な景気悪化につながることも確かであるのだ
そうなる前に止めなければならない。国内経済をうまくコントロールするために政策金利の引き上げを行う。
さらに連邦準備銀行に金融機関が預ける準備預金率についても引き上げる
これらの金融政策で国内の資金流通量を減少させる

「本当に退屈を知らない街ね。このクラナガン市は」

ステラはそんなことを言いながら中央本部に戻ることにした。ラボで証拠分析を行うためである。
海上安全整備局の諜報員が絡んでいるなら裏社会の流れを把握することは重要だから
諜報員が何を目的に秘密裏にこちらで情報を集めておけば、次に起きる事案に対応することができる
それを考えると捜査を進めるのは通常業務である

「できれば早く交代要員が来てほしいんだけど

ステラもラジェットが担当している任務が重要である事とクラナガン捜査局にとって、
今後は大きな邪魔ものになることはわかっている。それでも任務のために役割は果たさなければならない
これも重要な任務であることもわかっている。時空管理局から切り離さなければ管理局の改革は難しい
機動六課組にはさまざまな勢力のバックアップがあった。
だからこそ一時的とはいえ時空管理局本体から切り離さなければならないのだ

『クラナガン市内で営業範囲とする鉄道会社が多額の社債。最も多くとして最大100兆ミッドを発行すると発表』

クラナガン市内で主に旅客鉄道を専門としている鉄道会社は現在8つの鉄道会社がある
多くの住民がいるため基本的には24時間常に運行している会社は多い。クラナガン市は眠らない街だ。
深夜になれば運行本数は減るが、それでも24時間、どの時間でも鉄道運行を行っている
市内には多くの人々が利用するため毎日かなりの収益がある。街の都市発展はまだまだ続く。
車による交通渋滞を抑制するために鉄道網の充実は重要である。
市内を専門に運行している鉄道会社が8社もある。
8社の中で5社は鉄道運行を行っている営業範囲はそれぞれの区を専門としている
市内全域、あらゆる区を網羅する鉄道会社は3社があり、この3つの鉄道会社は市内全域を営業範囲としている
クラナガン市政府が新たな都市計画を決める時に効率よく鉄道やバスなどが利用できるように、
市政府は市内で旅客鉄道やバスなどの旅客運行会社と議論を行うことで整備された都市開発をすることができるのだ
そのためにも市政府と旅客運行会社で作る都市計画の会議は極めて重要になる
クラナガン市政府交通局が管理運行している地下鉄が市内に6路線が存在する
その他にクラナガンシティバスという市営バスも数多くの路線を持って運行されている

「こういう時に良いことが起きたことはないのよね」

こういう都市計画を作る際にはかなりの確率で談合が起きる
それを止めるために法執行機関は存在するのだ。談合を防ぐために治安活動を行うのだ
問題が拡大する前に対応することは極めて重要である

『タンカーやコンテナ貨物船のダイヤが乱れている。貨物列車などのその他の貨物運行に影響が出る可能性あり』

クラナガン市内にある港湾では1日何百隻もの貨物船が利用している重要拠点だ
1つの乱れが何千隻もの貨物船の運行に影響が出ることは日常的に起きている
調整を行う交通機関運行会社はかなり苦労が出てくるのだ
そういったことを考えながら都市開発計画づくりをしなければならない
だからこそ利権をめぐっての談合が起きてしまう。どの企業も考えることは同じだ
少しぐらいなら大丈夫だろうという甘い考えを持っている
だから最悪の結果を招いてしまう。談合が摘発されてかなり多額の反則金や公共事業の参入停止処分
これが発令されると連邦政府や州政府などのすべての公共事業の参加は認められない
入札参加の機関については裁判所が決めることになっている。
談合などの事案に関する裁判は連邦裁判で審判が下される。州裁判所などではその州でしか認められない
だからこそ連邦裁判所で審議される。連邦裁判所で判決が出されると国内すべての州で適用される

『ワンワールドバンクとグループ企業が保有していた資産凍結で多くの企業が取引の資金確保ができていないと』

『連邦政府はペイオフ対象外である無利子や無利子決済の口座預金は問題ないと金融市場に冷静な判断をと』

ペイオフの対象になるのはあくまでも利息が付く普通預金だ。
企業や組織の決済用口座や無利子口座はペイオフの対象外であると連邦法と国際条約で決められている
だからこそ、それらの口座に預けられている預金を利用して銀行などの金融機関が、
様々な取引を預金主の許可がない状態で取引をすることは認めていない
もしもそれらの行為を預金主の許可なくしてしまうと金融機関として業務停止命令が出されることもある
ワンワールドバンクでは今わかっているだけでこのペイオフ対象外になる口座は全体の数パーセントしかない
つまりほとんどの銀行口座はペイオフの対象になっているのだ。これは通常ではありえないことだ。
通常、企業や組織の預金口座は無利息口座や決済口座にすることでペイオフの対象外にしておく。
しかしワンワールドバンクはつぶれることがない安全な金融機関だと思っていた。
そのため、ワンワールドグループ企業がすべて破産したことで預金口座の9割以上は封鎖された
ワンワールドグループ企業に預金や資産運用を任せていた企業では破綻するようなことが大幅に増加。
添いの影響は証券取引所などを含むさまざまな金融市場にも影響を与えている
株価や社債などのその企業が発行している金融商品の取引価格は暴落。
JS事件までは経営が順調でかなりの黒字を出していた企業も今では大赤字を抱える状況になっている
資金不足になることが分かってくると大きな影響が出ることは確かである

『ワンワールドバンクに開設していた企業の預金口座は無利子口座や決済目的口座にしていない事例が多いです』

マスコミもワンワールドバンクが破綻したので、
ペイオフの対象になる形の有利子口座を持っている企業の株価は下落している
ワンワールドグループ企業の破綻処理について審議を次元世界連合で可能な範囲で良いので早く行う必要がある
ワンワールドバンクに預けている預金が動けない現状では口座の持ち主はかなり危険である
それに預金されている金額が1000万ミッド以上になるなら、影響範囲はかなり大きなものになる
リスク分散をしっかりと行っていたからこその問題だ。
本来であれば複数の銀行などに分けて企業の資金管理をするべきなのにそれを怠った
だからこそこういう事態になったのだ。確かにワンワールドグループ企業の破綻などないと宣伝されていた
企業経営者ならしっかりとした危機管理対策を行うのが当たり前なのだ。
信頼しすぎるあまりにワンワールドバンクに高額な預金を預けている。
何度も言うがリスク管理ができなければトラブルが発生しても影響が最小限にできる
逆を言えばリスク管理ができていないなら影響は極めて深刻になってくるのだ
だからこそ慎重な判断が必要になってくる。
それが欠落していた企業や組織が多かったことは今の段階ではっきりしている

『ワンワールドバンクに開設していた行預銀金が封鎖された影響を受けて多くの企業の株価が下落傾向にあります』

『連邦準備銀行は金融市場に一時的な特別融資を実施することが想定されています』

ミッドチルダ連邦政府の中央銀行である連邦準備銀行が資金を金融市場に資金を流す
最も信頼度が高いはずの銀行同士の取引で問題が発生すれば国内の経済に与える影響は大きい
最小限にするのは中央銀行として特別融資という形で金融市場に資金を流すことが最善である
だがその資金を流すのは良いが無事に返済されてくる可能性が必ずあるという保証などはない
投入するには慎重な見極めが必要になってくるのだ。その資金はミッドチルダ連邦の国民の税金が入っている
もし投入して返済ができなくなった資金が発生すると国民の税金を無駄に使っただけになる
それだけは許されることではない。

「ワンワールドグループ企業の影響がどこまでになるかは想像もしたくないわね」

ステラは問題が山積することは避けようとしていた
このような状況では金融事件が起きることはかなりの高確率でぶち当たるものだ
どんな事件が発生するかは全く予測することはできない。だが常に経済の動きを見る必要はある
少しでも動きがあれば対応に入れることも重要なのだ

『南分署からSA34。まもなくそちらに南分署の現場鑑識チームが到着する』

「ある程度は鑑識はしたけど、念のためダブルチェックを行うように手配をかけて。それと分析は中央本部ラボで」

『集めた証拠関係はすべて中央本部のラボ棟に移送するように手配をかけているので、そのことについては問題はない』

相変わらずこちらのリクエストに速やかに対応できる用意はできている
備えは万全といった状況になっていることに彼女は少し安堵した

「今頃、クラナガン捜査局の幹部は慌てているでしょうね」


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中央パトロール本部庁舎 10階クラナガン捜査局オペレーションルーム

『連邦準備銀行は金融市場に100京ミッドの資金を流すことで銀行間の資金取引を円滑にできるように備えると発表』

ワンワールドバンクの資産凍結状態が継続すると影響は大きくなるからこその対応だ
同時に証券取引委員会が国内の金融市場について注視しているとも公表された
もし金融機関での経済事件が発生したとしても、即座に対応できるように監視している

『コール市場の銀行間取引では今のところは問題はないとしながらも連邦準備銀行で調整中』

『ミッドチルダ連邦だけでなく他次元世界国でも金融市場に資金を流しています』

『一連の動きで次元世界連合加盟国の金融市場での取引は冷静な動きをしています』

しかしそれもいつまで持つかは全く想像できないことも事実である
何がなんでも問題解決のために動かなければならない。
些細な金融トラブルが国家を巻き込んだ騒動になる
できればそこまで問題が発展する前に止めなければならない

『クラナガン商品取引所で売買されているクラナガン原油価格は1バレル9000ミッドまで上昇。今後さらに上昇すると』

ミッドチルダである程度の基準になるクラナガン商品取引所で取引されるクラナガン原油価格は、
国内全体の多くの商品取引所で売買される原油や石油製品の価格の大きな指標になっている
原油価格が上昇するということは自動車燃料や火力発電で使用される燃料も上昇する
つまりあらゆる物価上昇になることは間違いないのだ。
自動車燃料価格や電力価格が上昇すれば国内の経済に対する影響は大きい
石油製品も寝あがる影響はかなり大きなことになる。しかし石油製品のリサイクル技術開発がある
この石油製品のリサイクル技術を使うことで新しい石油製品を使わないでリサイクルを行う。
これによって新規の石油製品の使用量を大幅に削減することができるのだ

『国内のすべての州に設置されている州商品取引所ではリサイクル石油製品の取引価格が上昇傾向にあります』

石油製品のリサイクルができることはある意味では大きな強みでもある
新たな石油資源を使う必要がないからだ。特に環境のことを考えると可能な限り石油製品のリサイクルは重要
新規石油製品の使用量を削減できるということは大きな意味で環境にやさしいと言えるかもしれない

「本当に退屈しないわね」

副捜査長官をしているエメロード・トレディアはマスコミの報道をオペレーションルームで見ながら発言した
マスコミはワンワールドグループ企業の破綻の情報やそれによって発生する経済的影響を報道していた

『連邦準備銀行が金融市場に資金を出すことで州証券取引所や州商品取引所では値動きは安定しています』

『しかし国内で何かトラブルが発生した場合は金融市場に大きな影響が出ることが予想されます』

『また通貨為替市場でも急激なミッド高は少し収まりつつあります』

『クラナガン市内にある自動車燃料給油所では原油価格が急激に上昇した流れを受けて自動車燃料価格が上昇すると』

『市政府は市上下院議会で審議されている臨時自動車燃料増税法案の審議について慎重な判断が必要ではないかと』

実は今クラナガン市議会の上下院では市政府が定めている自動車燃料税の増税法案の審議が行われている
元々自動車燃料税は連邦税で1リットルあたり20ミッド。
さらにクラナガン市法でさらに20ミッドが課税している
自動車燃料税の増税法案が出された最大の理由は市内の景気過熱を少しでも抑えるために増税を行う
また環境汚染を防ぐためにハイブリットカーなどを購入する時の補助金や新たな都市計画のための財源にする
何もない財源がない状態で予算をつけるのは他の市政府組織の予算を削ることに。
それを避けるために新しい財源が必要になってくる。その財源のために自動車燃料税を増税するためである
しかし原油価格が上昇すれば自然と市内の自動車燃料価格も連動して上昇する
原油価格の上昇がどこまで続くかによって大きく情勢は変わってしまう

「副捜査長官。長官はどう動くでしょうか?」

オペレーションルームの管制官の質問にそんなの効くまでもないわと彼女は返答して
さらに次のように回答した。捜査長官はいつも組織を守ることも大切であると。
それに自らの部下を守ることも重要であり人々が平和に暮らせるように職務遂行を行うといつもの口癖である

「捜査長官の口癖よ。我々が存在する理由は平和に暮らしている人々を守るために職務遂行を行う」

エメロード・トレディア副捜査長官の回答に管制官はそうですねと同意した
捜査長官は常に人々を守るために動いている。もちろん組織が腐敗になることを止めることも重要だ
時空管理局と同じように汚職が起きれば法執行機関として機能しなくなる。そんなことは許されない。
人々が平和に暮らせるようにしっかりと治安維持活動するのは重要だ
それがクラナガン捜査局として活動することが求められる

『クラナガン市政府はノースクラナガン堰から下流へ放流する水量に関して一時的に引き下げる方向で動くとしています』

ノースクラナガン堰は小規模のダムのような。
正確に言うなら堰が設置されている場所の上流部に下流から海水が逆流しないために設置している
堰の上流部には数多くのクラナガン市内で使用される水の浄水場が数多く存在している
浄水場へ取水される水に海水が入ってこないようにしているのだ
市内には大きな河川であるノースクラナガン川とクラナガン川という2つの川が流れている
それぞれ1か所ずつに堰が設置されていてクラナガン市民が利用する水道水にするために浄水場に水が取水されている
実は上流から流れてくる水の量が少し減少傾向にあるのだ。
そのため堰から下流に放水される水量を削減するかどうかを検討されていたのだ
いきなり水が足りないから放水をやめるというわけにはいかない。
河川維持のためにも維持放流を行わなければならないと連邦法で定められている

『クラナガン河川局は上流のフローレンス州の1か月の降雨量が3割ほど減少しているとの連絡を受けてのことです』

河川を維持するには上流の降雨量は極めて大きな影響が出る
降雨量が減少すれば河川に流れる水量は減少するのは当たり前だ
だからこそ同じ河川の管理をしている州政府との連携を取るのはいつものこと。

『堰で行われている水力発電には影響は現段階では出ていないとしながらも万が一に備えるとしています』

ノースクラナガン堰とクラナガン堰では水力発電が行われている
そこで発電された電力は基本的には行政組織や国際機関などに優先送電が行われる。
市内に存在する連邦行政機関やクラナガン市政府機関や次元世界連合などの施設にも送電されている。
もちろんクラナガン捜査局にも送電されている。他の火力発電所や魔力精製炉発電所が停止しても問題はない

『クラナガン市内への電力供給に即座に影響は出ないとしながらも慎重な判断が必要であると市政府報道官は発表』

「まぁ彼らなら当然よね。セキュリティがしっかりあるのに問題があるなら、トラブルが起きた際の影響は大きくなる」

クラナガン市政府としても安易な発言をするわけにはいかないのだ
些細な問題であってもトラブルになる前に解決しなければいけないことはわかっているはず
もちろん、非公式にはクラナガン捜査局でも調査依頼を受けている。
現在、港湾パトロール安全保障局が事実確認を行っている。そこで些細な問題でも大変である

『クラナガン市政府高官からの情報によると影響が出ることになればすぐに記者会見を行うと談話を出しました』

その時無線による報告が入ってきた。もしもに備えて爆弾処理チームが確認作業を行うとのことだ
もしノースクラナガン堰が爆破によって破壊されたら被害は甚大になる
修復にはかなりの時間と費用が掛かってくるので、そうなる前に問題がないかを調べなければ意味がない

『ノースクラナガン堰を確認しているが爆発物などの危険なものは確認されていない。念のため継続して警戒をを行う』

『こちらクラナガン堰。こちらも確認作業を行ったが不審物は確認されていない。もしもに備えて警戒態勢は維持する』

「問題が大きくならないことを祈るだけね」

エメロードは2つの施設で何か問題が起きたら危険な状態になることを十分すぎるくらいに分かっている
だからこそ警戒しているのだ。問題が発生しても迅速に対応できるように


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西区東部区域クルック地区1番街2丁目と3丁目の間の通り

クレスタは1番街で暴れていた不審な男性を確保するためにあらゆる方法を模索していた
今は何が起きるかわからないことから慎重な対応が重要になってくる
もしこの男性が爆弾などを持っていたらどれほどの被害が出るかは想像もしたくない
だからこそ慎重な対応と判断が求められる。
仮に爆弾を持っていたら起爆装置がどういう仕組みで起爆するかわからない
既にこの周辺には避難命令が出されている。クルック地区1番街を中心に立ち入り禁止エリアに指定されている

「かなり危険だな」

今後の対応方法について模索していた。
この場所ということが最も難しい判断を迫られることも理解していた
新しく生まれた国際政治という駆け引き。それが難しさを通常の事案と大きな違いだ

「SA23から中央本部。現在警戒態勢を敷きながら不審な男性と話をしようとしている」

今は男性はかなり興奮状況にある。顔認証システムで照合した結果、身元はすでに分かっている
名前はサオール・ビリス。41歳。退役時空管理局員で最後の階級は2等陸佐
旧時空管理局地上本部事務部に在籍していた。今は時空管理局犯罪捜査局から追い掛け回されていた
容疑は時空管理局地上本部に物資を納品していた企業から金を受け取り、
いろいろとその企業が多額の利益が出るように動いていた。
簡単に言えば官製談合をしていた。それだけの話ならまだ良いが受け取った金額が問題だった
20億ミッドもの金を受け取っていた。あまりにも多額すぎる。
時空管理局犯罪捜査局が捜査を開始した直後に行方が分からなくなった
そして現在も懸賞金をかけて追跡している。ちなみに懸賞金を受け取るには生きた状態で身柄確保ができたケース。
死亡すると懸賞金を受け取ることはできない。事件解明には証人が必要なのだ
その証人を見つけ出すために懸賞金制度が導入されている
サオール・ビリスには懸賞金として1000万ミッドがかけられている
生きた状態で身柄を確保して法執行機関に引き渡したら1000万ミッドを受け取ることができる

『クルック分署から各員へ。クルック地区や近隣地区の警戒態勢を厳重に行え。不審者がいれば即時職質』

そこにニュース速報が流れてきた。理由は聖王教会があることを容認したことだ

『聖王教会は次元世界連合聖王教会調査委員会によるすべての監査に最大限の協力をすると報道官が会見した』

『しかしこの記者会見についてどこまでそれが聖王教会が容認するかは不明としています』

次元世界連合は聖王教会のすべてを調べなければならないとしているのだ
仮に監査の妨害工作を実行すればとんでもないことになる
国際組織として活動している聖王教会はすでに評判は大きくがた落ちしている
ここで妨害工作すれば事態は最悪になることは誰の目から見ても明らか
国際組織としての立場まで失えば、聖王教会の活動に影響が出る
国際組織という立場に戻るには極めて厳しい壁が立ちふさがることになる。
そうなるような原因を作るわけにはいかない

『大量リストラされた退役時空管理局員が被害者の会の結成をする方向で動いているとの情報があります』

大量リストラされた際に受け取ることができた退職金の金額があまりにも減少して、
時空管理局に在籍していた頃に給与から天引きされた年金の積立金。
その資金の運用失敗で、現段階で毎月支給されている年金では生活ができない状況にあるのも事実だ
今後の生活にはかなり厳しい情勢になっていることで犯罪組織に属する者も存在している
それはそれで大問題だ。生活をするために再就職をしようとしても時空管理局に属していたという経歴だけで、
再就職ができないことにより生活はかなり困窮している。今の日々の生活は極めて厳しい情勢下にある

「被害者の会か。確かに人々を犯罪から守る立場にいた現場の時空管理局員は不満は多いだろうな」

安定していた職務からリストラという名目で時空管理局から退役したのだ
不満を感じるものが多いことは誰の目から見ても明らかである
もちろん不正行為に関与してかなり多額資金を受け取っていた幹部も多い
だが大量リストラされた大部分の時空管理局員には落ち度などはないはずなのに、ほぼ無一文で放り出された
誰だって文句の1つや2つだけで片付く話ではない。
厳しい現在の貧困生活から逃げるために必死になるのは普通である

「自業自得って言葉が的中する退役時空管理局員の幹部も多いがな」

不正行為に関与していた退役時空管理局員の捜査はかなり厳しい対応で行われている
今後の行動次第ではどうなるかは全く予測することは難しい
どんな些細なトラブルでもマスコミは大きく騒ぎだす。スキャンダルが好きなのがマスコミなのだ
彼らはあらゆる手段を使って情報収集を行ってマスコミ報道されてくることは間違いない

『クルック分署からSA23。現在の状況報告を行え』

「こちらでは不審人物が危険物を所持している可能性から少し距離を取り監視中。必要ならある程度の行動抑制を行う」

クレスタは銃と似たようなタイプであるスタンガンを使って攻撃を行うつもりでもいた
被害を最小限にするためには必要なことであることは間違いない
国際政治のど真ん中である次元世界連合本部や時空管理局本部がある地区などでトラブルを解消するには、
時には手段を選ばないで対応することが必要になってくる
最悪の場合は射殺することも選択肢にいれなければならない。
そんなことはできれば避けておきたいが、被害を最小限にするには仕方がない

『継続して監視態勢の維持を。何か異常があれば即時報告を要請する』

クルック分署の危険な状況がさらに別のトラブルの発生要因になることは避けたいのだ
国際政治のど真ん中で小さなトラブルであっても大問題になる
だからこそ慎重な判断が必要になってくる。最悪の場合は迅速に対応することも必要だ
問題が解決されるのに最小限にしなければ極めて危険である

「あいつがどんな行動をするか。それと何を持っているかわかればまだ打つ手はあるんだが」

クレスタも同じ状況が継続することは国際問題になることはわかっている
だが爆弾を保持していたら何をするか想像もしたくない
それに相手は仮にも退役時空管理局員だ。魔導師としての適性もあった
問題を複雑化させる最大の要因でもある。もし魔法デバイスを使用した攻撃などを仕掛けてきたら被害は大きくなる
今はAMF装置を作動させているので簡単には魔法行使はできないことはわかっている
しかし何事にも必ず完璧にという保証はない。もしかしたらとんでもないことになるのだ

『クルック地区では現在避難命令に伴い立ち入り禁止が中央パトロールが発表。退役時空管理局員が暴れているためと』

『規制エリア外からは多くのマスコミが集まっています。中央パトロールは接近する行為は極めて危険だと声明を発表』

『外国為替市場では通貨ミッドの取引がかなり大きな変動幅で取引されています』

理由は簡単だ。ベルカ州の問題と聖王教会の問題が重なったことが最も大きな要因である
ミッドチルダ連邦の通貨であり国際貿易で使用される基軸通貨である通貨ミッドの為替レートは変動する

「本当に面倒だな。資金稼ぎのためにトラブルを起こしているかもしれないな」

金を稼ぐためなら利口な人間はいろいろと計画して、プランを利用してビジネスするケースは多い
ワンワールドグループ企業の破綻によってなおさらその傾向は増加している
多くの金持ちが金を失った。その失った金を取り戻そうと必死になる人間は多い
何が何でも失った金を取り戻そうとするのが人間というものだ

『港湾本部から中央本部へ。ベルカ州西部地方で発生しているクーデター騒動に動きを確認』

動きは民間通信会社が運用している通信衛星を使っての通信を傍受したとのことだ
ミッドチルダ連邦国内で民間通信会社で人工衛星を運用しているのは1社だけである
通常は地上回線や無線中継施設を利用した通信が一般的だ。
民間企業が保有している人工衛星は数社しかない。
さらに人工衛星の運用を行っている民間企業はミーミルグループ企業の人工衛星が事実上独占している。
理由は簡単である。わざわざ人工衛星を使用した衛星通信を必要とされることがなかったからだ
地上に存在する優先会は極めて豊富にあるのでわざわざ衛星通信をする必要がない
クラナガン捜査局では中央パトロールと港湾パトロールの2つの組織がかなりの数の人工衛星を運用している
地上回線が使用できなくなった場合に備えて配置されている
衛星通信を利用した通信回線は何重もの暗号回線になっているので簡単に解読することはできない
複雑な暗号回線になっている。解読するのは簡単ではない。常に暗号コードは変更されている。
そのため以前使用できたものはすぐに切り替えられることもある

『為替レートは通貨ミッドの取引は急激を原因とする為替変動に注視すると連邦準備銀行の報道官は発表』

さらにある政治的話題が入ってきた。
それはクラナガン市政府とベルカ州政府がある合意文書に調印したことである

『クラナガン市政府とベルカ州政府はエネルギー資源の安定供給などの経済関係について合意文書を承諾』

クラナガン市政府とベルカ州政府とは石油や天然ガスや電力などの各種ライフラインの直通回線が整備されている
この合意文書では今後の連携して安定的な経済発展を結ぶことを承諾したのだ

『クラナガン市上下院議会での質疑についてベルカ州政府との様々なエネルギー資源供給について審議を終了』

『市上下院議会は全会一致でエネルギー資源供給の合意文章を承諾しました』

クラナガン市というのは特別扱いになっている。
通常は国内のすべての州から連邦議会に連邦議員をできることになっている。
だがクラナガン市はミッドチルダ連邦政府の行政機関が数多くある事実上の首都である。
だからこそクラナガン市政府が行う政策によってはクラナガン市だけでなく、
多くの州にも影響が出ることは誰もがわかっている。
クラナガン市の正式名称はクラナガン州クラナガン市政府となっている
しかし首都である連邦行政機関があることから州政府とつけるのは優遇されているという、
ある意味では過剰な認識を他の州政府から見られてしまう。
それを避けるためにクラナガン市政府は基本的にはクラナガン州という名前で呼ばれることはない
行政組織に関しては州政府の業務をクラナガン市政府が代行していることになっている。
他の州政府を刺激させないようにするためにクラナガン州政府という名称を使わないことにしている

『クラナガン市下院の財政・税制委員会では自動車燃料税の引き上げについて議論が進んでいます』

一時的な増税を行うことができるかどうかについて審議をしていた
今の法で連邦税で1リットルで20ミッド。クラナガン市法では1リットルで20ミッドになっている
市議会では臨時自動車燃料税として5ミッドの増税について議論していた
5ミットの増税で得られた市歳入で生活困窮者への生活保護などの貧困している市民、
彼らの生活を何とか立て直せないかを目的とする社会福祉向きに使用されることになっている。
ちなみに連邦上下院議会でも自動車燃料税の増税を審議されていた。
連邦自動車燃料税もクラナガン市自動車燃料増税法案と一緒で1リットル当たりで5ミッドの増税案の審議されている
増税法案が可決された場合はクラナガン市内の自動車燃料税は、1リットルで50ミッドの自動車燃料税になる
ただし退役時空管理局員の生活支援に市民から集めた税金という貯金箱のお金を配ることにはなるかもしれないと、
慎重な態度を示している市議会議員が多いのも事実だ
しかし退役時空管理局員が再就職することができなくなったことで犯罪組織に参加している事例は多い
いろいろと悪事に参加していることは多い。犯罪組織に参加することで不正取引している
犯罪組織ですらワンワールドバンクの保有していた資金凍結を食らって組織を維持する難しい。
そんな事態が犯罪組織でもあることは数多くわかっている
だからこそ失ったり動かせなくなった資金を再度取り戻そうと必死だ
どこもひどいことになっている

『ベルカ州上下院議会では州内の各種ライフラインを増強する目的で公共工事を行うが議会で協議を行いました』

政府機関が公共事業を行う場合にはその公共工事について議会が承諾しなければ公共事業が認めていない。
仮に1度でも不正行為をしたことが分かれば公共工事に参入することが凍結される
最低でも1年間は政府機関から公共工事が行う場合であっても参入は認められない
厳しいルールが定められている。これは連邦法で定められているので国内ならどこでも同じことになっている

『ベルカ州上下院議会では全体8割以上の議員が各種ライフラインの工事をさらに進める方向で調整に動くことで一致』

ベルカ州内ではまだまだ各種ライフラインの整備が追い付いていない
それらを整備するために州政府が運営しているベルカ開発銀行がライフラインの建設費用、
それをほぼ無利子で貸し付ける業務を行っている。
すでに州政府や郡政府や市政府に2000兆ミッドを融資している
ベルカ州内の連邦行政組織は別として州や郡や市の議会で最も党員数が多いのはベルカ自由党に属する議員だ
ベルカ自由党は州政府発足がされるまで。つまりJS事件までは武装勢力として反政府組織として活動していた
しかし州内にある州政府や郡政府などが発足してからは武装解除を行っていた
反聖王教会として活動していた時はベルカ解放同盟という名称だった
JS事件後に自治領から州政府などの民主主義政治に切り替わってからは武装解除に伴い、
犯罪行為の事実を警察機構に伝えて刑務所にいる人物は多い
確かに犯罪行為を起こしたことを告白して真実にまるでごみのように捨てることは許されない
ベルカ解放同盟がJS事件までに起こした数多くの犯罪行為については嘘偽りなく告白して真実のふたを開けた
彼らはこう思っている。確かに許されないことではある。
しかし今のベルカ州があるのは自分たちが行動したことで動いたという事実を受け入れて刑務所に収監されている

『次元世界連合の聖王教会調査委員会ではベルカ州西部地方で発生しているクーデタを早急に調べる必要があると』

『すでに安全保障理事会において全会一致で強制捜査を決定していることでそれが完了することを願う者もいます』

しかしすべて完璧に1度にすべての問題が解決できるというのは不可能だ
数回に分けなければならないことがある事案もある。国際政治ではいろいろと問題が発生する
いくら時空管理局の規模と権限が縮小されても国家間の政治的トラブルが増加するだけとする意見もある
それもまた事実である。だからこそ難しいのだ

『ベルカ州政府は州債の発行金額を最大8000兆ミッドまで引き上げて道路建設などの公共工事を行うか検討すると』

州政府も急激な経済発展に必要である電気ガス上下水道などの他に、
州内の道路網拡充を行うために予算を作る方向で議論が進んでいるがすぐに公共工事に必要資金の確保は難しい
そこで州政府が発行する州債を発行することで一時的に予算確保に動くべきか検討していた
政府の収入に該当する税金の歳入では急激な上昇は見込めない
だからこそ州政府などでは州債などの債券を金融機関などに販売している
一時的に必要であり、税金というあまり急激な変動がない政府が発行した債券は安全資産になる
ワンワールドグループや時空管理局や聖王教会が発行していた債券の取引価格は暴落、
多くの投資家などは新しい安全な資産運用ができる金融商品がないか探している
それだけに次元世界連合加盟国政府が発行した債券の取引はかなり激しく行われている
国債だけでなく地方自治体が発行する債券の取引量も急激な上昇傾向にあるのだ
新しい新規取引先を見つけることを最優先としている銀行や投資銀行などの金融機関はどこも必死だ
ワンワールドグループ企業の破綻に伴いかなりの資金を失った金融機関は多い
だからこそ新しい安定感のある資金運用先を見つけようと苦労している

『一方で電力会社もかなりの金額になる社債の発行を行っていることから金融市場では取引量が大幅に上昇しています』

『電力会社は今まで魔力精製炉発電に基本とする発電設備運用をしていましたが、JS事件後にAMF装置が裏社会で流通』

『新しい石油系燃料や天然ガスや石炭などの火力発電所の建設を行うためにかなりの金額になる社債を発行』

『電力会社は安定した電気料金という収入が事前に予測することができるため、金融市場では買い注文が極めて多いです』

政府が発行する債券と同じで生活に必要なエネルギー資源開発企業・石油製品製造企業。
通信会社や上下水道運用企業などのライフラインを運用している企業の債券は安全な資産となっている

『ワンワールドグループ企業の破綻によって失われた資金を取り戻すために数多くの機関投資家などが動いています』

投資家にとって法的にグレーゾーンであれば多少のリスクを覚悟して投資を行っている
失われた金を取り戻そうと、投資を行っている人物や企業はかなり焦りを感じている

『クラナガン財務庁は市内の都市開発の認可をする際に土地バブルを抑制することを目的の審査基準を強化すると発表』

元々クラナガン市内の郊外はまだまだ開発をすることは十分なほどの広さを持つ土地はある
だが不動産開発会社が乱発した開発を行えば環境破壊や不動産バブルを生むことに直結する
それを抑制するためにクラナガン市政府は都市開発を行う場合には市政府の承認がなければ容認されない
すでにクラナガン市政府は都市開発に関して厳しい審査を行っている。
今後はさらに審査基準を厳しく行うことで不動産バブルにならないようにする

『連邦準備銀行も必要なら政策金利の引き上げを行うとしています』

『今後も政策金利の引き上げを利用した金融引き締め政策がさらに強化されるのではないかと警戒しています』

連邦準備銀行はすでに政策金利の引き上げ政策を午前中だけでも何度にもなるか。
金融引き締めのためには最も効果的な金融政策であるが、
急激な政策金利の引き上げは時間が少しずつ経済状況が酷くなってくる
それだけに様々な金融政策を立案して実行することが連邦準備銀行は行うことが求められる
ミッドチルダ連邦政府や連邦準備銀行が行う金融・経済政策は国内だけでなく、
多くの他次元世界国の経済に大きく影響するため慎重な判断が必要になる
ミッドチルダ連邦は次元世界連合全加盟国の中で最も経済発展している
ミッドチルダ連邦政府の国内事情も重要だが、他次元世界国に影響することも考慮に入れなければならない
次元世界連合安全保障理事会で唯一の常任理事国だ。
国際政治に関してもミッドチルダ連邦政府の外交政策は多くの次元世界加盟国に影響する
だからこそミッドチルダ連邦大統領の職務は極めて重大になる
少し読み違えや政策変更で次元世界連合加盟国の経済や治安に影響が津波のように波及していく

「時空管理局の大規模縮小による問題がここまでこじれることはある程度は想定していたが」

クレスタは問題がかなり拡大していることに警戒心を覚えざる得ない。
クラナガン市内だけでも大量リストラされた退役時空管理局員が起こす犯罪がかなりの数字になっている
窃盗などの軽犯罪から密輸に関与しているなどの重罪行為まで幅広い
取り締まる側である法執行機関としては本当に迷惑な話だ

『フローレンス州政府は州内にある時空管理局フローレンス基地に対する強制捜査の検討を考えていると』

時空管理局の地上に配置されることが残された時空管理局基地は大幅に削減された
クラナガン市と近隣州にあるのは基本的には各州に1つの基地までと定められている
しかし中には時空管理局の基地を州内に設置することで再度の暴走があるのではと考える州政府は多い
そのためクラナガン市と近隣州はクラナガン市内には時空管理局の地上基地はない
近隣州ではフローレンス州に1つの基地があるだけ。基地に配置される時空管理局員の大幅削減も貢献

『クラナガン市政府は近隣州政府は安全保障上脅威の発生時の対応マニュアル作りを改定する用意を行うと』

クラナガン市はミッドチルダ連邦政府の首都だ。
それだけに近隣州との連絡会議は極めて重要になってくる

『クラナガン市と近隣州政府は発電設備で魔力精製炉発電所の依存状況は危険と判断』

『新たに火力発電所や水力発電所の設置を求める動きがあります』

火力発電所では原油価格や天然ガス価格によって発電コストが大きく変動する。
ただし発電所の設置から運転開始までは比較的短時間でできる
だが水力発電所となるとダムなどを設置して工事を行ったり河川維持放流などの環境基準が守ることが必要
建設工事が完了するには火力発電所と異なりかなりの時間が必要になる
そのためクラナガン市政府と近隣州政府は電力会社と電力安定供給のために連絡会議の設置が決定していた
電力融通を行うことでしばらくは電力安定供給に貢献できる

『多くの電力会社は発電所の新設や設備運用に必要な資金を確保するためにかなりの社債を発行』

ライフラインを管理している企業の社債はある意味では債務不履行になることが極めて低い
だからこそ安全資産としてそれらの社債を購入する銀行や投資ファンドなどの金融機関は多い
ワンワールドグループ企業がすべて破産してからは動かす資金の金額もかなりの数字になっている
それだけに債券などの金融商品の取引は大幅に急増。多くの金融機関は失った資金を取り戻そうと必死だ

「退役時空管理局員の現場は頑張っていたが、幹部はそんな彼らをただの駒としか見ていないことは明らかだな」

チェスと同じである。現場は必死でも幹部は自らの私腹を肥やすために様々なことをしてきた
自らの財布に金が集まれば集まるほど、人という生き物は欲望が増えていくだけ
だがその欲望で手に入れた多額の資産を失っている者はかなりの人数になる
しかしそれが資本主義というものである。ビジネスでは負けることもあれば勝つこともある
勝者と敗者が生まれる厳しい世界が資本主義の経済なのだから

「あとはこっちだけか。あいつが何をするかわかれば良いんだが」

サオール・ビリスがどんなことを仕掛けてくるかわからないのが最も恐ろしいところである
何か些細な事であっても今は何かのきっかけを生むかもしれない
ここでは状況を把握してすぐにコントロールできるようにすることが極めて重要だ

「できるなら、抵抗しないでほしいが難しいだろうな」

クレスタは慎重に状況を見ていた。
奴が何を仕掛けてくるかわからないと大きなトラブルになるかもしれない。
そのリスクを最小限にするために、行える方策があるなら少しずつ向かわせるしかない
だが大型船舶と同じでこのような状況では素早い動作ができないことはわかっている
捜査官として、一時的には港湾パトロール海兵隊で鍛えてきた。
今も休日に時間があれば狙撃訓練などの鍛錬は常に行っている
自らの性能がどれほどのものか。限界とはどこまでを示すかを調べなければならない
捜査部捜査官というのは時に各名命令を出すこともあるのだ
だからこそ限界がどこなのかを見極めるために鍛錬をするのは当たり前のこと
ちなみにクレスタは予備役少尉の階級になる。戦闘行為は常に鍛錬を行うことで自分の限界を定期的確認している
自らの戦闘技術の限界を知ることは極めて重要である
少しでも問題があるなら、その問題が解決するまでは少し距離を取ることにしている
自分の不始末で仲間が負傷することを避けるために、常に見極める力は重要である

『クルック分署からSA23。速やかに安全確保を行えるように動くように』

クルック地区と近隣州にある数多くの次元世界連合の施設警備のためにクルック分署が設置されている
通常は地区パトロール事務所だけだ。然しここは国際政治の最前線であるため、特別にクルック分署がある
クルック分署はクルック地区と近隣地区の警戒監視を行っている
ここでは些細なトラブルであっても早期解決をしなければならない
それだけにこのあたりの治安維持は重要である

『中央本部からクルック分署へ。攻撃を許可する。射殺も容認するので対応せよ』

中央本部が射殺の許可を出した。もう待っていることはできないとの判断だろう
こればかりは仕方がない。いつまでもこのような状況では大きな問題になることは誰の目から見ても明らかだ
爆弾などを利用した無差別攻撃は止めなければならない。これ以上、この場所でトラブルを起こすのは許されない

『次元世界連合は時空管理局の予算について審議を行い。ついに結論が大筋ではあるがまとまったことを発表』

次元世界連合の傘下に収まった以上時空管理局は彼らが好き勝手に予算要求はできない
次元世界連合の承認を得なければいけないのだ。
基本的には次元世界連合安全保障理事会と次元世界連合総会で全加盟国の3分の2以上の承認が絶対条件だ
それに時空管理局の予算案を以前は時空管理局が無理なことを要求してくることは当たり前であった
しかしJS事件後に次元世界連合が発足すると無駄な予算要求とその予算の使用が適切であるか審査が行われている
だからこそ以前に比べると大幅に時空管理局の予算は大きく削減された
今年の時空管理局の予算は昨年よりも7割以上のカットになった。
最も削減された予算案は人件費だ。給与水準が大幅引き下げの影響によって、給与が半分に削減された者もいる
時空管理局の給与水準が以前は高かったことが最も影響が直撃している
今後はさらに時空管理局員のリストラが行われることは多くの人々はわかっている
最終的には時空管理局の人員はJS事件よりも半分以下にする方向で次元世界連合では議論が進んでいる
どこまで減らされるかはまだ正確な数字は出ていない。だが削減される人員についてはある程度は予測できる

『中央本部から各員へ。退役時空管理局員が騒動を起こす可能性が予見される』

退役時空管理局員が少しでも不審な動きを見せたらすぐに職務質問を行えとの無線が入ってきた
今はどんな些細なことも見逃すことはできない。大量リストラされた退役時空管理局員の数はあまりにも多すぎる
JS事件の前には時空管理局の人員は数億人単位だった。しかしリストラによって時空管理局で1000万人ほどになった
大量リストラで人員削減された人員は退役時に受け取ることができた退職金はほとんどない状況だ
さらに年金運用をしていたワンワールドグループ企業が破綻したことで、
退役後に受け取ることができたはずの退職金はほとんどなかった。
おまけに退役後の生活資金として得ることができたはずの年金も最低限しか受け取れない
退役時空管理局員の多くは大量リストラされた後はアルバイトをいくつも掛け持ちしなければならない
かなり厳しい生活状況になっていた。一方でワンワールドグループ企業の破綻を事前に察知。
ワンワールドグループ企業の株式の空売り攻撃で大儲けした投資銀行やヘッジファンドもあった
損をすることもあれば大きな利益に繋げることができる状況にもなっている
あまりに悲惨なものであるがこれが資本主義というものである
敗者になってしまったら、どこかで資金を集めなければならない
だがワンワールドグループ企業関係で失った資金などは桁が大きく異なる
あまりにも多すぎるので負けてしまった者は日々の生活にさえ困窮しているからこそ犯罪行為をするのだ
生活をするのにはそれなりのお金が必要になる。だからこそ誰もが必死になるのは当然のことである
お金を失えば誰だってとんでもないことを実行しようとする
特に金銭的に追い詰められているならなおさらである。
追い詰められた人の中にはすべての抵抗は無意味だとわかると自殺行為を行うかもしれない
犯罪行為に関与していた人物なら自らの刑務所生活のことを考えるのは嫌だろう
仮に死刑にならなくても仮釈放なしの終身刑になることがはっきりしてくるともう何もかもどうでもよくなってくる
最後には自らの命を代償にして何か派手なことを起こす。それも飛び切り大規模な問題になるようなことを
そしてすべてに幕を引くことにもなる

『クルック分署からSA23。青信号での対応を許可する。できれば生け捕りにしたいが可能な範囲で行うように』

つまり生け捕りにしないことを容認した。もし可能であれば生け捕りが理想であるが簡単なことではない
だから射殺許可が出たの。青信号が出ているということはいつでも問題解決のためにあらゆる方法を選択しても良い
ちなみに青信号とは殺しても良いということを示す隠語である。
あえて射殺許可のことを隠語である青信号という。
もし無線を誰かに傍受されても察知されないようにするためでもある

「こちらSA23。射撃体勢に入っている。危険人物の足や肩などを狙う」

できるだけ死なれるリスクが少ない方法で対応することが求められている
最悪の場合も想定しているが、そのような道になることは避けたい

『次元世界連合は時空管理局の予算案の審議を一時的に保留扱いにすることを決定』

これは次元世界連合本部や関係機関の拠点があるクルック地区、
つまりクレスタが対応している事案に次元世界国政府の外交官の安全を考えてだ
事案解決後にはすみやかに次元世界連合総会と安全保障理事会で採決を行う
今の次元世界連合の考えでは予算は大幅に削ることで、各次元世界国政府は承認することは間違いない

『今年度の時空管理局の予算は5000兆ミッドほどになることが分かりました』

JS事件までは時空管理局の予算は数十京ミッドになっていた。
しかし今回の大量予算を削減できるようになった。

『ワンワールド保険が運用していた資金はかなり失っていることが分かりました』

『ワンワールド保険の損失がどれほどになるかを調べるのにの時間がかかると』

ワンワールド保険で様々な保険商品に加入していた顧客である個人や企業も、
保険解約時の払戻金を受け取れない状態になっている。
つまりワンワールド保険と損害保険などを契約していた顧客は新たに保険契約を別の保険会社で契約しなければならない。
だが問題はこれだけではない。本来であれば保険会社から契約更新をしないなどを選択した場合は還付金があるはず
その還付金は顧客が保険会社に毎月支払っている保険契約料に応じて返還される。
しかし次元世界連合はワンワールドグループ企業の財産処分は凍結されている。
ワンワールド保険は破綻したことによって、保有資産を売却してある程度の資金を用意することもできない
次元世界連合の調査が終わるまでは、簡単な話で済むわけではない

「ワンワールドグループ企業の問題は政治だけでは片付くことはないな」

国際政治にどれくらいの影響が出るかは全く予測することはできない
政治だけでなく経済にも影響してくる。最悪の事態を想定して動くしかない
何が起きるか全く想像することができないからこそ問題が増える一方であるのだ
問題の規模がどこまで広がるかもわからないだけに、コントロールできるか。

『ベルカ州でのクーデター騒動で原油価格はベルカ州だけでなくクラナガン市にも影響が出ています』

クラナガン市とベルカ州の間をにある原油や天然ガスパイプラインが運用開始されたことが大きな要因だ
このパイプラインが運用されるまではクラナガン商品取引所で売買されている原油先物取引価格、
それはクラナガン市内で産出される原油や天然ガスの生産状況だけで取引されていた
しかしそれはすでにもう過去の話だ。クラナガン市とベルカ州を結んでいるパイプラインの運用開始で、
ベルカ州で安全保障に関するトラブルが発生すると、クラナガン商品取引所の原油価格に影響を与えることになった

「グローバル経済になっているところがつらいな」

クラナガン原油先物取引期価格は1バレルで9600ミッドまで上昇。
今後どのようなことになるかは全く想像することはできない。
最悪のシナリオというとベルカ州とクラナガン市の間を結んでいる原油や天然ガスパイプライン、
それらで送られてくる原油や天然ガスが止まれば、さらに原油や天然ガスの取引価格は上昇。
状況的にはかなり恐ろしいことになる。特に天然ガスは火力発電所での需要が大幅に増加した
そのため天然ガスの取引価格は連日上昇傾向にあった。
ミッドチルダ連邦を構成する各州政府では独自に原油や天然ガスなど、重要なエネルギー資源の備蓄基地を設置。
ミッドチルダ連邦内の州で安定供給できるように配慮がされている

『連邦政府は新たに原油備蓄基地や天然ガス備蓄基地の設置に必要な資金を州政府に無利子で融資すると発表しました』

『また対外債権保有基金の債券を金融市場で売却する方針を固めています』

対外債権保有基金は現在の評価額で8700京ミッドにもなっている。
この基金はミッドチルダ連邦の予算で長年にわたって時間をかけて保有してきた多くの国の国債などになる
これを金融市場に流すということは金融市場の引き締め政策の一環とするのだ
今の段階ではどれくらいの基金の資金を流すかは決まっていない。だが現実は大きな影響を受ける
外貨準備金と同じ扱いをしている資産売却を現実に行うには、
連邦上下院議会での過半数以上の賛成票が必要になってくる
もし連邦議会で賛成が得られたら対外債権保有基金に保有している他次元世界国政府国債を売却できる
逆に反対が過半数になった場合は連邦政府は議会が判断したことに反することは許されない

『ミッドチルダ連邦政府は金融市場の引き締め政策を継続的に行う方向で進める可能性が高いと』

何度も言うが民主主義で重要なのは国民が選んだ議員が行う政策だ
選挙で選ばれたなら事前に公約としていた政策を行うように様々な圧力をかけてくることは珍しいことではない
もし選挙公約が実行できないなら、次の選挙で落選することは確実だ
落選しないために選挙で看板としていた選挙公約を目指さなければならない
そうしなければすぐに大きな影響が出てくる。例えば政治家になれば何かと政治活動費が必要となるのだ
選挙活動費の大部分は選挙投票をしてくれた支持者からの寄付だ
公約実行が無理となれば政治活動費にも影響する。つまり政治家は常に支援者の顔色を見なければならない
寄付が減ることになれば政治活動に大きな影響が出るのは誰の目から見ても明らかだ
政治家なら当然支持者が何を望んでいるかを把握しなければ大きな問題になる
ちなみにミッドチルダ連邦国内のさまざまな議会では『共和党』と『民主党』と『平和党』という3つの政党がある
平和党はクラナガン捜査局を退役した退役クラナガン捜査局員が創設したものだ
時空管理局の退役時空管理局員が編成していた次元管理党と異なるのは、平和党は民主主義を絶対原則。
特定の組織や企業を優遇するような行為を平和党に属する議員は禁止している
あくまでも支持者となっている人々の生活安定を最重要課題として政治活動を行っている
連邦政府が保有する他次元世界政府の国債の売却することで通貨供給量の減少する方向で動いている
通貨供給量を削減すれば金融市場の引き締め政策にもなることはわかっている
問題はどれくらいの金額の対外債権を売却するかである
連邦政府は8700京ミッドも対外債権を保有しているので、
その債権を売却すればかなりの金融引き締め政策になるのはわかっている
売却する債券の金額をどれくらいになるかは慎重な判断が求められる

『連邦議会では上下院議員は対外債権の売却金額の調整するのは、かなり難しいことになるでしょう』

一度に大量の多くの次元世界国政府が発行した国債を金融市場に売却すると経済的影響は大きくなる
ただし少ない規模の債券を売却すれば、金融引き締め政策の効果は薄れてしまう
多すぎてもダメであり少なすぎてもダメというジレンマがあるのも確かなことである

『一部関係者によると数百京ミッドの他次元世界国政府の国際を金融市場に売却するとの話が出ています』

この辺りの調整をするのが財務省の仕事である。
また連邦準備銀行とも連携して対応することでより効果のある方法を採用できる
安定した世界を実現させるには、まずは経済情勢を落ち着かせることが最も重要になる
経済情勢が不安定になれば犯罪発生率が上昇する。それらの調整するために何らかの政策実行が重要だ

「それにしても、ワンワールドグループ企業に振り回されて損失を出した人物の多くが退役時空管理局員とは」

それだけ時空管理局はワンワールドグループを利用していた証でもある
今後の動向次第では何がどうなるかは全く想像できないし、良好なアイデアが出るはずがない
次元世界連合全加盟国政府はさまざまな政策を実行することが必要なのだ

「今頃自分たちの選択がどれほど危険なものであったかをしっかりと理解しているだろうな」

経済的に追い詰められている退役時空管理局員は多い
生活に必要な金も満足にいくほど確保できなくて困るような人物は多いだろう

『中央本部からSA23。まだ仕留めることはできないか?』

「既にタイミングの調整に入っている。あと少しの時間をくれ」

『素早い対応を要請する。クルック地区と近隣地区の立ち入り禁止はすでに限界になりつつあることを理解せよ』

クレスタはすぐに中央本部が何を考えているかを理解した
クルック地区と近隣地区でトラブルを起こされると影響は大きい
だから問題解決の実行を求めているのだ。何かあれば大きな影響に発展する
特に国際政治のど真ん中であるクルック地区での問題となると継続的に問題事案が続くことを避けたいのだ

『狙撃準備完了。SA23、合図が出ればすぐに仕留めることが可能になる』

狙撃手からの無線にクレスタは判断を下すことを決断した

「狙撃を許可する」

その連絡を受けて狙撃チームは2発の弾を肩に撃ち込んで行動不能な状態にした
すぐに刑事とパトロール捜査官が身柄拘束を行った

『容疑者確保!容疑者確保!』

「こちらSA23。了解した。安全確認を行って厳重警戒で対応せよ」

クレスタは奴が何か危険物を所持していれば大きな問題になる
仮に体に銃火器や爆薬を保有していたら、仲間の命が犠牲になる
もし仲間の命に危険性があるなら、最優先でその問題に対応しなければならない

『港湾本部から中央本部へ。港湾パトロール支援衛星から魔力爆弾の爆発と思われるものが観測された』

港湾パトロール支援衛星は港湾パトロール本部が運用している多機能型人工衛星である
高度700kmに36種類の軌道を周回している人工衛星。港湾パトロール支援衛星にはさまざまな機能がある。
機能は気象・通信・衛星電話・衛星インターネット・位置測位・魔法監視・偵察・早期警戒・デブリ監視である
もちろん中央パトロールでも独自の人工衛星を保有・運用を行っている
中央パトロールが運用している多機能型人工衛星の名称は中央パトロール支援衛星となっている
中央パトロール支援衛星が保有している機能は港湾パトロール支援衛星とまったく同じだ
違いがあるとするなら高度400kmを36種類の軌道を周回している
港湾パトロールと中央パトロールは上部組織は同じクラナガン捜査局なのに、
なぜ人工衛星の運用をそれぞれ別で行っているか。
それは安全保障上のトラブルが起きた場合に情報連絡が後回しにされることを警戒しているのだ
お互い常に隠し事はできないということを明白にするためにそれぞれ独自の専用人工衛星を運用している
互いが監視を行うことで状況判断を素早く行えるように。情報というのは生鮮食品と同じで鮮度が重要なのだ

『中央本部から各員へ。中央パトロール支援衛星からも同様のデータを観測中。現在正確な位置などの情報収集中である』

「嫌な仕事になりそうだ。どこの連中なのか、あまり考えたくはないが」

クレスタはため息をついていた。問題が大きくなる前に対応しなければいけないからだ
トラブルが複雑になってくると対応が遅れてしまってさらに状況判断に時間が必要になる
何事もスピード感のある解決が求められる。これもまた事実であるのだ

「本当に面倒なことにならなければ良いが」

『中央パトロール支援衛星でも魔力爆弾の爆発と思われるものを観測。データから間違いないと判断できる』

「いよいよ本腰に入れてきたか。あとは何があるか想像もできないな」

中央パトロールが運用している多機能型人工衛星でも確認されたとなると間違いはないだろう
今後の対応方針について、上層部では行動計画の作成に入っているはず
できればこちらに迷惑なことを引き渡されることはないと願いたい
現実問題としてそのようなことは困難であることはわかっている
それでも何とかしないといけないのが現実であることは間違いない
その時別のニュースの話題が入ってきた

『ミッドチルダ連邦準備銀行は銀行間コール市場取引に7000兆ミッドの資金を流すことで動いているということです』

最も信頼度が高い銀行間取引のコール市場で資金トラブルが発生すると大問題であることは間違いない
それを阻止するために中央銀行が介入することそのものに問題はない
しかし連邦準備銀行が金融市場に流した資金が返還されるかどうかに正確性はない
もしかしたら貸し付けて返済されないと言ったことになれば金融市場で大問題になることは事実だ

『これは国内の銀行間取引で資金融資活動が落ち込むことを避けるためであるとしています』

『また各次元世界国の中央銀行でも各国のコール金融市場に資金を流すことでショートしないように動いています』

ミッドチルダ連邦準備銀行だけでなく、次元世界連合全加盟国の中央銀行でも同様の動きをしている
明らかに金融市場に混乱が生じないように最大限の活動をしていることは間違いない
もし各次元世界国の金融市場で問題が発覚すれば大きな問題になるため、最優先で対応することが求められる

「まったく面倒ばかり起こしてくれる。こっちの苦労を考えてほしいな」

クレスタは問題ばかりを起こしてくれる連中が多すぎることにため息をついてしまった
今後の展開について考えることはいくつもあるのだから当然であるが
それでも少しは面倒を起こす確率を避けてほしい

『ストリクス1から中央本部。こちらでは現在不審な航空機や飛行魔法行使魔導師は確認されていない』

ストリクス1とは港湾パトロールが運用しているE-767(早期警戒管制機)の識別コードだ
クラナガン市では基本的に常時1機のE-767が首都防衛のために展開している
さらに戦闘機も2機配置されているので安全確保のため、連邦航空局の航空管制業務を港湾パトロールに移管される
事実上の軍事航空管制状況になる。民間航空管制を一時的に港湾パトロールの管轄空域での飛行禁止命令が発令される
民間航空会社が運航している航空機の飛行禁止命令が出されると最優先でその事案に対応しなければならない
1つの小規模な異変であっても港湾パトロールは警戒活動をしなければならないのだ

「早期警戒管制機による上空からの監視でどれほどの効果が出てくるかは期待したいところだな」

港湾パトロール飛行隊の早期警戒管制機の警戒監視は首都であるクラナガン市を守るために重要である
少しでも異変があればすみやかに戦闘機や軍艦が攻撃準備などを目的にスクランブルがかかる
クラナガン市を守るためには最悪のシナリオを想定して警戒監視を維持するのだ

『ストリクス1から港湾本部。ベルカ州方向からクラナガン市に向かって民間航空機が飛行中。無線応答はない』

その航空機はキアニーエアライン103便でベルカ州南部地方から本来であればフローレンス州に向かうはずだ
だが針路は明らかにクラナガン市に向かっている。どう考えてもおかしな針路をとっている
無線交信をストリクス1が行っても反応がないということは何か危険なことを考えているのかもしれない

『港湾本部からストリクス1。そちらに向かってF/A-18Eが向かっている。警戒監視は2機で連携を取り行え』

「首都に向かって特攻攻撃でも仕掛けてくるなら大騒動になる」

無線交信が全くできない状況になっている民間旅客航空機がクラナガン市に向かっている。
かなり危険であるのは間違いなく、今後に何が起きるかわからないのだ。

『次元世界連合本部や関係機関があるクルック地区での問題が解決したことが分かりました』

『今まで立ち入り制限を撤廃する方向で対応するとクルック分署の報道官が発表しました』

問題が解決したのだから当然の判断である。
何か危険なことが起きたことを考慮して対応しなければならない

『次元世界連合時空管理局調査委員会ではある疑惑が確認されたとの情報が発表されました』

時空管理局調査委員会は今までの時空管理局がもみ消しを行っていた過去の闇を調べることを専門に行っている
時空管理局が過去に関わったとされる不祥事はあまりにも多すぎることが調査に時間がかかる最大の要因である
今回、わかったことはある疑惑があるからだ。その疑惑とは時空管理局を陰から支配していた人物。
性格には人物ではなく、時空管理局を陰から操り人形のように動かしてきた最高評議会だ
彼らはスカリエッティが生み出した仲間に抹殺された。
時空管理局最高評議会は人ではなかった。肉体を放棄して脳みそだけで時空管理局に利益がもたらせるように、
まるでチェスでコマを動かすようにしか見ていない。つまり時空管理局員が死んだとしても、
自らに影響がなければ仕方がないことだと軽視し続けていた
時空管理局の幹部の多くはただ自らの私腹を肥やすようにしか組織を動かしていた
法執行機関としては最低最悪の存在でしかない

「本当に面倒な組織だな。連中は」

『中央本部から捜査部捜査官へ。時空管理局機動六課組の受け入れについて確認せよ』

クレスタはその無線を聞いてさらにため息をついた
なんで自分たちがそんな貧乏くじを引かなくてはならないかを分かっているからだ

『クラナガンキャピタルパワーは魔力精製炉発電所から使用済み魔石燃料を再処理施設に移管すると発表』

クラナガンキャピタルパワーは発電所事業を専門に行っている企業だ
火力発電所を5施設・魔力精製炉発電所を10施設を保有して運用している
全ての発電所の合計発電出力は最大8億KWにもなる。
魔力精製炉発電所で使用される魔石燃料は原子力発電で使用されるウラン燃料と異なり放射性物質などがない
つまり放射性廃棄物が出ないことから人体や環境に与える影響は基本的には発生しない
それに原子力発電で発生される高レベル放射性廃棄物がないことから環境汚染はない
しかしJS事件によって生み出されたAMF装置によって魔力精製炉発電所の発電機能が失われる
分散型発電所の運用が求められる。だからこそ火力発電所や水力発電所の建設が急増している
その建設費を確保するために電力会社は社債の発行を行っている

『ミッドチルダ連邦準備銀行は政策金利を12%に引き上げしたことを受けて、為替市場では通貨ミッドに買いが殺到』

『通貨ミッドは極めて高いミッド高の状況にあります』

金融市場では電力会社などが発行している社債に大量の買い注文が入っていることへの警戒も報道されていた
時空管理局の影響下にあったワンワールドグループ企業の破綻で失った資産を少しでも取り戻そうと、
電力会社などが発行している社債に買い注文が急増。
社債の発行時にある金利も高く、なおかつライフラインである電力会社の社債なら倒産するリスクが低い。
そのため購入が急増しているのだ

「金融市場で混乱を利用して経済犯罪が起きないか警戒しないとな」

インサイダー取引が行われることを考慮して警戒監視をすることが求められる
金融市場が活発に行われているときは最も経済犯罪が多発しやすい時でもある


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東区西部区域 一般道路

ラジェットは中央本部に向かっていた。もちろん港湾パトロール海兵隊の護衛支援を受けている
何が起きるかわからないのが最大の課題である
今はクラナガンハイウェイから一般道を使って中央本部に向かっている
上空には人工衛星や早期警戒管制機などの支援を受けて機動六課組の移送作戦を実行中だ
だが何事にも完ぺきということはない。少しでも異変があればいつでも対応できるようにスタンバイをしていた
ラジェットは携帯情報端末を使って周囲の状況を常に確認している

『港湾本部から中央本部。こちらで機動六課組に対する攻撃予告と思われる内容の通信を傍受。詳細については確認中』

ラジェット達に攻撃されたら大ごとになる
そんなことを避けるためには最大限の警戒が必要になることは間違いない
小さなトラブルが大きなトラブルに発展するのだから、当然と言えばそれまでの話ではあるが

『クラナガンシティエネルギーは自社で備蓄している石炭や原油や天然ガスを商品市場に放出する用意があると公表』

『クラナガン商品取引所で原油や天然ガスなどのエネルギー資源価格の急激な変動を抑え込むことを理由にしています』

「嫌なことになりそうだな」

ラジェットはラジオニュースでその情報を聞いてため息をついた
クラナガンシティエネルギーはクラナガン市政府が出資。
株式のすべてを市政府が保有している完全公営企業である
この企業では原油や天然ガスや石炭の取引価格が急激な変動時に一定のコントロールを行うために創設された
ちなみにミッドチルダ連邦法で公営企業だからと言って天下り先として、
政府職員や退役した政府職員が同企業に参加することは基本的には禁止されている
これは政府職員が政府機関を退職後に政府関係企業への天下りを禁止するためである
天下りを起こすようなことが増加すれば、様々な問題発生が予測される
問題行為の抑制の観点から十分効果があると考えられた

『ベルカ州とクラナガン市の間にある原油や天然ガスはパイプラインを使って輸送されていますが輸送量を増強すると』

このパイプラインでは原油は1日で最大300万バレル、天然ガスは1日で最大300億立方メートルを輸送できる
かなり規模の大きいパイプラインである。このパイプラインが設置されて稼働が開始されたことによって、
クラナガン商品取引所でベルカ州産の商品取引が可能な項目になった。

『中央本部からSA11。警戒情報を送る。スタンバイされたし』

それは受信したらすぐに内容確認を行えということだ
ちなみに警戒情報というのは危険な行動をする犯罪組織や武装組織に関係する情報である
そんな組織が動いていると極めて危険であるから警戒情報が出される
その情報はすぐに確認することが求められる。情報は常に暗号方式で送られてくる。
暗号方式は解読が難しいものを常に採用している。情報漏れが起きてもすぐに特定できるようになっている

「トラブルは避けたいんだがな」

ラジェットはH&KG36のロックを解除。いつでも発砲できるように弾を薬室に送り込んだ
アサルトライフルであるこの銃には弾倉に30発の銃弾が入っている
さらにとんでもない話題がマスコミの報道で確認できた

『次元世界連合総会でワンワールドグループ企業が保有しているすべての資産確認作業を速やかに行うことで全会一致』

全会一致ということはすべての次元世界加盟国すべてが賛成したことを決定したのだ
今後は次元世界連合経済社会理事会でワンワールドグループが保有する資産を差し押さえる
すでに資産凍結は行われている。問題はその資産の金額だ。
ワンワールドグループ企業が保有していた資産はあまりにも巨額すぎる
だからこそ一国の判断で対応するわけにはいかない。連携した対応をしなければならない
大きすぎる企業は本来は潰さない方が良いのだが。あそこは時空管理局との関係がべったりだ
新しい国際秩序が生まれた以上、無くした方が良い企業に該当する
ワンワールドバンクやワンワールド保険が抱えている金融商品がすべて無価値になったわけではない
ワンワールドグループは確かに時空管理局債を大量に抱えていたが、
そのほかにも様々な企業の社債や株式なども保有していたことは多くの金融機関の関係者は知っている。
それらの資産はワンワールドグループの破綻処理に必要な資金として利用することになる
ただし破綻処理は次元世界連合加盟国政府が多くの国と連携して対応する
そうしなければ簡単に物事は解決することはない。それだけは疑いようのない事実。

『中央本部からSA11。警戒情報を送る。スタンバイされたし』

ラジェットの携帯情報端末を使って中央本部から送信されてきた情報確認を行った
携帯情報端末に送られてきた情報には時空管理局と関係が合った犯罪組織との通信を確認したと
これはかなり危険な情報である。万が一に備えて行動しなければならないこともある
護衛の港湾パトロール海兵隊員とともにいつでも襲撃に対応できるようにスタンバイさせた
自らに爆薬を身に着けてこちらへ自爆行為も想定されるのだから警戒するのは当たり前である

「港湾本部に連絡してすぐに部隊を送り込んでくれ。必要なら俺が大統領に掛け合う。何がなんでも危険人物を確保しろ」

『すでに港湾パトロール海兵隊が展開中。危険分子の捕獲に動いている』

つまりいつでも街中で戦闘準備をすることはできるということだ
もちろんそんなことにならないようにしてほしい。だが現実というのは極めて危険だ
一瞬先は闇なのだから危険である

「連中のことだ。こちらの動きを分かっていることもある。情報操作も行ってくれ」

『了解した。こちらでも不審な動きがないかを監視する』

今は法律的に合法ならあらゆる方法で応戦する構えで動かなければならない
これは負けるわけにはいかない作戦であるので機動六課組のメンバーに負傷が起きるようなことは許されない
必要ならどんなことでも利用しなければならないである

「諦めが悪い連中は多いようだな。お前たち機動六課組はとんでもないパンドラの箱を開けた」

ラジェットの言う通りだ。確かに彼らは真実を明らかにしたことは認められる。
だがその結果で生まれたのはとんでもない災いをもたらしている。
多くの時空管理局員が退役に追い込まれて、権限は大幅に縮小された。
おまけに退役後に受け取れるはずだった年金もほとんどもらうことができないどころか、
かなりの金額の借金を抱えて破産した人物や企業が多すぎる
真実を明らかにした結果がこれではだれもが彼らのことを英雄視することはあり得ない
ただし各次元世界国政府は権限が戻されて次元世界連合という新しい国際秩序が生まれた
そして狂犬とされていた時空管理局という犬に首輪をつけることができた
もう彼らが好き勝手に行動することや予算の無駄遣いをさせることはどの次元世界国政府は一致している
ただし国際政治はいろいろと面倒ではあるが

『中央本部からSA11。不審な無線通信を確認。暗号方式だったが解読に成功。攻撃を受けることは間違いない』

ラジェットはすぐに近くに車を止めさせることにした。
これ以上の車での走行はあまりにも危険すぎる。だが他の車を手配している暇もない。
避難できる場所がないかを確認したところ、あるものがヒットした

「次の交差点を左に曲がれ」

交差点を曲がったところに地区パトロール事務所があった。そこに逃げ込むことを優先した。
もしかしたら別の攻撃が行われるかもしれないが地区パトロール事務所なら簡単に侵入はできない
常に何人ものパトロール捜査官が常駐している。事務所には常に10人は配置されている
無人になることはあり得ないように勤務シフトが組まれている。少しは安全であることは間違いない
だが長時間にわたって立てこもるのはかなり難しい。長時間立てこもるとなるとこちらも手札は限られてくる
手札が無くなればもう答えは決まっている。それは『死』を意味しているのだから

「俺は最後尾を受け持つ。先発を任せても良いか?」

助手席に座っている港湾パトロール海兵隊員に質問をラジェットはした。
結果は先発は任せてくれとのことだ。今は急がなければならない
時間的余裕などないのだから。
車から降車するとすぐに機動六課組を連れて地区パトロール事務所に入った。
とりあえず危機管理のために配慮を行った。
何が何でも行動を止めなければならないのだから当然ではある
地区パトロール事務所の扉を閉めた。
この扉も対物ライフルであっても貫通させるのはそれなりの時間と弾が必要になる
そんな時間をかけている暇などがあれば、身柄拘束されることは確実である。
しばらくはここで籠城しなければならないのだから。

「時間稼ぎができれば良いがな」

ラジェットは念のため事務所の窓にカーテンを使って外部から中を見られないようにした
もちろん熱探知装置を使われたら意味は全くないので射線上に入らないように機動六課組を取調室に隔離した
あそこならかなり安全である。防弾仕様であるし分厚いコンクリートと鉄筋が入っている。
いくら対物ライフルであっても貫通するのは不可能に近いことは間違いない

「あとは制圧できたらいいんだがな」

今は待つしかない。その時窓ガラスが割れ目が数多く発生している。
敵は何が何でも攻撃してすべて抹殺するつもりである
今はここで何とかするしかないが1つだけ問題があった。
無線通信妨害装置、つまりジャミングを仕掛けられているので無線交信ができない。
今は事務所にある有線通信の回線電話を使って連絡を取り合っている

「簡単にあきらめることはないだろうな。ここで籠城戦をするしかない」

下手に外に出たらどこから狙われるかはわからない。
念のためすでにAMF装置を作動させているので魔導師として動くことは難しいだろう
だが完全に無理というわけではないのでどこまで有効策になるかはわからないところが難しい
とにかく今はここで応援が来るのを待つしかないのは確かである

『あと5分以内にそちらにSWATが到着する。交戦状態に入った時に危険度が一気に上がることに警戒を』

「こちらSA11。了解した」

ラジェットは3年ほどは港湾パトロール海兵隊で鍛えてきたのだから、
どのような状況であっても冷静な判断を行うことができる。問題があるとするならほかの連中である。
もし対戦車ミサイルなどを使われたら、情勢はかなり厳しくなってくる
対物ライフルなら時間稼ぎができるがスティンガーなどを使用されたらこちらにはかなり不利になってくる
そこまでになることは避けたいが完全にそのような行動がないとは言い切れない
もしもに備えることは極めて重要である。安全確保のためにも特に

「本当に面倒なことになってくるかもしれないな」

SWATの応援が来るまでは何とかするしかない。ラジェットは何か策がないか考えていた

『中央本部から全局員に通達。SA11の安全確保のために最優先で行動を開始せよ。緊急行動指令を発令する』

緊急行動指令が発令されるとある程度の人数は通常勤務だが、
現状でパトロール活動などの通常任務の物に対しては緊急行動指令の対象になった者の安全確保、
それを最優先にして動くことが義務付けられている。これはクラナガン捜査局運用規則で定められている
クラナガン捜査局運用規則というのはクラナガン捜査局員が活動する場合について、
様々な手順などが定められているマニュアルである。
これを覚えていない者はクラナガン捜査局に入局すらできない
規則にはクラナガン市政府と連邦政府が定めた数多くの法律に関しても詳細に記載されている
内容をほぼすべて覚える事が一人前である証となるのだ。
ちなみにそれらに関する試験があるので合格することで規則資格合格を示すバッジの着用ができる
このバッチがない限りは単独での捜査活動をすることは認められない
そのバッチをもらうことこそが正式なクラナガン捜査局員になったという証である

「はやて・八神。お前たちは隠れておけ。俺たちが食い止める」

ラジェットははやてたち機動六課組をすぐに取調室に入れた
そこは最も警備が厳重で防弾ガラスや分厚いコンクリートなどで隔離されている
応援が来るまで立てこもるならそこにいる方が今は最も安全な場所だろう

「いよいよパーティーが始まる。ダンスを楽しむとしようか」

ラジェットの言葉に港湾パトロール海兵隊員も我々も全力でダンスの相手をさせてもらうと
ダンスと言っても踊りではない。銃撃戦を楽しむのだ。それを相手に気づかれないように話すことになっている
隠語を使わないと感づかれてしまう。それも捜査や戦闘を簡単に連想されないように使っている


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中央パトロール本部庁舎 8階捜査部オペレーションルーム

ウルはラジェット達が立てこもっている地区パトロール事務所周辺の状況把握に専念していた
こちらから直接支援できるようなことがあれば全力で対応する

『ベルカ州西部地方では停電状態が継続中。通信回線は有線回線は停止中。無線基地局はバッテリーシステムで運用中』

有線回線が遮断されている。今は人工衛星との通信をすることで通信ラインは確保されている
だがベルカ州西部地方では発送電が停止状態なのでバッテリーで無線通信基地局は何とか機能している
バッテリーは最大で240時間は正常に機能する高性能バッテリーシステムがあるので現時点では問題がない
だが通信量が増加するとバッテリーに蓄電残高の減少量が増えることが想定される
それを考えるとできれば急いで対応することが求められてくる。
もし無線通信基地局がダウンするとかなり危険になることはウルもわかっている

「本当に厄介な事になっているみたいだね。こちらとしては早急に復旧してほしいのだけど」

だが変電所を爆弾で破壊するような行動を起こされているなら後始末はかなり苦労することはわかっている
そんなことにはなっていないはずではあるが詳細な情報はあまり多くはない
つまりある程度は悲観的な目で判断をする必要がある

『港湾パトロール飛行隊や海兵隊以外に、ミッドチルダ連邦軍が派兵されています。今後大きな戦闘が発生するでしょう』

『我々がいるこの場所もいつ戦場になるかわかりません』

ウルはオペレーションルームでマスコミの報道内容を見て、大きなため息をついた
ベルカ州西部地方で起きている大きな問題になっていることはベルカ州の安全保障だけでなく、
近隣州への経済的影響は極めて大きなことになる

『港湾本部からクラナガン航空管制区域を飛行している航空機に通達』

港湾本部は通常ではクラナガン市と近隣州の航空管制を担当しているクラナガン航空管制センターの管轄だが
現在は港湾本部が担当するクラナガン市と近隣州を飛行している航空機に対して指示を出した
港湾パトロールが民間航空機の航空管制を行うということはベルカ州や近隣州で民間航空機の運航数は減少する
理由は簡単である。戦闘機や対空ミサイルで間違って民間航空機に影響が出ることがあるかもしれないからだ
もし間違って民間航空機を撃墜するようなことが発生すると組織の運用に大きな影響を与える
そういうことにならないためには港湾パトロールは航空機の運航本数をできるだけ抑えることが重要である

「いよいよベルカ州内の民間航空機の飛行禁止命令が出るかもしれないね」

すでにベルカ州内の空域を飛行している民間航空機に最寄りの空港への着陸指示が出ている
今後はさらに飛行制限が出ることは間違いないだろう。
問題はどれくらい飛行禁止命令が民間航空機に出されるか。
そのあたりが重要になってくる。長時間も飛行禁止命令が出るのは好ましくない
そこに1係で捜査官をしているエルガ・ジャーニーから無線連絡が入ってきた

『SA12から捜査部オペレーションセンター。不発弾の処理はまだ完了していない。今のところは起爆の恐れはない』

ウルはすぐに無線通信で現時点では不発弾関係での問題は発生していないと伝えた

「SA03からSA12へ。警戒態勢は維持すること。何かあればすぐに連絡する」

不発弾がもし起爆したら状況は一気に変わってしまう。
慎重に不発弾の信管を外して安全宣言を出したいのだが、不発弾処理は簡単にできるものではない
少しでも間違えると起爆して被害が大きくなるだけだ。
それだけに港湾パトロールの不発弾の処理を専門としている隊員にしかできない

『東区南部区域キャロル地区1番街2丁目の建設現場では現在も不発弾が発見されているので警戒監視を実行中』

『我々マスコミも少し離れたところからしか取材ができない状況にあります』

マスコミも不発弾処理に関して報道しているメディアがある。
時空管理局関係についても熱心に報道していたりしている。しかし東区に放送局がある
放送エリアが主にクラナガン市内だけのテレビ局。社名をイーストクラナガンテレビとしている。
この放送局は東区に関係している話題など中心にクラナガン市内で報道を行っている
電波での放送はクラナガン市内がカバー範囲である。ケーブルテレビ会社なら近隣州でも放送を見れる
時空管理局の権限が強かった時には時空管理局寄りに放送を行う放送局が多かった
しかし今は全くの逆転している状況になっている。
時空管理局や聖王教会関係の不祥事を見つけるとまるであばれ牛のように報道している
今や時空管理局や聖王教会関係の報道内容は良い側面しか報道しなかったころに比べると大きく変わった。
違反行為が1つでも見つかれば、そのあたりを徹底的に突き付けて暴れまわっている

『クラナガン市政府が管理しているノースクラナガン堰とクラナガン堰にある水力発電所の発電出力が下がると発表』

『市内の民間電力供給に影響は出ないということで、市民には冷静に行動してほしいと』

「ノースクラナガン堰とクラナガン堰にある水力発電出力が低下すると少しずつ問題は発生してくるから大変だね」

2つの堰に設置されている水力発電設備の発電出力は合計すると8000万KWにもなる
連邦政府施設やクラナガン市政府施設の管理運営の電源として利用されている
火力発電所や魔力精製炉発電所からの電力供給ではもしかしたら発電が停止することがあるかもしれない
それに火力発電所の場合は電力料金などの計算が燃料価格が上昇すれば電気代も上昇することも想定される
水力発電なら発電に必要な水は川に多くの水が燃料になる。
つまり発電設備の設置コストや時間はそれなりに必要になる。
だが火力発電と異なり発電に必要な燃料経費はほとんど変動はない。
そのため発電出力は一定を常に確保できることで電力の安定供給が行いやすい。

「情勢がひどいことになる前に穏やかに解決することができれば良いけど、簡単に進む事はないね」

情勢というのは一瞬の判断によって大きく変わることは政府機関の人間なら誰もがわかっている
安全保障というのは扱いが極めて難しいことなのだ
特にミッドチルダ連邦は次元世界連合安全保障理事会で唯一の常任理事国。
時には厳しい態度を見せることも重要だが、冷静な情勢判断が重要になる
だからこそ国際政治では次元世界連合全加盟国政府の政治的問題などを見極めなければならない

「穏やかに進む事はない」

おそらく犯罪組織か反政府組織の構成員が何かを仕掛けてくることは間違いない
そもそもクラナガン市と近隣州に電力を供給していた魔力精製炉発電所へAMF装置を使用した連中がいた
クラナガン市と近隣州では別の火力発電所や水力発電所など、
それらを運用開始を行うことで停電エリアを最小限にした。

『ベルカ州西部地方でのクーデター騒動に関して現在も情勢は極めて危険な状況下にあります』

『ベルカ州政府は連邦政府と協議を何度も行い、次に予想されるベルカ州内で起きる安全保障上の問題に対応すると』

ウルはその報道を見てため息をついた。
今後はさらに面倒になることが理解したからだ。特に政治や経済についてはかなり大きな影響が
実はすでにベルカ州商品取引所ではベルカ州で採掘されている原油価格が大きく上昇している
ベルカ州で採掘された原油は州内にある石油精製工場だけでなく、
パイプラインとを通ることで東隣のマリネット州にも運ばれている
またベルカ州の南隣にあるフローレンス州にもパイプラインで輸送されている
今後のことを考えると大きな動きになることは間違いない。
ベルカ州商品取引所では原油価格だけでなく天然ガスや石炭などのエネルギー資源価格も急上昇している
ヘッジファンドが一気に爆買い状況にある。またベルカ州とクラナガン市を直接結ぶ原油と天然ガスパイプライン、
それが完成して稼働が始まった。このパイプラインでは原油は1日300万バレルの輸送ができる
本来であればベルカ州は新しい原油や天然ガスの取引する新規顧客が増えるので良いことに感じるが、
クラナガン市商品取引所でもベルカ州産の原油や天然ガスの売買ができるようにもなった
その影響によって新しい原油や天然ガスの取引価格の指標が生まれたことも意味していた
クラナガン商品取引所ではベルカ州産の原油や天然ガスの取引が行われることになった

『クラナガン商品取引所ではベルカ州原油取引価格が急上昇。クラナガン原油取引価格も高い水準を維持しています』

『クラナガン金融債権取引所でも電力会社が発行することが決まった社債にかなりの買い注文が殺到』

『またミッドチルダ連邦国債についても買い注文が殺到しています』

これらの社債や国債などの買い注文が殺到しているのは、
多くの投資家が新しい資金運用先を探しているからだ

『連邦航空局はクラナガン市と近隣州の航空管制をクラナガン航空管制センターの業務を港湾パトロールに移管すると』

民間航空管制を行っている連邦航空局がクラナガン市と近隣州の管制業務を港湾パトロールに移管
それは大きな軍事関係の動きがあることを意味している
もしもに備えて最悪のシナリオを想定することが求められることは誰の目から見ても明らかだ
今後の展開としてはベルカ州でクーデター騒動を起こしていることにかなり警戒することが必要になる
慎重な判断が必要になるだけに難しい判断が求められることはわかっている

『港湾本部からジョイントスター8へ。常に警戒監視の継続を行え』

ジョイントスター8は港湾パトロールが運用しているE-767(早期警戒管制機)の無線識別コードだ
ベルカ州にある港湾パトロールのベルカ基地には4機のE-767が配置されている
現在は4機ともベルカ州内に展開している。ベルカ州内でさらに危険な行動を起こす者がいるかもしれない
その対策として常に上空から早期警戒管制を行っている。
E-767の索敵レーダー情報はベルカ基地と港湾本部の管制センターに送られている

『港湾本部からクラナガン航空管制区域を飛行中の航空機に通達。これよりクラナガン航空管制エリアの空域封鎖を実施』

空域封鎖を行うということは民間航空機はすみやかに近隣空港に着陸させる
そういうことを意味している。民間航空機の飛行を制限するのはリスク回避の観点から考えると正しい。
だが同時に問題も発生してしまう。それはマスコミが何か裏があるのではと深く掘り下げようとするのは間違いない
穏便に事を片付けて、できるだけ早くマスコミに対して記者会見などを行う必要がある
ましてベルカ州内でのクーデター騒動で彼らも情報をつかもうと必死だ
小さなスクープが大きな波になるかもしれないのだ。どのマスメディアも同じはず
慎重に、なおかつできるだけ早くトラブルを解消することが重要になってくる

「空域封鎖になるとかなり大きなトラブルが起きるのかもしれないね」

ウルは港湾パトロールが何かクラナガン市や近隣州で国家安全保障にかかわるような、
問題を見つけたのかもしれないと考えていた。そうでもしなければ空域封鎖を行うはずがない
それを実行に移したということはかなり危険なことになるトラブルがあるのかもしれない
元々ベルカ州内の空域は封鎖をかけられている。
それだけでは収まらないで別の州の空域封鎖を行うということは何かあるはず

『空港本部からクラナガン市内にあるすべての空港に配属されている職員は空域封鎖に伴い混乱が起きる可能性あり』

混乱が発生すれば即座に対応に入るようにと空港本部は指揮を執っていた
ちなみに空港本部(正式名称:空港パトロール本部)はクラナガン市内にあるすべての空港敷地内の警察業務、
その他にも航空機で運ばれてくる貨物などの積み荷検査を担当している。
今後は中央パトロールと空港パトロールは合併することで協議が行われている
ただ、現状でも空港パトロールは中央パトロールと常に連携を取り業務を行っている
仮に空港パトロールが中央パトロールと合併しても機能そのものに変更はない方向で議論が進められている
元々中央パトロールと空港パトロールと港湾パトロールはクラナガン捜査局を上位組織としているので、
あくまでも名称の変更などにとどめられることで大筋は決まっている。
最大の課題は管轄権に関して連邦行政機関との調整が難しいとされている
空港を守るということは、別の大陸からこちらの生態系に影響を与えるような動植物が持ち込まれるかもしれない
それだけに連邦法では国内のすべての空港と飛行場などには貨物検査を行うことが義務付けられている。
そのためそれらの空港や飛行場には荷物検査を行うための政府機関などの支部が設置されている
もちろんそれは港湾施設などの港も含まれる。
船舶を利用した輸送で生態系を危険にさらすような動植物の侵入を防がなければならない
これもそれぞれの大陸の生態系を守るためには必要なことである
少しでもこの土地にない動植物が発生すると生態系というのはすぐに壊れてしまう

「空港も大変だね。民間航空機の飛行が事実上禁止されているから」

今後の対応は港湾パトロールが判断する

『ピーピーピー』

ウルの携帯電話に着信が入ってきた。発信者はかなり珍しい人物からだ
連邦国防省の幹部職員からだ。その職員は国防省の前には港湾パトロール本部に在籍していた
今は国防省で港湾パトロールと連邦軍の連絡役を行っている
今後の展開に関しては全く想像できない。何が起きるかわからないためである

『ウル主任。お久しぶりです』

「連邦軍も行動を開始したからこちらからも人材を出せという要請かな?」

『ミカ主任がこちらに向かっているので。問題があるとするなら今日から配属される彼らです』

どこも機動六課組の受け入れには慎重なのだ。
罠が仕掛けられているかもしれないのだから当然である。誰が好き好んで爆弾を抱えようとする。
切り捨てることができるならもう切り離しを行っている。機動六課組が生きていられるのは真実を知っているから
問題はその『真実』に関係する情報を把握しているか。それにその情報を他の時空管理局員に話をしているか
それを見極めてから判断しようとしている。つまり機動六課組は政治的な道具のような扱いを受けているに等しい
今後の対応次第では抹殺される可能性が極めて高い。生きていられる確率はかなり低くなるだろう

「機動六課組のメンバーだね。今はラジェットが警護を行っているけど何か危険な情報でも入手したのかな?」

『こちらで確認したところ、彼らに対して青信号が出ています。警戒を』

青信号というのは暗殺予告が入っていることを示す隠語だ
表立って言えないこともあるため、そのように言われているのだ。

「嫌な状況になりそうだね。他にトラブルはあるのかな?」

『確認作業を進めていますが、正式なことはまだ何もつかめていないことは情勢が危険と判断するべきかと』

安全の宣言が出させないということは継続して危険な状況が続いていることを意味している
今はとにかく安全確保が最優先で行わなければならない
問題が無くなるまでは何が何でも守らなければいけないのだ

『これは未確認の情報ですが、ベルカ州西部地方の停電事案は変電所が破壊されたことが原因との情報が入っています』

変電所や送電線が破壊されたとなると簡単に復旧することはできない
破壊されたとされる変電施設や送電設備の修復作業を行う必要がある
ベルカ州内では発電所と送電網はベルカ州政府の傘下企業のであるベルカパワー社が管理と運用を行っている
もちろんミーミルパワー社もここ最近は送電網の整備を行っている。
そのほかにも州内では発電専門を行っている電力会社がかなりの数になる
送電網に関しては発電と送電設備の両方を持っている電力会社はかなり限定されている
ちなみに送電網に関してはさまざまな連邦法で送電設備の使用料金を支払うことで借りることができる
他社の電力会社が設置して運用している電力会社は無理な送電網の利用禁止措置を行ってはならないと定められている
これらの電力発送電に関する連邦法規則を電力供給事業関連法と言われることが多い
州によってはベルカ州と同じで州政府が送電網の管理運営を行う州も多い
もちろん電力会社にもいろいろとあり、送電網や発電所の運用の両方の事業を行っている企業も存在している

「変電所が破壊されているとなると復旧にはかなりの時間が必要になるかもしれないね」

その情報が事実なら、電力供給を速やかに行うことはかなり困難になる
もちろんバックアップとして別の送電ラインを使って電力供給をすることはできる
少し時間が必要になるかもしれないが、
変電所の復旧工事が終わるまで別系統の送電設備を使うことで対応できる
残る最大の課題はベルカ州内の送電網に関してだ。
今まで聖王教会が自治を行っていたこともあり環境保護のために資源開発を原則禁止していた。
そのため、送電網はかなり脆弱なものでしかなく、簡単に別系統の送電網を確保できない
そもそもベルカ自治区時代は資源開発などが禁止されていたことから人口はかなり少なかった
しかし今のベルカ自治区ではなくベルカ州になり、政権もベルカ州政府に移管された
環境保護が適切にできるなら石油などのさまざまな資源開発が認可されることになった
おかげで送電網の整備はかなり急ピッチで進められている。それだけに電力供給ルートの整備はかなり遅れている
ベルカ自治区だった頃は自治区の内側と近隣州との間の送電系統の接続はされていない。
今月になってようやくベルカ州内と近隣州との送電網が接続された。

「危険なことになる前に対応しないと州内の住民は混乱するかもしれないということかな?」

『さすがはウル主任。冷静な状況判断能力は素晴らしい』

「真実を知れば多くの聖王教会関係者は抹殺される。道は決まっているのだから」

『あの計画を実行するつもりですか?捜査長官が簡単に納得すると?』

あの計画。それは2つの作戦で構成されていた。
1つは時空管理局の闇を開放して真実を白日にさらす
もう1つは聖王教会の真実を明らかにすることで彼らの立ち位置。
それは天の位置だったが彼らを高い所を好き勝手に飛行している人物や組織を地に落とす
計画が実行された場合はどんなことが発生するかは全く想像できない。
パーティーのような大騒ぎになることも想定される
問題を複雑にしている要因の中に経済的な影響が大きいこともある
ワンワールドグループ企業の破綻によって発生したかなりの損失
多くは時空管理局に在籍した者がグループ企業に貯蓄や資産運用を任せていたことが影響している
退役時空管理局員が時空管理局から退役した後に受け取れるはずだった年金がほとんど失ったことが最大の理由だ
厚生年金を受け取ることができず。ミッドチルダ連邦政府機関が運用している国民年金だけの生活となると生活は楽ではない
おまけに時空管理局を退役する際の大量リストラで退職金をほとんど受け取れなかった
それが生活苦に陥っているのだ。悠々自適な生活があったはずなのにそれがあっという間に崩れていった
リストラされた時空管理局員はもちろんだが、退役してその後の生活は安定しているとされていた退役時空管理局員。
彼らの生活状況はかなり厳しい経済状況になっている。
犯罪組織に参加して生活のために必要なお金を集めようとする人々も多いことは事実である

『退役時空管理局員が反政府活動に熱心とは皮肉なことです』

「そうだね。でも資産運用とリスク回避をしっかりとしていたら生活苦になることはなかった」

本当に金をどぶに捨てる結果がこれだと。ある意味では逆恨みかもしれないが、機動六課組を恨む者はは多い
元は時空管理局の闇が発端ではあった。その暗い歴史の中に大きな不祥事があった
今までは政治的圧力をかけてうやむやにしてきた。だが今からの流れは厳しいことになる
次元世界連合が時空管理局の闇を徹底的に調べている。些細な波紋が大きな津波のようなことになるのだ
こればかりは仕方がないことだ

「それでわざわざあの計画の話だけではないよね?君が連絡してくるということは準備が整ったと?」

『すでに大統領は承諾しました。作戦開始は1時間以内にスタート。作戦終了時間は2時間以内で解決するようにと』

トラブルが起きないことはできるだけ避けたかった。
だがクーデター騒動に関係する問題が多発するのは政治や経済においても良いことはない
経済的ダメージが発生すると国際政治やほかの次元世界国との経済にも問題が発生する
その可能性は少ないとは思うが、1度問題が発生すると大きな問題になれば対応に苦労するだけだ
大きなトラブルになる前に国内だけで対応できるレベルならすみやかに問題解決は重要である

「作戦が実行されたら犠牲者はどのくらいになるのか推定結果は出ているはずだよね?」

『中距離弾道ミサイルが港湾本部基地から発射される可能性のシナリオまで練り上げています。死傷者は最小限ですが』

問題は彼らが占拠しているとされている魔力精製炉発電所だ。
港湾パトロールが運用している中距離弾道ミサイルの射程は5000kmだ
ベルカ州西部地方なら簡単に直撃コースを取れる。
だが魔力精製炉発電所の魔力精製炉が暴走した時の被害は大きくなる可能性は十分に考えられる

「魔力精製炉発電所で魔力精製炉が制御不能になったら最悪だね。被害はかなりの規模になりそうだし」

魔力精製炉が暴走して爆発をすれば核爆発と同じ規模の被害が出る
核兵器と異なるのは放射能汚染がないというだけだ。それ以外は被害はほとんど同じと考えても良い
それを考慮に入れると厳しい判断が求められてくる
もちろん魔力精製炉で使用されている魔石燃料は低濃縮魔石である。
高濃縮魔石燃料となると魔力精製炉が暴走すれば魔力爆発することは極めて高い
民間電力会社が魔力精製炉発電所で使用されている魔石燃料は低濃縮魔石燃料である
魔石燃料の輸送や加工工場は次元世界連合の共同歩調取る独自の国際組織が監視している
少しでも奇妙な動きを確認すると魔石燃料加工工場。
使用済み魔石燃料からまだ反応が完全に終わっていない魔石を取り出し、
再度、魔力精製炉で使用される燃料に再処理燃料の工場にも緊急査察と調査が行われる
その査察や調査で合格しない限りは魔石燃料加工工場の運用は認められない
厳しい国際ルールが条約で定められている。
ちなみに魔石燃料は放射線を出すことはないので放射線による被ばく事故は起きない

『国防省でも人工衛星から監視を。問題はベルカ州西部地方の変電所などの電力送電関連施設の破壊工作です』

変電所などの送電に必要な設備が破壊されたとなると状況はかなり危険になる
もし施設が破壊されていたら簡単に復旧できるわけではない。それに詳細な情報は今も完全には入ってこない
被害を最小限にするためにも、早めの対応は極めて重要な課題である

「できれば送電に必要な様々な施設や設備に被害が出ていないことを祈りたいね」


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ベルカ州南部区域 高度1万メートル C-37[ 航空機形式:ガルフストリームG550 ]

ミカはベルカ州中央地方に向かっていた。もちろんF/A-18Eの護衛を受けてだ
今は何が起きても不思議ではない。安全確保のためには最善を尽くして対応する

『ミカ。あなたも警戒しておきなさい。私たちはいつ狙われるかはわからないのだから』

ミカはシエルから通信で情報共有を行っていた
ベルカ州中央地方に向かっているが、ミカもクラナガン市内の情勢には部下のために把握することが必要。
少しでもおかしな行動をする人物がいれば即座に職務質問を義務付けている
何が起きるかわからないというのはそういうことなのだから

「シエル。今日が本来開催されるはずだった連邦首都圏連絡会議はあるの?」

連邦首都圏連絡会議とはクラナガン市政府と近隣州の州政府が様々なことを議論するために設置された会議である
今回からベルカ州政府も参加することになった。
そのため、今回の連邦首都圏連絡会議でベルカ州政府の連携などについて協議をする
会議ではエネルギー資源の安定供給や道路の新規設置を行う場合などの公共工事において、
連携の取れた道路網などの整備と構築を行うことで無駄を削減することを目指すために議論が行われる
無駄な予算を少しでも減らすためには重要な会議である

『ベルカ州政府の州知事はクラナガン会議センターの来るのではなく、インターネットのオンライン参加になる予定ね』

今はベルカ州内の政情はかなり難しい状況であるため、インターネットを利用したオンラインでの参加になる
今回の会議で最も重要な議題は聖王教会関係が中心になる
ベルカ自治区時代に現在のベルカ州内でかなりな独裁状況であった聖王教会による政治体制から、
州内の人々が選挙で選出した州議会や郡議会や市議会の議員による民主政治に切り替わったことについてだ
聖王教会が自治権を持っていた頃よりも今のベルカ州内での経済活動はかなり活発に行われている
政権がベルカ自治権からベルカ州政府に移行後は多くの人々が移住してきた。
理由はベルカ州内には数多くの石油や天然ガスや石炭などのエネルギー資源があり、
さらに経済発展に必要なレアメタルやレアアースなどのさまざまな鉱物資源がベルカ州内には存在している。
その資源採掘業務を行う資源開発企業は人集めにかなり苦労している。
つまり仕事の種類を選ばないというなら簡単に就職先を見つけることができる

『今はベルカ州内では求人数はかなり多いそうよ。多くの企業が人手不足で苦労しているそうだから』

つまりブルーカラーの仕事なら以前に時空管理局や聖王教会の関係企業や組織に参加しても文句を言う会社は少ない
だがあまり給与は高くはないことや肉体労働になるので仕事はかなりの苦労があることは間違いない

「ベルカ州政府も大変ね。問題が山積している上に首都圏連絡会議ではかなり苦労する立ち位置からのスタート」

誰の目から見ても苦労することは間違いない。
政治というのは思惑が浮き沈みするのが早く、権力に酔いしれることになれば人々から批判される
そして次の選挙で落選することにもなる。苦労するのが政治家の職責であるのは事実だ

『それは私たちも同じよ。機動六課組の捜査官希望者を育てることを命令されている。苦労するのはいつも現場よ』

「上層部は連邦政府や次元世界連合からの無茶な要求をできるだけ最小限にしているつもりだと思っているけど」

ミカは最終的に面倒ごとを持ち込まれるのは現場で常に生と死の細くて危険すぎる橋を渡らせようとする
簡単に言えば面倒は現場に押し付けてくるだけだと。ミカはそう言いたいのだ

「連邦軍はベルカ州内で活動しているのよね?配置状況を教えてもらえる?」

『国防省からの報告によるとすでにベルカ州西部地方を取り囲むように部隊展開をしているようね』

簡単に言えば外部から何かを持ち込むことを抑制することがまず最初に行うことが重要だ
兵糧攻めに合わせることで少しでも騒動を起こしている連中が混乱することを期待している
ある程度の暴走が始まるとその後はすみやかに部隊展開を行って一気に抑え込むのだ
口で言うのは簡単だが実行する現場はかなり大変だ。だがやってもらうしかないのは当たっている

「連邦軍の作戦実行が開始されるのはもう時間の問題なの?」

『おそらくミカがベルカ基地に到着すると同時にクーデター勢力を制圧されるはずだけど』

問題は敵側がどれ程の武装をしているかである。
重装備となると厳しい戦いになるかもしれない。できれば素早く制圧することが理想的だ
ただ、素早く事が解決することはかなり確率で計算すると低いだろう
相手も徹底抗戦の構えで戦闘が始まることは間違いない
最大の課題はベルカ州西部地方にある魔力精製炉発電所が大丈夫なのか
もし魔力精製炉の炉心にある制御棒をすべて抜き取り魔石の共鳴反応を暴走させれば魔力爆弾と同じことになる
現実のことになれば被害は甚大だ。事態収拾は簡単に片付くことはない

「本当に嫌よね。ウエストベルカ市郊外には2か所の魔力精製炉発電所があるから、もしすべての魔力精製炉が暴走したら」

ウエストベルカ第1魔力精製炉発電所とウエストベルカ第2魔力精製炉発電所。
それぞれに10基もの魔力精製炉がある。つまり2つの発電所を合計すると20基の魔力精製炉があるのだ
暴走したらウエストベルカ市は地図から消えてしまうことは間違いない

『連邦軍の最高司令官である大統領が承諾した。戦争の始まりよ』

軍の最高司令官である連邦大統領が命令を出したということは何が何でも実行しろと
ベルカ州での騒動によって州内の経済だけでなく、近隣州の経済的影響が出ることは許されない
すでにベルカ州西部地方では電気回線や有線通信回線は利用できない状況にある
無線交信は無線中継基地局でのバッテリーで維持は行われているが、
有線回線が利用できないことから無線通信の利用量は通常より多い
そのため残り使用の想定時間は予定よりも減少することが想定される
元々無線中継基地局は240時間。つまり10日間は最大維持できる
しかしバッテリーの使用量によっては無線中継基地局が利用できる時間が短くなるのは当然である
ちなみに港湾パトロールが運用しているレーダー監視拠点化通信傍受施設はベルカ州には数多くある
基本的にはベルカ州の東西南北の4か所にレーダー施設や自家発電施設もあるので、
常時利用している送電設備が利用できなくても別系統の電力供給ラインで電力に切り替わる
別系統でも電力供給が行われない時は自家発電設備に切り替わる
通常送電回線が復旧するまで持つことを願うだけだ。自家発電も240時間の連続発電ができる
自家発電用の燃料が切れたらすべては終わってしまうことになる
ベルカ州内と近隣州を警戒するためのレーダー探知施設は機能しなくなるのだ
それはいろいろな意味で大きな問題になることは間違いない
ミカが乗り込んでいるC-37(形式:ガルフストリームG550)で無線識別ではガルフ4はまもなくベルカ基地に到着する
着陸したらすぐにベルカ市警察本部に向かうはずだったが、情勢は大きく変わってきた
州西部地方の問題対処に動くことが求められることは容易に察しができた
おそらくベルカ州警察などの州内の法執行機関はそれほど情報は持っていないはず
そのため情報提供と連携プレーのために用意をする必要があると考える職員は多いだろう

『州警察はあなたの指揮命令下に入ることを承諾しているわ。こちらはさまざまな情報を抱えているから』

彼らはその情報にアクセスすることを求めているのだ。
機密情報になるものを簡単に見ることはできない。その情報にアクセスすることができる人材は限られる
今は機動六課組の受け入れなどで捜査部は忙しい。だからと言って機密情報を彼らが求めるのは当然である
つまり、それなりの機密情報にアクセスすることができる人材をベルカ州警察は求めている
これは疑いようのない事実なのだ。

『ベルカ州商品取引所では原油価格は上昇傾向よ。今までクラナガン商品取引所に大きな影響はなかったけど』

今回、ベルカ州とクラナガン市を結ぶ原油や天然ガスのパイプラインが設置されたことで、
ベルカ州産の原油や天然ガスの取引価格がクラナガン商品取引所にまで直接影響が出ている
今後はベルカ州内で採掘された原油や天然ガスは近隣州に輸送される
商品取引所で取引される原油価格は石油精製で得られるあらゆる石油製品の価格に大きな影響を与える
商品取引所では基本的には先物取引で売買されるので原油化価格がその先物取引で高値を付けても、
一般の消費者サイドにはすぐには影響は出ないが1週間から3週間以内に石油製品の価格が大きく動く
もちろん先物取引で高値がついた場合は石油製品の価格は上昇
逆に取引価格が下落した場合は石油製品価格は値下がりをする
ただし今の現状ではJS事件までと比較するとかなり高値で原油先物価格は高値で推移している
1か月以内にはその高値で石油関係の製品価格は大きく上昇することは間違いない
連邦政府は備蓄原油などの放出でできるだけ影響の範囲を下げようとしているが、
現状では即効性のある政策ではない。時間がかなり必要になることは間違いないだろう

「次はどんな災いが来るのか。嫌な話だけど、あらゆる最悪の事態を想定して行動することが重要になりそうね」

『港湾パトロールはベルカ基地に部隊を集めている。おまけに大統領から武力行使で対応が実施される』

どのような結末を迎えるかは全く予測できるものではないのだ
何かあっても対応できるようにしないとベルカ州だけでなく近隣州にも経済的な影響が発生する
本来であればそうなる前に摘発するべきだったのだが。出遅れたのは致命的である

「連邦軍の侵攻と港湾パトロールの侵攻。決着はまともになるわけないわね」

『ミカの予想は当たっているわ。結末は最悪の方向で進む事は確実ね。あとは誰が責任を押し付けられるか』

最終的な決断をするのはミッドチルダ連邦大統領。
国際政治で慎重な判断を行い問題が発生しないように対応する
最も重要なのは国際政治でミッドチルダ連邦内で発生した問題を各次元世界国政府はどのように解釈するか
こちらが有利な方向に話が進むなら良いのだが不利な方向に話が進むと後始末はかなり苦労する
それに次元世界連合安全保障理事会で唯一の常任理事国の立場にも影響が出る
次元世界連合の加盟国の中で最も経済が強く、
国際情勢について冷静な判断を行うことを次元世界連合設立時に宣言していた
過剰な認識から冷静な国際政治にかじを切ることで、
次元世界連合全加盟国が冷静な外交判断ができるように国際政治の場で冷静な対応することを宣言した
安全保障理事会で唯一の常任理事国であるのだから当然の判断である
それに次元世界連合安全保障理事会で審議される議案は主に武力行使に関する事案を中心にしている
安全保障理事会で可決された議案はすべての次元世界連合加盟国に適用するように強制力がある
次元世界連合総会での可決についても同じで、こちらも次元世界連合全加盟国に強制力がある
次元世界連合総会で議論される事案は極めて多い。加盟国の国家安全保障に関するトラブルはもちろんだが、
その他にも次元世界連合の加盟国内で発生した内戦状態に陥った加盟国に対して経済制裁が実施される。
次元世界連合の加盟国の軍事組織や警察組織のメンバーで構成される連合治安支援部隊か平和維持軍が派遣される
もちろんどちらの派遣についても次元世界連合総会で3分の2以上の加盟国の賛成。
その他にも安全保障理事会で15か国の中で9か国以上の賛成がなければ派遣はされない

『ミカ。気をつけなさい。私たちは彼らから見て格好の獲物よ。逆恨みをして何を仕掛けてくるかはわからないわ』

「ところで、他にベルカ州内で何か問題が発生するような可能性はあるの?」

『聖王教会と関係があったセントラルベルカバンクの不良債権はかなりの金額であることは間違いないわ』

不良債権の中で多くは聖王教会債や時空管理局債の資産価値が下がったことが大きな要因である
金融商品と2種類の債券価値がなくなったので取引はほとんど成立しない状況だ

「ベルカ州商品取引所ではパイプライン運用が開始されたことでクラナガン市に原油や天然ガスが供給され始めたから」

ベルカ州商品取引所で売買されている原油や天然ガスの取引価格は大きく変動が始まった
今までは直通のパイプラインがなかったのでベルカ州で採掘された原油や天然ガスの取引影響はほとんどなかった
だが、直通のパイプラインが設置されて運用が開始されたことによって、
ベルカ州商品取引所の原油や天然ガスの取引価格は近隣州にまで大きな影響が出てくる

『パイプラインの設置がされたことでベルカ州商品取引所の原油や天然ガスの取引量はかなり増えていることは確かよ』

「経済的影響がどこまで発生するかは難しいところになるわね」

クラナガン商品取引所で売買されていたクラナガン原油価格の取引が中心だった
これからベルカ州からパイプラインを経由して共有される原油や天然ガスの取引も活発に。
政策金利が大幅に上昇したことで、金融引き締めのために連邦準備銀行は動ける金融政策があるならあらゆる対応する
バブル経済になること反動で大普及になるので金融引き締めは極めて重要になってくる
連邦準備銀行の政策金利はすでに12%になっている。
これは通貨ミッドの為替相場で買い注文が殺到してミッド高にもなっている
一部のマスコミでは連邦準備銀行はさらに政策金利を引き上げられることは間違いない
すでに今日だけでも何度も政策金利を引き上げている。
急激な金利の引き上げはタイミング次第では国内経済に大ブレーキをかけることになる
それに通貨ミッドは国際貿易取引で基軸通貨になっているので大きな変動は好ましいとは言えない

『連邦政府も連邦準備銀行も金融市場の監視に力を入れている。状況が変われば大きな政策変更になる』

連邦準備銀行と連邦政府は経済を落ち着かせようと様々な金融政策を実施している。
それが余計に景気過熱になっていることは誰の目から見ても明らかである。
政策金利を上げ続ければ通貨ミッドはさらにミッド高になってしまう
金融政策はうまく船が沈まないように風を読み切ることが最も重要なのだ
簡単ではないことは誰もがわかっている。それでもやるしかないのは事実であるのだから仕方がない

「連邦準備銀行も大変ね。ここまで問題が拡大してくると」

『ミカ。それについては私も同意見よ。連邦政府も連邦準備銀行も同じ意見のはず』

ミッドチルダ連邦準備銀行はすでに何度も政策金利を引き上げた。
これほどの利上げは国内経済の過熱を抑制するために必要なのは誰の目から見てもわかる
しかし過剰な利上げは今後の国内経済に大きなダメージになることも想定される
慎重な姿勢で対応するのも良いことではある。
ただし慎重になりすぎると好機を逃してしまって後始末が大変になることも想定される
問題解決には経済の流れをうまく読み切ることが極めて重要である

『コール市場ではワンワールドバンクを含むグループ企業と資金のやり取りをしていた金融機関で少し混乱状態よ』

無担保コール翌日物取引市場ではワンワールドグループで金融機関だった企業に融資をしていた金融機関。
それらの企業では混乱が発生している。もし無担保コール翌日物取引で支障が出るとかなり問題になる
そうならないためにはミッドチルダ連邦の中央銀行である連邦準備銀行が資金の出し手をすることが求められる
一時的にはそれで市場は安心材料として判断するだろう。
だが連邦準備銀行が融資した資金を回収できなければ大問題になる

『1日で連邦準備銀行が政策金利を5%以上も引き上げているから金融市場はかなり引き締め態勢にあるけど』

1日で連邦準備銀行は政策金利を大幅に引き上げた。
本来ならここまで急激な政策金利の引き上げは問題がある
だが国内経済がバブルになることを考えると少しでも国内経済の引き締め政策は必要になってくる

「でも連邦準備銀行も必死よね。政策金利を1日で5%以上も引き上げたから」

ミカの言葉にシエルもそれは私も同じ意見よと回答した
今後の展開次第ではどうなるかは全くわからない。
政策金利が12%と極めて高いことから通貨ミッドの為替取引レートは空前のミッド高の状態にある。
今後の動向は全くわからない。経済というものは政治と同じで生き物のようなものなのだから、
どこでどのように動くか想像するかわからない。正確に経済動向を把握することが重要。

『連邦準備銀行の友人にオフレコで聞いた話では、政策金利を15%まで引き上げをするそうよ』

ミカはシエルからの連絡に大きなため息をついた。つまりだ。
国内経済はかなりバブルに近いところまであることは間違いない
だから政策金利の引き上げを今後も行う方向で動いてる
一番の課題として火力発電所や水力発電所の建設が急激に進んでいる
建設が多いということは建設のために必要な求人数が大きく増加している
おまけにエネルギー資源の資源開発なども火力発電所の建設が増加するのと連動するかのように増えている
多くの企業が労働者などの求人確保に必死である

「クラナガン金融債権取引所で多くの電力会社がはこうした社債の取引がかなり増加しているわね」

クラナガン金融債権取引所では国内全域で企業活動をしている多くの企業が発行した社債。
またミッドチルダ連邦国債の取引も活発に行われている。
ミッドチルダ連邦を構成している州政府の州債でも同じにある州金融債権取引所で売買されている
ミッドチルダ連邦国内の景気は好景気であることから買い注文がかなりの数になる
ワンワールドグループ企業が破産したことで新しい資金運用先として注目が集まっている
生活に必要な電力というライフラインの運用をしている電力会社が発行する社債と同じだ
今までは魔力精製炉発電が主流だった。しかしAMFの開発と発生に必要な装置が裏社会で取引されている
つまり魔力精製炉発電所に頼り続けてきた今の発電所運営方針では危険ということになる
火力発電所や水力発電所を急いで建設して、さまざまの種類の発電所運用が必要になってくることは確かだ

『連邦電力供給委員会から回さて来た情報によると、金融市場で違法行為があるかもしれないと警戒しているそうよ』

連邦電力供給委員会は国内の電力供給について電力会社と電力安定供給の議論を行っている
何度も言うが、今までは発電所は安価で環境汚染がほとんどなかった魔力精製炉発電所が主流だった
だが今は火力発電や水力発電など多種多様な発電所の建設と運用の議論をしている
火力発電所から排出される惑星汚染物質などは汚染除去装置を使うことで惑星の環境破壊を生み出すことはない
問題があるのは火力発電で使用される燃料は商品取引所で原油や天然ガスや石炭の取引価格で変動する
魔力精製炉で使用される魔石は次元世界連合全加盟国で豊富に埋蔵されているので安定供給に問題はなかった
おまけに魔力精製炉で使用される魔石燃料は安価で採掘ができるうえに極めて安価だった
だが状況は一変したことは間違いない。今後はどのように動くは全く予測は難しい

「聖王教会関係でさらに問題が発生することは間違いないわね」

『聖王教会債でかなりの負債を抱えてセントラルベルカバンクが破綻したのだから当然だけど』

聖王教会関係者が深く関与していたセントラルベルカバンクにはかなりの不良債権がある
おまけに1000万ミッドまでしか預金保護はおこわなれない。ペイオフ制度で連邦法でそのように規定されている
預金保護のペイオフ制度は次元世界連合全加盟国で法整備がされている。
ミッドチルダ連邦では1000万ミッド以上の預金に関してはすべて預金保護されない
1000万ミッドまでなら預金保護は行われる。
実際のところは聖王教会関係者はセントラルベルカバンクにかなりの預金をしていた
つまり預金が1000万ミッド以上のお金をセントラルベルカバンクの預金者は大切なお金を全額保護されない
ただでさえ生活に困っている者は多いのに、火に油を注ぐようなものだ。
すぐに『はい。わかりました』と納得するなどありえない。
必ずお金を取り戻すか確保するしか道はない人物もいる。
確保するためにはどんな手段も実行することはわかっている
それが人間の欲望だ。お金を得るためには犯罪に関与することも
聖王教会債は時空管理局が発行していた時空管理局債と異なる対応をしている
時空管理局債は債券価格が暴落したところで次元世界連合関係組織が紙くず同然で手に入れた
聖王教会債は次元世界連合は関与しないという声明を出されたことで売りばかりが殺到している
債券の額面価格をすべて合計すると1京ミッドになるが、売買価格は額面と比較すると9割引きに近い状態だ
このままではデフォルトになると判断して金融市場にある聖王教会債を低価格で買いあさっている
問題は今後の聖王教会の財源についてだ。今までは少し足りなくても聖王教会債を発行することで問題なかった
だが、今年の予算はJS事件の前年と比べると半分以下の予算で行わなければならない
完全に財政状況は最悪である。今までのように足りない資金を聖王教会債の発行で賄うこともできない
聖王教会債はすでにデフォルト状態であることは金融関係者なら誰もがわかっている
つまり聖王教会債の新規発行を行っても買い手など存在しない
聖王教会では予算案の作成にかなりの時間をかけている。
少しでも削ることができる予算があれば冷徹にカットするしかない
そうでもしないと聖王教会の維持運営ができないのが現実である

「もし今回のクーデター騒動に聖王教会本体も関与していたら最悪ね」

『ミカ。それを判断するには今の聖王教会関係者の内部調査をしないと難しいわね』

クーデター騒動に関与しているのが聖王教会の過激派だけなら収まりもつくかもしれない
しかし聖王教会が組織を挙げて聖王教会に関与しているなら大問題だ。
それが的中していたら聖王教会本体は政治的にかなり道筋を歩くことが求められる

「今回のことで連邦国防省は派手に連邦海兵隊を動かしているの?」

『私が確認している範囲ではベルカ州の西隣と北隣の州にある連邦軍基地から連邦海兵隊が派兵されているわ』

「状況としては厳しいわね。ところでイーストフローレンス基地から港湾パトロール海兵隊はどれくらいなの?」

『連邦国防省の高官の中にはベルカ州に連邦軍の派兵を好ましく思っていない者もいるそうよ』

そんなことはわかっている。元々ベルカ州はまだ州政府として設置されたのが去年の終わりに近い
一方で州内にはさまざまな石油や天然ガスや石炭などのエネルギー資源が埋蔵されていた
さらにレアアースやレアメタルがかなりの埋蔵量であり、それらの採掘量に応じた州税をかけている
今のベルカ州政府の財源のほとんどがこの鉱物資源の採掘量に課せられる税収が大きい
今後はさらに工業や商業の発展でその他にも様々な歳入が見込まれる。
そこまで進むには少し長い時間を見ていくことが必要になる。それは政府職員なら誰もが理解している

「ところで機動六課組は今のところは無事なの?」

『ラジェットが護衛しているのよ。腕はよく知っているでしょ』

「そうね。彼ならどんな手段を使ってでも対応するから

その後もいくつか情報交換を行うとミカはシエルとの通信を終えた
問題はクーデターを起こしている武装勢力だ。何をするつもりなのかが最も重要なことである
人工衛星を使用した偵察監視は常に行っている。また中距離弾道ミサイルを使った攻撃態勢も整っている
どのようなリクエストでも対応できる準備は完了している状況だ
ミカはマスコミの報道内容を確認するために携帯情報端末で情報収集を行っていた

『連邦準備銀行は政策金利の急激な引き上げは終了したという方針とのことです』

『一部の経済専門家は金融市場で取引が活発になった場合は再度利上げに踏み切るかもしれないとの意見もあります』

ミッドチルダ連邦準備銀行はすでに6%だった政策金利を12%まで引き上げた
また利上げを実行するにはそれなりな材料が必要になる。最大の課題はタイミングを選択すれば良いのかだ
遅れても大問題。早すぎても大問題。絶妙なるタイミングが求められることは間違いない
今後のミッドチルダ連邦国内の経済に大きな影響を与える政策金利の調整は極めて難しい。
それにミスをするとどうなるか全く想像できないことも現実なのだ

『一部のアナリストからは今後も利上げを行うのではないかとのコメントがあります』

通貨ミッドは利上げの影響で急激なミッド高になっている
急激な為替レートの変動は極めて好ましいと言えない。
さらなる利上げに踏み切った場合は金融市場の通貨流通量は減少するかもしれない
しかしそれがすべて的中するかはまるで分らないのも確かである

『連邦制度理事会は国内経済を落ち着かせるためには時には効果が極めて強い方法をとると発表』

『連邦証券取引委員会は新暦70年に時空管理局を退役した局員がインサイダー取引に関与したとして身柄拘束を実施』

『インサイダー取引では総額20億ミッドの利益を出したと』

いくらインサイダー取引だとしてもあまりにも額が多すぎるとミカは感じた
インサイダー取引を行うにはそれなりの確実な情報がなければできない
もし失敗したら財産を失う。ある意味で成功するかどうかはかなり部の悪い賭け事だ
今回のこの手の取引によって操られたのはある企業の株である。
それも電力会社で主に発電事業を専門に行っている企業の株式を利用したものだ
インサイダー取引は連邦法で厳しい罰則がある。罰則には金融機関に口座開設を禁止する条項もある
それだけインサイダー取引といった金融市場を利用した犯罪の罰則は重罪扱いになる
ただし実際にこの手の犯罪の捜査は極めて難しいことは捜査関係者なら誰もがわかっている
通常の強盗などの危害を加える犯罪と異なり経済犯罪は情報分析が重要なのだ
小さなミスが犯行をおかした犯罪者を取り逃がすことになる。

「連邦準備銀行も本当にかなり苦しい状況ね」

連邦準備銀行は政策金利の引き上げを行って景気過熱を少しでも止めようとしている
でも現実には金融政策はあまりうまくいっていない。
過熱を止めようと連邦政府や連邦準備銀行はさまざまな手法を使っている
それでも難しいことが本当に大変である。次元世界国の外国為替レートでは明らかに通貨ミッドに買い注文が殺到
外国為替市場ではこのままではかなり危険と判断して市場介入に踏み切ることも想定される

「ベルカ州警察もかなり苦労するでしょうね。州内でクーデターが起きているだけでないし」

聖王教会と関係があった企業は人物が連邦法で定められている法律に違反していないか
ベルカ州警察はその調査に追われている。長期にわたってはベルカ州は聖王教会が政権を持っていた
こういった政権は権力を乱用することが簡単にできた。
仮に捜査が行われたとしても証人や証拠を破壊すれば聖王教会への影響は最小限で済む
それに捜査を担当していたのは聖王教会の関係が行っていたことが多い
だからこそ事前に犯人は行方不明にすることもできたのだ。行方不明と言っても実際には抹殺するのだ
墓場まで秘密を持っていかれたら捜査はほとんど行えない
証言者がいなければ真相は闇になってしまうのだから

「機動六課組の押しつけは私たちにとってどんな爆弾になるか。嫌な展開にならないことを願うだけね」


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東区東部区域ハリーファックス地区1番街7丁目 ハリーファックス中学校

死亡した中学生のフェレス・コーギルはかなりひどい扱いを受けていた
かなり派手にいじめの被害で何度も時空管理局に対して捜査を申し立てていたがすべて握りつぶされていた
加害者の両親が時空管理局員では簡単に捜査という名の車輪が回るはずがない
両親が子供を守るためにいじめ被害そのものを抹殺していた
最悪の事例であった。ここまでになるといじめということで対応するわけにはいかない
殺人罪の適用に入れて捜査を行う。そうしなけなければいかない
死亡した子どもの両親は自己批判を感じるかもしれない
裁判所にいじめの加害者を告訴していれば最悪な状況にならなかったのではないか
そう思ってしまう者が多いことは今までの数多くのいじめ関係の捜査をすることで分かっていた
本当につらいものになってしまう。結末がどうなるかは最後は親の判断によって大きく変わる
積極的に訴えをしていればマスコミは騒ぎ立てて加害者に関する情報を集めて報道していたことは十分あり得る話だ
今の時空管理局に対する冷たい視線のことを思うとさらに。

「ジュジス・ボーラッドはかなりひどいいじめをしていたのは間違いないな」

レックスが時空管理局犯罪捜査局に確認したところ、かなりひどいいじめ行為を行っていた
両親はクラナガン市内の拘置所に収容されている。捜査は時空管理局犯罪捜査局が始めている
ただし、他にも様々な事件捜査を抱えているため捜査には時間が必要になるとのことだ
まぁ、時空管理局員が数多くの犯罪に関与していたことは疑いようのないことだ
もちろん真面目に任務遂行を行い、人々が安心して生活を過ごせるように治安維持をしていた
時には幹部などの上層部の人間が自らの私腹を肥やすために捜査中止命令を出していることもあった

「治安維持のためには上層部などの幹部捜査をしっかりするべきなんだが」

しかし圧力をかけられてしまうと捜査を一時的に止めるしかない状況になったことはかなりの件数だ
今は時空管理局犯罪捜査局がそういった汚職関係の捜査をかなり力を入れて行っている

「時空管理局の規模と権限の大幅削減の効果はいろいろと負の遺産になっていることは間違いない」

今までは数多くの権限と権力があった。
だが今はほとんどなくなり時空管理局という組織の規模も大規模縮小になった
だからこそ大量リストラされた退役時空管理局員は日々の生活も苦労している
退役した時に受け取れるはずだった退職金は雀の涙程度しかない。
おまけに退役後に受け取ることができる予定だった年金も運用に失敗してほとんどない状況だ
何もかも失って生活は最悪の状況下にある

「いじめ加害者の子供の記録を全て調べろ。必要ならこの学校にあるすべての情報開示請求を行え」

つまり徹底的にわかる情報を調べろということだ。
どんな些細な情報であっても見逃すことは許さないという意思である
ミスは許されないのがこの仕事のつらいところだ。
ミスをすれば冤罪が生まれるかもしれないし事件解決が無理になることもある
だからこそあらゆる情報を集めることが求められる
いじめ事案の捜査にはいじめ行為を見ていたが何も対応しないだけでも犯罪行為扱いを受けることもある
それだけいじめ行為は重罪になってくる。いじめ被害者は長年にわたって多くの心の傷を作るからだ
だからこそいじめ行為については徹底的に調べることが求められている

『中央本部から各分署へ。警戒態勢の維持と市内で少しでも不審な行動をする人物がいれば職質を』

『こちら港湾本部。不発弾の解体を担当する部隊が現場に到着』

エルガは東区南部区域キャロル地区1番街2丁目の建設現場で発見された不発弾の処理を行うために警戒している
何か些細なトラブルが発生すればすぐに対応できるようにかなり警戒を行っている

『SA12から港湾本部。現在不発弾に熱源などの反応はない。ただしできるだけ素早い対応を求める』

エルガの気持ちはレックスはよくわかっている。
任務なのだから仕方がないが本来であればエルガも安全な場所から警戒したい
それができないことに大きなため息をついていた

『不発弾処理部隊はすでに現場に到着している。安全確認が完了次第、速やかに作業を実行する』

長時間も不発弾が発見された現場を封鎖するのはあまりにもリスクがありすぎる
早期安全処理を行って避難目英霊の解除をすることが求められる
時間が長すぎれば大きな問題になるのだから当然である

「市内にまだまだ不発弾が数多くあることを考えると迷惑な話だ」

レックスはため息をつきながら不発弾処理の現場にいるエルガと中央本部の無線通信を聞いていた
問題が山積していることは確かだ。それに旧暦時代に使用された数多くの爆弾が不発弾になり、
クラナガン市内はもちろんだが。ミッドチルダ連邦国内全域に大量に地面の下で眠っているかはまだわからない
昔の記録は完ぺきなものがないからだ。だから連邦法で工事を行う場合は探査装置で調べることを義務付けている
実際に新しい土地で建物などの建設工事で不発弾が見つかることは1年間で100件以上になる
それだけクラナガン市は戦場であったことを意味している。
不発弾が確認されたらすぐに港湾パトロールから安全措置を行うための部隊が送り込まれる
さらに発見された場所の地区にいるすべての市民を避難行動の支援を中央パトロールが行っている
それぞれ分担が決まっている。港湾パトロールは爆発物処理。
中央パトロールは安全確保のために市民の避難活動の支援。
特に不発弾発見現場付近に医療機関がある場合、病院でも安全確保ができるように支援活動を実施する

『SA12から中央本部。不発弾処理にはまだまだ時間が必要と思われます。警戒監視に必要な時間はさらに延長される』

「エルガも大変だな。もし不発弾が爆発したら命がないからな」

不発弾の信管除去ができなくなれば最悪のことになる。

『クラナガン市下院の聖王教会及び時空管理局監視委員会は聖王教会が市内にある不動産物件の売却を否決しました』

下院聖王教会及び時空管理局監視委員会は市内での時空管理局と聖王教会の活動を監視するため、
2つの組織が市内での行動について様々なことを審議している
少しでも不審なことがあれば、クラナガン市政府は2つの組織の活動を一定の範囲で停止することができる
つまり車に例えるならブレーキがしっかりと機能していることを意味している

『聖王教会はクラナガン市政府に再審理を求めています。今後の判断に関しては連邦政府は次元世界連合と協議すると』

聖王教会も資金確保のためになりふり構っていられない状況にある
そのため自らが保有する様々な不動産などの資産売却をしている
しかし次元世界連合や各次元世界国政府にそれらの行為を監視しているため難しい状況だ

「クラナガン市議会も大変だな」

聖王教会や時空管理局の活動に制限を入れるだけではなく、
内部調査を行い全ての情報を提供しろと市議会は要求している
少しでもおかしなところがあれば再度内部調査を行わせて暗い闇を暴こうとしているのだ
2つの組織にとってはさぞかし嫌な話だ。
しかし次元世界連合という国際組織は今までとは大きく異なる新しい国際政治と秩序を保つには必要である

「聖王教会関係者にはさぞかし頭が痛い問題だろうな」

聖王教会と少しでも関係があったなら様々な調査を受けなければならない
過去にどのような行動を行い、彼らが保有していた権限を正しく使っていたか
全ての闇を突破しない限りは窮屈な立場にいるしかないのだ

「全容解明ができるかはわからないな。聖王教会の関係者は次々と失踪しているだけに」

JS事件以降は聖王教会から退役して様々な次元世界国に戻っている
足取りを調べようと次元世界連合は必死に動いているがかなり難しい
事件後に時空管理局や聖王教会では資料の隠ぺい工作を行ったことがわかっている
つまり証拠となるはずだった資料が失われていることになる。
時空管理局や聖王教会の内部調査が進みにくいのはその影響が大きくなっている
それでもあきらめるわけにはいかない。
不正行為があったならすべての事実を調べ上げて、立件できるなら裁判所に起訴しなければならない
闇をすべてなくすためにはこれしか道がない

「バカな連中だな。やばいことに手を出していなければ少しは被害の規模を小さくできたが」

現実問題として今の聖王教会にはほとんど権力はない。
おまけに聖王教会を運営するための資金不足にもなっている。
最悪の結末に向かって歩みを進んでいる。どこで抑え込むことができれば少しは良いのかもしれない。
しかし現実的にはそういうわけにはいかない。このまま歩みを進めると良い方向には進まないことはわかっている

『港湾本部から各員へ。クラナガンキャピタルパワーの魔力精製炉発電所で使用される魔石燃料を鉄道を使って輸送する』

クラナガンキャピタルパワーには火力発電所と魔力精製炉発電所を保有している
以前は魔力精製炉発電所での発電がメインであった。
しかしAMFが開発されてから魔力精製炉発電に頼るのは危険として、新たに火力発電所を5か所の新設した
魔力精製炉発電所と火力発電所を合計すると現在15施設も保有・運用している。
すべての発電所の最大出力を計算すると8億KWにもなる
基本的に発電を専門にしている企業で独自の送電網は保有していない。
送電網は他の電力会社の物を借りている状態である。
魔力精製炉発電所で利用される魔石燃料棒は3年ほど魔力精製炉で使用される。
3年ほど使用された後は使用済み魔石燃料棒として再処理工場に輸送。
そこでまだ燃料として再利用できる部分を取り出す部分を抜き出すと混合魔石燃料棒として新たに燃料棒に加工。
再処理後の魔石燃料は再び魔力精製炉発電所で使用される。
何度も言うが核燃料と異なり放射線などの環境被害が出るようなものは出てくることはない
極めてクリーンなエネルギー資源だった。しかしAMF装置が開発されて状況が大きく変わった
多くの電力会社が新たに火力発電所や水力発電所の建設を急いでいる
水力発電所を建設するにはダムを建設することが求められる。建設コストは最低でも数千億ミッドにもなる
またダム建設でダム湖となる場所に居住地や道路などがあれば、
居住している人々の移住先の確保などで協力費を払うことになる
ダム建設費についてはかなり多額な資金が必要になる。
ダム本体の建設費用だけでなく、下流域に住んでいる人々にも協力費を用意しなければならない
それだけに水力発電所とダムの建設費用はかなりの金額になる。
おまけに建設現場にある自然環境に影響が出ないか調査しなければならない
膨大な費用と時間が必要になるので建設には多くの資金が必要になる
ダムや水力発電設備の工事を行うために多くの電力会社が社債をかなり発行している
それらの社債には金融債権取引所で取引が行われている。基本的には政策金利である12%の金利がつけられている
多くの銀行や投資銀行や投資ファンドが買い入れを行っている。
電力会社などの日常生活に必要な様々なエネルギー資源の開発供給企業の社債の価値は上昇傾向になっている

『中央本部から各員へ。現在は市内において停電などは発生していないが警戒するように』

「時空管理局や聖王教会もとんでもないパンドラの箱を開けてくれたな。おかげで苦労するのはいつも現場の仕事だ」

こちらには大きな迷惑なことを押し付けて2つの組織に対する信頼や信用を無くした
それは自業自得だから当たり前ではある。
他にも問題を押し付けてきて一部の幹部は足取りがつかめないでいる状況にある
もし見つけられたら過去に犯したとされる犯罪や権力乱用がなかったかが入念に調べられる
少しでも怪しいところがあれば調べて完全にしろであることが確かめられない限りは拘置所に収監される
犯罪行為に少しでも関与していたら、入念な捜査が行われる
裁判で審理が行われて軽くても執行猶予付きの有罪。最も重い判決には死刑判決が出ることにもなる
次元世界連合の全加盟国にある法執行機関ではあらゆる角度から調査が行われている
怪しいことが完全にないクリーンな人間であると証明されるまでは拘置所で留置される

『中央本部からSA30。いじめ事案に関してはクラナガン児童局から捜査官を派遣すると連絡あり』

クラナガン児童局は市政府構成する行政組織で17歳以下の子供を持つ市民からのさまざまな相談を受け付けている
いじめ事案に関してはクラナガン児童局と連携して対応することになっている

「こちらSA30。到着までの時間を」

『到着まで10分ほど。現場到着後は連係プレーで捜査と調査を行うように』

捜査をするのは中央パトロールの管轄だ。
一方いじめ加害者側の子供について調べるのはクラナガン児童局の管轄になる
お互い連携を取りながら情報共有を行うことで全容解明のために繋げていく
子供の事件となるとミスは許されないのだから。特にいじめについては
小さな捜査ミスが子供の心を傷つけることになる。全容解明は重要だ。
それでも子供たちの心を傷つけるわけにはいかない

「いじめの内容について調べるのは気が進まないが。任務だから仕方がないな」

いじめの加害者は親の立場を利用して好き勝手してきたことは多い
今はそれらの行為によって発生した問題の調査が行われている
それと親が時空管理局の権限を利用して不祥事をもみ消したとなるとなおさらだ
子供の親が時空管理局や聖王教会の職員であるなら、他にも何かトラブルを起こしていないかを調べている
捜査があまり進まない最大の理由はあまりにもそういった事案が多いことである
全ての調査が終わるまでには何年もの時間が必要になるだろう
もしくは完全に調査が終わるかは全く見通しが立たない事案もある
真実をすべて調べ上げるにはどれ程の時間が必要になるかは全くわからない案件も多すぎる

「嫌な仕事だがやらないわけにはいかないな。いじめの加害者にはしっかりといじめ行為が犯罪だと」

いじめはどのようなことであっても許されない。
被害者にはいじめの影響で自宅から出ることができなくなることもある
真相究明をしなければならない。どれほど些細な案件だとしてもだ。子供というのはすぐに両親の影響を受ける。
例えば両親が権力を持っているとその親の子供はその親が持っている権力を使って、
トラブルをもみ消すことができると考える。親の影響をもろに受けることになる
それだけに時空管理局員が両親だった子供が数多くのトラブルを起こしていた
もみ消したとされる疑惑事案はかなりの数になる。
1つ1つ、時間をかけて捜査など行うことで真実を見つけ出すことを進めなければならない

「レックス。元気そうだな」

声をかけてきたのは以前に捜査官補佐としてパートナーを組んでいた同僚。
今は中央本部未成年犯罪捜査課に属しているブライアン・ホーラット刑事
捜査部で訓練を受けるために一時的に捜査部に配置されてレックスとチームを組んでいた
未成年犯罪捜査課は未成年が関与した事案の捜査を担当している
関与する事案は17歳以下の未成年が関わっているあらゆる犯罪捜査を行っている
今回のように未成年者が行ったいじめ事案ももちろん捜査のために派遣される

「ブライアン。調子はどんな感じだ?」

「まぁ時空管理局の幹部の子供に関係する事案が右肩上がりだ。調べる方も楽じゃない」

子供たちによるいじめに関係を調べるのはかなり難しい
被害者の子供がいじめ被害で死亡していることが多々あるからだ
本来いじめ被害者は守られるべきなのに、加害者の子供の親が時空管理局幹部なら金を握らせる
そうすることでもみ消しているケースが多い。被害者の子供はとてもつらいことである
守ってくれるはずだった被害者の両親を信用できなくなる。それが悪く連鎖反応していく
最終的にはいじめ被害者が犯罪組織のメンバーになることも多い
被害者が犯罪者になる。幼い時に受けたいじめい行為から反発して犯罪組織に入ってしまう
もしいじめを受けていなければ犯罪組織に入るはずはなかったのに。
そんなことを考えるといろいろと悲しいと言える

「いじめ被害者が逆恨みをして犯罪組織に参加する。すべて時空管理局がまともに機能していたら防げたはずだが」

ブライアンの言う通りだ。彼らが正常に機能していれば確かに問題はなかったはず
でも時空管理局の組織は権力争いで好き勝手に権力乱用をしてきた
権力の乱用を行えば犯罪組織は多くの新規メンバーの『求人』を出すことができる
正義の味方のはずの時空管理局が新しい犯罪者を作り出している
バカげた話である。

『中央本部からSA30。いじめ被害者の両親から聞き取りによると金を握らせてもみ消していたことが判明』

「最悪だな」

本来守るべき親からも子供は親が金を得るために見捨てられた
こんな両親でまともな大人になることはありえない。いじめ被害者の両親も今の状況なら訴追できる
子供を守ろうとしなかったことはクラナガン市法や連邦法では厳罰として裁判審理が行われる

『両親についてはすでに東分署で身柄確保を行っている。自殺したとされる子供についてかなり徹底的に調べろ』

徹底的に調べろということは何があろうと真実を明らかにすることを要求している
全ての全容解明を行わなければ別の捜査事案は別の捜査官と連携を取って振り分けるようにとのことだ
こういう指令は別に珍しいことではない。いじめ加害者が行った行為で新たな被害者を生み出さないように、
そのために捜査を最優先で行うので他の捜査事案から一時的に外れることはよくある話である

「子供の両親は何か証言しているのか?」

『まだ何も証言していない。しかし金を受け取ったので起訴しないようにしていたと』

「そして子供が親の行為に絶望して自殺か。子供の保護責任を放棄した罪で立件できそうだな」

『すでに逮捕状を請求している。発行されたらすぐに事情聴取を行う』

「自殺した子どもの両親の金銭関係の情報収集も依頼したいのだが」

もし少しでも金の動きがあれば、そこからさらに深く調べることができる
おまけに金の流れを追えばどれくらいの金がどう動いたかを立証できる
それはつまり時空管理局の資金を横領していたことを確認できるのだから
こういう捜査ではミスは一切することができないことを誰もがわかっている。
捜査関係者ならなおさらのことである。分かる範囲ではなく深く掘り下げることが極めて重要になる
こぼれることがないようにすべての情報収集を行って調べつくすことが求められる
それがいじめ事案の対応マニュアルとして中央パトロールで定められている

『すでに確認作業を開始している。しかし銀行から以前2000万ミッドの借り入れを受けていた』

ところがいじめ加害者側と思われるものから多額の資金が入金された直後に借金はなくなった
返済をしていた。それも1日で2000万ミッドの借金を全額。怪しんでくれと言っているようなものだ
借りていた銀行はワンワールドバンクだ。つまり時空管理局の影響が大きかった
いじめ加害者でのジュジス・ボーラッドの両親は時空管理局から40億ミッドの資金を横領していた
彼らにとって2000万ミッドは別にどうでもいいお金である。
しかし今はそれらの資金の横領について調べられている
時空管理局犯罪捜査局の捜査官が徹底的に掘り返している。
何が出てくるかわからない化石の発掘をしているのと変わりはない
だが諦めるわけにはいかないのだ。どれほど時間が必要になってもすべての疑惑に関しての捜査を行う
最も今の段階で求められていることだ。仮にすでに容疑者が死亡していたとしても真実にふたをすることは許されない
真相究明こそ最重要なのだから

『次元世界連合時空管理局改革委員会と時空管理局調査委員会の委員長が記者会見を実施』

『時空管理局は予算案を次元世界連合に提出してきたことを発表』

しかし時空管理局が提出した予算案についてさらに削れるところがある。
そのため提出してきた予算案で部署によっては最大で20%以下の削減を要求したとのことだ

『時空管理局はこれ以上の予算削減を行った場合は人件費を削減することが必要になるとしています』

元々時空管理局員の給与水準が高すぎたのは事実であり、
今年から時空管理局員の給与水準は多い職員の中には以前よりも5割もカットされた局員もいる
おまけに退職金も大幅に削減された。退職金も給与水準と同じで最も削減率が多い局員は5割以下になった
不満を抱えている人間はかなりの数になるのは間違いない。
リストラされた退役時空管理局員は生活に行き詰っている状態。
金を得るために今までのプライドなどを捨ててアルバイトを始めている
なりふり構っていられないならそういう道を選ぶしかないのも事実である

『連邦証券取引委員会は国内にあるワンワールドバンクやワンワールド保険が保有するすべての資産凍結を決定』

『証券取引委員会はワンワールドグループ企業が抱えている資産計算に入っているとのことです』

『一部の関係者からの話では時空管理局債をかなり抱えていることから負債の方が多いとされています』

「まったく、時空管理局はとんでもない落とし穴を用意をしてくれたな」

レックスは今後の動向に警戒していた。
企業の規模がかなり大きかったワンワールドグループが破綻して影響はかなり深刻だ
この後にどういう行動がされるかは全くわからない。予測も難しいのだから

『FBIや証券取引委員会はワンワールドグループ企業の資産と負債状況を調査すると発表』

実際にどれくらいの資産と負債があるかを分からない限りは破産処理を進めないとも発表したのだ
当然と言えばそうかもしれないが

『中央本部から各員へ。市内のワンワールドバンクなどの金融機関で取り付け騒ぎが起きる可能性が濃厚』

この通達はもう何度目になるだろう。だが警戒するのは当然である
ワンワールドグループにある銀行や証券会社や投資ファンドなどに顧客が集まることは間違いない
混乱が発生するといろいろと危険であるので警戒はしなければならない
無利息銀行口座であれば全額保護対象ではあるが、
多くの一般預金口座顧客はワンワールドバンクが破綻するとはあり得ないと考えていた
だからこそペイオフのおかげでミッドチルダ連邦国内では1000万ミッドまでしか保護されない
本来であれば大規模金融機関であれば破綻すると経済に大きな影響があることから、
救済されているという甘い見通しをしていた者もいた。
現実はそれほど甘くはなくワンワールドバンクを含むワンワールドグループ企業はすべて倒産する
おかげで無担保コール翌日物の取引でワンワールドバンクの融資をしていた他の銀行などの金融機関は
融資を行っていたお金の返済ができない状態になっていた
つまり回収が難しい不良債権状態になっていることを意味している
銀行などの金融機関にとってそれは大きな問題に拡大する。今のところは情報はあまり漏れていない
だがそういった情報が流れるだけで多くの金融機関が疑心暗鬼に、
最終的には無担保コール翌日物での金融機関同士の取引に影響がでる
そのため連邦準備銀行が一時的に資金の出し手になることで被害を最小限にする
残る問題はどの金融機関でどれほどの影響が出ているかについて調べる
時間がかかることはわかっているができるだけ早期にしなければ大きな問題になるのだ
小さいうちに対応しておかないと問題が複雑になってしまう。

『港湾本部から全クラナガン捜査局員に通達。クラナガン魔石燃料工場に使用済み魔石燃料棒が到着する』

魔石燃料は原子力発電で使われるウランと異なり、自然環境を汚染する放射性廃棄物などが発生しない
おまけに魔石燃料は多くの次元世界国で豊富に埋蔵されていた。
だからこそ魔力精製炉発電所の運用が多くの次元世界国の電力供給減として利用されていた
それも今では大違いだ。JS事件で発明されたAMF装置で魔力精製炉発電所の稼働に頼るのは危険になった
おかげで火力発電所や水力発電所が急増している。
それらの発電所の建設費を電力会社が確保するために社債が大量に発行されている
何度も言うが多くの投資家がエネルギー資源開発企業や電力や上下水道など、
ライフライン関係の管理運営企業の社債を購入していた。
ライフラインの管理運用を行っている企業なら確実に社債の発行などで破綻することはない
とても安全な資産運用となっているのが現実である

『ワンワールドバンクが抱えている不良債権は少なくても10京ミッドになることが確実視されています』

その大部分が時空管理局債を大量に抱えていたことによる含み損が大きい
JS事件後に時空管理局債の取引価格は大幅に低下。
すでに次元世界連合が紙くず同然の時空管理局債の大部分を回収していた
その影響はすぐに金融市場に出ていた。紙くず同然であった時空管理局債の取引価格が少し上昇。
どのような値動きをするかは予測はかなり難しいことから

『中央本部から各員へ。犯罪組織が活発に動き出す可能性がある情報を確認した。要警戒せよ』

犯罪組織対策法が連邦法で実施されているので法執行機関でCIAやNSAと同じような、
諜報機関の部署がある法執行機関は犯罪組織対策法で定められている個人や団体の通信傍受は認められている
もちろんこういった情報を扱えるのは連邦法で定められた『クリーン』な法執行機関に属する職員に限定されている

『SA24から中央本部。クラナガンシティバンクのサーストン支店での立てこもり犯は全員拘束された』

『SA33からSA11。現在そちらに向かっている。状況を報告せよ』

『こちらでは現在地区事務所で立てこもりを行って保護対象者を守っている。大至急応援を大量に送れ』

「ラジェットもとんでもない状態だな。何が何でも守ることが必要になる」

ラジェットが行っている機動六課組の移送任務は完遂すれば良い。
だができないなら大きな問題になる。ラジェットの評価に関係してくる
それにクラナガン捜査局の評価にも影響がでる。こちらは何が何でも守るしかないのだ
最後に現場で戦うのは現場で任務を行う者である
時空管理局と異なるのは現場で負傷者や死者が出るようなことが生じれば上層部も責任を取る
つまり自らの責任によって負傷者や死者が出てしまったことによる態度を見せることが必要になる
簡単に言えば退役するのだ。
それに負傷者が出れば当然のことにその負傷者がけがなどの状況で変わるが、
幹部は彼らの今後の生活をしっかりと支えるために配慮をして救済をするのだ。
もしも、上層部が立案した作戦でその任務関係者で死者が出れば遺族に対して謝罪を行って退役する
もちろん退職金は遺族の今後の生活費になるようにクラナガン捜査局では退職金受け取り規則で、
その責任で退役した幹部の退職金を遺族が受け取ることができるように定められている
幹部は年金は受け取ることはできるが通常時に受け取ることができる退職金は受け取れない
幹部であるなら責任を取るのは当たり前だ。

『クラナガン市長報道官は臨時の首都圏エネルギー資源供給会議の開催を発表』

首都圏エネルギー資源供給会議はクラナガン市政府と近隣州政府が石油・天然ガス・石炭など、
日常生活で必要なエネルギー資源供給について話し合う会議。
対面やオンラインなどで開催されている。今年から新たにベルカ州政府も参加することになる
また電力の安定供給についても議論している。以前はそれほど頻繁に開催されていなかった
その最大の理由は魔力精製炉発電で電力は極めて安価で安定供給されていたことが大きかった
しかし、AMF技術による各種装置によって魔力精製炉発電に頼るのは危険となり、
今年に入ってからは火力発電や水力発電などの電力供給について議論するべきことというのが理由になる
また金融市場の安定についても議論されることになった

『今回の議題はベルカ州との送電網の設備増強についても議論されることになるということです』

ベルカ州と近隣州の送電網を基本的には接続されていなかった。
ベルカ自治区制度時代では資源開発がほとんど行われていなかったことが最大の理由だ
資源開発が行われていないということはその時代にはあまり電力が必要なかった
自治区時代から魔力精製炉発電がほとんどであったことも大きな理由であった
今は数多くのエネルギー資源開発や採掘された資源を使用した工業製品の生産工場地帯が大幅に増加した
おまけに石油パイプラインや天然ガスパイプラインの稼働で情勢は大きく変わった
発電所の大幅増強のために今は火力発電所が数多く建設されて運用されている
ベルカ州証券取引所やベルカ州商品取引所も開設されて数多くの資源について取引が行われている
州内では次々と新たに資源開発会社が州証券取引所に上場。
州商品取引所でも石油や天然ガスだけでなく、数多くの資源取引が行わている
ちなみに債券などの銘柄についての取引はクラナガン金融債権取引所でさまざまな債権を取引されている
ベルカ州政府が発行しているベルカ州債はかなり頻繁に売買されている
今や多くの州政府や企業などの社債などの債券の取引金額は右肩上がりの状況である
連邦政府が発行しているミッドチルダ連邦債券や州政府機関が発行している州債の取引量は極めて多い

『ベルカ州政府が参加するのは今回が初めてになります』

一部関係者によるとベルカ州内で発生している停電騒動が議案になるのではという報道が流れていた
確かにベルカ州西部地方でクーデターを起こしている反政府組織の影響は大きい
ベルカ州商品取引所ではベルカ州で産出されている原油の先物価格が上昇を続けている
この状態はいろいろな意味で大問題になってくる。それだけに早急な対応が必要があるのだ
ベルカ州との間にはベルカ州の東側にあるマリネット州。南側にあるフローレンス州。
この2つが今まで原油や天然ガスをパイプラインで結ばれていた。
今年から新たにクラナガン市とのパイプラインが設置された。
送電網も同じでベルカ州はフローレンス州・マリネット州・クラナガン市の3つの超高圧送電線がある
これらの送電設備の新規設置は大急ぎで行われて現在は運用されている
問題なのはベルカ州西部地方の送電ができていないことだ。
西部地方の状況については衛星通信などの無線情報送受信装置で何とか集まっている
クーデター勢力は西部地方にある発電所を制圧している。
最悪の事態になっていることは誰の目から見ても明らかだ

「レックス。荷物を抱えるらしいな。面倒を押し付けられて苦労しているとは」

ブライアン・ホーラット刑事の言葉にレックスはため息がつきたくなった
どこに行ったとしても捜査部に属する捜査官には同じようなことを言われる
確かに機動六課組については時空管理局においても大きな問題になることはわかっている
改革が進んでいる現在の時空管理局の動きに機動六課組が大きなお荷物であることは正論だ
機動六課組の主戦力メンバーは時空管理局上層部とコネがあったことが余計に邪魔である
だからこそ時空管理局改革を断行するのに邪魔になる彼らを一時的なのかどうかはわからないが
とりあえずは別の行政組織で身柄保護の対象にするために異動させた

「時空管理局にこのまま連中が残っていたとしてもかなりつらい状況になることは確実だ」

だからこそ保護対象になっている。
そしてそんな彼らの護衛を行うのが捜査部捜査官に与えられている最大の任務である
教導担当になった捜査官は常に彼らの行動を保護。というよりも実際は監視下に置かれることに
機動六課組は捜査部に来ても肩身が狭い重い立場になる
生きていくか死んでいくのか選択をしなければならないのだ。
残された道はかなり限定されてくる。暗殺されないだけまだ良いと考えるしかないのだ

「時空管理局は穢れた組織だったことは誰の目から見ても明らかだ」

本来は犯罪者やテロ行為などを抑えるための法執行機関のはずだったが、
現実は権力を握った者が好き勝手にしていた。
法執行機関なら人々が平和に暮らせるように警察業務をすればよかった。
だが人というのは権力に酔いしれるものだ。甘い蜜を少しでも吸ってしまうとやめることなどできるはずがない
それだけに組織が腐敗してきたのだ。平和よりも自らが保有する権力を行使して好き勝手してきた
だがそんなことにはもうならないはず。次元世界連合という首輪がつけられた。
時空管理局という狂犬はしつけを受けている真っ最中だ
しつけとして大量の人員整理と権力のはく奪。今後もさらに予算カットなどを行っていくこと。
次元世界連合総会と安全保障理事会で可決しているので、時空管理局はその命令を無視することは許されない
時空管理局は今は次元世界連合の下部組織なのだ。
国際組織である次元世界連合で定められた規則外の行動を許可なく行えば不名誉除隊になる
つまりそのような行動をした時空管理局員は懲戒処分になる。

「機動六課が調べつくした結果。時空管理局の暗黒悩みの事実の公表で狙われている」

レックスはそれだけは変わらない現実だと、彼の言う通りだ。
真実が明らかになった影響で時空管理局の職員は次々と汚職などの暗い闇の部分を調べられている

「今や時空管理局は手に持っている爆薬に火を近づけすぎて、後始末をどうするべきかわかっていない」

「なるほどな。レックスの言う通りだ。自分の行った汚職行為に気づいて逃げている。永久に追われるからなおさらだ」

仮に逮捕されたら最低でも懲役10年は固い。下手をすれば終身刑になることもある
そんな立場に追い込まれたら逃げるのは当たり前だ。だが簡単に逃げることはできない
それに逃亡生活は金がかかる。その金を銀行に預けておくわけにはいかない。
押収される前に引き出せる上限まで現金で引き出して逃げている

「次元世界連合がすべての加盟国に身柄拘束の通達を出している。逃げるのは簡単じゃない。だがもしも・・・・」

レックスが言ったもしもとは犯罪組織に殺されている場合を示している
犯罪組織にとっても時空管理局と繋がりがあったことは確かだ。
そうなると彼らは自らの情報が漏れないようにするために抹殺を実行する
邪魔者は消す。それが犯罪組織の掟だ

「機動六課組が調べて裏社会は大変だ。時空管理局員でも腐敗人物は時空管理局犯罪捜査局が調べている」

身柄は現地政府にある拘置所に収監されている。身が潔白な人間以外は必ず刑務所に送り込まれる。
もちろん無実な人間もいるかもしれないが大多数は刑務所行きは決定している
大多数に含まれるのは犯罪組織と繋がりがある。時空管理局と密着することで犯罪組織は利益を得ていた
犯罪組織は主に麻薬の密売を行っていた。そのほかにも銃の密売も。
今は時空管理局と関係していた構成員を『処理』している。無いのに探しても無駄だから
真実を隠すには証言者がいなければすべてなかったことにできる
そうすれば自ら属する犯罪組織を守れる。

「いじめの加害者はほとんどが権力者の子供だ。捜査がやりにくい事案だ」

加害者側についている権力者は事件捜査を止めることができる
もちろん権力乱用だが、証拠を始末する程度の時間稼ぎが可能
証拠がなければ安心ということだ。何も証拠がなければ捜査は行き詰ってしまう
コールドケースとして継続捜査の扱いになる。継続捜査になると新しい証拠や証人が現れた捜査を即時に再開する
それまでは目立った動きはしない。捜査に関係する担当職員を効率的に運用するための方法だ

「いじめの事案は問題が複雑だ。今回の加害者の子供の親は時空管理局の幹部職員。もみ消すのは簡単だろう」

いじめ被害を受けている子供の両親に金を渡すことで事件化にしないようにする
そして時間が経過した頃にすべてを抹殺する。被害者が申し出なければ捜査は行われない
つまり加害者側は安心できる。すべての証拠と証人を消すだけで事は解決する
ミスからの保身のことしか考えていない人間が行う最低の行為だ
すべて消す。それは何の罪もない人を殺す。自分たちの利益のために
これを正当化してきた組織が腐敗していないと言えるはずがない
クラナガン捜査局にもしっかりとした外部委員会が存在している

『次元世界連合安全保障理事会で時空管理局が提出した予算案の中で装備に関係する予算案を承認』

『ただし人件費は承認はできず、次元世界連合総会でも昨年よりも半分以下の給与水準にするようにと』

大幅な人件費削減をさらに断行しろというのはかなり無茶なことである
元々時空管理局の給与水準は高かったのだから当然ではあるかもしれないが

『時空管理局はこれ以上の人件費などのコストカットは難しいとしています』

いろいろと利害関係が絡んでいるのかもしれない。
今後のことを考えると今のうちに時空管理局という狂犬には首輪をきつく装着させることが求められる
暴れだしたら止まらないのだから当然ではある。何が何でもコントロールしなければいけない
もう暴れることは許されない。聖王教会も同じだが、時空管理局とは異なる点がいくつかある
聖王教会は次元世界連合とそれなりの関係がある。時空管理局と異なるのはその関係についてだ
時空管理局は次元世界連合関連組織だ。しかし聖王教会は独立した国際機関である
もちろん不法行為をしたら査察の対象になるのは当たり前だが
今も聖王教会は調査委員会が次元世界連合が設置して調査委員会の調査メンバーによる審査を受けている
全てクリーンである事が確認されることが聖王教会が引き続き運用される条件である
もし1つでも疑惑や不祥事があれば即座に関係者を拘束して尋問を行う
最後には完全に『クリーンな人間』だけが残り正常な国際組織として活動できる

「政治にクリーンを求めるのはどうかと思うがな」

政治家になる人間は支持者からいろいろと無茶な注文をされる
小さな町ならそれほど多くないだろう。だが多くの人々が暮らす市政府やその上の郡政府。
そして州政府と連邦政府の議会になれば、支持者からのさまざまな無茶な要望を要求される
支持者の支援があるからこそ政治家になれるのが皮肉な所である。
つまり政治家は誰が自分のために支援金を出してくれているかが重要なのだ

「次元世界連合は簡単には認めないだろうな。今まで時空管理局に散々振り回されて好き勝手にされた」

そんなことが当たり前であったJS事件の前までの恨みを多くの次元世界政府の関係者は思っている
だからもう2度と暴走などされないようにするために
独裁組織は許されない。その国に住んでいる人々が政治家になる議員を選挙で選出
政治活動をする政治家は常に人々のために動くことが求められる
もちろんすべての政治家がまともなことをしていたのかどうかについては難しいこともある
問題行動を起こした政治家がその活動が犯罪であるなら警察などの法執行機関が捜査を行う。
最後にはしっかりと正義の鉄槌を下さなければならない

「時空管理局の暗き闇をすべてなくすにはどれくらいの時間が必要になるかわからないのが困ったことだ」

「レックス。JS事件が起きてからある程度は想定していたことだ。仕方がないだろ」

クラナガン捜査局に属する職員なら誰もがわかっていた
時空管理局の暗き闇をすべて明らかにするには膨大な時間が必要になると
真実が明らかになるまでにどれ程の時間が必要になるか。
問題が無くなるまで次元世界連合は時空管理局を調べる
それに時空管理局が行っていた数多くの権力乱用についても調査が続いている
これらの問題がすべて解決するにはどれ程の時間が必要になるかは全く予測できない
今のところはめどもついていないのが現実である。仕方がない

「時間が必要な事件も多い。JS事件ではいろいろと利害関係が複雑だからな」

「スカリエッティもバカなことしたと言えば良いのか。それとも別の意味で人々に幸福をもたらすことができたのか?」

その評価を出すのは何年もの時間が必要になるのは間違いない
闇が大きすぎることが最大の課題である。大きなトラブルになるかがわからないと調整する方も苦労が生じる

『中央本部から各員へ。クラナガン市内にある魔力精製炉発電所の運転が再開される。念のため警戒せよ』

ようやくクラナガン市内にある数多くの魔力精製炉発電所の運転が通常になって運用開始になる
これで市内の電力供給は安定するだろう。だがいつ何が起きるかわからないのなら警戒するのは当たり前だ
魔力精製炉発電所は火力発電で使用される燃料と異なり魔石は豊富に存在する
今の唯一問題はAMFが発動されると魔力精製炉発電は魔力精製炉にある魔石の発熱反応がかなり減少する。
そのため魔力精製炉発電に依存してきた以前とは異なり、火力発電や水力発電の建設が重要だ
電力の安定供給では火力や水力発電。さらに地熱発電なら安定的な電力供給ができる。
しかし火力発電にも1つだけ弱点がある。それは火力発電で使用される燃料コスト。
石油や天然ガスや石炭などの化石燃料は各州にある州商品取引所などで取引されている。
つまりそれらの化石燃料の取引価格は常に変動しているのだ。
火力発電に必要な燃料価格は商品取引所で値動きするので発電に必要なコストは不安定になってしまう。
そういう意味では大きな問題になることは確実である。多くの電力会社は資源開発会社が出資していている
そうすることで燃料コストが変動しても発電コストにそれほど影響は出ない
ちなみに連邦法で電力価格の変更には州政府が料金の変動に問題がないかの審査を受けなければならない
通常は1週間以内に州政府で審議された後で州議会で過半数の可決を得なければ変更は認められない
ちなみに州政府には電力会社が提出した料金変更は電力事業法など定められている。
州政府も根拠のない不当な値下げを要求することは禁止されている
電力会社は州政府の強引さで正当な値上げに対して政府がそれを認めない場合は裁判で議論を行う
これらのことについてはすべて連邦法でしっかりと定められている
連邦法なのでミッドチルダ連邦政府を構成するすべての州で適用される法律だ
もちろん電力会社だけでなく上下水道や通信設備などの運用をしている企業も電力会社と同じだ。
様々な連邦法でライフラインの運用をしている企業のルールが定められている

「これで少しは経済に影響が出ないことを祈りたいところだな」

同じようなことが連発すればクラナガン捜査局として恥だ
法執行機関として事件や事故を事前に抑制することは当然の任務なのだから
事件が起きてから対応していたら大問題だ。
できる事なら発生する前に対応して被害を最小限にする必要がある

『港湾本部から各員へ。クラナガン市内にあるすべての魔力精製炉発電所の警戒を最高レベルに引き上げる』

「警戒は継続か。状況的にはあまり良いとは言えないな」

レックスは再度の魔力精製炉発電所の発電が止まることを懸念していた
もしそうなれば大きな問題になる。だからこそ港湾パトロールが警備のための人員をさらに増強させる
もうこれ以上好き勝手にさせるわけにはいかない。何が何でも止めなければ法執行機関として失格だ
ミスは絶対に許されないのがこの仕事のつらいことだ。時には仲間も信用できないことがある
『常に警戒を』。それも大切である。

『港湾本部から各員へ。ベルカ州内の民間航空機の飛行を全面禁止。近隣の州にも飛行制限をかける』

『こちらベルカ基地。現在ベルカ州内を飛行している民間航空機は30機。全機に最寄りの空港に着陸命令を発令』

これでベルカ州内の航空機の飛行をすべて禁止することで攻撃を行う際にミスを生じさせることがない
民間航空機がすべてベルカ州内に確認されなくなれば一気に作戦が進むということでもある
飛行魔法を行使する魔導師に対してはAMFが組み込まれたミサイルなどを使って攻撃を実施する
魔法が使えなければ何も力を持たない普通の人間と同じである

「できれば穏やかに事進めたいだろうが。簡単に話は進む事はないな」

レックスはいつになったらベルカ州のクーデター騒動による混乱が無くなってくれるかを考えていた
実際にはそんなことになるにはかなりの時間が必要になることはわかっている
簡単に解決しないから問題が次々と生じるのだ

『ワンワールドバンクが抱えている不良債権の金額が詳細にわかりました。総額13京ミッドになると』

『不良債権の金額があまりに多すぎることから救済案は行わないと次元世界通貨基金は記者会見で発表』

通常の企業破綻時ではデフォルトにより倒産する。
しかし数多くの次元世界国で営業している企業が破綻した場合は影響が大きすぎる。
だからこそ、ある程度なら救済案がある程度は用意される
しかしワンワールドグループ企業が抱える不良債権があまりにも多すぎる。
だからこそ企業そのものを破綻させるしか道がないのだ
それにワンワールドグループに属する企業は多くの問題を抱えていた
仮に救済案などを用意した場合は国民は納得しない。選ぶ選択は1つしかない。
それは倒産させるしかないのだ

『今回の発表を受けてワンワールドグループ企業と取引があった企業の株価が大きく下落しています』

『不良債権処理はかなり時間が必要なのは確実であり、問題対処には慎重にしなければならないと』

グローバル企業の破綻処理ほど面倒なものはない。多くの次元世界国に拠点があるグローバル企業、
それらの企業の不良債権や破綻処理のために次元世界連合があるのも事実なのである
時間はかかることはわかっているが調べないといけないことはわかっている

「ワンワールドグループの後始末をすべて完了するにはかなりの時間が必要だな。破綻処理の影響も大きいが」

『ワンワールドグループ企業が発行している社債や株式などの資産価値は0になっています』

『すでにワンワールドグループ企業が上場しているクラナガン証券取引所では取引停止になっています』

クラナガン証券取引所は24時間1年中休みなく株式などの証券取引が行われている
ここに上場している企業は数多くの次元世界国で企業活動をしているグローバル企業が数多く存在する
その他にもクラナガン市内で主な企業活動をしている会社の証券取引も扱っている
ちなみに国内では各州に証券取引所や商品取引所がある。
企業活動をしているのが州内だけを範囲としているケースでは、各州の州証券取引所で売買されている
商品取引も同じでミッドチルダ連邦国内の各州にそれぞれ州商品取引所が開設されている
州商品取引所ではその州内で得られる様々な鉱物資源や穀物などの幅広い商品が取引されている

『一方でJS事件後では原油価格が大幅に上昇。その影響を受けて自動車燃料価格も上昇しています』

石油精製で得られた数多くの石油製品の価格も上昇している
火力発電所が国内では数多く建設されて運用されている。火力発電で必要になる燃料価格も大きく上昇。
電気代の値上げが起きると想定されている。また都市ガスなどに使用される天然ガスの価格も上昇。
今後は電気代や都市ガスの価格が大きく上昇すると見られている。

『中央本部から各員へ。現場で警戒中に少しでも異変を感じたら即座に職質を行い安全確保を実施せよ』

市内でこれ以上好き勝手にされるわけにはいかないというのが理由であることはすぐに察した
クラナガン市内で大きな安全保障にかかわるトラブルなどの問題が発生することはよろしくない
国際政治でミッドチルダ連邦政府としてもしっかりとしたリーダーシップが重要になる

『クラナガン市内にあるワンワールドバンクの支店での警戒を厳重に行え』

『少しでも取り付け騒ぎがありそうなら中央本部に緊急報告せよ』

クラナガン市内でワンワールドバンクに対して取り付け騒ぎが一部で起きているようだ
だからこそ警戒を行うように指示が来ていることをレックスは理解していた

「とりあえず、いじめの加害者の事情聴取だな。親の権力を利用して好き勝手出来ないことを分からせないとな」

加害者であるジュジス・ボーラッドの身柄は東分署で確保されている。
あとはすべての情報を吐かせなければならない
いじめをしていた加害者は成人した犯罪者がいる刑務所には収監されない
未成年者刑務所に収監される。もちろん悪質な犯罪である場合は大人と同じ刑務所に収監される
ほとんどの事件などで刑務所に送られるのはかなり悪質な犯罪や殺人などに限定される。
つまり基本的には未成年者刑務所に収監されることになっている

「とにかくいじめの被害者の状況を聞き出すか」

レックスは口で言うのは簡単だ。
だが現実的な話をした場合、実際に証言してくれる人物はかなり少ないことが多い
今まで何も手を出さないで見守っていたのは加害者から今度は自らに被害を受けることが分かっていたからだろう
時空管理局の幹部を親に持っていたからこそ、いろいろと圧力をかけることで他の同級生を支配することができる
そうやって好き勝手に暴れて親は時空管理局の権力を持ち出して今度は別の火の粉が飛んでくる
そんなことに巻き込まれるのは嫌という気持ちはわかる。助けたくてもできない
いじめの加害者が悪いことは理解していても仲裁に入ると同じようにいじめのターゲットにされることもある
だからこそ難しいところがある。権力者の子供は横柄な態度や行動をする
自分が巻き沿いになりたくないのでいじめを目撃しても誰にも話すことをしない
知らないふりをしていれば自らに災いが降りかかることはない。
簡単に言えば下手に触れると爆発する不発弾と変わらない
こういったケースの事例は今は数多くが報告されて、次々と捜査が開始されている
毎日100件以上の被害届を出すこともあるほどに急増している
あまりにも被害届の急増に捜査が追い付いていないのが現状だ

「いじめの被害届の件数が多いのも大変だな。俺たち捜査部でも悪質ないじめの捜査を担当しているが」

捜査部は本来殺人などの重罪になる犯罪を担当している。
もちろんその中にはいじめが原因で自殺したいじめ被害者の案件についての捜査を行うことも増加
捜査部はさまざまな部門と連携して対応している。
そのため捜査部には1日にかなり多くの捜査協力の申請が出されている
対応する方はかなり大変ではあるが何とかするしかないのだ
いじめは犯罪である。それも幼い子供対子供であってもだ。いじめの被害者は心に深い傷を残してしまう
それだけにいじめは絶対に軽く考えることはできない。重罪行為と考えるべきなのだ
いじめを受けたことによってまだ幼い時に自殺という道を選ぶ子供がいる
できる事ならそういう事をさせないようにしっかりと行政機関が動くべきなのだ
守られるべき立場である子供たちが自殺しないためにも
いじめの加害者にはしっかりと教えなければならない。犯罪の重さというものを
そしていじめというのがどれほど行ってはいけないことであるかを理解させる
だからこそ捜査は徹底的に行う。