午前10:30 東区西部区域フランクリン地区 地区パトロール事務所

ラジェットとはやて達機動六課組は地区パトロール事務所に立てこもって膠着状態だ
すでに銃撃戦が展開している。さらに被害が拡大することも想定される
それだけに何が起きるか全く予測できない。もしかしたら爆弾を投げてくるかもしれない
あらゆる状況判断ができることが極めて重要になることは誰の目から見ても明らかである。
もしこちらへの直接攻撃を仕掛けてくることか想定する当然のことだ

「SA11から中央本部。こちらの状況はわかっているか?」

地区パトロール事務所で何とか立てこもっている。できれば急いでSWATの到着を待っている
時間が経過すればするほど問題になる。トラブルにはできるだけ素早く対応したい

『SWATがまもなく到着する。到着予定は3分以内。無線は暗号方式に切り替えよ』

クラナガン捜査局では暗号無線通信がいくつか用意されている
どの暗号方式を使うかは言葉では指示しない。
チャンネル回線で通信をすると指示されたら暗号無線での通信を行う

『暗号回線はチャンネル3で対応せよ』

暗号回線は5チャンネルまである。それらをうまく使うことで
そこにさらに港湾パトロールから新たな要請が入ったことを知らせる無線が確認できた

『クラナガン市内にあるすべての空港鵜を利用する航空機の離発着をすべて停止が決定』

これでクラナガン市内の上空を飛行する民間航空機の運航禁止になる
今は最も近くの空港に受け入れ可能ならすみやかに着陸命令が出されていた

『中央本部からSA11。現在は無事なのか?』

「今のところは無事だがいつどうなるかはわからない。大至急こっちに応援をよこしてくれ」

『SA11に対する攻撃をしているのは時空管理局を退役した過激派と思われる人物。顔認証で一致』

嫌な展開は大当たりだ。
彼らは時空管理局の大規模縮小のきっかけである機動六課組を襲撃することはただの逆恨みである
ただ自らが権力乱用によって甘い汁を吸っていたことから恨みを持つのはある程度は理解できる

「甘い汁の味が忘れられないのは利権を持っていた人間は当然だな」

甘い汁の味が忘れられないのは当然である。
時空管理局に属していた頃は住宅ローンなどを簡単に金融機関と契約することができていた
しかし、時空管理局に対する厳しい目線にさらされることになり、住宅ローンが焦げ付くケースも多い
金融機関にとっては時空管理局が権力を持っていた頃は、時空管理局員の高い給与水準であった
そのため簡単に住宅ローンなどの審査ができた。
それもかなり甘い審査であり時空管理局員なら焦げ付くことはないという安心感があった。
今は融資した資金の回収のために多くの金融機関は必死だ
不良債権になってしまうと融資をしていた金融機関の信用にも影響する
それだけに何としても回収しなければいけないのだ
不良債権があまりに多額になると金融機関としては自己資本比率などの連邦法だけでなく、
次元世界連合全加盟国が定めている国際条約に抵触する。
そのため不良債権の金額を少しでも減らそうとあらゆる金融機関が動いている

「連中は本気だな。お前たちを消してしまいたい。大きすぎるパンドラの箱を開けてくれたと」

はやて達を攻撃するのはただの恨みによるものだ
そうでなければここまでの行動を起こすはずがない。
彼らは機動六課組によって明らかにされたことによって大きな影響を受けた。
だからこそ逆恨みを買っていることは確かなことである

『はやて・八神達をこちらに引き渡せ!そうすれば命は助けてやる!』

拡声器を使っての通告にラジェットは間違いなくはやて達を引き渡せば、
彼女たちが死ぬことを瞬時に理解した。
今の情勢を生み出したのが機動六課によって解決したJS事件である
この事件によって時空管理局は権力を失っただけでなく、時空管理局の組織規模も縮小された
今後の動きがどうなるかは本当にわからない。時空管理局が権力を握ることはもうない
次元世界連合という新しい国際秩序が生み出されたからだ
新しい国際政治の秩序によって時空管理局という犬には首輪がつけられた。
今はしつけの真っ最中であることは事実である。つまり時空管理局の組織体制がどうなるかは全く予測できない。

「よっぽど恨まれているようだな。ここまでひどいとは俺でも呆れる」

確かに逆恨みも良いところだ。時空管理局を崩壊させた原因は機動六課だ
だが彼らがいたからこそ時空管理局はおとなしくするしかないのだ
下手に暴れるとどれほどひどい扱いになるかがわかっている。
そんなことが分からないならただのバカであるとしか言えない

『中央本部からSA11。まもなくヘリでSWATが到着する。迅速に対応せよ』

「こちらSA11。了解した。誤射はしたくない。射線上に入るな」

ラジェットの意見だったが今の状況は簡単に進まないことは事実である
今のこの状況はあまりに危険すぎる。ベルカ自治区時代は聖王教会で時空管理局の闇が存在した
ベルカ自治区内で麻薬や武器の密造が行われていた。
今はベルカ州警察や州内に設置された法執行機関が摘発している。
毎日数多くの麻薬や武器の密造組織の拠点が強制捜査を受けている

『東分署からSA11。飛行魔法を行使している魔導師を確認。警戒されたし』

ミッドチルダ連邦法で魔導師が飛行魔法を使う時は連邦航空局に許可を得なければならない
許可が出る前に飛行魔法を使用すれば、魔導師としての活動が審査が終了するまでできない
審査で正当性が認められないと判断すれば魔法行使ができないことになる場合もある

「現場の苦労を知ってほしいところだ。面倒を押し付けられるのはいつも下っ端の俺たちだ」

いつも泥を被るのは現場にいる者だ。後始末に関係する様々な問題を上は簡単に理解してくれない
少しはこちらの苦労を理解してほしいのに。だが現場にいろいろと無茶な指示ばかりをしてくれる
もちろん現場のミスは指揮命令を担当した上層部の幹部もセットで巻き込まれる
指揮命令を行っている幹部はそのことを考えておかないと責任を取らされる

「時空管理局が権力を握っていたころと違って、現場の統括をすべて任せるのは無責任だ」

「俺たちの上官。港湾パトロール海兵隊司令官はいつでも任務遂行に問題がなければ様々な手を打ってくれる」

上司が良いと仕事がやりやすいと港湾パトロール海兵隊員が答えた。
確かにその通りだ。問題はこの状況がいつまで続くかである。できる事ならこちらから反撃を徹底的に行いたい
だが現実には下手に出てしまうと狙われることになる。慎重な対応が必要になっているのはよく理解している
部下から信頼されないと上官になることはできない。
上官が優秀であり任務遂行時にはさまざまなサポートをしてくれるからこそ、部下が共に戦う道を選んでくれる

「俺の上官もそうだな。シエルはいつも俺たち部下を守ってくれる。必要ならあらゆる方法でサポートしてくれるからな」

中央パトロール本部捜査部のトップのシエルも部下からの信頼は厚い。
シエルは必要ならミッドチルダ連邦大統領に話を直通で通して支援をしてくれる
頼りになる上官だからこそ、部下であるラジェット達はついていくのだ

「それにしても捜査部には同情しますよ。面倒を押し付けられているのですから」

ラジェットは港湾パトロール海兵隊委の言葉にそうだなと返答した
今後の問題についていろいろと議論しなければならないことを理解していた
何が正しいのか区別するのが難しいからだ。確かに機動六課が暴いたことで時空管理局は正しい組織になった
だがそれとは逆に腐敗が横行する組織であることも証明した
どっちが正しいのか区別するのかは見る方向によって変わる

『港湾本部から中央本部SA11。第9海兵特殊作戦軍が間もなく到着する。それまで粘ってくれ』

第9海兵特殊作戦軍は港湾パトロールの中でも特殊部隊である。
今はここで何とか踏みとどまるしかないなとラジェットは考えていた
このまま機動六課組を放置するわけにもいかない

『次元世界連合は時空管理局機動六課の職員を時空管理局から一時的に逃がすことを決定しました』

『機動六課に所属していた時空管理局員はクラナガン捜査局中央パトロールで身柄を預かることも公表しました』

ついに情報漏れが少しずつ明らかになってきている。
マスコミがどこまで知っているかはわからない。何かあるかもしれない

『次元世界連合は時空管理局の予算案についてある見解を発表しました』

時空管理局の予算上限について最高でも5000兆ミッドまでにすると。
昨年の新歴75年の時空管理局の予算は数十京ミッドだった。それと比較すると大幅な予算カットである
元々時空管理局員の給与水準があまりにも高すぎていた。人件費の大幅カットで時空管理局の予算カット。
さらに本局と地上本部の統合や時空管理局の管轄区域が大幅に削減された
そのおかげで時空管理局の部署の統廃合によって予算の削減ができた
旧本局と地上本部の部署で似たような部署がそれぞれあった場合は統廃合している
だからこそ人件費の大幅カットに成功している。
時空管理局員の大量リストラによって構成員は大幅削減された

『一方で時空管理局はその予算ではあまりにも少なすぎるとしています』

時空管理局が予算案の再編成を要請しても、それが次元世界連合で認可されることはあり得ない
次元世界連合は時空管理局が暴走することを阻止するために過剰な予算申請を承認されない
時空管理局が申請してきた予算を簡単に認可することなどないことはわかっている

『時空管理局長のジョセフ・ボナパルトも大幅予算カットのためには必要ではない人員や装備品調達費用の削減を指示』

『一方で現場の時空管理局員からはこれ以上の削減は難しいという声明が出されています』

「どうやら爆弾の導火線に火が着火する寸前の状況だな。このままいけば時空管理局は泥沼だ」

それだけは確かである。何が起きるかは全く想像できない。
時空管理局も予算が次元世界連合で承認されなければ時空管理局という組織そのものが倒れるだけだ
そうなる前に予算案の審議と可決が最重要である。だが時空管理局内にも不満を抱えている局員は多い
今のこの状況を作り出した機動六課組に対する心象は特に。
彼女たちが暴いた真実によって時空管理局の闇は取り除かれた
だが真相を暴いたからこそ時空管理局の規模と権力を大幅に失った
それに時空管理局と取引があった企業も大きなダメージを受けている
密接な関係があった企業の多くは破綻している。それらにより取引があった企業関係者は失業
時空管理局が規模と権力を失ったように取引があった企業の破綻数は極めて多い

「恨みを持つのは理解できるが、その問題を生み出したのは時空管理局に長年存在した暗き闇だ」

自らが作り出した闇なのに、真実を暴かれたら自らの責任ではないというのだから困ったものだ
さらに問題なのは時空管理局の闇に多くの犯罪組織や時空管理局からもたらせる甘い汁、
それが欲しいために集まってきているケースが多かった
結局のところは自らの闇を大きくしすぎたからこそ大問題になっている
闇は絶対に暴かなければならない。しかし実際は闇から利益を得るために放置してきた
だからこそ腐敗が横行しているのが現状である。
そしてJS事件によって時空管理局は権力も組織の規模も失った
こんな状態になることを放置できるはずがない。
今後の影響がどうなるかは全く予見することはわからない
これは聖王教会にも当てはまることだ。聖王教会もかなり根深い闇を持っていた
その影響によって自治区制度は廃止になり新たにベルカ州が誕生した
聖王教会は独自の政治政党を立ち上げて初めて民主主義による選挙が行われた
しかし州議会などのベルカ州内のすべての選挙で1議席も確保できなかった
一方でベルカ自治区廃止を長年にかけて実現させるために武装活動をしていたベルカ解放同盟。
現在は武装解除を行うとともに独自の政治政党であるベルカ自由党を創設
州内のさまざまな議会で第1党になっている。
ベルカ自由党は自治区時代に聖王教会内部にあった暗やみを暴こうと様々な法整備を行っている
また州警察など、州内全ての法執行機関に聖王教会が絡んでいるかもしれない犯罪行為、
その捜査を最優先で行うように要請している。

「真実への扉は残酷だな。自らの自分勝手なことが永久に続くことは無いのに」

闇や光がさしているときが永久に続くことなどありえない
時には残酷な決断をして、仲間であっても闇を抱えたなら真実を明らかにすることが求められる

「大量リストラされた退役時空管理局員は犯罪だろうが、生きるためにはどんなに汚いことでもしてくる」

必要なら証人になりそうなものや証拠を抹消しようとする。ラジェットの言っていることは的中している。
次に何があるかはいくら考えようとしても全く見当がつかない。
仮に何か大きな展開になるとどれほどひどいことになるか。

『中央本部からSA11。交戦を許可する。最終命令を通達。手段を問わず機動六課組を守れ』

「最終命令を確認した。実行に移す」

最終命令が出るということはあらゆる方法で応戦しても良いということだ
本来の警察組織なら、犯人を逮捕することだ。しかし最終命令というのは何をしても良い
民間人に被害が出ない範囲でだが。とにかく機動六課組を守るためなら何をしても良い
それが最終命令なのだ。本来は逮捕する人物でも、明確な意思を持って殺すこと許可する
反論する必要がないということを分かっているので、徹底抗戦のために動いた

「許可が出た。徹底抗戦で潰すつもりで対応するぞ」

ラジェットはそう言うとすぐに港湾パトロール海兵隊員と一緒に行動を開始した
機動六課組を守るために全力で対応する。中央本部は許可している。
建物を破壊するようなことは可能な限り避けたかった
しかしそんなことを言っている時間はないことは確かである

『こちら東分署SWAT。上空から支援する』

「民間人に誤射はするな。それ以外なら好き勝手に暴れてくれ」

交戦は許可されているのだから問題はない。
ただし民間人に人的被害を出すことは許可できない。
建物などの被害が出ても損害賠償をすればいい。しかし人命尊重は重要である

「SA11から中央本部へ。これより機動六課組を守るために徹底抗戦で対応する」

『こちら中央本部。了解した。民間人に被害が出ないなら好きなように暴れるのを許可する』

これから徹底抗戦で行動するしかない。手段を選ばずはやて達を守る
それがラジェット達に任されていることだ。正義のためなら個人的感情に流されることは良くない
ミッドチルダ連邦国民が安全に暮らせるように最善を尽くす
今は連邦政府は連邦海軍と連邦海兵隊と連邦空軍の3つの軍組織が存在している
以前は時空管理局にかなり無茶な予算を求められていた。
のため独自の国防行政組織の立ち上げをさせないように手をまわされていた
だがそれもJS事件の後にはなくなり、各次元世界国政府は独自の軍事組織を編成した
軍事組織の運用に関しては次元世界連合で全会一致で合意された基本原則がある
一定の場合で先制攻撃をすることは容認されている。
しかし基本的には専守防衛に徹することを国際条約で定められている
ラジェットはその間も携帯情報端末を使ってマスコミの動向を確認していた
こちらの案件はすでにマスコミに漏れているかの確認である
安全に対応するためには必要な対応手順の1つだ

『次元世界連合はミッドチルダ連邦政府の連邦軍によるベルカ州でのクーデター騒動を納めるために部隊展開を承認』

『ミッドチルダ連邦政府は即座に連邦空軍と連邦海兵隊による武装解除のために活動すると発表』

『またベルカ州西部地方でのクーデター事案で電力や通信の安定が難しいことについて回線の復旧を早急に行うと』

通信については地上回線がダウンしても人工衛星を利用した衛星通信で少ないことには変わりない。
しかし一定の通信設備は運用はできている。
しかし電力供給ができていない現在はバッテリーで対応している
通信量が多いと消耗する蓄電の残量の減少率も高まる。
難しいところがあるのは多くの政府関係者は理解している。
早急に問題解決をしなければならないのは誰もがわかっていても行動するには根回しをすることが求められる
すでに次元世界連合からは連邦軍の派遣は承認されている
念のため多くのマスコミの報道を確認するがこちらの事案については報道されていない

『こちら東分署SWAT。SA11へ。これより上空から強襲に入る』

「俺たちの射線上に入るな。命がいくつあっても足りないからな」

そんなことはわかっているとSWATからの通信が入ると同時に一気に攻撃に出た

「徹底的に銃弾をプレゼントしてやれ」

ラジェットはそう言うとH&KG36で反撃に出た
本来ならマスコミ対応などについて議論するところではあるが今はそんなことは言っていられない
何が何でも攻撃する。もうやれるだけの攻撃を仕掛ける

『中央本部からSA11。状況はどうなっている?』

「この地区事務所は危険地帯のど真ん中だ!こちらに回せる局員を集めろ」

ラジェットは銃撃戦を展開しながら部隊を集めるように伝えた
もう迷っている暇などありはしない。連中は証拠を消すためなら手段を選んでくれるとは思えないのだから
だからこそ徹底的に攻撃することが重要になってくる

『中央本部からSA11。最終措置を許可する。上層部は承認した』

その無線にラジェットは本気らしいと感じた。最終措置とは何をやろうが責任は問われない
簡単に言ってしまえば、何を行ってもすべての面倒は見てくれる
ある意味では助かる。問題が複雑になっていることは事実なのだから。
のんびりして入れるような状況ではないのは確かなことである
問題が山積する前に少しでも良いので時間稼ぎが必要になる

『クラナガン市はオンライン会議で首都圏エネルギー資源供給会議でクラナガン市政府と近隣州政府である決議が採択』

『クラナガン市と近隣州で使用される電力の安定供給を行うために対応すると発表』

『また時空管理局地上本部が地上警察業務をしていた際に発生したとされるトラブルについても議論』

『時空管理局地上本部の幹部に事情聴取を行うことにも最優先で取り組むことも可決された』

これで暗い過去がある時空管理局員は逃げ場がない。
少しでも不法行為を行っていれば完全に捜査を行うことになる
本来はこういった州を超えた捜査はFBIなどの連邦捜査機関が担当するが今回は特別扱いにすることが決まったのだ
元々時空管理局員で汚職などの不正に関与していた人物は次元世界連合の全加盟国に必ず複数存在する
捜査の対象になることを察して逃げているのだ。つまりどんな手段を使っても逃げて見せるという覚悟。
そういったものがあるということだ。

「連中は時空管理局を潰した機動六課組を恨んでいることは間違いない。問題なのはどこまでやるかだ」

ラジェットは地区パトロール事務所に地下シェルターがあることをよく理解している
使用するのは良いのだが状況次第ではさらにピンチに追い込まれる
シェルターでいつでも籠城作戦で対応できるという保証はない。
シェルターに逃げるのは最後の手段。できる事なら使いたくはない

「クラナガン市の安全を守るのが俺たちの仕事だが、厄介な事になるといろいろと任してくれるが面倒にもなるがな」

ラジェットはそんなことを言いながら次々とアサルトライフルで銃撃戦を展開した
インチキのことをしてきたら大問題だ。機動六課が暴いた情報をメディアが取り上げている
おかげで時空管理局の規模は大幅縮小されて、様々な権力も失った
恨むのもわかるが自業自得である。ただし怒りというのは簡単に収まらない
だから機動六課組が常に狙われている。今は時空管理局と距離を取ることが安全なのだ

「撃ちまくれ!」

ラジェット達は発砲して相手に鉛の銃弾を浴びせていた
今後のことを考えて、今のうちに分からせることが重要である。
こちらに手を出したらどれだけ大変なことになるのかを理解させるためにも徹底的行うことが極めて重要なのだ


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ベルカ州中央地方ベルカ市郊外 港湾パトロールベルカ基地 基地管制センター

基地管制センターではベルカ州西部地方でのクーデター騒動を起こしている反政府組織を叩き潰すために動いている
ちなみに部隊の指揮命令は基本的には港湾本部基地で行う。
しかし港湾本部基地での指揮命令ができなくなった場合に備えてベルカ基地でも常に連携している

『ベルカ州政府はオンラインで首都圏連絡会議に初参加』

クラナガン市と近隣州政府で行われる首都圏連絡会議では主に参加している行政府内の防衛や警察業務。
その他に石油や天然ガスや石炭などのエネルギー資源の安定供給のための議論
議論の項目は他にもあり電力供給や水資源の安定供給についても議論が行われている
JS事件までは時空管理局の影響が強すぎて連絡会議はあった。
しかし、これらの会議などは時空管理局からはあまり面倒な会議だという扱いを受けていた
今は状況は一変している。時空管理局が権力を失うと人々が選んだ政治家による民主主義が本腰を入れて行える

『ベルカ州内で採掘された石油や天然ガスなどの鉱物資源の安定供給で議論を行いました』

『ベルカ州政府が公営資源企業で新たに石油や天然ガスの資源開発と安定供給のために対応すると発表』

ベルカ州政府が株式の100%を保有している公営企業が2社が存在する。
1つは電力の発送電を行っているベルカパワー。
もう1つは石油や天然ガスなどの鉱物資源開発をしているベルカオイルカンパニー。
この2社はベルカ州政府にとっては極めて重要な企業。
ベルカ州内の電力の安定供給や石油や天然ガスなどの資源開発をしている
特にベルカパワー社は発電所や送電網の整備にかなりの公共工事を行っている
ベルカ州の電力使用量はベルカ自治区の時と比較すると2倍以上になっている
今後もこのようなことになると需給バランスに影響してくる

『また首都圏電力供給会議でもベルカ州と近隣州の電力供給についても議論を行いました』

その中でベルカ州内で火力発電所が大幅に増加している。
水力発電所の建設には水力発電で使用される水資源を確保するためにダムを建設
ダムなどの貯水池を建設するには、ダム建設で水没する場所に現在住んでいる人々に新しい生活基盤を確保する
それが連邦法の環境維持関係の法律で定められている。つまりダムの建設には長時間と費用が掛かる。
一方で火力発電所は火力発電で使用されるエネルギー資源の供給ができるなら低コストで建設できる
建設に必要な時間や建設コストも少ない。送電網も大急ぎで整備されている
ベルカ自治区から州政府に移行して資源開発が大幅に増加したことで失業率よりも求人の方が圧倒的に多い
企業は多くの従業員を雇用しようと様々な好待遇で求人を出している
ベルカ州に移住する人々が大幅に増加して州政府などの財政状況は大幅な財政黒字になっている
州政府は財政黒字で使う必要がない税収は今後に財政赤字になった場合に仕えるよう、
歳入の税収を積み立てを行っている。
今のベルカ州政府の主要歳入は資源開発会社が資源開発を行う時に採掘した資源に課税される税収が多い
通常なら税収の多くは所得税や法人税が多い。しかしベルカ州政府の場合は状況が全く異なっている。
資源開発税や消費税が多くを占めている。もちろん今後の歳入項目には後々、所得税や法人税が増加するだろう
そこまで行くには数年間の時間が必要になってくる。課税による歳入というのはすぐに変化することではない

『港湾本部からベルカ基地。西部地方でのクーデター騒動を起こしている武装組織に動きがある。警戒せよ』

ベルカ基地には港湾パトロール海兵隊員が多く派遣されている。
本来、ベルカ基地に配置されている港湾パトロール海兵隊員は5000人配置されている。
港湾本部は他の州にある基地から部隊を派遣されている。
すでに西部地方に空挺部隊を中心とする兵士が派遣されている
これがJS事件が終わってから次元世界連合という国際機関と国際政治という名の秩序ができてから、
初めて行われる軍事行動になる。聖王教会にとっては元教会関係者が存在したら立場が危険になる
それは退役時空管理局員がいたら時空管理局にも当てはまることではあるが
ただ問題があるとするなら今回のこの事案がどこまで大きく影響してくるか
そこが最も重要で大きな課題だ

『ベルカ州証券取引所では多くの銘柄に売り注文が殺到。平均株価は急落しています』

ただしすぐに値を上げる株の銘柄も存在している。
大きな理由は倒産する可能性が低い資源開発会社などの株を低価格で購入できる
金融市場はまさに波乱が続いているのが現状だ。今後の流れがどうなるかは大きく変わってくる
何度も言うが、今のベルカ州内の景気は極めて良好だ。発電所や上下水道施設の建設が急ピッチで行われている
それらは州政府や州内の郡政府や市政府も行っている。
もちろん自然環境に影響が出ないように配慮を行いながら公共事業が急増
それらの事業は競争入札で落札した企業が公共事業を実行中。だからこそ人手がまるで足りていない現状なのだ。
公共事業を獲得した企業は工事で必要な作業員の確保に苦労するほどに
しかし聖王教会や時空管理局はブルーカラーの肉体労働をするのはプライドが許さないためか、
そういった企業の作業員になる者は少ない。時空管理局員だから、天から地に落とされた
せっかく天国のような毎日をしていたのに、今では毎日の生活に必要なお金を集めることにも影響してくる
最悪であることは間違いない。好き勝手にしていた権力も失ったことも大きな理由である
だがなりふり構っていられるような状況にない退役時空管理局員がいることも確かなことなのだ
ベルカ基地の統合軍司令官のレパーズ・サットンは最悪のシナリオを考えていた

「クーデターを起こしている連中は有線通信を止めている。無線通信基地局では機能しているが」

レパーズはいつまで持つかはわからないことを懸念していた。
もし無線通信基地局にあるバッテリーがすべて失われると通信はほとんどできない
元々人工衛星を使っての通信はあまりこの惑星では機能していない
それには理由があった。有線通信が主流だから。無線通信となると通信情報量は限られる
有線通信回線と異なり少し時間がかかってしまう。だからこそ有線通信が充実している
民間企業で人工衛星を使った衛星通信を行っているのは2社になっている。
1つはミーミルグループのミーミルテレコム。こちらでは数多くの人工衛星の運用を行っている
ミーミルテレコムが運用している人工衛星は静止軌道に6基。故障時にバックアップとして6基が待機中
その他に衛星電話や衛星通信などのさまざまな機能を搭載した人工衛星が1000基近くも低軌道で展開している
基本的には人工衛星を使った通信に関してはミーミルテレコム社が独占している状態になる
ただし以前は国営企業だったが、現在は民間企業になったミッドチルダテレコム。
この企業は静止軌道に運用中の人工衛星を6基。さらに6基の人工衛星が静止軌道に予備機材として運用している

「人工衛星を利用した通信は有線回線と比較すると少し危険だ」

港湾パトロール海兵隊で第7海兵遠征軍司令官をしているエイリー・ホーフスも同様のことを考えていた
彼女はベルカ基地に配置されている港湾パトロール海兵隊の第7海兵遠征軍のトップだ。

「こちらの回線には影響はないけど、民間通信事業をしている企業には大きなダメージになる」

彼女の指摘はその通りだ。クラナガン捜査局が使用している各種通信設備の運用に影響は出ていない
だが民間通信会社が運用している通信事業に影響が出ると良い方向に話は進まない
ベルカ州西部地方に居住している人々には大きな影響だ。すでに電力供給は停止
通信もできなくなると人々は混乱する可能性が極めて高い
そこにベルカ基地管制センターで管制任務を行っている管制官がある情報を入手した
その情報はすぐに

「連邦軍が派兵されました。連邦海兵隊員は2000人規模。指揮命令権限はベルカ基地統合軍司令官に移管すると」

管制官からの言葉にレパーズは大きなため息をついた
連邦軍の指揮命令権限が移管されるのはある意味では迷惑な話である
クーデター騒動を無事に解決しなければベルカ基地統合軍司令官である彼の責任になる
指揮する人間はさまざまな情報を吟味したうえで、指揮命令をしなければいけない
時には苦渋の決断が求められる時もある。だからこそ問題解決のために全力で対応することが求められる
もしトラブルが解消されなければすべての責任はレパーズになる

「レパーズ。あなたって手柄を立てて出世の道に興味はないの?」

「俺はこれ以上出世なんてやめておく。今のポジションが好きだ。威張り散らすこともできるからな」

「さすが海兵隊で鍛え抜かれた男って感じね」

「よく言われる言葉だ。俺は出世より罪もない人々が関係のない問題で犠牲になることを止める」

レパーズ・サットンは人々を助けるために任務をこなしていくと言い切った
彼は部下からも慕われている。上に立つ者としてしっかりとした役割を果たす

『ベルカ州商品取引所では原油先物取引価格が大幅に増加。1バレル8000ミッドに』

これを受けてベルカ州内で活動している石油や天然ガスなどの資源開発会社の株価は急上昇していた
港湾パトロールもクーデターの影響を最小限にするために動くことは当たり前だ
そのために組織があるのだから。任務遂行はすべて人々の安全を守ることである
不正行為を行った犯罪者は何が何でも摘発しなければならない
警察業務はベルカ州内では中央パトロールの管轄ではない。
しかしベルカ州警察は中央パトロールだけでなく、
その上部組織のクラナガン捜査局と連邦捜査機関と連携している
ベルカ州内で数多くあった麻薬や銃火器密造の拠点の摘発は1日に何百件にもなる

「ベルカ州の法執行機関は苦労している。犯罪組織と聖王教会が裏で手を結んでいたのだからな」

犯罪組織は聖王教会が旧ベルカ自治区制だった頃、
自治区内に作っていた拠点への強制捜査が行われる前に

「そのとばっちりを受けるのはいつも法執行機関。おまけに時空管理局が莫大な権力を握っていたのだから」

トラブルが多発することは捜査に着手した段階で分かっていたはずよとエイリー・ホーフスは話した
彼女の言う通りだ。法執行機関であるはずの時空管理局と聖王教会が犯罪組織と手を結んでいた
ひどい話であることは分かっている。今後のことを考えるとさらに問題になる事案件数は右肩上がり
つまり大幅に増加してすべての真実を明らかにするにはどれくらいの時間が必要になるか、
こればかりは全くと言っていいほど終着点は長いことはわかっている
酷い結末にならなければ良いのだが

『次元世界連合の聖王教会調査委員会は聖王教会に外での活動を全面禁止に』

『聖王教会は再審理を求めていました。しかし次元世界連合総会と安全保障理事会は聖王教会の要請を否決』

『これにより聖王教会騎士団の活動は全面禁止されたことを決定』

「諦めが悪い連中だな。今さら何をしても無駄なことなのに」

次元世界連合派総会や安全保障理事会で何度も可決をしてきた
それでも聖王教会は少しでも時間を稼いで対応する時間を作ろうとしているのだ
時間稼ぎをしようとしているのは次元世界連合全加盟国で一致している
だからこそ総会や安全保障理事会では反対する加盟国は存在しない
そこまで進んでいるのに聖王教会は再審理を何度も求めているのだ

『港湾本部からベルカ基地へ。ベルカ州西部地方で大雨が発生する可能性がある。部隊指揮命令の際には安全確保を』

雨が降ってしまうと上空からの偵察を行う場合はクラナガン捜査局が運用している人工衛星、
それらを使っての偵察衛星画像を得ることが難しくなってしまう
人工衛星を使っての偵察画像観測ができないと部隊指揮命令に影響が大きく出てしまう
もちろん人工衛星ではなく偵察任務専用の航空機を使っての監視活動を行える
だがそれでも雲がない場合と比較すると得ることができる情報は限定されてくる
すでにベルカ州西部地方には早期警戒管制機のE-767が配置されている。
ベルカ基地には常時4機配置されている。今はイーストフローレンス基地から2機派遣されている
合計でベルカ州には6機のE-767が展開している。もちろん空中給油機のKC-10もベルカ基地に配備されている
しかしベルカ基地に配属されているのは2機だけだ。そのためイーストフローレンス基地から2機が派遣された
これらの多くの軍用航空機が展開することで上空からの監視活動に常に行われる体制作りができている

「あとは海兵隊に期待するところだな」

地上での戦闘行為を行うのは基本的には海兵隊だ。港湾パトロールには陸軍はない
だからこそ海兵隊による地上攻撃が最重要である。

「私たちはプロよ。どんなに危険な作戦でも罪なき人たちに負傷者を出すことは許されない」

常に忠実を。それが港湾パトロール海兵隊の標語でもある
連邦軍はベルカ州の西隣の州と北隣の州にある連邦軍基地から多くの連邦海兵隊が派兵されている
当然なことではあるが連邦空軍も動員されている。

「それにミカ主任がこちらに向かっているのよ。強力な助っ人が来るのだから」

エイリー・ホーフスの発言はミカの影響力があまりにも大きいことを理解しているからだ
ミカは中央本部捜査部2係主任捜査官という立ち位置に収まるような存在ではない
ミカが本気で動いたらミッドチルダ連邦大統領や次元世界連合にも影響力を持っている

「ミカ主任が到着したらどうなるだろうな?」

「ミカ主任は手段を選ばないで行動してくるはずよ。任務遂行のためにはあらゆる策を実行してくるわね」

2人ともミカの影響力があまりにも大きいことを分かっている
今後の対応の上で連邦軍との調整に関与してくることは間違いない

「俺としてはミカ主任が大活躍してくれた方が後始末を押し付けることができる」

「珍しいわね。もっと上に昇格したいとか思わないの?」

「俺はベルカ基地統合軍司令官で満足だ」

それに今の地位から昇格するのはかなり難しい
統合軍司令官というのはそこまでの地位になることは大変である。
現場の兵士からの信頼がなければできないことも事実。それ以上、上に昇格することは難しい

『ベルカ州政府は首都圏電力供給会議で近隣州から臨時の電力供給を要請』

『一方でベルカ州から近隣州を結んでいる原油や天然ガスのパイプラインの安定稼働を目指すと』

今月に入りベルカ州と近隣州は原油や天然ガスのパイプライン。
それと超高圧送電ラインが整備されて運用開始が行われている。
本来ならそれはベルカ州から近隣州に向かって供給されるはずだった
しかし実際は近隣州からベルカ州に向かって電力供給が行われている。
ベルカ州と近隣州を結んでいる各種パイプラインは現在稼働率が停止している
本来ならフル稼働することができる。だが安全が確保されるまでは警戒しなければならない
大きな問題が発生すれば、本来の稼働率より下げている理由は1つある。
もしパイプラインに爆弾などによる攻撃を受けた場合に修復作業にかなりの時間が必要になる
そうなると大きな損害が発生してしまう。だからこそ安全確保ができるまでは警戒しなければならない

『ベルカ州政府はベルカ州から近隣州へのパイプラインを運用しているエネルギー資源開発会社と協議』

『ミーミルエネルギー社だけでなく、サーストンペトロリアムとドッジエネルギーの3社とオンライン会議を開催』

会議の中で各種パイプラインの安定運用の確認を行った。
今は石油や天然ガスのパイプライン維持を最優先で行うことを決定した
設備維持のために港湾パトロール海兵隊と連携することも合意。
ちなみにベルカ州と近隣州を結んでいる原油や天然ガスのパイプライン運用は3社しか保有していない
最も多いのはエネルギー資源開発会社でシェア1位のミーミルエネルギー社。
残り2社はシェア2位のサーストンペトロリアム。そして第3位にドッジエネルギー社。
この3社がベルカ州から近隣州の間を結んでいるパイプラインを運用している
現在はその他のエネルギー資源開発会社が新たなパイプラインの建設を進めている
ベルカ州には石油や天然ガスや石炭などの数多くのエネルギー資源開発が急激に増加している
首都圏連絡会議の中にはエネルギー資源供給会議というものも開催されている
石油や天然ガスなどのエネルギー資源の安定供給を行うために開催される
通常はクラナガン市内に集まって議論される。しかし緊急時にはオンラインで開かれる会議である
そこにベルカ州の南部地方からミカが搭乗している航空機から連絡が入ってきた

「言っているそばからこれだ。ミカ主任。何か緊急の案件ですか?」

『こちらは情報を集めているだけよ。話は変わるけどベルカ州内の状況はどうなっているの?』

「現在は基地に配置されている港湾パトロール海兵隊が作戦開始のために行動を開始しています」

『ベルカ州西部地方で発生しているクーデター騒動の終結に向かうような道筋はあるの?』

「見通しはない。状況的には大きな問題になることは確かだ」

『武力衝突はかなり激しくなりそうなの?』

今最も懸念するのは最前線で戦う兵士たちが負傷者や戦死者が出ることだ
できる事ならこちらの兵士に負傷者や戦死者が出ないことを祈りたい。
現実はそれほど甘くないことをよく理解している。戦場では命はただの数とみる立場の人間がいる
そんな軽い思いをするのは許されない。あらゆる戦法を使って負傷者や戦死者が出ないようにすることが重要である
そこだけはしっかりわからなければならない。自らの手柄のために部下に負傷者や戦死者を出すことは許されない

「連邦軍も派兵が進んでいる。どれほどの戦闘になるかは予測は無理だが、クーデターをする武装勢力だ」

何をかけてくるかは全く持って予測はできない。最悪の場合を想定して行動すること。
それが正しい現場で戦闘を行う部下のことを思うならサポートは重要になる

『次元世界連合は聖王教会を一時的とはいえ、潰すつもりで動いているとの情報が入っているわ』

さすがはミカ主任だとレパーズは思った。そんな国際政治の重要な情報が簡単に漏れるわけはない
つまりそれだけの情報が簡単に漏れていることは明らかだ。
今後の対応措置として聖王教会を様々な角度から調査や捜査を行う
少しでも問題発生の可能性がある事案を確認すれば徹底的に関係者を追及して真実をオープンする
暗い闇をすべて無くすことが求められている。真実を隠すかのようなことをすることは許されない
不正行為が1件でもあるなら解決しなければならない。聖王教会だけでなく時空管理局の闇も
暗やみをなくすことが大きな課題だ。すべての暗やみをなくすにはかなりの長い時間が必要になる
それでもあきらめるわけにはいかない。それが法執行機関の役割だ

『ところで、セントラルベルカバンクの状況はどうなっているの?』

「ベルカ自治区時代に聖王教会が運営していた金融機関だ。かなり根が深い」

不良債権は3000兆ミッドになる。少なくてもだ。
実際にはさらに多くなる可能性はまだまだある。
ミーミルバンクが買収した。それもほとんど資金投入をする必要はなかった
金融機関の買収にはかなりの資金が必要になる。通常時ではだが。
セントラルベルカバンクでは話が大きく異なる。資産価値はほとんどない。
むしろ不良債権があまりに多すぎる。そのため、今回の買収に必要だった資金は1億ミッド以下で買収した。
今は不良債権の集計などの作業を行っている
3000兆ミッドになる不良債権の多くは聖王教会関係者が融資を受けて事業をしていた
ところがJS事件になってからは次々と破産するケースが多くなった
破産するということは金融機関から融資を受けていたお金が返済できない
つまり破産した人物に融資を行っていた金融機関は不良債権として処理するしかない
時空管理局と聖王教会の関係者なら簡単な審査で融資をしていたことから担保を取らないで融資をしていた
そういったケースが多くの金融機関で発生している。
金融機関は破産者に融資していた資金が回収できず、不良債権の金額があまりにも多いと自己資本比率に影響する
そうなれば金融機関はミッドチルダ連邦国内で連邦法の金融機関向けの法律で、
自己資本比率の定めた数字から変動すると金融機関としての信頼にも影響する
そのため不良債権と化した案件の処理にどの金融機関も必死だ。
多くの金融機関が苦しい状況にある中である金融機関だけは全く影響を受けていない
影響を全く受けていないのがミーミルグループの金融機関だ。
ミーミルバンクは時空管理局や聖王教会向けの融資を全くしていないというわけではないが、
そういった人物や企業への融資を行う場合はしっかりとした担保を確保していた。
おかげでミーミルバンクでは企業活動に全く影響が出ていない
他の金融機関と異なり不良債権はほぼ0に近い。

『私もSEC(証券取引委員会)の友人に話を聞いたけど、かなり酷い財務諸表だったそうよ』

「相変わらずの情報網だ。ミカ主任。よかったら港湾パトロール安全保障局で仕事してみては?」

『あそこは私の趣味じゃないのよ。私の顔は知られすぎているから潜入捜査はできないし』

港湾パトロール安全保障局はクラナガン捜査局の中でも特に重要な部局だ
正確には港湾パトロールに属しているが、彼らが集めた情報は機密情報取り扱い資格を持っている者なら閲覧できる
もちろんアクセスできる情報はどのような機密情報取り扱い資格を持っているかで異なる
ミカの場合は港湾パトロール安全保障局が集めた最高レベルの機密情報にアクセスできる
彼女自身はできればそこに頼るのは最後の手段として、大切にしている
機密情報を利用するのはいろいろと状況によって異なってくる
犯罪捜査で諜報組織が集めた情報を利用するには規則に従って行うことが絶対条件。
簡単に機密情報取り扱い資格を持っているからアクセスするというわけにはいかない

「確かにミカ主任はいろいろと顔が売れている。潜入捜査は難しい」

ミカは中央本部捜査部に在籍している。おまけに2係の主任捜査官だ
マスコミに顔が知られているなら潜入捜査をすることなどできるはずがない

『セントラルベルカバンクの財務情報を私の方で分析したわ。悪質な融資計画が多すぎるわ』

ミカからその悪質な融資計画に関する情報がレパーズが操作している情報端末に届けられた

「さすがはといったところだ。SECの友人からこんな情報をもらえるとは驚きだ」

レパーズが操作している情報端末に映し出された融資計画の内容、
そこにはほとんど担保としては機能するとは思えないと言えるほどの酷いものがあった
1億ミッドの融資を受けるために担保として差し出したのはある山の不動産だ。
しかし実際にそこの評価額を計算してみると融資額に対して担保で返済できるのは0に近いものがあった

『ここまで酷いことにSECは驚きよ。セントラルベルカバンクの企業幹部を徹底的にたたくつもりらしいけど』

問題が1つとミカは言った。幹部はすでに抑えているが何も話さない
黙秘権の行使を続行するつもりだ。だがいくら黙っていても数字は誤魔化せない
銀行の財務諸表は重要だ。帳簿に記入されていなければ簿外債務になる
簿外債務を作ると連邦法だけでなく次元世界連合が定めた国際条約に違反する
国際条約に違反するなら大きな問題になってしまう。1つの金融機関の問題だけでは片付くはずがない
大きな制約になってしまう。営業停止ではない。会計監査を受けることが義務付けられる
そうなればさらに大きな不正が出てくるかもしれない

『SECはセントラルベルカバンクを買収したミーミルバンクと連携して財務状況に関して調査をするそうよ』

「SECとミーミルバンクがタッグを組むとは驚きだな」

本来なら金融機関にとってSEC(証券取引委員会)の関係はあまり良いとは言えない
SECは金融機関に不正がないかの調査をしている。仲が良いはずがない
だが今はそんなことを言っている暇などはない。連携して詳細に調べ上げていくことが求められる

『セントラルベルカバンクの不良債権のほとんどが聖王教会関係者らしいわ』

「お決まりの悲劇だな。まぁ自ら不幸を招き入れてきた」

『それは私も同じ意見よ。聖王教会の財務状況もかなり危険水域にあるからなおさらね』

聖王教会債の予算はJS事件前は問題なかった。
足りない場合には聖王教会債を発行することでお金を集めていた
しかし、JS事件後は聖王教会の活動で時空管理局と同じで暗い闇があった
そのため聖王教会の予算の歳入に当たる寄付金などのお金は大幅に減少した
おまけに歳入不足の時に何度も発行してきた聖王教会債の売買で売りがほとんだ。
すでに債務不履行の状態になるので聖王教会債を持っていた投資家は資金を失った
何度も言うが聖王教会債の債券価値は全くない。
聖王教会は今の規模を維持するために必要な資金を集めることが課題だ
だが金融市場を使って聖王教会債の発行はできない。信者からの寄付金も多くは失った

『聖王教会の財政状態は最悪。どうするつもりなのか』

「組織の規模は維持できないなら、縮小するしかないようだ」

ミカはその通りよと返答した。今後の展開は全く想像できない。何が起きるかは特にだ。
マスコミも聖王教会でも時空管理局でも関係者が過去にもみ消した案件について調べて報道している

「マスコミは聖王教会の不祥事を洗い出すために必死だ。1つでも疑惑を見つけると徹底的に調査する」

『そのようね。だからベルカ州警察はかなり忙しいそうよ。セントラルベルカバンクの財務状況は最悪』

すでにセントラルベルカバンクは金融機関として自由に身動きができない状態にあった
だから破綻した。聖王教会が保有していたセントラルベルカバンクの株式を売却
少しでも良いので資金確保のために動いた。だが現実は甘くはない。
むしろ逆効果になってしまったことは事実だ。セントラルベルカバンクの株は1ミッドでしか売れなかった
そんな状態なら資金確保ができるはずがない。この行為によって聖王教会の財政はさらに悪化。
過去に行った様々な金融事案に関する不正行為の捜査が行われている。
聖王教会が違法行為に関与したことで罰金を科すとして裁判所に訴えが増加している
毎日、次々と告訴が行われて審判を受けている状況にある
そんな状況下でまともな資金確保ができるはずがない。崖から突き落とされたような状態である

『唯一の救いはセントラルベルカバンクが保有していた株と国債などの債券。正確な数字はまだだけど少しはあるそうよ』

つまりそれをすべて売却することで少しは資金確保ができるかもしれない。
しかし現実的な話では難しいこともある。問題が多すぎる

「だが時空管理局や聖王教会の関係者が金融機関と契約した数多くのローンが債務不履行になっているのも現実だ」

その影響は多くの銀行や保険会社などの金融機関に出ている。
今後のことを考えるとどうなることか全く想像できない。
すでに破産申請をしている債務者は多い。だからこそ数多くの金融機関は多額の不良債権を抱えている
破産申請によって借金は帳消しになる。だが破産後にはクレジットカードや融資の申請はできない
銀行預金に関しても破産申請時にすべて凍結される。自由に動かすことができる資金はない
破産申請をしているということは資産価値になるような財産は全くない
つまり金融機関は貸し倒れが出るのは不良債権の発生であるのだ

『時空管理局もひどい状態だけど、人のことは言えないわね。聖王教会も』

ミカの言うことは的中している。何がどうなればここまで状況が悪化したのか。
全ては時空管理局の闇がこれだけの大きな事案を生み出している。

「現場は必死なのに上層部は自らの私腹を肥やすばかりのことしか考えていない。ミカ主任の言う通りだな」

『問題だらけの融資をしてきた金融機関もずさんだけど。まぁ彼らも自らの判断能力が甘かった』

そういうこともある。誰しも権力に逆らうことはできないのだから
時空管理局や聖王教会が保有していた数多くの権力は簡単に無視できるものではない
もし権力者に逆らうようなことをすれば大きなパンチを食らってノックアウトだ。
試合で負けるぐらいならまだ良いが、現実は権力者に抹殺されるかもしれない。
そんなことになるのは誰もが避けたいところである

「だが今はそのころに権力者として威張り散らしていた連中は追い掛け回されている。命がけで」

『そうね。破産申請で借金からは逃げることができても犯罪組織の幹部からは組織の情報が漏れることを避けようと必死』

サメと同じで血の匂いが大好きで追いかけれている状態なのだ
逃走している時空管理局の『元幹部』は生き残るためには逃げ続けるしか道はないのだ
結末はわからない


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クラナガン市南区北部区域ビューロー地区2番街 中央パトロール本部庁舎 8階捜査部オペレーションルーム

『SA11から緊急応援要請が出ている。SA11がいる場所にSWATだけでなく、移動できる局員がいれば支援を行え』

中央パトロール管制センターはラジェットがいる場所に向かってさらに局員の追加派遣を指示している

『聖王教会が株式のすべてを保有していた企業の1つであるベルカエアラインの株の取引を一時停止を決定』

マスコミの発表によるとベルカエアラインに関係者に密航や密輸に関与した犯罪者がいるかもしれないからだ
正式に問題が無くなるまでは売買停止を踏み切ることは当然である

『ノースクラナガン港に入港を予定していた石油タンカーの2隻が入港待ちの状況にあると』

2隻のタンカーはタンカーの中でも大きいタイプで、1度に200万バレル~300万バレルを石油を輸送できる
この2隻のタンカーはサーストンペトロリアムが運用しているタンカーである。
目的地はノースクラナガン石油コンビナートで積み荷の石油はノースクラナガン第1石油精製所に供給される。
第1ノースクラナガン石油精製施設は1日に200万バレルの石油精製能力がある。
2隻のタンカーはガラックス島にある油田で採掘された石油が輸送されてきた
ガラックス島にある油田では1日に200万バレルが採掘される。
採掘をしている島にも石油精製施設などの石油コンビナートはある
しかし、1つの島でそれほど多くの石油精製を行ってもガラックス島の石油製品の消費量は大幅に低い。
だから、産出した石油は島外の石油精製施設にタンカーで輸送されることが多い
島には港湾パトロールのがラックス基地が存在している
多くの住民はかなり忙しい。求人数は多いのに人手不足の状態にあるのだ
そのため、島外の仕事よりも高い給与設定になっている
給与水準が一般人よりも高いのはそれだけ危険な仕事である。

「シエル。港湾パトロールは大変だな」

捜査部オペレーションルームの管制官のギブリの言葉にシエルはため息が出るほどに問題だらけよと回答した
いつになったら事態の収拾がつくのか全く予測できない。
石油や液化天然ガスなどの貨物船は大丈夫かもしれない。
だがその他にもコンテナ船などが沖合に30隻以上も入港待ちの状態で待機している
港の入出港は港湾パトロールが運用している海上交通センターがすべてが統括。
貨物船や小型のプレジャーボートなどのすべての船舶はそれぞれの港の海上交通センターの指示に従う
そのように連邦法やクラナガン市法では定められている
もし許可なしで船舶を移動させることは重罪行為と規定されている

「今はすべての船舶の入出港を止めているから問題は大きくなるわね」

しええるは港湾パトロールの指示ではなく、連邦政府からその通達が出ていることを把握していた
首都であるクラナガン市に大きな問題を持ち込まれるわけにはいかない
『大掃除』が終了するまではいつものように簡単な船舶検査で入出港を認めることはできない
『大掃除』とは入出港するすべての船舶に不審物が積載されていないかを全て調べる作業の隠語だ
もちろん犯罪組織やその犯罪組織と関係がある企業の関係者なら意味は分かっている
港に接岸する前に海上で投棄するような方法を使って麻薬や武器を市内に持ち込もうとしている

『聖王教会は緊急の記者会見を再度開催。その中で次元世界連合はあまりにも無理なことを要求していると』

彼らもあせっているのだろう。まさか時空管理局と同じように深い闇があることに気が付いた
少しでも良いから時間稼ぎをしたいと思っているのだろう。だがすでに手遅れになっている。
今後にどのような動きが出るかは全く想像できない

「パンドラの箱からありとあらゆる災いが聖王教会と時空管理局に降り注いでいる。自分たちが作り出したものだから」

シエルの言う通りで自ら隠し続けた闇をパンドラの箱に隠ぺいしてきた
だが現実はそれほど甘くない。今後のことを考えるとすべての闇を明らかにするには膨大な時間が必要になる
真実というのは解明するのが難しいほど問題が膨らんでいくばかりだ
調査をしたところで闇に光を当てるために必要な材料は消されてしまう
真実を暴くことはほぼ無理の状態になるのは明らかだ

「それにしても時空管理局から大量リストラされた退役時空管理局員は苦労するわね」

退職金はほぼ無いどころか、過去に不正に関与していないかの厳しい調査を受けなければならない
全ての調査で潔白であることが証明されるまでは拘置所や在宅軟禁の対応が行われる
自由に外へ出る事すらできない状況なのだ。かつてのように贅沢な生活とはかけ離れてしまう

「俺たちとしては待ってましたと言わんばかりに動きまくっているがな」

ギブリの言う通りだ。
多くの次元世界国政府では時空管理局関係者が関与した可能性がある事件を探り出している
おかげさまで各次元世界国にある警察組織は対応に追われている。
毎日のように事件が次々と発生するのでは当然とはいえるが。
おまけに時空管理局が過去の不正に関与して甘い汁を吸っていた経済事件もある
会計帳簿を主に調べるホワイトカラー犯罪は摘発するには素早さが求められる
帳簿がなくなれば事件捜査は行き詰まりになる。だからこそ何もかも洗い出す。
どんなに『ほこりが被った事件』でもだ

『連邦首都圏連絡会議の中でベルカ州政府は石油や天然ガスだけでなく電力供給網の整備拡充を行うと』

ベルカ州内の送電網は近隣州とは独立した電力送電網になっていた
今は近隣州と送電網を接続することでベルカ州内の発電所が運転できなくなることを想定。
近隣州の電力送電網と接続するための工事が行われている
既にミーミルパワー社がいくつかのいくつを整備している。
ベルカ州政府はさらに拡充することで動いている。
州内だけの発電量で、もしも消費電力が実際より高くなって電力の安定供給ができなくなれば経済に影響する
そうならないためには将来的にはベルカ州内で必要な電力を確保することが望ましい
だが発電施設と送電網の構築には時間と費用が必要になってくる
もしもの状況になってもすぐに対応できるようにベルカ州政府は近隣州と送電網の連結のために動いている
最悪の事態になった時に備えるのは当然のことだ。それが安全保障というものでもある。

『クラナガン市政府は市債の発行について迅速に行うとしています』

『この発表により発行されるクラナガン市債の取引で大きな流れになるかもしれません』

今のクラナガン市政府の財政状況では市債の発行は必要ない
ただしあくまでも金融市場に流れている資金量を一時的に減らすことを目的に発行する
景気過熱を起こさせないために市債を発行。効果があるかは実際に市債の取引が始まらないとわからない

「国内のどの州政府や中央政府。おまけに連邦準備銀行まで巻き込んだ大騒動ね」

「それで?俺たちはどうするつもりだ?」

「ギブリ。私は政治で茶番を演じるつもりはないわ。必要なら強硬手段で対応する」

シエルは連邦大統領を動かすことができる重要人物だ
もちろん職責も重大なので極めて厳しい選択を迫られる立ち位置にいる
問題はできる限り押さえつけなければ事態の収拾がつくのに膨大な時間と労力が必要になってしまう
面倒ごとは避けておきたい。今はの話ではあるが

「とにかくラジェットの安全確保を最優先にしなさい。機動六課組に傷でも生まれたら私達も問題だし」

確かに人命尊重は必要だ。それでも捜査部に。
ラジェットが担当している任務遂行のために協力が必要だ。

『連邦首都圏連絡会議の中で安全保障に関する会議も同時に行われてベルカ州にさらなる部隊の派遣について協議』

『ベルカ州政府は念のための備えを求めましたが、連邦首都圏連絡会議の議決はクラナガン市政府は棄権』

他に参加している州政府は反対した。そのため、増派要請は否決された。
一方で今まで正式な決定がされていたわけではないが、
ベルカ州政府は首都圏連絡会議で安全保障協定の締結が正式に行われた。
これによりベルカ州政府が要請すれば近隣州から港湾パトロールや連邦軍の派遣が容易になる。

『港湾本部から各員へ。クラナガン市内に設置されている魔力精製炉発電所はまもなく発電を再開する』

AMF装置は完全になくなったことを確認した。だから魔力精製炉発電所の運転再開を行う。
クラナガン市内の魔力精製炉発電所の最大出力は2億4000万KWになる。
市内には重油や天然ガスなどの火力発電所があり、それらの火力発電所の最大出力を合計すると2億4000万KWになる
クラナガン市内に存在する魔力精製炉発電所と火力発電所の最大出力は同じだ。
火力発電で必要になる石油系燃料や天然ガスは商品取引所で売買されて変動する
AMF装置が発明されてからは特に石油系燃料や天然ガスなどの商品取引価格は大幅に値上がりした
一方で魔力精製炉発電所で使用される魔石燃料価格は2割ほど値下がりした
値下がりの最大の理由はAMF装置で魔力精製炉発電所からの電力供給に影響が出ることが判明したためだ。
魔力精製炉発電所をベース電源とした電力の安定供給ができなくなったことも大きな要因である。

「クラナガン市内の治安維持に影響が出ないから良いけど問題が発生したら本当に嫌な展開になるわね」

シエルは最悪の状態になることを想定して動くために様々なプランを考えていた
最悪の結果を想定して行動すれば影響が大きくなるようなことでも臨機応変に対応できる

『中央本部から各員へSA11がいる現場に大至急ありったけの応援を手配しろ。動ける人間はすみゃかに行動開始を』

「無事にラジェットがここに来てくれると良いけど」

シエルにとってラジェットは頼もしい味方である。
何かあったとしても問題解決のためには素早く動いてくれる。
捜査部の中では非公式ではあるがラジェットは捜査部の管理部門の統括をしていることが多い
機動六課後の引き受け後は外部で活動することは増加する。
どの程度の増加になるかは実際に行ってみないとわからないことは確かなことである。
今後のことを考えると頭痛の発生源になることは間違いない
時空管理局ははやて・八神達の機動六課組を一時的にでは良いが切り離すことで、
機動六課組に関わっている人物の影響力を少しでも削ることを求めていた。
改革真っただ中の時空管理局では彼らの存在はいろいろな意味で問題になりやすい
だからこそすべてにけりがつくまでは問題が起きるかもしれないところを切り離すことが重要になる

『港湾本部から各員へ。港にコンテナ船を入港許可を順次出す。ただし密輸や密航が行われていないかの確認は厳重に』

コンテナ船では麻薬や銃火器の密輸が行われることが多い
連邦法で大陸を超える貨物船や航空機に積載されている貨物の確認作業をすることが認められている
実質的に言うと積み荷の記録で不審なものがあればコンテナのドアを閉めている鍵を破壊することが許可されている
もちろん大多数の積み荷に異常は確認されていたことはない。ただし、1つだけ問題点が存在した。
貨物検査を行う際にJS事件が起きる前では時空管理局がそれなりに関与していた時があった
その影響で政府機関であっても、時空管理局が強力な権力を持っていたので正しい検査ができていたのか。
そういうことがわからない事案があった。おかげで実際には麻薬などを流通させる要因になっていた
不正に関与した『汚職好きな時空管理局員』がそれなりに存在した。
彼らは犯罪組織から金を受け取ることで彼らをサポートすることもしてきた悪質な時空管理局員だ
今はそういった違法行為に関与した人物の捜査が進められている。
それが次元世界連合全加盟国の法執行機関で。おかげさまでほぼすべての法執行機関は大騒ぎ
対応しなければ案件があまりにも膨大すぎる。ミッドチルダ連邦国内でも大きな騒ぎになっている
事態の収拾がつくにはかなり時間が必要になる。何度も言うが

「コンテナ船が入港してもすぐに積み下ろしされるコンテナの確認作業を行って不審なコンテナは確認しないと」

クラナガン市内に銃火器だけでなく麻薬を持ち込まれるわけにはいかないのだ
簡単に持ち込むことができると犯罪組織に知られたら摘発するのが難しくなる
犯罪組織の資金源になるようなものはクラナガン市内に持ち込ませるわけにはいかない
彼らが組織維持の必要なものは銃火器の取引もあるが、麻薬密売の方が圧倒的に多い
銃火器と違ってうまく隠れて密売さえできれば、犯罪組織にとっては最も効率よく資金を稼ぐことができる

「俺もそれは同感だ。連中だってバカじゃない。簡単に見つかるようなことはしていないだろうがな」

ギブリの言う通りだ。
彼はクラナガン捜査局の前身であるクラナガン捜査部として初めて組織が発足した際には捜査官をしていた
74年に捜査部オペレーションルーム管制官に異動した。クラナガン捜査局員からの信頼も厚い
管制官に着任するにはさまざまなテストを受けなければならない。
例えば機密情報の取り扱い方の知識だけでなく、その人物の生活に何かおかしなことがないか、
それらをすべて問題ないとして審査を無事に通過することができたら管制官の業務に着任できる
管制官に着任した後も定期的に様々な身辺調査を受ける
問題が1つでも見つかったら管制官の職務から外される
管制官の職務から外されている間はしばらくは自宅待機が命じられる。
査察部の調査で問題がないと確認されたら自宅待機は解除されて職務に復帰できる
実際は査察部からの調査を受けている間は給与は管制官の時の給与基準ではなく事務部の事務職員の給与になる
給与の数字は大幅減額されてしまう。ただし日常生活には支障が出ないようになっている
派手な生活をしていなければ問題はない。
査察部は今までに時空管理局からこちらに潜入していた工作員を何人も摘発していた
時空管理局の工作員はさまざまな時空管理局の不正を暴くことに協力する見返りに刑期の短縮を受けている
誰だって刑務所生活するのが短い方が良いと考える
こちらに潜入していた工作員はほぼすべてが司法取引の代わりに時空管理局の不正行為の証言をしている
時空管理局にしてみれば、飼い犬に手を噛まれるのと同じで逆襲を受けている。

『SA11から捜査部へ。こちらに対する攻撃はかなり激しい。情勢はかなり不利になっている』

ラジェットはSWATからの支援を受けていることはわかっている。
しかし彼らが機動六課組の抹殺を簡単にあきらめることはないことも理解している
彼はもっと人員を集めて武装勢力の制圧のために支援を求めていた。
港湾パトロール海兵隊員と連携を取っている。それでもかなり厳しいということは危険水域の状態なのだ
そんなことはシエルはわかっているので、すでにさらなる支援準備をしていた
ラジェットを失うわけにはいかない。
もちろん彼らが警護している機動六課組にも負傷者を出すことは許されない

「SA01からSA11。必要なら最終命令を速やかに実行しなさい。後始末はこっちでしておくから」

『こちらSA11。すでに最終命令を実行中だ!とにかく人員をまわしてくれ!』

「SA01からSA11へ。すぐに特殊部隊の投入をスクランブルさせる」

特殊部隊とは港湾パトロール艦隊が編成している『SEALs』だ
この部隊はどれほど過酷な任務も遂行する特殊部隊。港湾パトロール艦隊の部隊ではあるが。
出動するための任務はどんな場所であっても任務遂行のために活動している
港湾パトロール海兵隊にも同じような特殊部隊が編成されている

『港湾本部から中央本部捜査部へ。SEALsの到着は5分以内』

「こちら中央本部捜査部SA01。最優先で現地到着を要請する」

『ベルカ州西部地方でのクーデター騒動について動きがあったことが分かりました』

インターネットに騒動を起こしている勢力の主張が流されていた
彼らはベルカ州制度を聖王教会が自治を行っていたころまで戻すように要求していた
簡単に言えば権限を返還してほしいのだ。権力というのは誰もが欲しいものだ
それによる蜜の味を知ってしまうと簡単に手放したくない。
ましてや自ら明け渡したのではなく奪われてしまうと

『首都圏電力供給会議で新たにベルカ州と近隣州の間を接続する送電線を確保することに合意』

『送電線の建設工事や維持費は費用負担はベルカ州内に関してはベルカ州政府が行う』

ベルカ州の近隣州の領域に建設される送電網はベルカ州政府と近隣州政府は半分ずつを負担する
送電線の管理と運用は民間企業に業務委託することになっている
これでベルカ州内にある発電所で問題が発生して発電が停止しても影響は最小限に済む

『ベルカ州内の安全保障のために最も重要であるとベルカ州だけでなく近隣州の電力やエネルギー資源供給は重要と』

『ベルカ州はさらに石油パイプラインと天然ガスパイプラインをさらに増強する方向で議論が進んでいます』

ベルカ州内には石油や天然ガスだけでなく、レアメタルなどのさまざまな鉱物資源が眠っている
それだけに州内での様々な鉱物資源開発が行われている。資源開発はかなり急ピッチで進んでいる
問題はそれを州外の工場などに運輸方法だ。ベルカ州は近隣州と道路や鉄道路線の整備は行われていなかった
そのため資源開発はすぐに行えても州外の工場に運び出すための方法は限られる
それだけに問題を抱えているのだ

『クラナガン市政府の上院と下院で審議されていた臨時自動車燃料税の増税について賛成多数で可決されました』

今回、市議会で可決された臨時自動車燃料税法は現在の自動車燃料税の上にさらに課税する税制度だ
すでに自動車燃料税に関して、連邦税で1リットル20ミッド。市税で20ミッドが課税されていた。
臨時自動車燃料税はさらに1リットルで5ミッドが新たに課税される
自動車燃料税は以前は連邦税が主な課税をしていた。クラナガン市政府は5年前から毎年引き上げていた
さらにクラナガン市政府は燃料税を5ミッドを臨時的に課税することを市の上下院で審議されていた
以前は時空管理局が大きくの市議会議員にいたことから少し実引き上げることですら大変だった
今回さらに5ミッドを引き上げる最大の理由は財源確保である。
お金がないなら債券を発行してしのごうというのは連邦法で財源確保関係法でほとんど認められない
そのため、足りない資金を確保する場合は何かの税制度改革を行って財源確保をしなければならない
ちなみにミッドチルダ連邦や多くの次元世界連合全加盟国で自動車の燃料と使用されるのは石油系燃料だ
ただし自動車の排気ガスクリーン装置が搭載されている。
そのため惑星温暖化や環境汚染ガスなどの排出はほぼ無い。
今までは自動車燃料の値段はかなり安値で値動きをしていたが、
一時的な投機マネーなどの取引によって95ミッドまで上昇した。
投機的な値上がりだったこともあり、その後は一気に取引価格が下落。
JS事件までは自動車燃料価格が最も安値であった時は1リットルで85ミッド前後であった
それからは85ミッドから90ミッドのあたりを推移していた
JS事件で石油系の燃料を火力発電所で使用されることが大幅に増加した
おかげで自動車燃料は商品取引所でミッドチルダ連邦だけでなく多くの次元世界国で高値で推移している
増税による財源確保でクラナガン市と近隣州を結ぶ送電設備や石油や天然ガスのパイプラインの建設を行う

『一方で臨時クラナガン消費増税に関しては継続審議にするとのことです』

クラナガン市議会では市税に当たるクラナガン消費税の増税についても審議している
あくまでも臨時の増税案では、5%をさらに上積みになるつもりだが慎重に審理されている
臨時というのはあくまでも一時的な増税だからだ。
今は時空管理局関係で生活支援に必要な資金を一定の財源確保が求められる
これは次元世界連合全加盟国内で同じような状況になっている。
退役時空管理局員が犯罪行為をしないようにするために支援のために増税を行って財源確保が必要になる

「クラナガン市政府も大変ね。問題は山積み。原油先物価格の上昇であらゆる石油製品の価格も上がっている」

シエルの言う通りだ。
しかしこれによりクラナガン商品取引所ではベルカ州で産出された原油の新規調達ルートができたことで、
原油先物価格や商品取引所での売買数も大幅に増加した。今後はさらに増えることは間違いない
だがベルカ州で問題が生じればクラナガン商品取引所のベルカ州産原油先物価格の影響がある
それだけにクラナガン市政府はベルカ州内で採掘された石油や天然ガスの安定供給を重視するのは当然だ
今まではクラナガン市内にはそれほど影響がなかった。
現在は大きな影響を与えることになったので、エネルギー資源の安定供給は極めて重要になる

「おかげで金融機関はかなり先物取引をしているわね」

ワンワールドグループ企業が破綻したことで、多くの金融機関やヘッジファンドなども資金を失った
それだけに失った資金を取り戻すために金融市場で利益を得ようといろいろと取引をしている
今後も大きな値動きを起こすことは間違いない

『連邦準備銀行の議長は記者会見で景気過熱がさらに進むようであれば金融引き締め政策を行うと』

既に連邦準備銀行の政策金利は12%。だが景気過熱を恐れてさらに引き上げを行うことを想定している
実際に行う前に金融市場にそのような情報を流すことで、本格的な介入を行わず対応する
本島に介入政策をするにはそれなりの資金が必要になる
それを避けるために必要によって行われる金融引き締め政策である

「今は本当にあらゆる問題が大量発生していること」

シエルはそう言うと何かあればすぐに連絡するようにギブリに伝えると捜査部オペレーションルームを退室した


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西区中央区域 中央パトロール西分署庁舎 3階分署地域情報センター

ジャスティは地下雨水貯水トンネルで発見された男性遺体について情報を調べていた
身元が分かっていないため、できるだけ早く特定しなければ捜査に着手するのは難しい
もし殺人事件なら、捜査方針が違う方向に進んでしまうと大きな影響が出る
それだけにできるだけ素早い捜査が求められてくるのだ
身元に関してはDNA分析などの結果で得られた情報をデータベースと照合して割り出そうとしている
もし1度でも政府職員や時空管理局や聖王教会の関係者ならDNA鑑定で身元が分かるはず
だが膨大な情報なことから少し時間が必要になってくれる。
おそらく30分から1時間以内には結論が出るだろう。データが登録されていたらの話なら
今はその可能性に賭けるしか道はない。そして1つの問題は身元が分からなかった場合である
身元が分からない場合は捜査は事実上ストップすることになる
事件はコールドケースになり、新たな証拠や証言がない限りは捜査は情報待ちで捜査活動は停止する
ちなみに国内で発生した殺人事件などの重罪行為に該当する犯罪の事項は存在しない
そのため、現在は何万件の事件がコールドケース扱いで情報待ちになっている
JS事件後は身元不明の不審死の遺体がかなりの人数が確認されている
これはとある筋からの情報によると時空管理局や聖王教会とタッグを組んでいた犯罪組織や反政府組織、
彼らは組織を守るために関係があった時空管理局員を抹殺されているという情報が入っている。
彼らにとって以前は時空管理局員と関係があることで裏ビジネスが簡単にできた。
今とは大きく異なることで、犯罪組織の関係者は組織が潰されないように証拠や証人をすべて無にしようとしている
自らの組織を守るためには時には非情なことをしなければならないことは事実だ

「身元を照合できれば良いんだが」

ジャスティは行方不明者リストから発見された男性遺体の特徴などのデータをもとに絞り込んでいた
何か詳細な情報があれば捜査に大きな動きを見せる材料になるのだが簡単に見つかることはほとんどない
クラナガン捜査局が運用しているスーパーコンピュータを使ってもそれなりの時間がかかる
多くの人々がミッドチルダ連邦国だけでなく、次元世界連合全加盟国の国内に住んでいる
人口数は膨大だ。それだけに照合作業も簡単に進む事はない
それでも何とかしなければならないのが現状なのだ

「これほ人が多いと時間がかかる。できれば何か良い方法があれば良いんだが」

ジャスティは愚痴りながらも照合作業を続けていた
今は大量リストラされて退役時空管理局員が問題を起こさないかに警戒心が高まっている
退役時空管理局員は大量リストラされて退職金や退役後にもらえるはずだった年金もほとんど失った
金に困ればどんなリスクが高すぎる事であってもトラブルを引き起こす

「金融機関は今の退役時空管理局員に融資していた金を取り戻そうと」

時空管理局が影響力を持っていた多くの次元管理世界の国内ではかなり派手に動いていた
何度も言うが時空管理局が多くの権力を握っていた頃は簡単に金融機関の融資審査を通過できた
おかげで莫大な金額の融資を受けていた。それがJS事件後に多くの時空管理局の改革により大量リストラ。
給与水準の大幅減額が実行された。さらに時空管理局債を使った債券などの金融商品の取引も完全に息詰まった
実質的には時空管理局債の債券取引価格は全く価値のない紙くずどころではない。
時空管理局債は債券価格は額面に対して実際の価値は数ミッドになった。
時空管理局債を使った債券取引が失敗して、金融機関の財務状況が大幅に悪化
おかげで自己資本比率にも影響が出ている。どうなるかは全く予測できない

『ピーピーピー』

ジャスティの携帯電話に着信が入ってきた。
発信者は中央パトロール本部の経済犯罪課の刑事からだった

『ジャスティ。実は問題が発生した。そっちで確保した遺体のデータをこちらに回ってきてすぐに照合した』

ある人物とヒットしたとのことだ。名前はエバズローク・バレイス。
彼は2年前まではワンワールドバンクの債券取引部門に在籍していた
2年前に突然ワンワールドバンクを退職してある企業に再就職していた
そのデータがジャスティの携帯情報端末に送信されてきた。再就職した企業はある犯罪組織のフロント企業だ
犯罪組織というのは西区を中心に動いているマフィアだ

「ウォレフォルか」

『マフィアにとって金融に関する情報を簡単に手に入れる人材は魅力がある』

特別な経済情報を手に入れる人材を飼っていればメリットは大きい
法的に違法とされているインサイダー取引を行えば多額の利益を手にすることができる
だからこそ金融機関の人間というのは厳しく監視されている。もしインサイダー取引をすれば重罪の扱いになる
当然ではあるが罪も重くなる。下手をすれば終身刑になることもあるのだ
経済事件というのは殺人罪と同じで極めて重い罰がある。基本的には執行猶予はつかない
確実に実刑判決になることがほとんどだ。だからこそ犯罪組織はダミー会社を使って経済犯罪を起こしている

「連中も今は資金不足だからな。まぁ国内の多くの犯罪組織や反政府組織も同じだが」

『連中は失った資金を取り戻そうと活発に動いている。SECとも連携に対応して捜査を行っている』

ジャスティは何か証拠になりそうな情報があったら知らせてくれというと通話を終えた

『犯罪組織と反政府組織はJS事件でかなりの資産を失って組織維持に影響が出ているらしい』

資産を失ったことで麻薬の密造に力を入れていた。あとは銃などの兵器の密売に力を入れている。
すでに次元世界連合に加盟している次元世界国では麻薬や銃火器などの密売事案がかなりの件数になっている
それだけ彼らも追い詰められているとのことだ。

「多くの犯罪組織は時空管理局の密接な関係があったことをまるで証明しているようなものだな」

『それについては同意見だな。以前の時空管理局は首輪がなかった。今は次元世界連合という首輪の影響は大きい』

次元世界連合という国際組織は時空管理局の上部組織だ。
だからこそ現在は時空管理局が過去に悪事があったを調べている

『これはまだ正確な情報ではないが、退役時空管理局員の多くが新たに肉体労働に再就職しようとしているそうだ』

だが問題は経歴だ。時空管理局員としての活動経歴があるだけで差別されている
それが最大の問題だ。再雇用の募集は多い。
だが時空管理局と関係があった人物の雇用はリスクがあるかもしれないと考えるところは多い
こういった問題が退役時空管理局員の再雇用にあまり良い感情を持っていない
もちろん大量リストラされた退役時空管理局員もプライドがどうしても邪魔をしてしまう
しかし、お金がなければ生活が成り立たない。
今は時空管理局員だった頃は毛嫌いしていたあまり人が行いたくない仕事をする覚悟がある
それでも企業の採用担当部門は慎重な態度をしている
リスク管理をするのは企業にとって当然のことではある
だが犯罪者ではない人物を差別することは次元世界連合に加盟している全次元世界国で禁止されている
各国は微妙な国際政治情勢を見極めながら判断していくしかない

「その情報はどこが把握している?」

『FBIや時空管理局犯罪捜査局にも通達済みだ。FBIはこちらで分かった情報について共有したいとのことだ』

FBIも今は大急ぎで捜査を行っている。
一見すると小さなトラブルであっても裏で何かがつながっているかもしれないからだ
特に時空管理局や聖王教会の関係者によるトラブルとなると余計に

『FBIの友人と情報共有で得たものだが、マフィアのフロント企業がかなりの多額な損失を抱えているとな』

「時空管理局債やワンワールドグループ企業の社債や株式などの資産価値がなくなったことの影響だろ」

犯罪組織もフロント企業が金融商品の取引をして表向きに必要な資金を得る必要があるのだ
そういった組織にとって表向きはフロント企業による『表向き資金獲得』がなければ組織運営に大きな影響が出る
だからこそフロント企業に関してはミッドチルダ連邦政府は常に監視している。
そんなことは犯罪組織や反政府組織もわかっているので慎重に金を動かしている
しかしJS事件の影響で多額の資金を失った。取り戻すためにあらゆる『ルート』で金融市場で取引をする

『これは金融機関の関係者から入手した情報だが。時空管理局債と聖王教会債の債券取引はすべて停止した』

ただしこれは聖王教会が自ら聖王教会債を買い入れたからだ
聖王教会債の取引価格は額面金額と比較すると紙くず同然である
だからこそ聖王教会は発行していたすべての聖王教会債を数千ミッドでほぼすべてを回収できた
時空管理局債も同じような状況だ。ただし時空管理局債のほぼすべてを買い入れたのは次元世界連合だ
次元世界連合という飼い主が現れたため首輪もつけられて時空管理局は好き勝手にできなくなった
何度も言うが権限を失ったということは今まではさまざまな理由で価値はあったがそれが無くなった
だからこそ時空管理局関係で数多くのトラブルを引き起こしているのだ
次元世界連合は民主政治というしっかりと人々が選んだ政治家によって多くの次元世界の政府が機能する
時空管理局に無理な要求がされなくなっただけでなく、
今まで無理なことばかりを要求していたことが問題を大きくしていた。

「面白い話だな。だが問題が1つある。そうだろ?」

『さすがは捜査部捜査官だ。話が分かる。連中は証拠をすべて消すために活発に動いている』

証拠をつかまれたらマフィアなどの犯罪組織は連邦法の犯罪組織対策法により徹底的に調べられる
そうなったら組織はつぶれることは間違いない。復活させるには膨大な時間とコストが必要になる
追い詰められたら何を仕掛けてくるか想像できないのだ

「証拠を消すためなら手段は問わないだろう。何をするか調べないとな」

そっちの方は任せていいかとジャスティは伝えるとこちらでカバーできる範囲で対応すると返答があった
通話を終えると彼は大きなため息をついた。
これで死亡した人物の身元と殺す可能性がありそうな犯罪組織や犯人候補のリストが作れる
問題はこれからで、どうやって捜査をするか。
犯罪組織が絡んでいるなら慎重にのんびりと捜査をするわけにはいかない
彼らは必死になって証拠隠滅のために動く。組織を守るためならたとえ何の罪もない人物も抹殺する
証拠がすべて消される前に集めなければならない。まずは金融関係の情報を中心に情報収集。
さらにウォレフォルと関係がある人物や企業に関する情報も必要だ
集めることができるならどんな些細な情報であっても見逃すわけにはいかない

「こちらに情報が流れていることはすでに分かっているはずだ」

ジャスティはそういったことを独り言のようにつぶやくとため息をついた。
今後の捜査についてマフィアには鉄の掟がある。
絶対に何があろうと組織を裏切れば死という名のの制裁が待っている
マフィアは仲間であるなら必ず組織に忠誠を誓えという関係である

「組織犯罪課と連携して対応するしかないな。あそこは市内に拠点を持つ数多くの組織犯罪を扱っている」

組織犯罪課はギャングやマフィアだけでなく、反政府組織などテロ行為を行う危険な組織の監視もしている
そのことから犯罪組織の情報を数多く持っている。
犯罪組織が関係があるなら彼らとの連携が必要になる。
問題解決のためには時には少し強引な方法を選ぶことが重要に。
ジャスティはすぐに中央本部組織犯罪課のリーダーをしているブリジット・アート主任刑事に連絡した

「ブリジット。最近のウォレフォル関係で何か動きはあったか?」

『こちらでも確認作業を今しているところだ。だがこれだけははっきりしている。連中は資金不足になっている』

どこも時空管理局債やワンワールドグループ関係の債券や証券などの金融商品の取引に失敗。
多くの犯罪組織や反政府組織は多額な資金損失を抱えていた。
今は再び犯罪活動に必要な資金確保のために活発に動いている。
金融市場での取引で損失を生むきっかけになった関係者を抹殺していた

「犯罪組織ですら問題を抱えているならどんなことを使っても失った資金を取り戻そうと確かだな」

『ああ。多くの犯罪組織は資金不足になっている』

犯罪組織や反政府組織にも自らの立場は属する組織を保つためにかなりの金が必要になる
その情報を聞いてジャスティは問題が大幅に増加することを察した
犯罪組織や反政府組織が活発に動き出すと裏社会で大きな影響が出てくる
トラブルが増えるのはあまり良いことではない。

「マフィアやギャングが派手に動くことを想定して、対応するしかないな」

『もうこっちで監視体制を強化している。少しでも不審な動きがあれば即座に対応できるように』

ジャスティはブリジット・アートに気を付けるようにと伝えて通話を終えた
こちらの監視が強化されていることはわかっているはず。
それでも行動してきたら大きなトラブルの発端になる。これは憶測ではない。
確実にそうなるはずだ。マフィアやギャングは組織を守るためにはどんなことでも仕掛けてくる
彼らは組織にトラブルを持ち込んだ構成員には死という名の制裁が待っている
しかし組織のために『良いこと』をしてきた仲間に関しては守ろうとする
どんな手段を使ってでも。必要なら法執行機関に対して徹底抗戦の構えで攻撃を仕掛けてくる
そんなことでこちらが捜査をやめると思われたら、犯罪組織にとって都合がよくなるだけだ。
必要ならどんなことでもして犯罪組織を潰すために活動する
それがクラナガン捜査局の存在意義なのだ。罪のない人々を守ること。

「CIAと連携できるか話し合いが必要だな」

反政府組織の情報となると連邦捜査機関だけでは対応できない
ミッドチルダ連邦でクラナガン捜査局とほぼ同レベルの高い諜報能力を持っている組織
ミッドチルダ中央情報局。つまりはCIA。CIAと連携することは捜査部では頻繁にある
国内だけでなく他次元世界国でも起きている国家を超えたトラブルなら現地の法執行機関と連携
捜査を進め続けていくことも多くある。多くの次元世界国でクラナガン捜査局をモデルの法執行機関が発足
かつては時空管理局が担当していた事件などの捜査権限をすべて返還させて捜査を続けていく
多くの次元世界国で時空管理局が権力を握っていた頃に不正を起こしていたことを証明するかのような案件がある

「連絡してみるか」

ジャスティはCIAの知り合いに連絡した
簡単に情報という名のアイテムはもらえないが、国内の治安維持という点では一致している
少しくらいなら何か情報を明かしてくれるかもしれない。
絶対とは言い切れないが。彼らがどの程度の手の内を見せてくれるかはわからない

『元気そうだな。ジャスティ』

「ディルス・カビーナの方はどうだ?」

『俺たちの仕事は年中無休で忙しい。だが上は喜んでいることは事実だな』

CIAでも時空管理局関係で調査活動を最優先で行っている
再び時空管理局が暴走することが無いようにするためというのが表向きの理由。
実際の本音で言うともう2度と好き勝手にさせない。
簡単に言ってしまえばCIAにも時空管理局関係者が潜入していたことがわかったためである
彼らに対して調査活動がかなり激しく行われている。
問題が確認されたら勾留して捜査活動に切り替える。

「どれくらいの潜入諜報活動員がいたのかはわかっている?」

『今のところは100人前後だな。まだ詳細な情報は上がっていない。この手の調査は時間が必要になる』

内部調査をするのは簡単なことではない。問題が複雑すぎるとなおさら。
分かっているだけでCIAに時空管理局に属する者が100人もいたことが問題だから

『ベルカ州政府の発足でこっちも苦労している』

ベルカ州は以前は聖王教会が政権を保持していた自治区だった
だがJS事件後はベルカ自治区の政権はベルカ州政府が発足したので移管された
州内にある州知事や州議会選挙では聖王教会よりの政党は議席を得ることはできなかった
州議会はもちろんだが、州内の郡議会や市議会も発足。今年の3月に州内の自治体議会の選挙が行われた
聖王教会は新たに政党を立ち上げて選挙戦に臨んだ。
結果は聖王教会にはあまりにも受け入れることができなかった
最も多くの議席を得たのは聖王教会が自治権を保持していたころから聖王教会に対して敵対行動をしていた勢力だ
彼らは聖王教会による自治ではなく州内に居住している人々による民主政治を求めていた
ベルカ州政府などが発足した際に事件などに関与していた者は法執行機関に自首した
また勢力が保有していたすべての銃火器などの兵器をすべて州内の法執行機関に提出した
そして彼らは独自の政党を立ち上げてベルカ州内で最も多くの議会議席を獲得した
彼らが発足した政治政党はベルカ自由党だ。
ベルカ自由党は州内のさまざまな自治体の議会で過半数の議席を獲得
現在は州内で居住している人々に平穏な生活ができるように政治政党として活動をしている
もちろん犯罪行為に関与した者は正式な裁判で審判を受けている。もちろん刑務所に収監される者もいる
逮捕者の中には聖王教会関係などの情報提供を行うことにより司法取引が成立しているケースもある

「CIAは聖王教会について徹底的に諜報活動をしているのだろ?」

JS事件前までは聖王教会にも権力があったので、CIAやFBIの権限が届くことはほぼ無かった
今は聖王教会の現役職員や関係者が関わったとされているトラブルの調査をしている
必要ならトラブルを起こした人物の身柄を押さえることが重要で、
素早い捜査と調査を行うことが求められる。

『もちろんだ。すべての真実を明らかにするまで調べるのが我々の任務だ。それはクラナガン捜査局も同じだろ?』

クラナガン捜査局の権限が行使できる場所はミッドチルダ連邦政府の政府機関と異なっている。
しかし、必要であれば国内のあらゆる地域にクラナガン捜査局の関連組織が行動していく。

「ほかに問題や懸念されていることはあるか?」

『いくつかある。最大の問題は魔力爆弾だ』

魔力爆弾とは魔石という鉱石に含まれる魔力の濃度を高濃縮して製造される兵器だ
魔力爆弾は核兵器と同じやそれ以上の威力を持つ大量破壊兵器の1つだ
核兵器と異なり放射能汚染がない『クリーンな大量破壊兵器』と言えるものだ
次元世界連合の全次元世界国が加盟している国際条約で魔力爆弾の製造と運用は禁止されている
ただし研究そのものは国際組織である国際魔力エネルギー機関で監視されている
魔力爆弾の製造や運用が確認されたら国際条約で制裁が実行される
魔力爆弾という兵器の製造と保有は禁止されている。
しかし魔力精製炉で使用される低濃縮魔石燃料の製造や研究だけでなく、
魔石などの魔力精製炉発電などの研究を行う場合には国際魔力エネルギー機関が常時監視している
もし少しで不穏な状況になっているのではないかと疑惑が出た場合は調査団が編成されて査察が行われる
問題になりそうな事案が確認されたら、該当する次元世界国政府は様々な調査を受けなければならない
もちろん国際条約によって制裁が科されることもある。

「ICBMで首都攻撃があるかもしれないということか?」

ICBM。大陸間弾道ミサイル。次元世界連合全加盟国では保有することは禁止されている
射程5500kmまでの中距離弾道ミサイルの保有と運用が国際条約で認められていない
ちなみに弾道ミサイルによる攻撃についても国際条約で一定の制限がある
次元世界連合が発足した時に加盟国には武力行使による国家間の問題解決は原則認められていない
あくまでも問題解決のためには次元世界司法裁判所で平和的解決が大原則になっている
そのために次元世界連合では全加盟国に対して様々な国際条約があるのだ

『疑うのが仕事だからな。当然の対応だ。国内で大きな問題を起こさないようにすることが重要だからな』

「具体的に魔力爆弾を製造や保有している反政府組織はわかっているのか?」

『おそらく北イーストミッドチルダ大陸だということはわかっている。詳細な報告はこれから入ってくるだろう』

イーストミッドチルダ大陸は北アメリカ大陸と南アメリカ大陸を合わせた呼称である。
ちなみに北イーストミッドチルダ大陸には時空管理局による強引な行動を認めない武装勢力、
彼らが事実上の実効支配している場所は存在した。
その武装勢力はJS事件の前までは時空管理局と激しい戦闘が行われていた。
現在は連邦政府と停戦協議などが進められているが一部の過激派はそれを認めようとしていない
そういった過激派とは今も状況的に好ましくはない。
今後は州政府になってしっかりとした民主主義が生まれることになる

「首都攻撃とは大きく出てきたな。時空管理局にべったりしていた連中が考えそうなことだ」

『それは確かだな。こちらも情報収集などの進めている。人工衛星を使って監視もできている』

魔力弾頭を搭載したミサイルの場合は発射前に準備をしなければならない。
弾頭の魔石コアに少しずつ魔力波長が流れ出してくる。その結果は人工衛星から探知できるのだ
発射1時間前にはほぼ確実に人工衛星によって高出力の魔力粒子の探知ができる
問題は潜水艦に搭載される弾道ミサイルだ。あれは海の深さで通常よりも魔力コアの波長をごまかせる
それでも発射20分前にはほぼ水深数メートルまで浮上しなければ発射できない
それにより弾道ミサイル防衛で大多数は抑止行動を素早くとれる
しかし時には問題が生じることもあるので、常に監視することが極めて重要だ
通常、魔力精製炉発電所で使用される魔石燃料の濃縮度は20%までの物である。
一方で軍用の空母や潜水艦の魔力精製炉にある魔石燃料濃縮度は20%以上。
もちろん常に魔力精製炉の管理を適切に行って炉心融解にならないように運用されている
少しで高濃縮魔石燃料の取り扱いを間違えると魔力爆弾と同じようになる
それだけに慎重な運用が高濃縮魔石燃料には必要なのだ。

『人工衛星を使って魔力波長の観測を行っている。もしこの情報が正しいならすぐにわかる』

「そうだな。国家の安全保障に影響を与える前にそういった勢力の武装解除が必要だ」

『連邦海軍・海兵隊・空軍はすでに動いている。それにCIAやNSAも』

すべての連邦政府機関がトラブルが起きる前に問題を踏みつぶそうとしている
問題があれば軍事的選択を取り制圧を実行する。弾道ミサイル攻撃を受けるわけにはいかない。
攻撃される前に叩き潰すしか安全性を守ることはできない。

「連邦政府機関がそこまで動くとは大きな問題になりそうだな」

ジャスティはまもなく自衛権行使のための戦闘行為が始まることを分かっていた
今後はどのようになるかは全く想像することができない。
彼も今後の状況について、予測することはかなり難しいと理解していた
どのような結末になるかはすべて終わらないと

『ベルカ州のクーデター騒動だけでも大きな問題だ。連邦政府高官は必死になっている』

「政府高官の仕事はデスクワークが多いが。権力があることはイコール、その命令無いように責任がある」

それにトラブルが発生したことで負傷者や死者が出れば責任も取らされる
ただの懲戒処分だけではなく、法的責任を取らされる。下手をすれば刑務所行きになる

『上は現場のことを分かっている。正しく指揮命令系統が無いと部隊運用は機能しない』

「それに現場の状況を素早く把握。それに対応する命令を発令する。そうだろ?」

まったくもってその通りだとディルス・カビーナは回答した
その後もいくつか情報確認を終えると通話は終了した

「問題はこの事案の管轄権だな」

ウォレフォルはクラナガン市西区を拠点にしているマフィアだ。
つまり連邦法である犯罪組織対策法のブラックリストに登録されている
令状なしでウォレフォルやフロント企業の情報は調べることができる
マフィアも金が必要なのだ。金がなければ麻薬や武器の密造密売はできない。
もちろん犯罪組織の中には銀行などに資金を預けないところはある。
それでは組織運営は簡単に進む事はない。必ずどこかの金融機関に別の名義の口座がある
犯罪組織の維持のためにある程度の資金が金融機関になければ、組織の維持と規模の維持はできない
組織犯罪は捜査部単独では難しい。組織犯罪課と連携して対応することが通常な手順だ
今回は西分署と連携して捜査を行うことになるはず。まだ正式に話をしていない

『首都圏連絡会議で石油・天然ガス・石炭などのエネルギー資源供給について議論が行われました』

『クラナガン市政府と近隣州政府は共同声明でエネルギー資源の安定供給を最優先政策にすると公表しました』

「国内の多く犯罪組織や反政府組織の行動で何の罪もない人々を守るのが俺たちの仕事だな」

ジャスティは今後の捜査方針について協議をするため組織犯罪課に連絡した。西分署の組織犯罪課に。
あそこなら西区内に存在するあらゆる犯罪組織や反政府組織の情報があるだろう
西区内で活動している犯罪組織や反政府組織などの情報を把握している
彼はすぐに西分署組織犯罪課の刑事に連絡した
すると電話の相手である組織犯罪課の刑事は耳が良いですねと
西分署の組織犯罪課の友人である男性刑事は話してきた

「どうやらウォレフォルが飼い犬を始末し始めた。意味は分かるな?」

『もちろんだ。連中は資金を隠すことに力を入れている』

犯罪組織対策法で銀行預金などの資金凍結がされるまでに隠すようにしているようだ
銀行預金などの資産凍結が実行されたらもう1度手にするのは難しい
だからそれまでに資金になる資産を売却し始めている
おまけに証拠や証人も消すだろう。すべて急がなければならない

『ワンワールドバンクに預金していた資金をすべて引き出している。ネットで開設した銀行口座だからな』

ネットバンキング機能を使うことで簡単に銀行預金のお金を他の金融機関に移動させることはできる
西分署組織犯罪課の刑事によると動かしたとされる銀行口座の金額は数百億ミッドにもなる
それだけの預金をワンワールドバンクが破産申請を出す直前、
ワンワールドバンクにあった預金の資金をいくつかの金融機関を経由することで動かしている
それでも一部の資金は失った。だからこそ犯罪組織や反政府組織は失ったお金を取り戻そうと
いろいろな方法を使って資金確保を行っている。非合法な方法を使っていることも想定される
つまり、こちらが捜査を開始を知れば本格的な証拠隠滅を実行する

「どの犯罪組織もJS事件で莫大の資金を失ったわけか」

『そうだな。おかげでとばっちりはこちらだ。マフィアやギャングは資金確保の行動をしている』

それも時にはかなりな過激な方法をしていることもある

「犯罪組織も規模を維持するためには資金が必要。だからこそフロント企業を使って資金を確保するわけか」

『そんなところだ。できるだけ素早く対応できるようにするつもりだが。問題は簡単にできるかだ』

犯罪組織であるマフィアはフロント企業を使って資産運用をしていた
そんなことは誰もが知っている。問題はその資産を失ったことだ
失ったのならそれ同じ金額の資金確保に動くのは当たり前である
それらの企業活動を監視することは極めて重要になってくる

『証券取引委員会とのオンライン会議で聞いた情報だが。マフィアはかなり激しく金融市場での取引をしているとな』

「どこも同じだな。組織を維持するためにはあらゆることをしなければならない」

金融市場で取引を行うことで合法的な資金集めだけでなく、
麻薬や銃火器の密造密売を行っている。もちろんマフィアは自らが関与していないという態度である
それだけにいくら連邦法の犯罪組織対策法を利用するのは難しいことは多い
その時、ニュース速報が入ってきた。

『ミッドチルダ連邦政府はベルカ州内の民間航空機に飛行禁止とすると発令』

『連邦空軍と港湾パトロール飛行隊の共同航空管制区域に指定することを決定したということです』

ミッドチルダ連邦国内の航空管制は連邦航空局の管轄だ
連邦航空局が航空管制できるのは民間航空機だけだ。連邦軍の航空管制はそれよりも上の扱いになる
群が航空管制権を握ると連邦航空局の管轄から国防省などに移管される
あるいは港湾パトロールの管制業務に移管される

「戦争の始まりか」


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ベルカ州中央地方 ベルカ市郊外 港湾パトロールベルカ基地 飛行隊待機エリア 第2番スポット

ミカは無事にベルカ基地に到着していた。
しかし基地内では多くの港湾パトロール飛行隊員や海兵隊員が忙しく動いていた
既に武装勢力が掌握しているベルカ州西部地方で活動を始めている
基地では戦闘に必要な支援物資の輸送のために隊員たちは忙しく動いていた

『スピリット6からベルカ基地管制へ。あと2分でベルカ基地飛行場に到着する』

スピリット6は戦略爆撃機のB-2だ。ステルス爆撃機の1つだ。
港湾パトロールの中でもかなり珍しい戦略爆撃機。全部で8機しか配置されていない貴重な存在。
それが作戦に参加するということは極めて危険である証だ。
どんな戦場になるかは簡単に予測できる。
時空管理局の規模縮小後、次元世界連合が発足して初めて血まみれの戦場になる
既定路線であることは彼らが出動準備をしている段階で分かる

「もう少しでB-52の爆弾の積み込みが終わる!燃料などを確認しろ!」

基地飛行場では多くの機体整備担当官たちが忙しく作業をしていた
ミカは邪魔にならないように基地飛行場エリアから出るとベルカ基地管制センターに向かった
まずは情報収集が必要と考えたからで、何が起きるか事前に把握することが求められる
B-52は大量の爆弾を積載できる爆撃機だ。搭載可能の爆弾は[Mk 82通常爆弾]を100発搭載できる
全ての積載している爆弾を投下したら、どれほど地上にひどい空爆の風景が誕生するかはわかる
それだけに慎重な扱いが必要なのだ

『ベルカ基地管制から各員へ。これよりベルカ州西部地方で展開しているクーデター勢力に対して空爆を開始する』

『爆撃機は爆弾を積載完了後に速やかに連絡していつでも発進できる用意を行え』

「忙しいみたいね。まぁ相手があれなら当然かもしれないけど」

クーデター勢力がベルカ州西部地方の電力供給や通信回線を停止させている
携帯電話などの無線中継基地は今はバッテリーで機能している
バッテリーの消費量はかなり多いことから通常よりバッテリーでの運用できる時間は低下する

「ミカ・ミズノ大尉!」

ミカは港湾パトロール艦隊で訓練を受けて様々な作戦に参加した。
港湾パトロールでも中央本部捜査部に配置される捜査官はすべて港湾パトロールで鍛えられなければならない。
捜査部捜査官は機密情報を扱うことになるので情報管理の観点から人脈作りもかねて鍛えてきた。
港湾パトロールで鍛えられてしっかりとした成績を残さなければ捜査部で正式配属にならないこともある。
ミカは軍事作戦での戦闘経験などが評価されて大尉の階級になった
新歴74年に捜査部へ戻った。捜査部に戻ると予備役という形になる。
港湾パトロールの領域で活動する場合、大尉の階級で活動する

「相変わらず元気ね。あなたは」

ミカに声をかけてきたのは港湾パトロール海兵隊に属する兵士。
女性だけで選出されている特殊部隊に配属されているのだ。特殊部隊に属していることは機密事項になる
だからこそ安全が担保されているところ以外ではその手の話はしてはならない
あくまでも海兵隊員の通常戦闘部隊の兵士として話をすることが求められる

「状況はかなり危険よ。先遣隊からの通信で分かっている限りでは。念のためいろいろと手をまわしたわ」

手をまわしたというのは諜報機関を利用して情報収集することを示している
問題がある部分に関してはすべて収集することが求められてくる
そうでもしなければ大切な仲間の生命に影響する。
常に最新情報を確認、的確な指揮命令が求められている
指揮官を務めるなら覚悟を持って指揮命令が必要だ

「あっちの見解は?」

「カンパニーのご機嫌は良くないわ。彼らも時空管理局や聖王教会関係で忙しい」

つまり人員をあまり展開していない。問題ではあるがいろいろと苦労が多いのだから当然だ
ちなみにカンパニーとはミッドチルダ連邦大統領の直轄した連邦組織。CIAだ
彼らは様々な組織に潜入して情報収集と工作活動を行っている

「本領発揮ということね。クーデターを起こしている勢力に関する情報は?」

「少なくても800人ほどよ。大半は魔導師だが、銃火器で武装している。肉弾戦で対応するようね」

一方のこちらはAMF装置を取り付けた空爆を行う。
まずは空れらがいる勢力の拠点を中心に的を絞って
その後は空挺部隊を投入させて一気に抑え込む。
徹底的に狩りをする時間の始まりを知らせる鐘が鳴り響く

「ベルカ州政府発足してクーデター勢力を構成する聖王教会過激派は自分たちから利権を奪われて怒りの炎の中ね」

ミカの言葉に女性兵士は全く困ったものだわと回答した

「それで海兵隊はどうするつもりなの?必要ならこちらから手配をするけど」

ミカの質問の彼女は今のところは彼女はミカの護衛役を務めると回答した
問題が生じた時のためにも。それにミカ・ミズノという名前を聞くだけで手を引く関係者は多い
政治的な駆け引きはミカにはお手の物だ

「あなたにご迷惑をかけるわけにはいかない。もし面倒ごとを押し付けたことが知られたら恨みを買いそうですし」

「その心配は必要ないと思うけど。とりあえず問題が起きそうな兆候があればすぐに呼んでくれていいから」

「この情報はどう見ます?」

ミカに渡された報告書には会うことが記載されていた

「ベルカ州西部地方にある2か所の魔力精製炉発電所は完全に機能停止にあることは間違いない」

西部地方には2か所の魔力精製炉発電所が存在している。
この2つの魔力精製炉発電所の合計発電出力は最大1億2000万KWになる
ベルカ州内には4施設の魔力精製炉発電所があり、魔力精製炉発電所の合計発電出力2億4000万KWになる
つまり西部地方にある2施設の魔力精製炉発電所は州内にある魔力精製炉発電の合計の半分の出力がある
今は西部地方では電力供給は停止状況だ。おそらく変電所などが機能停止状態にあるのだろう
それを考えるとすぐに停電を解消するのは難しいかもしれない
ちなみに西部地方には石炭を燃料とする火力発電所が1施設
太陽光発電所が1施設。水力発電所が2施設存在している。
現状では西部地方にあるすべての発電所からの電力供給は行われていない
さらに問題なのはベルカ州西部地方からの送電などの電力供給を受けることができない
影響は州の他の地方にも出ている。西部地方にある多くの発電所が機能停止になっている
西部地方の発電所からの電力供給がないため、一時は他の地方でも停電になりそうだった。
幸いなことに近隣州の発電所から電力供給を受けたことで州内の全域停電にはならなかった

「こちら側に影響は?」

「トラブルは確認されていない。それとE-767が配置されているからレーダー探査は続行中」

ベルカ州の州を囲むように存在する山脈には数多くのレーダー施設が設置されている。
それらのレーダー施設は外部電源が途切れも問題なく運用できるように自家発電とバッテリーの両方も設置済み
つまりレーダー運用には問題はない。観測された情報は衛星通信で共有されている
港湾パトロールだけでなく、クラナガン捜査局や連邦行政組織とも連携して共有。
ベルカ州内の問題を大至急片付けなければ、さらに大きな事案になるかもしれない
そんなことになる前に問題を解決しなければ国内だけでなく、連邦政府の外交問題になるかもしれない
危険な状況を生み出さないためにも、早急に対応するように動くことは極めて重要だ

「できる事ならこんな事態にならないことを願っていたけど、簡単に事を進まないわね」

「CIAはどこまで絡んでいるのか聞きたいですか?」

ミカは彼らは高みの見物の態勢に入っていることを理解していた。
成功したらこちらは言い。だが彼らもミスになればベルカ州政府の脅威になる
カジノで賭けをするというなら誰がこんな危険な賭けに参加する者はほとんどいない
リスクが高すぎるから。ミスをすれば立場的な影響は大きい

「カンパニーは美味しいところを横取りするかもしれないけど。私がいたらどんな仕返しに合うか証明してあげないと」

「ミカ大尉に狙われたらさぞかし酷いことになるでしょうね」

捜査部捜査官は必要ならどんなことをしても売られた喧嘩は買っていく。
たっぷりと利息を吹っかけて回収し終えるまで追い詰めていく

「衛星通信に問題は?妨害工作が行われていたら問題になる」

「今は妨害行為は確認されていない。衛星回線を利用した通信に支障はないけど。それもいつまで持つか」

いつかは妨害行為が行われることは簡単に予測できる
通信妨害を行うことで部隊指揮命令系統に混乱を生む材料としては十分だ
妨害が行われる前にすべての反政府組織の制圧をする

「問題がこれ以上こじれる前に決着をつけるしかないわね」

「同意見です。それで何をします?」

「EAMの準備よ」

ミカの言葉に本気でそのつもりがあるとと話した。
通称:EAM。正式には緊急行動指令のことを示している
港湾パトロールが保有している弾道ミサイルの発射に必要な指令だ
弾道ミサイルは港湾パトロール艦隊の弾道ミサイル搭載魔力精製炉型潜水艦と港湾本部基地に配備されている
最大射程は5000kmになる

「本来なら私たち捜査部捜査官は軍事的オペレーションに関与するのは良くないけど」

弾道ミサイル発射の権限があるのはミッドチルダ連邦大統領だけだ。
大統領の承認が無い状態で弾道ミサイル発射が認められるはずがない
ただし大統領に進言できる立場にある人間なら交渉次第で引き出すことができる
ある意味では強力なコネ。つまり人脈が無ければできないことだ

『ピーピーピー』

ミカの携帯電話に着信が入ってきた。発信者は非通知になっていたのでわからない
だがこのタイミングで非通知でミカに直接連絡を取るなら政府高官の可能性が高い

『元気か。ミカ』

「エドワーズ。あなたからコールとは珍しいわね」

電話の発信者はエドワーズ・メイウッドだ。彼は大統領副補佐官をしている。
主に扱っているのは国家安全保障問題に対応するための部門に。
彼は以前は港湾パトロール安全保障局で任務に就いていた
だからこそ国家機密に関する情報も扱っている

『こっちの状況は最悪だ。大統領は外交政策で必要な政治的立場を守りながら連邦軍を動かしている』

大統領になればそれは当然である。今後のことを考えるとなおさらだ
ミッドチルダ連邦は次元世界連合で唯一の常任理事国だ。
次元世界連合安全保障理事会で次元世界連合の総会で選出される安全保障理事国とは違い、
よほどの国際政治に大きな悪影響を与えない限りは常任理事国という立場を失うことはない
ただし、次元世界連合総会で三分の2の次元世界政府加盟国、
および、安全保障理事会の過半数以上の賛成が無ければはく奪されない
だが常任理事国というのは極めて重責な立場だ。
国際政治というダンスホールで華麗に踊ることが求められる

『連邦海兵隊はベルカ州の北と西から進軍中だ』

もちろん連邦海兵隊だけでなく爆撃機や早期警戒管制機だけでなく戦闘機も動き出していると
状況は次々と悪化していることは間違いない。

「それで戦闘の指揮命令系統は誰が掌握しているの?」

『連邦軍の最高司令官は大統領だ。だがベルカ州はクラナガン捜査局の活動カバー範囲。連携しながらになるな』

聖王教会は何度も軍事侵攻を控えてほしいという声明を出している。
だがそんなことは簡単に承認されないない。
おまけに次元世界連合総会や安全保障理事会で再審理されても結果は言うまでもない。
間違いなくこちらの自衛権行使を認める。すでに始まりの鐘は鳴っている

「連邦政府も大変ね。次元世界連合安全保障理事会で唯一の常任理事国であり、時空管理局と聖王教会本部がある」

その立ち位置を考えると大きな問題になる

『ベルカ州政府高官の話ではかなり圧力を受けているとのことだ。今は何とか時間稼ぎをしている』

つまるところ。問題はさらに引き起こされる可能性が十分にあるということだ
そんな危険な状況になる前に抑え込まないと大不祥事に発展することは間違いない

「それであなたはどうしたいの?」

『大統領は外交政策に影響が出ないように対応するとな。まぁ簡単に事は進まない』

「ミッドチルダ連邦政府のさまざまな政策に影響する。クーデター騒動を起こしている連中を捕まえないと」

当たっているかしらとミカが言うとその通りだと回答してきた
面倒ごとを早く片付けるために必死であることは間違いない。
できるだけ素早く問題解決しなければ大きなトラブルをさらに起こしてしまう
問題が山積する前に解決しなければますます状況が危険になることはミカだけでなく、
関係者なら誰もがわかっている。

『これはまだ正式発表された情報ではないが、次元世界連合で聖王教会の再査察が行われると』

「これで何度目の内部監査になることだか」

次元世界連合は発足してから時空管理局や聖王教会に対して何度も査察をしている
その査察はかなり厳しい者であり、少しでも異常な点が確認されたら査察対象組織の運営は一時凍結される
凍結が解除されるには改善策と再度の査察を受けてゴーサインをもらわないといけない
簡単に話は済むわけではないので最低でも1か月は活動停止になってしまう

『不正を再び起こさせるわけにはいかないことは当然だと思うが。少し過剰すぎることは当たっている』

「それだけ次元世界連合の加盟国は時空管理局や聖王教会を信用していない証でもある」

信頼関係があればこれほど何度も内部査察が行われるはずがない
だが何度も行うということはそれだけ信用されていない。

『捜査部はお荷物を背負うらしいな。時空管理局は対応するには難しいからパージされた連中を』

「こればかりは仕方ないわ。それに想定プランの1つでもあるから」

『さすがはクラナガン捜査局の上層部だけでなく、多くの政府行政機関にコネがあるミカ主任だ』

要請されたら簡単に断ることはできない人物なことだけはあると通話相手は言った
ミカに要請されたらよほどの巨費をする根拠がない限りは難しい
だからこそ捜査部の幹部の任務を務めることができる

「私達はクラナガン市だけでなく近隣州に逃亡した犯罪者の追跡が認められている」

中央パトロールが管轄している警察権限は基本的にはクラナガン市内になっている。
しかし近隣州にクラナガン市から逃走した犯人の追跡は連邦法と近隣州政府が認める特別法が存在する
その法律は連邦議会でも審議されて、すでに成立している。
[中央パトロール本部捜査部捜査官権限法]という法。
内容は中央本部捜査部捜査官に対して連邦捜査機関の捜査官と同じ扱いになると規定されている
つまり管轄を超えて捜査はできる。港湾パトロールの基地がある州に関してはこの連邦法の適用外。
元々港湾パトロールの基地がある州政府とは特別な協定がある。
しかしこの連邦法によりクラナガン市の近隣州だけでなく国内ならすべての州で捜査活動ができる
その分責任も大きくなるため、時には慎重な判断をしなければならない
また政治情勢などについても把握しなければ難しい職務だ

『だがクーデター騒動を起こしている連中はそれを狙っている可能性がある』

「わかっているわ。罠にはまるつもりで仕事をしているのだから」

『本気で言っているのか?死ぬかもしれないんだぞ。ミカ主任を死亡させたら多くの友人から非難の嵐だ』

ミカを殺すきっかけを作ったとされたら政府高官だけでなく、あらゆる行政機関の職員を敵にする
そんなリスクを負いたくない。危険すぎるのだから
それにミカのバックにはシエル首席捜査官。さらにはユウ・ミズノ捜査長官も控えている
もし彼女に何かがあればクラナガン捜査局の幹部が一斉攻撃してくることは誰の目から見てもはっきりしている

「私は安全第一よ。ミスはできるだけしないようにするけど、もしもの時はあらゆるサポートができるように準備を」

『了解した。できるだけ早めに対応できるようにする』

ミカはそこで通話を終えた。これで根回しは済んだ。あとは行動あるのみだ
さらに彼女はあることを依頼した。それは空爆を許可しろというものだ

「ミスをすれば不名誉除隊よ」

「私達は平和を守るために存在するの。必要ならどんなコネを使って安全確保を行う」

ミカはそう言うとすぐにあることを指示した。それはかなり危険な指示である。
もし失敗すればミカだけの責任で片付くことではない。彼女はさらに携帯電話でシエルに連絡した。
隣で一緒に歩いている女性海兵隊員に伝えたことと同じことを知らせた

「連邦政府を納得させて上層部を動かすしかないわね」

『この件が公になれば大騒動に発展するけど、それなりの覚悟はあるのでしょうね?』

「国防省の友人に連絡して対応してもらうつもりはあるわ」

国防省、今年になって編成された連邦行政組織だ。
ミッドチルダ連邦を守るために存在する。基本的には連邦空軍・海軍・海兵隊の行政部門を担当している
港湾パトロールで研修を受けた者が数多く配置されている。
それだけにミカの友人も数多くいて、今も交流は続いている。
戦争になるような大きなトラブルを未然に防ぐために国防組織などとは常に『裏口』は開けておくのだ
裏口を使って情報交換を行うことで、戦争や内戦になることをできるだけ防ぐことは極めて重要だ

『私から国防省に連絡して部隊を派遣してもらうわ。それと港湾パトロールに連絡して情報共有を最優先にと』

シエルはそう言うと通話を終えた。ミカはこれで段取りは出来上がりは順調だと感じた

「さて、パーティーの時間ね」

ミカはベルカ州に来て行う捜査をしながら軍事的オペレーションにもかかわらなければならない
かなり忙しいことになることはわかっている。それでも無理を何とか通すのが仕事なのだ
問題解決のためにはあらゆる方法を取るべき名状況であり、必要なことでもある



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クラナガン市中央区中央区域 セントラル地区2番街 連邦大統領府(ホワイトハウス) 大統領執務室

「大統領。国防省はいつで連邦海兵隊の部隊展開が行えることを確認しました」

アンナ・ランシング大統領は国家安全保障問題補佐官のマディソン・ビュローからの言葉にため息をついた

「戦闘が始まりを告げる鐘がなり、勝者はどうなるか。人的被害は最小限にしたいところね」

連邦軍の兵士に戦死者が出るようなことはできれば避けたい。
だが現実では戦闘で必ずと言っていいほど戦死者は出てしまう

「ベルカ州西部地方に向かって連邦海兵隊が展開しています。総兵力は3000人」

空軍も派遣されている。早期警戒管制機であるE-767が合計で2機も派遣されている
おまけに最新鋭で連邦空軍に配備されているF-35が20機派遣されている。
現在は主にF/A-18Eがかなりの数を保有している。F/A-18Eは連邦海軍が空母艦載機としてメインで運用
連邦空軍はF-35やF-22を主軸とする戦闘機運用を行っている。
戦闘機の製造はかなり急ピッチで行われている。
港湾パトロール飛行隊からはベルカ基地に配備されているB-52がベルカ州西部地方に向かっている
機体にはかなりの数になる爆弾を搭載している。
もし爆弾が投下されたら草木もなくなるほどに燃え盛るだろう

「次元世界連合の承認は得られているのかについて問題はないの?」

アンナ・ランシング大統領の質問に補佐官たちは問題ないですとか回答した

「作戦を開始する」

彼女の言葉を受けて連邦軍と港湾パトロールの部隊が活動開始した。
これからの数時間がまさに勝敗が分かれる決断を数多くさせられることになる
過酷な道であっても決断について責任を取りか覚悟をすることが必要になる。
それが連邦軍最高司令官なのである。大統領の命令を受けて連邦軍と港湾パトロールの部隊は動き出した

「この件をマスコミを通じて発表を」


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中央パトロール本部庁舎 10階クラナガン捜査局オペレーションルーム

クラナガン捜査局オペレーションルームとは8階にある捜査部オペレーションルームと同じ性能を持っている部屋だ

『ベルカ州への軍事作戦が開始されたことから金融市場では通貨ミッドの取引量が大幅増加』

『通貨ミッドは売りや買いなどの取引で一進一退の状態であり、まさに綱渡りの状況下にあります』

クラナガン捜査局の行政トップであるユウ・ミズノ捜査長官はその報道を見てため息をついた
ようやく落ち着いてきた安定した世界情勢という波が急激に荒波の状態に変わった

『次元世界連合はクーデター勢力側に対して武装解除のために必要な武力行使を容認すると発表』

『ベルカ州で産出された石油や天然ガスのプイプライン供給が停止の可能性があると』

『ベルカ州からパイプラインで供給される近隣州の州商品取引所で原油や天然ガスが高値で取引されています』

ベルカ州とクラナガン市は石油や天然ガスのパイプラインがミーミルエネルギー社が設置して運用を始めた
それによりベルカ州内で産出される原油や天然ガスがクラナガン商品取引所で新たな金融取引商品になった
ベルカ州でのクーデター騒動によって州で採掘されている石油や天然ガスは高値で売買されている

「反政府組織がもしかしたら金融犯罪をこなうかもしれないね」

クーデターによる混乱の中でうまく金融情報を注視しながら売買をしている
なにか大きな陰謀があるかもしれない。そういったことを考えればいろいろと方法はある
石油や天然ガスだけでなく様々な金融市場での売買で不正行為を行う
いわゆるインサイダー取引を行うことで組織が必要としている資金確保を行う

「長官。連邦財務省に連絡をしますか?」

ユウ・ミズノ捜査長官の安全保障問題補佐官を務めているイーサ・フィヨルの言葉にその必要はないと告げた
既に連邦捜査機関などの数多くの法執行機関が動いていることはわかっている
こちらが余計な妨害工作などと言われかねないことを伝えると大きな問題になっていく
状況悪化は抑え込むために行政組織が管轄を超えての連携プレーが重要になる
こちらにミスが起きることは絶対に許されることではないのだから

『為替市場では通貨ミッドの取引が一進一退の状況にあります』

『今後のミッドチルダ連邦でのトラブルがどのように影響するのかわからない状況です』

連邦準備銀行は必死になるだろう。通貨ミッドは為替市場での流通量は極めて多い
ましてや国際貿易の取引される基軸通貨でもある。通貨の急激な変動は大きな影響になる

「クーデターの影響がどれくらいになるかは想像したくないね」

インサイダー取引などの経済犯罪が発生しやすい状況になっている
もちろん金融市場の監視をしている連邦法執行機関は入念に調べている
少しでも異変があれば即座に捜査が開始されることは経済犯罪を行うつもりだと

「SECとは密に連絡を取り合って金融市場の取引で不審なものがないか確認作業を進めて」

SEC。正式には証券取引委員会である。金融市場でのすべての取引について捜査権限を持っている
基本的には単独で動くことはない。他の法執行機関と連携捜査で対応。

『聖王教会は記者会見を開き、クーデター騒動を起こしている反政府運動を行っている組織は関係ないと』

『聖王教会の財政はかなり危険な領域であることは間違いありません』

聖王教会の財政状況は破綻寸前の状態にある。
元々聖王教会の財務状況は寄付などが主な資金源としていた。
今まで何度も教会で使用される予算を組み立てる際に、寄付金だけでは足りないことが過去に何度かあった
そのたびに聖王教会債という債券を発行して金融市場から資金を確保していた
何度も言うようだが今はその手は全く使えない状況になっている。
だからこそ組織体制を大幅縮小することが求められた。
実際に聖王教会の組織規模は大幅縮小された。さらに次元世界連合という国際組織が発足
次元世界連合は聖王教会の活動について調査を行った
そのため数多くの不正行為を行ったことを確認。あまりに多かったことが各国の不信感を買ってしまった
聖王教会に対する様々な活動について、次元世界連合が調査を行っている
今後のことを考えると、疑惑がすべて解消されるまでは調べる
それこそが国際機関は組織運営が求められる

「証券取引委員会も忙しいね」

「長官もこのことは予見していたのでは?」

イーサ・フィヨルの言葉にもちろん予測はできていた

「金融市場では株や債券の取引は大幅に増加することはわかっているよ」

だから証券取引委員会は常に金融市場を監視。小さな異常と思われる取引があればSECはすぐに調査を開始
金融事件では早期対応と捜査開始が最も重要である。時間が経過すればするほど真実が分からなくなる

「犯罪組織も反政府組織もかなりの資産を失って大変だね。こちらとしてはあまりい展開にはならないのは残念だけど」

資金を失えばそれを元に戻すために密輸や密航だけでなく、
人身売買などあらゆる犯罪を起こすことは想定される
それだけに慎重な対応が必要になってくる
その時、クラナガン捜査局オペレーションルームの管制官が通信の受信を伝えてきた

「長官。大統領から通信です」

「ファイアーフォールを複数展開して回線を開けて」

もしかしたら偽通信の可能性もあるため、安全確保のために必要だ

『あなた方の出番ということです』

「こちらはすでに港湾パトロール飛行隊と海兵隊を展開中。いつでも戦闘可能です」

『それはいい話ね。もう1つの課題については?』

大統領は機動六課組が中央パトロール本部捜査部に一時的に在籍するリスクを懸念していた
当たり前ではある。捜査部は様々な国家機密情報を扱うことが多い
だからこそ『身辺調査』は常に定期的に査察部などのクラナガン捜査局内にある諜報機関が監視している
少しでも問題が発生すれば捜査部捜査官が保有している権限の執行は認められない
重責であるが上の職務であることは間違いない

「港湾パトロール安全保障局で入念に身体検査を実行中です。はやて・八神は聖王教会教皇との関係についても」

今の聖王教会のトップははやて・八神の友人であるカリム・グラシアだ
こちらの情報が聖王教会に漏れてしまえば大きな損害になる
それだけに常に監視下に置くことは当然の判断である

『機密情報アクセス権について、審議は行った結果は?』

機密情報を扱うことが認められるためにはある試験を受けて合格。
さらにクラナガン捜査局で行われるある会議で承認を得ない限りは不可能だ
その会議の名称は『情報安全保障監督委員会』と呼ばれている
この委員会のメンバーはクラナガン捜査局の上層部幹部で構成されている
機密情報の取り扱いを審議するための委員会である
この委員会で審議されて承認が得られなければ機密情報へのアクセス権を得ることはできない

「こちらでも今も審議が行われています。しかし機密情報へのアクセス権はしばらくはないと」

『その件はあなた達に任せるわ。でも状況に変化があればすぐに報告を』

了解ですとユウ・ミズノ捜査長官は言うとアンナ・ランシング大統領との通信を終えた

「ベルカ州での問題が拡大しないように対応を。それと情報はリアルタイムの物をこちらに回すように指示を」

ユウ・ミズノ捜査長官の命令を受けて捜査長官付きの補佐官たちは動き出した
オペレーションルームの管制官もすぐに情報端末を操作して最新情報の入手を開始した

『クラナガン市議会の下院聖王教会及び時空管理局監視委員会で聖王教会の監視強化について審議が行われています』

下院聖王教会及び時空管理局監視委員会は同じようなものがクラナガン市議会だけでなく、
ミッドチルダ連邦議会や連邦を構成する州議会にも存在している
常に聖王教会と時空管理局の活動を監視している。
違法行為が1つでも見つかれば、即座に聖王教会や時空管理局の部隊運用の中止を命令できる
JS事件の前は時空管理局と聖王教会の影響力は極めて強かった。
今は全く影響力はない。というよりも時空管理局や聖王教会の組織規模の大幅縮小で大量のリストラがされた
大量リストラされた退役時空管理局員の数があまりに多い。
本来なら多額の退職金と年金を受けることができた。
しかし受け取れるはずだった年金運用を委託していた金融機関の破綻によって、
大量リストラされて生活費に困っている退役時空管理局員は多すぎるほどだ。
犯罪行為をしても生活のために必要なお金を集める。
生活に困ればどんな危険なことをしてくる

「マスコミの動向は常に監視。少しで危険な方向に向かう報道があれば最新情報をすぐに報告して」

ユウ・ミズノ捜査長官はオペレーションルームの管制官に指示すると退室した
彼にはこれからやらなければいけない作業が大量にある。
事前に一定の量を処理することで素早く指揮命令できる

「長官は大変だな。いつも政治的駆け引きをさせられる」

クラナガン捜査局オペレーションルームの管制官の言葉にイーサはそうだなと伝えた
今は問題を早期に解決して武装勢力を抑え込むことが最優先課題だ
組織のトップが責任を取るために存在するとイーサは話した
彼の言う通りで、組織のトップは様々な責任を負っている。
部下に責任を取らせるのではなく、組織のトップが責任を取る覚悟がなければ職務に就くことはできないはず
だからこそ必要に応じて、適切な行政組織の運用が重要になる

『次元世界連合安全保障理事会に対してベルカ州西部地方でのクーデター騒動について独自で解決したいと』

『安全保障理事会は聖王教会の国際組織としての活動は現時点では容認できないと全理事国で一致』

それに聖王教会の活動も認めていないとする合意がとられた
聖王教会が教会敷地外以外で活動する場合は訓練などの一部を例外としているが、
基本的には次元世界連合に対して報告するとともに安全保障理事会での承認が必要になっている
国際組織として透明性がある組織作りが求められているのだから当然である

『ミッドチルダ連邦準備銀行は政策金利について急激な引き上げで金融引き締めをしてきました』

『通貨ミッドはそれに連動する形でミッド高で取引がされています』

通貨ミッドがミッド高の状況にある最大の理由は連邦準備銀行の政策金利が12%になっていることだ
次元世界連合の全加盟国の名でか最も政策金利が高い。
そのため通貨ミッドの取引は多い。それに通貨ミッドは国際貿易などで使用される基軸通貨。
基軸通貨の発行国であるミッドチルダ連邦準備銀行の政策金利が上昇すれば高値で取引されるのは当たり前だ
おまけにJS事件の影響で時空管理局債や聖王教会債を保有していた金融機関では債券取引価格は暴落。
紙くず同然の状態になったことは致命的である。
銀行などの金融機関は失った資金確保のために必死になるのは当然である

「ベルカ州での安全保障の問題がどこまで拡大するか。あまり想像したくないことは事実だな」

クラナガン捜査局オペレーションルームの管制官の言葉にイーサはその通りだと話した
1つの州だけの問題なら良いのだが、現実には簡単にうまく進むことなどありえるはずがない
何が何でも安全保障の脅威になるような事案が発生したのなら適性の手順と審議会を州議会や連邦議会で議論をする
必要であれば連邦軍などの軍事部隊の投入を行うことで問題を解決することが求められる
必要であるならある程度の敵側の犠牲者が生じてしまうのは当たり前であり、
負傷者や死者が出ない軍事活動は存在するわけない。
戦闘行為を行うなら必ず負傷者。あるいは戦死者が出てしまうのは当たり前のことだ
理想ですべて解決できることなどあるはずがない。どこかで生じてしまう。
組織のトップはその責任を取るためにいるのだ。
ただ部下に責任を押し付けて私腹を肥やす行為そのものが大きな問題である
責任を取るために行政組織の幹部は存在する。必要なら自ら矢面に立たされることも覚悟しなければならない
そういったリスク管理ができていない。
様々な汚職といった事案を握りつぶしてきた組織とは自浄作用が全く機能していないと言える

『サンディ・マウント市長はクラナガン市の新たな都市計画の立案を都市開発庁に要請したことを発表』

『道路や各種ライフラインの建設に必要な資金を今回発行するクラナガン市債で賄うと』

「連邦政府もベルカ州政府もそうだが、クラナガン市政府も忙しい1日になるだろうな」

これからどんなトラブルがクラナガン市に出てくるかは全く予測することはできない。
もしかしたら最悪な状況になってしまうことも想定される。
最悪の事態とは今はクーデター騒動を起こしているのはベルカ州だけ。
少し状況を読み間違えるとクラナガン市政府行政管区内でも問題が発生することが想定される
そんなことになればクラナガン市だけの問題ではなく、ミッドチルダ連邦政府や次元世界連合にも影響が出る
トラブルの連鎖というのは増加すると大変なことになる

『連邦準備銀行は金融引き締めのために必要であればさらなる金融引き締め政策を実施すると発表』

問題は引き締めのために政策金利を引き上げることだが、
過剰に政策金利を引き上げると通貨ミッドがミッド高になる
そういったことを考えると引き締め政策では政策金利だけでなく、
連邦準備銀行が保有している多くの次元世界国が発行した国債の売却を実施。
国内の通貨供給量が減少すれば、時間はある程度は必要になるが刑期過熱は抑えることができるかもしれない
本当にどこまで効果があるかは実施してみないことには判断は難しい

「状況はかなり危険になることは間違いない」

クラナガン市政府が新たに都市開発をするということは多くの利権が絡んでくる
JS事件までは時空管理局の横やりが大きくあった。
つまり時空管理局の意向が大きく影響する企業が道路や各種ライフラインの建設を行っていた
現在はそれらの企業は様々な賄賂や汚職だけでなく、競争入札を行いたかった行政府は多かった
しかし時空管理局からの横やりで、表向きは競争入札であった。
実際は他の企業がいくらで入札に参加するかの情報を時空管理局よりの企業に情報を漏らしていた
時空管理局と関係があった企業の多くは経済犯罪などで捜査対象になっている
そういった企業の幹部の多くは拘置所に収監されている。
裁判が行われるまでは拘置所で拘置されている。
しかし時空管理局の規模が大きすぎたことによって、時空管理局に物資を納めていた企業は極めて多い。

「決着ができるにはかなり時間がかかるだろうな」


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南区東部区域 クラナガンハイウェイ12号線(外環状線) 反時計回り路線

アルシオーネはラジェット達が立てこもっている東区西部区域フランクリン地区に向かっている

『中央本部から各員へ。SA11は東区西部区域フランクリン地区のパトロール事務所で立てこもり、警護が継続中』

『現在も武力衝突が激しく行われている。万が一に備えて緊張感を持って対応せよ』

彼女はその無線を聞いて大きなため息をついた。
戦闘を行っている武装勢力は機動六課組を殺すために動いていることは間違いない

「状況は最悪ね。できれば早くけりがついてくれると助かるけど」

『SA11がいる地区事務所では銃撃戦が激しく展開中。応援に入るときは警戒態勢で対応せよ』

つまり防弾チョッキなどを着用して警戒しながら銃撃戦に参加するようにとのことだ
最近はマフィアやギャングは活発に活動している。何度も言うが資金確保のために手段を選んでいない

『中央本部からSA11。現状は棄権であることから臨機応変な対応を認める』

臨機応変な対応とも手段を選ば胃で対応することを求めている

「SA33から中央本部。こちらは緊急走行でSA11を支援するために向かっている。マスコミを通じて警戒情報を」

警戒情報はマスコミを通じてこちらが許可するまで屋内避難するように指示する時に出される

『港湾本部から各員へ。ベルカ州西部地方の一部で無線通信中継基地局を経由しての通信が数か所停止した』

ただし、停止したのは民間通信会社の無線通信基地局だけ。
クラナガン捜査局の無線通信基地局は今のところは問題ない
民間通信企業が運用している無線通信基地局と異なり長時間の運用は当然である
それにクラナガン捜査局は地上にある無線通信基地局が停止しても衛星回線を使うことで問題なく通信ができる
地上の各種無線通信基地局がダウンしてもクラナガン捜査局に影響があるわけない

『ベルカ州内に設置されているクラナガン捜査局が運用している無線通信基地局に異常はない』

『ただし、衛星回線を通じて通信できるようにスタンバイを』

通信ができな来れば、部隊運用に大きな影響が出ることはクラナガン捜査局に属する者はもちろんだが、
あらゆる行政機関も同じである。通信の運用ができないなら指揮命令ができるはずがない
特に軍事部門ならなおさらだ。例えば国防に関わる指揮命令ができなくなれば

『中央本部からSA11。どんな手段の行使を容認する。徹底抗戦で対抗せよ。敵勢力に死亡者が出ることを容認する』

「かなり危険な状況になることは間違いないわね」

アルシオーネは自分が運転しているSUVを緊急走行でラジェットの場所に向かっている
まだ現地到着には時間はかかることもわかっている。できるだけ急いで現場に向かうことは重要だ
そもそもラジェットが担当している護衛任務は極めて重要なのだ。
警護対象者に負傷者や死者が出ればこちらの能力は低いことを証明するようなものだ
どんな敵勢力であっても我々は絶対に許さないとする明確な意思が求められる

『クラナガン市政府は郊外地域での新たな都市開発を行うことでクラナガン市債を発行』

『この発表の中で一部メディアではクラナガン市政府には豊富な備蓄積立金があるのになぜ市債を発行するのかと』

クラナガン市はミッドチルダ連邦の首都であり数多くの積立金を基金としている
最も多い積立金はクラナガン財政基金だ。現在2000京ミッドを保持
この基金の使用目的は主に財政赤字になった場合に増税をすぐにすることができないことから、
一時的に政府運営に必要な歳出を確保するためである。
ちなみにクラナガン市政府の昨年度の歳出は60京ミッドだ。
クラナガン市は首都であり、国内だけでなく国際政治の拠点。
おまけに最も規模の大きい証券取引所や商品取引所などの金融市場取引所が設置されている
この財政基金の積立金はクラナガン市上下議会での承認が必要になっている決まり。
つまり簡単に動かすことができないことの証なのだ。
財政赤字になりそうな時に市債の大量発行をしないでするために存在している
時空管理局の権限が強かったまでは彼らはクラナガン市政府に対して多額の資金を提供するように要求していた
すべて0回答で出すことはできなかったので、ある程度は歳出していた。
それでも時空管理局は満足していなかった。何かにつけて資金提供を何度も要求。
今は時空管理局の予算は次元世界連合総会と安全保障理事会の専任している。
総会と安全保障理事会の両方で承認が得られなければ認められることはない
時空管理局はJS事件までと異なり、大幅なコストカットをしてきた
次元世界連合はそれでもまだまだ削るところはある。
そのため今後も時空管理局の財務状況には厳しく注文すると発表している

「SA33からSA11。今急行している」

『こちらはしばらくは反撃をするなどで対処は可能。しかし長時間での対応は難しい』

しかし時間的余裕はないと。
アルシオーネはもう少し耐えてと無線で伝えるとアクセルペダルを踏み込んだ
時間的余裕がないなら、カバーできる人員確保は最優先でしなければならない

『中央本部から各員へ。SA11のカバーに入ることができる人員はすみやかに援護を命令する』

『東分署から各員へ。SA11はかなり危険な状況下に置かれている。援護する場合は状況把握に注意せよ』

ラジェット達はかなり危険な状況にあることはわかっている。
もしかしたらとんでもない状況になることも想定される。
至急対応が必要になることは当然の指揮命令なのだ

『港湾本部から中央本部へ。SA11の支援のために海兵隊員を派遣中。到着は3分以内』

「港湾パトロール海兵隊が本気を出してきたのは、大きなトラブルがこれ以上発生させないためね」

『第9海兵特殊作戦軍からSA11へ。まもなくこちらの部隊が到着する。戦場投入後はすみやかに制圧任務に入る』

さらにEAMの発令がされることも通達された。
EAMは緊急行動指令であり、最優先で対応する事案だと示している
弾道ミサイル発射の際にもミッドチルダ連邦大統領が発令する指揮命令時もEAMが発令される
アルシオーネは無線通信を聞きながらも情報収集をしていた

『クラナガン市と近隣州の電力需給バランスは魔力精製炉発電所の出力が徐々に回復したことで問題はないと発表』

『また同様のトラブルが再度起きるような事態になる前に迅速に対応するとしています』

クラナガン市と近隣州などの電力送電網はミーミルパワー社が保有運用している
もちろんこの送電網は他の発電を専門に扱う電力会社でも、
連邦法で定められている送電網利用料金を支払えば利用できる
送電網を保有している電力会社は発電専門の電力会社の送電網の利用を自らの私腹を肥やすために、
拒む事や送電網の利用料金の根拠のない値上げをしてはならない
そのようにミッドチルダ連邦法で独占的な立場は許されないと定められている。
送電網使用料については送電網を管理運用している電力会社が適正な料金であること、
設備の運用費用などの送電網管理コストから料金を出す。
もちろん使用料金も連邦政府機関や州政府に審査を求めて許可が出ることで改定される

『連邦首都圏電力供給会議でクラナガン市政府と近隣州政府は電力の安定供給のために政策を行うことを検討中です』

今まで魔力精製炉発電所が主要な電源になっていた。
しかしAMF技術が開発されたことで火力発電所や水力発電所の建設を進めている
今まで魔力精製炉発電に頼り切ってきたことが大きな足かせだ。
各政府は補助金などを出すことで火力や水力だけでなく、
地熱発電所などさまざまな発電施設の建設と運用を急いでいる。

『今回の声明を受けて電力会社の株価は大きく上昇。また建設会社の株価も連動するように上昇』

これも当然のことだ。電力会社は建設会社に建物の建設を任せる
だからこそ建設会社などの株価も電力会社から工事が発注されることから証券取引所では買い注文が多い。
おかげで高値で取引されていた。

「時空管理局の権力一極集中は離れているけどとばっちりを食らう身としては辛いわね」

『時空管理局から大量リストラされた退役時空管理局員は多くの次元世界国で再就職が難しいケースが続発』

『次元世界連合は差別行為は許さないとしながらも、退役時空管理局員が過去に犯罪を起こしていないか捜査すると』

ちなみにその捜査は時空管理局犯罪捜査局が行うことになっている
単独で行う場合もある。しかし実際には捜査活動には次元世界国の法執行機関と連携して行う

『時空管理局長に就任したジョセフ・ボナパルト局長は時空管理局の健全化を行うために様々な改革を実施』

『すでに時空管理局員の大量リストラだけでなく、時空管理局員の給与を大幅削減』

その他にも様々な給与カットを行うことで人件費の大幅カットに繋げると記者発表をしていた

『また今後も継続的に現役時空管理局員のさらなるリストラを行うことを発表しました』

『しかし現役時空管理局員からは急激な給与水準の低下についてすぐに動くことは難しいとしています』

それは当然である。かなり大規模になる時空管理局員のリストラや給与水準の引き下げで大きく人生は変わった
そんな人はあまりにも多すぎるほどに存在している

「時空管理局関係の問題が拡大して、その影響が一般社会に出ることは避けたいけど」

退役時空管理局員の多くは退役後に受け取ることになっていた年金運用で運用を任せていたが、
金融機関の資産運用で大幅赤字になっている。
そのため退役時空管理局員の退役後の生活は極めて厳しいことになっている。

『退役時空管理局員の多くは自己破産を申請している状況にあります』

『この一斉自己破産による影響で多くの金融機関ではかなりの不良債権を抱える事態に』

『多くの次元世界国政府は金融機関が多額の不良債権を抱えることで自己資本比率に問題が出ることを懸念』

必要であれば公的資金の注入や1年以上の中期や5年以上の長期融資を行うことで金融市場の安定化に必死だ
もし混乱が生まれるような状況になれば、多くの次元世界国では経済的な影響は大きくなる
また長期にわたって影響が出るため、金融市場の安定化は極めて重要になってくる

『自己破産を行った企業や融資対象者が大幅に増加していることで、一部の銀行などでは債務超過になる可能性が懸念』

『各次元世界国政府は国内の金融機関の財務諸表を常に監視するとともに、公的資金の注入を検討中』

銀行を含む金融機関の破綻はその金融機関の規模によっては大きな影響が出る
多くの次元世界国内で活動している金融機関となるとなおさらだ。
必要に応じて支援体制を作っておくことで、各次元世界国内で金融不安になる影響度を最小限になる
もしも破綻への道になることが確実になるなら、それなりの用意をすることが求められるのは当たり前

『次元世界連合の全加盟国政府では大量リストラされた退役時空管理局員の再就職支援に最善を尽くしています』

ただし、退役時空管理局員の中には犯罪行為やJS事件までに様々な権限を行使をして利益をむさぼってきていた。
しかし今はそれらの行為に関して多くの次元世界政府の法執行機関が調べている
経済犯罪が乱発していたことが大きな影響になっていたことは間違いない
インサイダー取引などで捜査が進められている。
不審な事案の件数があまりにも膨大であることから簡単に捜査によって解決になった件数は多くない。
おまけにその事案の関係者が死亡していることも数多く発生している。
対応する法執行機関は苦労しているのだ

「まぁ、再就職に成功してもホワイトカラーの職業に就くのはかなり時間が必要ね」

ホワイトカラーというのは簡単に言えば事務労働などの中心とした職業についている者を指す
多くの企業では時空管理局に所属していたり、関係があった人物は機密情報を持ち出されることを危険視している
肉体労働を示すブルーカラーの作業員しか再就職の道はない
現時点では選択できる方法は限定されてくる。多くの退役時空管理局員はプライドばかりを高く持っている。
でも現実的なことを考えるとそんなプライドなどの感情を無視することが求められてくる

『中央本部からSA11。警戒態勢を厳重にして対応を。何が何でも機動六課組の護衛任務を遂行せよ』

その無線交信を聞いてアルシオーネは大きなため息をついた
いつも無茶な要求ばかりをしていることはわかっている。
機動六課組の保護についても極めて重要だ。何度も言うが絶対にミスは許されない
何が何でも彼らを中央本部に移動させることが求められている

「SA33から中央本部。SA11がいる現場に大至急応援を投入できるだけ派遣を」

『すでに派遣命令は発令している。ただし市内では別件のトラブルが多数発生している。少し時間は必要になる』

その返答にアルシオーネは大きなため息をついた。
敵は本気で攻めてきている。今度は何を仕掛けてくるか全く予測することはできない
最悪の事態に備えて行動することが求められているが、対応には苦慮している

「少しは騒動が減る方向に進んでくれると助かるけど。現実は難しいわね」

ラジェット達の安全確保に最優先で対応することは最も重要である。
敵対勢力はまだまだやる気があるのは、今までの無線交信内容を聞いてわかっているのだから
それだけに今はルールなどを言っている暇はない。必要ならどんなものでも利用しなければいけない

『中央本部から各員へ。SA11への支援を強化するように対応を』

トラブルでごまかすつもりかもしれないけど何を仕掛けてくるか
本当に迷惑な話である

「ラジェット達は最悪の状況にあるわね」

急いで包囲網を敷かないと危険すぎる。
敵対勢力がさらに勢力を増加させると最悪のことも検討しなければならない
常にリスク管理が求められるのが法執行機関の職員の仕事である
警戒については常にリスク管理しなければ、状況はますます危険になることは誰でもわかることだ

『中央本部から各員へ。クルック地区内でのテロ計画のタレコミを確認。SA11への支援も重要だがテロも同様に扱え』

アルシオーネはあまりの無茶な要求にため息をついた。
今やクラナガン市内は火薬庫と同じ。いつ爆発するかもしれない危険地帯のど真ん中である
今の市内の状況を考えると対応をするのは難しい。それだけに安全保障政策は極めて重要だ
連邦政府はもちろんだが、ミッドチルダ連邦を構成している州政府でも安全保障について議論が必要だ
1つに安全保障と言っても犯罪だけではなくエネルギー資源の確保や電力の安定供給
あらゆることについての政策で安全保障を念頭に入れて議論することは最重要課題になっている
JS事件までは時空管理局が安全保障を守るために動いていた
もちろん人々が安心できる社会にするために活動していた者もいれば、不正行為をしていた者もいた。
おまけにチェック機能が完全にあったわけではない状況なら当然である

「時空管理局や聖王教会関係のトラブルが多すぎるわね」

アルシオーネは今はまさにクラナガン市内とベルカ州内は完全に火薬庫にいるのと変わらない
少しの判断ミスが火薬庫にある『爆弾』に火をつけるようなのだ
細心の注意が必要になることはわかっている

『クラナガン捜査局から全局員へ通達。市内に拠点を持つすべてで犯罪組織の監視を強化せよ』

『クルック地区分署から各員へ。クルック地区と近隣で警戒態勢を強化。トラブルを未然に防ぐように』

彼女はますます状況が悪くなってきたと考えながらラジオ放送を聞いていた

『ワンワールドバンクに存在する預金口座の預金の動かしは大幅に取引額を限定することで認めています』

『今後の預金の取り扱いは各支店がある次元世界国政府が定めた預金保証限度までは動かすことを容認』

ミッドチルダ連邦では1000万ミッドまでしか保証されない。
他次元世界国政府でも通貨為替などを考慮に入れるとミッドチルダ連邦とほぼ同じ金額までしか保証されない
ただし無利息口座や決済用口座の場合は全額預金額が保証される
企業には大きな影響は出ないが、利息付き預金口座は保護される預金額は次元世界国政府の法律で明記されている。
ほぼすべての次元世界国政府はミッドチルダ連邦とほぼ同じ金額までしか保護されない
最も問題を抱えているのはワンワールドグループに存在したワンワールドバンク。
JS事件までは最も信用度が高いことで評判があった。しかし今はそれが無い状態である
ワンワールドグループを構成するすべてのグループ企業が破綻したことで、
次元世界連合の全加盟国に経済的ダメージを大きく与えた
グループ企業だけでなく、ワンワールドグローバル企業と取引があった中小企業にも大きな影響がある
そういった中小企業も経営再建のために多くの次元世界国政府機関に再建に向けて動き出している。
問題はその手の会社が多すぎるため、すべての対応を終えるまでにはかなりの時間と労力が必要
おまけに存続させるのか否かについての判定も主なって再建できる企業であれば経営再建支援を行う
行き詰った企業をすべて倒産させたら、多くの次元世界国の経済に大きなダメージになってくる
見極めることが求められてくる

『クルック地区と近隣地区で問題行動を起こす可能性がある人物を確認。これより確保する』

『クルック地区と近隣地区の鉄道やバスなどの交通路線の警戒も厳重に行え』

クルック地区はもちろんだが近隣地区でも常に検問所や多くの中央パトロールの職員が配置されている
常に臨機応変に対応することはできる

『港湾本部からSA11。そちらに港湾パトロール海兵隊の増派を行っている。到着は5分以内』

派遣されたのは50人の海兵隊員だ。
それも銃火器をフル装備をしているので彼らに狙われては生きて出る道の確率はほぼ無い
おそらく死亡して武装勢力は排除されることは間違いない

『港湾本部から警報を発令する。ノースクラナガン魔力精製炉発電所の1号炉から4号炉で発電出力が低下』

ノースクラナガン魔力精製炉発電所には10基の魔力精製炉がある
通常は魔力精製炉発電所にある魔力精製炉では半分は発電運用。
残りの半分は定期検査などで運用が行うことはない。魔力精製炉の運用は3年ごとに炉内にある魔石燃料棒を交換。
さらに3年ごとに大規模点検が行われることになっている。
連邦法の『魔力精製炉発電所の運転規則』で定められている
アルシオーネには魔力精製炉の発電出力が低下した理由はすぐに分かった。
AMF装置が作動することで魔力精製炉にある魔石の粒子の熱源発生が妨げられる
魔力精製炉内での発熱が抑えられて蒸気タービンに送られる高圧高温の蒸気は減少
それによって少しずつ発電出力が低下して、発電が停止する。
原子力発電と異なり魔石燃料は放射性物質を出さないことからクリーンなエネルギー資源だ
今は状況は大きく異なり、火力発電所の建設ラッシュだ。
ミッドチルダ連邦はもちろんだが、他次元世界国でも火力発電や水力発電の建設件数は多い
バブル経済にならないようにするために政策金利を引き上げなどを行って景気過熱は抑えようとしている
本当にバブル経済になると、反動で大不況になる可能性は高い
経済動向の動きを見ることや必要な政策実施はどの次元世界国政府でも共通する重要な経済政策である

『フローレンス州南部地方で大雨が降っています。時間雨量は40mmほど』

『フローレンス州南部地方から北上してクラナガン川に流れ込んでいる水量は徐々に増加している』

フローレンス州南部地方から川は北に向かって流されて、その川はクラナガン川に流れ込む。
クラナガン川に合流するところには堰やダムが複数設置されて水量の安定供給だけでなく、
水力発電所が数多く設置されている重要な電源だ。
火力発電や魔力精製炉発電などと異なり建設が終了して運用すると、電力のベース電源として稼働する
何度も言うが水力発電所を建設するには時間が必要になる。
理由としてはダムなどの関連施設と連携して行うことや、
ダムを建設後の水没エリアに住んでいる人々の生活確保があるからだ
しかし工事がすべて終了して水力発電所として運用が始まれば、
ダム湖に流入してくる河川の水が途絶えない限り安定的に発電が可能になる
低コストで環境にもある程度は優しいクリーンな発電になることは間違いない
水力発電をする場合は一定の高低差を作るためにダムが必要になる
ダムが建設されて運用が始まると大きな人工貯水湖ができる。
水没するエリアの環境は大きく変化することが出ることは仕方がない

『フローレンス州南部地方にあるダムや堰では洪水対策のために最善を尽くすとの声明を電力会社は公表』

『ダムや堰の運用には企業の垣根を越えた連携した対応の実施も公表。緊急のオンライン会議の実施が決まりました』

電力会社は大きな規模の物から小さな規模まで多くある。
特に水力発電所の運用を目的とするダムや堰を持っている企業間では、
大雨が降っているときは流域河川にあるすべてのダムや堰の放水量を連携して対応しなければ大規模水害になる。
水害が発生してしまうと電力会社の会社イメージは最悪になってしまう。
そうならないために電力会社は企業の垣根を越えた連携プレーが極めて重要である

『時空管理局旧本局に所属していた機動六課に関する今後の取り扱いを決定したと時空管理局は発表』

『クラナガン捜査局に1年間の移管を次元世界連合総会と安全保障理事会でも承認されました』

『これについて一部のクラナガン捜査局の幹部から批判の声が出ていることについて、やむを得ない事情があると』

「面倒を押し付けられるのは私たちなのに上層部は無理を言うわ」

機動六課組の受け入れについて全員が納得しているかどうかと言われるとそんなはずがない
不満を抱えているクラナガン捜査局員の方が圧倒的に多いことは間違いない
トラブルを自ら招き入れることになっているのだから当然である
誰が機動六課というとんでもないトラブルになるメンバーの受け入れを容認することなど
簡単に認めるはずなどない。しかし今の国際上の関係で機動六課組の取り扱いは極めて難しい
一定のめどがつくまで時空管理局から切り離すことが極めて重要である事は間違いない
彼女は経済情報専門ラジオチャンネルに切り替えた

『ワンワールドグループの破綻と時空管理局債と聖王教会債の債務不履行で多くの投資家が資産を失っています』

『その一方で先を見据えることができたとされる一部の投資家は荒稼ぎができたこともあり』

事前にワンワールドのグループ企業の株や債券の大量の空売で莫大な利益を得た投資家もいる
損をする者もいれば得をする者も。株や債券などの金融商品取引では常に金融市場を見なければならない
常に金融市場という広い『世界』を見ることが極めて重要になってくる
こればかりは簡単なことではない。基本的に証券取引所や商品取引所は24時間1年中いつでも取引ができる。
一時的なシステムメンテナンスが行われる場合はバックアップに当たる予備システムを使うので、
金融市場の取引が停止することはあり得ない。特に重要なのはクラナガン外国為替取引所である
次元世界連合の全加盟国で各次元世界国内で使用される通貨の取引所になる
通過の急激な変動時には各次元世界国内の経済に影響が出るため、必要に応じて為替介入が行われる
介入を行っても金融市場は極めて大きな『世界』である。
簡単に思い通りに事が進むのかと言われるとそうはならないことは誰もがわかっている

『クラナガン外国為替取引所では通貨ミッドが政策金利が高金利でミッド高の状況にあります』

『ミッドチルダ連邦政府は急激な為替レートの変化は好ましくないと必要に応じて市場介入に踏み込むと発表』

これは口先介入というものだ。
実際に資金を使って市場介入を行うと変動相場制を採用している国としては良くない
だからこそマスコミのメディアを通じて、まずは介入の意思があることを伝える
本格的な市場介入に踏み切るには必要とされるルールがあるのだ。
介入には次元世界国間での調整が必要になる。簡単に行うことは資本経済では問題になってしまう

『港湾本部から全クラナガン捜査局員へ。クラナガン捜査局が管轄するすべての空域に対して飛行禁止命令を発令』

『これにより民間航空機はすみやかに最寄りの空港に着陸させる。空港内で混乱が生じることもある』

飛行禁止命令が出されると民間航空機は飛行禁止エリア内の飛行は原則禁止されない
さらに航空管制もミッドチルダ連邦軍や港湾パトロールに移管される
普段は連邦航空局の管轄になっている。
しかし連邦軍とクラナガン捜査局の基地や訓練空域の航空管制業務は軍管制エリアになる

「連邦航空局も苦労するけど空港パトロールも対応に苦慮するのは間違いないわね」

クラナガン市内の空港警察業務はクラナガン捜査局空港パトロールの管轄だ。
クラナガン市内の空港と近隣州の一部空港の警察業務は地元法執行機関と連携して対応している
情報は常に最新のものを把握しなければ安全対策としては不十分である
特に近隣州から首都であるクラナガン市に向かう航空路線がある空港の警察業務には重要であり、
警戒態勢を密にすることが極めて重要になってくる

『空港本部から中央本部へ。市内の空港で飛行禁止により空港施設内で問題が起きる可能性あり』

『中央本部から空港本部へ。こちらから手配できる人物は難しい。緊急招集をかけて人員確保をする』

緊急招集してもすぐに人員を用意するのは簡単なことではない
無理だからと言って断ることはできない。組織間の管轄を超えての連係プレーが必要になる

『中央本部から各員へ。市内の一部地域で停電事案の発生が予想される。警戒態勢を厳戒にせよ』

市内で停電はできるだけ避けなければならない。だが必ず停電の発生を抑えることはできない
何かのはずみで停電になることは日常的に発生してしまう。
そのため、停電事案が発生したならすぐに停電時に起きる騒動を抑えるために人員を配置する
当たり前のことだが、警戒することは当然のことである

『クラナガン捜査局から全局員に通達。騒動が発生する可能性がある事案については臨機応変に対応を』

「SA33から中央本部。交通規制をかけて。それと避難命令も。SA11の安全確保を最優先に」

アルシオーネはラジェットの安全確保をしなければいけないことはわかっている
彼は捜査部では立ち位置はかなり重要人物である。協力者は数多く持っている
その協力者を利用すると様々な法という壁を越えて動くことができる重要な人材だ
様々な圧力に屈することなく行動できるのだ

「危険な状態が続くことは好ましくないわね」

ラジェットが担当している任務は何としても早く対応しなければいけない
ミスは許されない仕事なのだから当然である。そんなことはあってはならない
1つのミスが連鎖することを受けて大きな問題になるのだから。
今後のことを考えると余計なことまで想定することにもなる

『クラナガン商品取引所では原油先物が1バレル9800ミッドまで上昇。連動する形で自動車燃料価格も上昇』

『クラナガン市政府は自動車燃料価格の急激な上昇について好ましくないとして市場を注視すると』

『ミッドチルダ連邦債が300兆ミッド発行する情報が流れてから、取引件数が増加』

現在は買い注文がかなりの数になっている。おかげで連邦債の取引価格は額面に対して99%の数字になっている
僅か1%しか誤差が無いということはそれだけミッドチルダ連邦債の信用度が高いということだ
今は最も安全な金融商品として取引されている
時空管理局債や聖王教会債は以前は安全な金融商品とされていたが今はもう価値がない
おまけにワンワールドグループの企業が発行していた多くの社債などもデフォルトになり破綻
安全な金融商品が全くなくなったに等しい状況なのだ。
何か安全な金融商品を見つけるのは金融系企業なら誰もが願っている
もちろん安全なんて言葉はまやかしのようなものだ。金融商品というのは時に一気に価値がなくなることもある
それだけに常に金融市場に注目することは当然なのだ

『港湾本部から各員へ。ベルカ州西部地方での武装勢力に対する攻撃を容認する』

すでに何度も行われている無線内容だが、慎重な判断が必要であることから最終決定が出るのを待っていた
さらに無線の中で連邦空軍と連邦海兵隊の派兵も承認されて部隊展開が行われている
ついに始まるのだ。血まみれの戦闘行為というのがどういうものなのか分からせるために

「連邦軍が戦闘に本格参加する前に対応できれば良いけど」

アルシオーネは今回の武装勢力に対する制圧がどこが実行したかで情勢が変わるかわかっている