午前10:04 西区東部区域 クラナガンハイウェイ12号線(外環状線) 時計回り路線

ユウ・ミズノ捜査長官はリヴィナ・トラヴィック港湾本部長と電話会議をしていた
彼はこれから次元世界連合事務総長のラビット・ボードとあることに関して話をするためだ
議論は主にベルカ州政府(旧ベルカ自治区)での事案について。
クラナガン捜査局が関わるには大きな理由があった。
ベルカ州の中央地方にある州都のベルカ市郊外には港湾パトロールベルカ基地がある
聖王教会本部がある事から州政府が安全保障の観点の考慮に入れて港湾パトロールの基地設置を求めていた
そのためベルカ州にはベルカ市の郊外に港湾パトロールのベルカ基地がある
ベルカ基地内の基地管制センターでは人工衛星や無人偵察機などを使って聖王教会本部を常に監視している

「大きな事は起きていないんだね?」

『今のところ、聖王教会側に目立った動きは確認されていません。通信傍受の令状を求める事はできますが』

そんな事をすれば、仮にも国際組織としての体裁がある聖王教会の警戒心を高めるだけだ
そういった事になるのはあまり好ましいことではない。今は穏やかに監視することが必要だ

「酷い話だね。今まで守ってきたはずの組織が犯罪行為に手を染めていたなんてね」

『捜査長官。それは私も理解しています』

聖王教会はいろいろと守ってきたという体裁があった。だがそれは名ばかりであった事実は大きい。
今は次元世界連合の聖王教会調査委員会で調査を受けている。
少しでも不正に関与した疑いがある聖王教会関係者がいれば即座に身柄を拘束。
次元世界連合の聖王教会調査委員会による調査はもちろんであるが、
ミッドチルダだけでなく、次元世界連合全加盟国の捜査機関が対応している。
すでに何百件もの事案が確認されている。数はこれからも増えていく事を捜査関係者の誰もが理解している
ただでさえ国際的な問題になっているのに、さらに広げることになる事は望ましいことではない
できるだけ素早く問題を解決することが望まれる

「聖王教会が抱えている聖王教会債について、何か動きはあったかな?」

ユウ・ミズノ捜査長官の質問にリヴィナは港湾パトロールの傘下組織であり、
情報機関の1つでもある港湾パトロール安全保障局から金融市場ではかなりの動きがあると報告してきた
当たり前を言えばそうだ。1京ミッドにもなる聖王教会債。破綻する事はもうわかっている
問題は誰がその責任を背負うかである。過去の聖王教会幹部の財産を差し押さえる。
おまけに過去の組織運営についても責任を追及する手が最も正しい道かもしれない

「次元世界連合が決めることだからね」

『捜査長官ならうまく事を進めることができるのではありませんか?』

「その為に次元世界連合に向かっている所だよ」

『さすがです。すべては思惑通りに事が進んでいる。当たってますか?』

ユウ・ミズノ捜査長官は否定も肯定もしないよと伝えた
確かにクラナガン捜査局のトップであるクラナガン捜査長官ならあらゆる情報が入ってくる
それは時には個人のプライベートに関するものも含めてだ
それでも『ルール』を守らなければならない。政治家を脅すようなことをしてはならない
あくまでも治安維持のために活動することが求められる

「とにかくベルカ州内の動きには警戒を。必要なら通信傍受のために令状を請求して」

『了解』

口で言うのは簡単だが、現実には様座な手続きが必要になる
令状を請求するにも根拠がなければならない。
聖王教会や時空管理局は犯罪組織対策法のブラックリストに登録されていない
つまり勝手に通信傍受をすれば違法行為だ。段取りが必要なのだ
ことを穏やかに進めるためにも特にだ。ユウ・ミズノはリヴィナとの電話会議を終えるとため息をついた
これからが本番であることを十分理解しているからだ
聖王教会の再建にはかなりの資金が必要になる。
おまけに返済が難しいとされる1京ミッドも聖王教会債あるので扱いも難しい
次元世界連合が負担するわけにはいかない。
つまり聖王教会は独自に財務再建案を出さなければならない
ただでさえ厳しい財務状況にあるのは間違いないのにJS事件でさらに悪い方向に進んでいる
穏やかに解決する事はあり得ない。ユウ・ミズノが経済専門ニュースを見ていた

『聖王教会の教皇にカリム・グラシアが教会の意思決定会議で可決されたことが分かりました』

『カリム・グラシアは早急に財務状況の改善に議論を進めたいと教皇に着任して発表しました』

「聖王教会は今は責任の押し付け合いで忙しいと思われます」

ユウ・ミズノが乗った車を運転しているのは査察部の要人警護課の人間だ
要人警護課、簡単に言えば事件の証人やクラナガン捜査局の上層部の警護を担当している

「遅かれ早かれ聖王教会債は破綻していた。それが早まっただけの話だよ」

1京ミッドまで膨れ上がった聖王教会債の償還は簡単ではない
今の聖王教会にそれだけのことをするだけの財務体力はない
聖王教会も時空管理局と同じで借金を借金で穴埋めすることでここまで債務が拡大したのだ
自業自得といえばそこまでの話なのだが。
教会が本当に破綻すれば影響が出るのは教会運営だけでは済まない
聖王教会は医療機関や教育機関も抱えている。そこまで影響が出てしまうことになる
それは望ましいことではない。教育部門や医療関係に関しては急にストップすることはできない
子供たちの将来のためにも特にだ

「まったく聖王教会関係はこれから忙しくなるね」

「捜査長官も聖王教会の問題について関わると?」

「僕の任務は次元世界連合に情報を提供すること」

「できれば穏やかに事を進めていただけると我々も助かるのですが」

査察部はいろいろと潜入捜査をしたりする部門であり内部監査も行っている
言ってみればクラナガン捜査局では嫌われ者だ
それでも組織の透明性を保つためには必要な部署だ
査察部の人員は潜入捜査なども行うので機密事項として扱われる
それだけ特殊な部署であるという事は間違いない

「長官。聖王教会に関係する問題は大変ですね」

それは誰もが思っている事だ。聖王教会関係のトラブルを解決するにはかなりの時間と労力がいる
おまけにそれなりの資金も必要に。今の聖王教会にそんな体力は残されていない
もしかしたら教会が破産申請をするかもしれない
聖王教会が破綻すれば、事態は穏やかに済む事ではない

「僕たち上層部は現場が素早く行動できるように物事を片付けていく。そして捜査に集中できる状況を作る」

確かに管理職というのはそういうものだ。現場の責任を取るためにいるのだから

「それにしても長官も大変な任務ですね。穏やかに解決するために時には手段を選ばない」

護衛官の言葉にそれが我々の使命だよとユウ・ミズノ捜査長官は答えた。
必要ならどんな手段を使ってでも行動を行う。それはクラナガン捜査局の使命だからねと
クラナガン捜査局が誕生したのはしっかりとした正義が行われるためである
時空管理局はかなり手緩いことをしていた。だから時空管理局の暗部であるHRというなの深い闇にできた
闇を摘発することができていれば少しは真面な方向に向けることができたかもしれない
だが現実には大きな船舶は簡単に針路変更する事は難しい

「守らなければならない事も多いのだ」


--------------------------

クラナガン自然保護区 中央区域 パークハイウェイ1号線

エイミーは密猟者がいたとされる場所に向かっていた。
もちろん彼女1人ではなく、自然保護センター分署のカール・カッソンヌ刑事と一緒に向かっていた
自然保護区内での単独行動は極めて危険だ。
いつ獣に襲われるかわからないためバックアップは必要である
ちなみに自然保護区内にある道はある意味ではけもの道である。
アスファルトで舗装されていない。あくまでも自然環境維持のためである
パークハイウェイ号線は自然保護区中心から見て、南西から北東の斜めに貫いている。
舗装されていない道ではあるがそんなことはいつものことなのでエイミーたちは気にする様子はなかった
助手席に座っているカール・カッソンヌ刑事は車載情報端末を操作して銃声が感知されたエリアを絞り込んでいた

「カール。位置は分かった?」

「おおよそだがな。この先1kmだ」

エイミーはワーニングライトとサイレンのスイッチを入れた。
これはこちらが動いている時に動物に襲われないようにすることを目的とした手順になる
もし検挙している時にこちらが襲われることを少しでも減らすためである
捕まえる立場が大型の動物に襲われたら意味がない。

「衛星とリンクさせて追跡を。やり方はわかるわよね?」

もちろんだと言うと情報端末を捜査して中央パトロールが運用している人工衛星とリンクさせた
残る作業は衛星から観測された画像を分析する。
地道な作業だがこういう事も大きく捜査に影響する事から慎重な対応が求められる
ミスをすれば大きな影響が出てくることは2人は理解していた
密猟行為はクラナガン市法や連邦法で定められている重罪行為だ
それだけに見逃すわけにはいかない。必ず法の裁き受けさせなければならない

「SA37から自然保護区分署。現在の状況報告を」

『現在も銃声は鳴り響いています』

銃声が観測された場所はクラナガン自然保護区の南部区域だ
いったいどこのバカなのだろうか。密猟は罪状が重い
にもかかわらず実行するという事は裁判の審判によるが死刑判決になる可能性が高い
現場はかなり緊張したものになると想像していた。
しかし実際の状況はそこまで悪化していないことが報告されてきた

『自然保護分署からSA37。保護区内をパトロールしていたパトロール捜査官が身柄確保したとのことです』

「こちらSA37。身柄確保の現場を報告せよ」

『確保場所に関する情報をSA37の車載情報端末に送る』

無線交信と同時にすぐに助手席の車載情報端末に情報が送られてきた
確保された場所は自然保護区南部区域で現在位置からそれほど離れていないことが分かった
エイミーはカールにアサルトライフルであるH&KG36をいつでも使えるようにすることを通達した
検挙はしなければならないが、安全確保も保たなければならない
獣がいるのだから安全確保するのはかなりの難易度がある。失敗すれば自らが死ぬことなる
自然保護区でのパトロールは極めて危険なため、
常に自らの行動をしっかりと判断できる人間でなければならない

「犯人が捕まったのなら安心ね」

『だが身元が問題です。確保された人物の指紋を携帯情報端末で照合したところ、元時空管理局員です』

「間違いないの?」

『トリプルチェックしました。間違いありません。名前はグレイ・キョラース。45歳』

退役時空管理局員であり、最後の所属部署と階級はクラナガン市の東隣にあるスタントン州の警察業務部門の職員。
階級は2等陸佐だ。今の仕事はトラックドライバーだ。彼は大型トラックの運転免許を持っていた。
国内の景気は好景気が続いている。トラック運転免許を持っていると今は仕事に困らない
ワンワールドカンパニーは競争入札に負け続けた結果、他の運送会社に仕事が奪われつつある
時空管理局関係の物資輸送では特にその傾向が顕著である。
時空管理局に物資を収めていた企業から実際に物資を収めるために利用されていた運送会社は次々と倒産している

「今の仕事への憂さ晴らしのために動いているのかもしれないわね」

「それでハンティングか?」

「私も港湾パトロール海兵隊にいた頃はよくストレス発散のために射撃訓練という名の事をしていたわ」

エイミーは港湾パトロール海兵隊の女性だけで構成されている特殊部隊に所属していた経歴を持つ
数多く任務に着任して、数多くの勲章を受けていたほどの歴戦の兵士である

「昔と今では大きな違いがある事は事実よ」

でも現実は違う。軍人であっても時にはその任務によって人々が幸せになるのかを考える
司令官というのはある意味では有能な政治家の様な判断が求められる事が多い
そうでなければ指揮命令コントロールができないのだから
だからこそ軍人であっても国益に繋がるか検討しながら指揮命令をしなければならない

「専守防衛とは口で言うのは簡単だけど、実際のところ港湾パトロールは集団的自衛権の行使をしている」

エイミーの言う通りだ。港湾パトロールは元々クラナガン市を守る事を目的に創設された
だが次第に管轄が広がりクラナガン市と北側にあるマリネット州、
南側にあるラクロス州。西側にあるフローレンス州。そして北西方向にあるベルカ州(旧ベルカ自治区)
管轄エリアの拡大はこれ以上は行わない事で連邦政府と協定を締結している
ちなみに東側のスタントン州は連邦軍の管轄だ。ただし港湾パトロールはレーダ施設などを設置している
現場に急行している抵抗する戦闘機のジェットエンジン音が鳴り響いた
エイミーは車を止めて確認すると上空にはE-767が1機。F/A-18Eが2機飛行していた

「ここで戦争でもしようというのかしら?」

この状況下では誰もがそう思っている。あまりに危険すぎることだ
誰かが裏で情報操作をしている可能性がある。

「SA37から中央本部。港湾パトロールの動きについて報告を求める」

『現在イーストフローレンス基地からの応援要請で向かっている。情報によると不審な航空機がいるとの情報』

イーストフローレンス基地とはクラナガン市の西隣にあるフローレンス州の東部にある基地
イーストフローレンス市には数多くの研究組織や技術開発が行われている組織の拠点が存在する
クラナガン捜査局にとっては最も重要な拠点である。理由は簡単だ
クラナガン捜査局だけでなく連邦軍で使用される戦闘機の開発などを行っているからだ
戦闘機だけでなく、様々なシステム開発も行っている。
以上の理由からイーストフローレンス市警察は大きな責任を背負っている
そんなところに攻撃でもされたら大問題になってしまう。

「港湾本部に探りを入れて。もっと詳細な情報が知りたいから。それとこちらの人工衛星にアクセス」

衛星画像を送るようにとエイミーは要請した
今はどんな小さな情報も見逃すわけにはいかないのだ
中央パトロールは港湾パトロールが運用している人工衛星だけでなく独自の人工衛星を持っている
クラナガン捜査局が運用している人工衛星の機能は偵察や軍事通信などの軍事衛星の機能、
衛星測位などの民間人が利用できる機能まで多種多様である
民間に提供している衛星測位システムに関してはあまり高性能とは言えない
こちらの技術がテロリストに利用されることを阻止するためである
クラナガン捜査局が使用している運用基準なら、もっとも正確に衛星測位をすれば数cmで探知できる
おまけに無線や有線の通信の傍受も可能である。連邦法が定めたブラックリストと呼ばれるリスト、
そこに登録されている人物か組織なら令状なしで傍受ができる
簡単に言えば通信情報は筒抜けである。

「まさか本気でやろうっていうのか?」

エイミーが行おうとしている事のことの大きさにカールは問題が出た時が厄介だぞと注意した
警察権限ではなく軍事権限で行動をしようというのだ
もしその行動が上層部から問題視された時はエイミーには大量のデメリットという雨が降り注ぐ
だが今はそんなことを言っている暇はない。少しでも良いので情報収集が求められる。
カール・カッソンヌ刑事は上空に展開している様々な人工衛星にアクセス
その人工衛星から観測されている各種様々な情報収集を行った
何かヒットすればいいのだが。

『ピッ』

カールが上手く情報収集に成功した。車載情報端末にさまざまな情報が送られてきた。
イーストフローレンス基地の南東部12km地点に不審な小型飛行機が飛んでいるとのことだ
そのため戦闘機であるF/A-18Eが2機向かっている。念のため早期警戒管制機のE-767が向かっていた。
ただし港湾パトロール本部基地からすでにクラナガン市の上空警戒に当たらせるために、
港湾パトロール飛行隊第1航空軍第101戦闘飛行隊からFRX-00が2機とE-767が配備されていた
首都防衛のためには常に警戒態勢が必要なのだ

「カール。無線を傍受続けておいて」

港湾パトロールの部隊がどう動くかによってこちらも行動が変わるかもしれない
そのために警戒が必要なのだ。エイミーとカレンの2人が現場に到着すると3台のパトカーが来ていた

「来る必要はなかったかもしれないわね」

3台も来ているとなると総勢6人ものパトロール捜査官が来ていることになる
パトカーは2人で1組だからだ。つまり3台いるという事は6人もここにいることに
エイミーが来る必要はなかったかもしれないが。
とりあえず来たのだから一通りの作業を行う必要はある

「それでこんな真昼間に密猟したバカはどこなの?」

エイミーは呆れた口調でそう言った。確かにバカな行為だ
昼間にすることは当然である。捕まることは分かっているはずだ
にもかかわらず発砲するとは罪状はかなり重いことになるのに
まずは許可を受けていないのに銃の所有違反にハンティング行為
これで2ストライク。もしあと1つでも罪が重なると三振法で仮釈放なしの終身刑か死刑になる
野生動物の狩猟行為の中には絶滅危惧種をハンティングしたら重罪行為
獲物次第では三振法になる。調べるのは少し苦労しそうになることは分かっている
現場では6人のパトロール捜査官が銃を構えて獣対策をしていた
いつ襲われるかわからないのだから、仕方がない行動であるとも言える


--------------------------

中央パトロール本部庁舎 8階捜査部3係オフィススペース

捜査部3係で捜査官をしているカリー・ドーランは少し早めのお昼を食べながら事件資料を見ていた

「カリー。仕事は順調かな?」

3係のトップであるウル・ミズノ主任捜査官が話しかけてきた
カリーはクラナガン市内にあった時空管理局の拠点基地に関する報告書を眺めていたのだ
JS事件前まではミッドチルダ連邦だけに限定しても国内には大規模な拠点基地は最大3000以上もあった。
だがJS事件後はミッドチルダ連邦国内には30の基地に集約された。
クラナガン市と近隣州を合わせると最も多い時は最大20カ所以上の大規模な拠点基地が設置されていた
そちらに関しても、現在は1ヵ所に集約された。時空管理局員は大量リストラされて大幅に減少した

「この報告書を見ていると頭痛の種になります。これだけ多くの基地が必要はなかったのに」

「こっちは地区パトロール事務所を一定範囲内に1カ所設置して少数精鋭で対応する」

元々クラナガン捜査局員の給与基準は格安だ。それでも任務遂行に当たっているのは使命感があるからだ
お金がないと組織運営にはいろいろと苦労するよとウルは言った
確かに予算が少ないといろいろと不便さはある。それでも何とかするのがこちらのやり方だ

「羨ましいですね。JS事件前までの時空管理局員の給与は。今は私達と同じ水準ですが」

「天から地に落ちたような感じをしているだろうね。まぁそれだけのことをしてきたということだけど」

ウルの言う通りである。
自らが招いたことであるのだから、時空管理局は自ら自爆したも同然である
今は時空管理局の内部監査はかなり厳しく行われている。
おまけに退役した時空管理局員でも犯罪に関与していたとなると、
時空管理局犯罪捜査局だけでなく、各次元世界国の警察などの法執行機関でも取り締まりを行っている
見逃すわけにはいかないのだから当たり前であるが

「それにしても時空管理局債の取引価格は下落が進むばかりですね。信用がない債券なのだから当たり前ですが」

そんな事は誰もが分かっている。時空管理局債は今はほとんど債券価値はないに等しい
それでも購入するのはよほどのバカかクレイジーな連中である
かなりの覚悟がなければ投資対象にすることはない。今の時空管理局債は投資対象としては失格である

「時空管理局債を大量に抱えている銀行やヘッジファンドも大変ですね」

時空管理局債は手堅く運用できる金融商品だった
だがJS事件後に時空管理局の規模が大幅縮小したことによって最悪の事態になった
金融市場での取引価格は額面額に対して10%になっている。
酷い時には額面額に対して数%にまで落ち込んでいる。
売りが先行する事から金融市場では取引価格がつかない傾向に流れつつあった
これ以上事態が悪化すれば、時空管理局債を購入していた債権者は追い詰められていく
時空管理局債を将来の厚生年金を受け取るために運用内容に組み込んでいたことが多かった
ワンワールドグループ企業が破綻する結果になったのは変えることができない事実だ
ワンワールドグループ企業には銀行・証券会社・投資会社・保険会社などの金融機関が様々にある
上記の企業は時空管理局の影響下があった次元世界国にグローバル活動していた
時空管理局債をかなり抱えてきたことやそれらを利用した取引を頻繁に行っていた
その影響をまともに食らっている。影響は想像を超えることになる。
すでにワンワールドグループ企業は破綻申請をしている。後始末はかなり苦労するだろう

「それは僕たちに関係ないと言いたいところだけど、時空管理局債の取引で赤字を抱えた企業が何をしてくるか」

ウル主任の懸念は当たっている。赤字を解消するために手段を選ばず行動してくるだろう
そのあたりが一番恐ろしいところだ。ワンワールドグループ企業と関係が密接だった企業の多くが倒産している
今後の見通しでは、国内では数万と呼ばれる企業破綻が起こるだろう
時空管理局との取引しかしていなかったところは競争入札が導入されてから業績不振になっている
時空管理局やワンワールドグループと関係があった企業の経営は最悪である
数多くの天下りを引き受ける代わりに時空管理局から物資調達に関する甘い汁を吸っていた
その天下りそのものが今は違法であると次元世界連合加盟国では禁止されている
物資納入企業が天下りを引き受けていたら少しずつ組織は悪くなる
組織内にしっかりとした浄化機能がある部署があれば問題ないのだが、
それが正常に働いているならまだ組織は少しは良い方に進む。
だが機能しなければ悪い方に転がり落ちるものである

「経済犯罪が増加する可能性はあります。証券取引委員会の知り合いに連絡して確認を依頼しています」

カリーはすでに手を打っていたのだ。万が一経済犯罪が発生した時に備えての対応方法についてを
常に最悪な事態を想定して行動する事が求められる。そうする事ですぐに対応できる

「カリー。君に1つ任務を預けるよ」

ウルはそう言うと1冊のファイルをカリーに差し出した
ファイルの題名は『時空管理局機動六課受け入れに関する身元調査』と
カリーにはシグナム・八神の身柄を預けられることになっている
彼女は捜査部3係捜査官以外に、もう1つの役職を持っている
それは3係主任補佐官だ。つまり3係ではナンバー2になる
ウルがいない場合は3係の指揮権はカリーが預かる事になる
3係では実質的にはカリーはナンバー2。ちなみにもう1人ナンバー2の格付けに入っている捜査官がいる
捜査部3係の教育担当官であるレックス・トライベッカだ。
彼は教育担当官として多くの法執行機関の教育担当官として捜査の方法を教えていた
今年に入りようやく中央本部捜査部に戻る事になった
1係と2係にも教育担当官がいたので彼らはミッドチルダの各地で教導活動していた。
だが今年に入りようやくクラナガン捜査局中央パトロール本部に戻ってきた。
ちなみに国内だけの警察組織だけでなく国外の次元世界国の警察組織の捜査官が捜査部で研修を受けていた
今まで研修を受けていた彼らも今年で全員戻っていった。捜査部にはいくつもの空きデスクがある
今後の想定としてはそこに時空管理局機動六課組を受け入れることになっている。予定ではだが
まだ詳細な事は伏せられている。ほとんどのクラナガン捜査局員には。
いきなり衝突をしあっていた時空管理局員と仲良くが、上手く事が進むかどうかについては難しい。
現段階で機動六課組を受け入れることについて知っている者は限られているが、
誰もがこう思っているだろう。面倒を押し付けられただけだと
当然の反応だ。誰が好き好んで面倒を受け入れたがるか。
お荷物を背負わされるこちらの苦労も考えてほしい

「私に教導担当になれと?」

「カリー。君は有能だから。だから頼めるかな」

「上司命令ですので引き受けますが、何かあっても私は関知しないですよ」

それはつまり偶発的に怪我を負うようなことになっても文句を言うなと
ある程度はフォローするがそれ以外は任されても困ると

「できれば身の安全は守ってくれると助かるけど」

ウルの言葉にカリーはそれは保証できませんと伝えた。
ファイルをお返ししましょうかと言うとウルは君へのプレゼントだよと答えて彼は自分の執務室に戻った

「本当にウル主任はやる気がなくなる仕事を増やすのだから。でも与えられた任務はこなすしかないわね」

カリーはそう言うと渡された人事資料を眺めていた
シグナム・八神の詳細な記録を見て彼女はとんでもないお荷物を背負わされたことをさらに理解した
闇の書事件で深く関与していたから。元々八神ファミリーはその手の事案でトラブルを抱えていた
今までは時空管理局内で活躍が有益だったから、表向きは批判はされていなかった
だが陰からはいろいろと言われていることは周知の事実だ
さらに時空管理局を潰すことに繋がる事をした人物として睨まれている
このまま時空管理局の場所にいると抹殺される可能性は十分ありうる
だからこそクラナガン捜査局で保護する。裏ではどんなことがあるかはわからないが

「仕方がないわね」

彼女はそう言うと時空管理局の人事記録情報にアクセスした
港湾パトロール安全保障局なら機密情報として収集しているはず
記録を見るくらいは問題はないはずだ。より詳細な記録を知りたい
捜査部捜査官が持っている権限を利用すればこれくらいのことは簡単である

「さてと、闇の書事案以外に何かトラブルを抱えているかどうか」

カリーはより詳細な情報を集めていった。どんな些細な情報でも見逃すわけにはいかない。
表向きはクリーンな記録だ。だがそれは時空管理局内の記録ではの話でだ
港湾パトロール安全保障局のデータベースに記録されている情報によると状況は圧倒的に不利だ
時空管理局に、いや正確には機動六課に次元世界連合はさまざまな内部監査が入っている
時空管理局は機動六課をパージして何とかしようとしていたが、上層部は次々と捜査対象になった
今は時空管理局犯罪捜査局が徹底的に捜査している
簡単に言えば機動六課組がまだ生きていられるのは時空管理局犯罪捜査局が上層部を捜査をしているからだ
もし捜査が行われていなければ、機動六課組はいろいろな意味で追い詰められていただろう

「苦労人のようね」

シグナムたちの関係をカリーはそう評価した。確かに苦労人であることは事実だ。
時空管理局員の大量リストラで多くの退役時空管理局員は再就職に困難を極めている
どこも爆弾を抱えるようなことをしたくない。
だからこそ時空管理局と少しでも関係があると採用する事を避けている

「どの企業も爆弾を持ちたくないのね」

大量リストラで解雇された退役時空管理局員の多くが再就職に困難をしている事は間違いない
退役時空管理局員が起こした事件が大幅に増加している
だからこそ各次元世界国では彼らの対応に苦労している
生活保護制度で少しは何とかなるだろうが、永遠にそれを続けるわけにはいかない
クラナガン市では生活保護制度の最大利用は連続36か月。つまり3年間しか連続での受給しかできない
途中で1度でも外れて再度申請すればさらに36か月間の生活保護を受けることができる
今のミッドチルダ連邦の好景気のおかげで今は失業者は大幅に減少している
ただし、採用する企業にとって退役時空管理局員は危険因子という扱いになるかもしれない
そういった懸念から退役時空管理局員ということだけで、民間企業の採用リストから外される
これらの行為は基本的には差別であるという判決が出される。
仮に退役時空管理局員と言って罪状が確定するまでは無罪扱いなのだから
これが大原則。裁判での判決が確定するまでは推定無罪の原則なのだ
そのため絶対にミスは許されない。小さなミスがその人物の運命を決めてしまう
ただし政府機関と関わりがある企業や様々な政府等の政府機関の機密を扱うような企業は対象外と判例が出ている

「嫌な資料ね」

シグナムの個人情報はかなり詳細に記録されていた。
個人情報というレベルではなく、かなり詳細なプライベート情報が含まれている
プライベートな情報から今までの時空管理局の任務に関して。

「さすがは港湾パトロール安全保障局ね」

港湾パトロール安全保障局はJS事件後はかなり秘密裏に活動していた
時空管理局に潜入しているスパイも存在する

「本当に面倒な事をしたけど、時空管理局は自滅したのだから」

時空管理局自らが抱えていた闇が深すぎる影響でスカリエッティを生み出した
最終的には彼らは最高評議会は自らが生み出した連中に殺された
殺されたというのは少し違う表記でもある。自らの罪を背負っただけ
カリーはシグナムの個人情報を閲覧を続けた。
教導官をやるのだからこれくらいのことは許されている

『ピーピーピー』

カリーの携帯電話に着信が入ってきた
発信者はCIAの友人からだ。電話をかけてきた理由は予測はできていた

「スケアクロウ。あなたから連絡してくるなんて、どうせロクな事じゃないでしょ」

相手は諜報員暗号名がスケアクロウと呼ばれている男性。CIAの諜報活動をしている人間だ。
お金に執着を持っている人間でかなりやり方が汚い
自らの利益に繋がるなら時には問題行為になる可能性が出てくる行動をする

『機動六課組がそっちに行くらしいな。時空管理局の情報を流してくれ』

「何をくれるかによるわ」

『相変わらずだな。見返りがなければ情報提供しないと?』

「それはあなたも同じでしょ。スケアクロウは何をくれるの?」

『時空管理局の暗部、HRで活動していた退役時空管理局員のリストだ。そっちも欲しいだろ』

「スケアクロウは何を欲しいのか教えてくれたら内容次第で交渉に応じるわ」

HRで活動していた時空管理局員のリストはいろいろと使い道はある
交換条件とするなら問題はないだろう

『ロライズ・キートス1等陸佐を探して身柄を俺に回してくれ。奴から聞きたいことがある』

聞きたい内容はカリーはすぐにわかった。ロライズ・キートスは時空管理局地上本部の隊員だ
おまけにCIAの内部情報を時空管理局に漏らしていた。
時空管理局の給料では不満で、さらにおまけが欲しかったということだろう
お金が好きな人間は1度でも甘い汁を吸うと止めることができない生き物だ
そういう連中だからこそ、時には利用価値はあったのだろう。
だからCIAが探し出そうとしている。カリーは懸賞金がかけられている事を瞬時に察知した
そうでなければスケアクロウが動くはずがない。奴も金が好きな生き物だ

「問い合わせることぐらいならできるわ。港湾パトロール安全保障局の知り合いに」

『それをしてもらえるか。こっちからだと軋轢を生むことになる』

「裏口は開けておくことが重要よ。大惨事を防ぐためにも。最後の窓口くらいは残しておかないと」

そう。どこの組織でもそうだが裏口がなければかなり危険だ。
最後のやり取りをするために必要なのだから。
大惨事になる前に最終段階になる直前の通信ラインの確保は重要である

『わかっている。まさかこっちの情報を売ってビジネスをしていたとは把握が遅れてな』

カリーは仕方がないわと言うと何とかしてみるとスケアクロウに伝えて電話を切った
次に港湾パトロール安全保障局へ連絡するために捜査部オペレーションルームに向かった
港湾パトロール安全保障局と情報連絡するには機密回線で行う必要がある
もちろん捜査部捜査官が持っている携帯電話でも機密事項の通信ができるように暗号回線はある
だが信用性の事を考えると捜査部オペレーションルームで通信をする方が安全である

「ラジェット。少し借りても良いかしら?」

ラジェットが今もミッドチルダ国内のさまざまなテレビ番組などのチェックに使用していた
別に急ぎの仕事ではないので彼は少しなら問題ないと答えた

「ギブリ。港湾パトロール安全保障局に時空管理局のロライズ・キートス1等陸佐の所在地確認ができているか」

「わかった」

ギブリはすぐに港湾パトロール安全保障局に通信を入れた
正確には港湾パトロール安全保障局の対外諜報部にだ。
対外諜報部は名前の通りにクラナガン捜査局の外部で活動する諜報員が所属している
もちろん潜入捜査なども行っている部署である。そこにはスパイ数多く工作員在籍している
ただ、表向きは民間企業の社員として活動している

『捜査部から連絡とはトラブルか?』

「実は頼みがあるの。私はある人物を探していて、そいつをCIAに送らないといけないのよ」

『CIAがらみの仕事か。誰が依頼主だ?』

「スケアクロウ。意味は分かるわよね」

カリーの発言に港湾パトロール安全保障局対外諜報部の職員はため息をついた
確かに大きな問題であることは事実だからだ。スケアクロウはお金に目がない工作員だ

『あいつはまだ金に執着しているのか。守銭奴だな』

その言葉にカリーはまったくもってその通りだと回答した

「工作活動するにはかなりの金が必要だ。だが多額の金をCIAが認めるわけはない」

自分で調達をするしかない時も多い。時には情報という名の商品で
情報というものは使い方によっては高値で売れる
だからCIAは自らの組織の予算を使う事が認められるのは、
大規模な潜入捜査や作戦でなければならない

「何とか頑張ってもらえる?」

『協力はする。CIAと連携することは多くあるからな』

「ということは所在地は確認できているの?ロライズ・キートスの」

『こっちが見逃すと思ったら大間違いだ。身柄拘束の段階に入る』

よろしく頼むわねと言うと通信は終了した
ラジェットはカリーにこう言ってきた。スケアクロウと連携するとはと
彼は意外そうな声が感じられる声で発言していた

「私も損得勘定を計算して動いているのよ。ラジェットは引き続き、成り行きをテレビ観戦?」

テレビ観戦。つまり外野からただ眺めているだけなのかということを示している
実際は異なる。ラジェットに向けて発生られた言葉に彼は俺は今は暇だからと答えた

「それに時空管理局関係の情報収集が今の任務だ」

「苦労人ね。捜査部のナンバー2って役職は」

いつものことだとラジェットは回答する
捜査部の事実上のナンバー2であるラジェットは最近は現場に出ることは減った
管理職として仕事を行うことが増加したからだ。
それにさっきシエルが持ち込んできた機動六課の受け入れ態勢についての調整も行っていた
誰がそれぞれ教導官を担当するかを考えなければならなかったからだ
カリーはラジェットの返答を聞くとオペレーションルームを退室した
すると再び港湾パトロール安全保障局と通信がつながった

『本当に苦労人だな。ラジェット』

先ほどまでカリーと通信をしていた人物と同じ人物が通信してきた

「それにしても時空管理局と聖王教会はかなり叩かれているな。ネタ元はそっちか?」

『こちらもいろいろと動いていることは否定しない。だが気を付けることだ。機動六課組の受け入れについて』

そんな事は言われなくてもわかっている。
誰もが恐れているのだ。こちらの情報が抜かれるのではないかと
警戒心を持って対応することをしなければならない事は誰もが分かっている

「心配するな。教導官役を担当してもらう捜査官の手腕は確かなものだ」

問題ないとラジェットは言うと通信は終わった。
その時、港湾パトロール安全保障局から情報が送られてきた
ラジェットは分析をギブリに任せるとオペレーションルームを退室していった。
ギブリは港湾パトロール安全保障局から送られてきた情報解析を開始した


--------------------------

西区東部区域クルック地区1番街2丁目 次元世界連合別館ビル 次元世界連合安全保障理事会フロア

次元世界連合安全保障理事会の会議室は次元世界連合総会で選出された14カ国、
そして唯一の常任理事国のミッドチルダ連邦が会議を行うところだ
議題は主に次元世界・次元空間の安全保障問題を話し合う。
常任理事国であるミッドチルダ連邦を除いた14ヶ国は次元世界連合総会で選出される。
議長は1ヶ月ごとに交代。9ヶ国以上の賛成票により意思決定がされる。
可決決議は総会決議と同様に次元世界連合加盟国に法的拘束力を持つ。

「聖王教会に対するさらなるより深い内部監査を行うべきです」

安全保障理事会の理事国の1カ国の大使の発言に他の次元世界国の大使も同意する意見を言い始めた
どの次元世界国も再び聖王教会が力を持つことは良くないと考えていたからだ
現在は聖王教会調査委員会が今までの聖王教会の活動に監視と活動行為そのものに不正がなかったか調べている
その調査委員会から教会が関与したとされる事案について報告を受けて審議の真っ最中だ
議題は前にも言った通りで、聖王教会の今後の行く末を正常化するためである
腐敗しかけている聖王教会を正常化するために必要であるが彼らがつぶれることは好ましくない
医療や教育関係で活動をしているためが大きな理由だ
いきなりそれをストップさせるわけにはいかない。多くの人々に影響が出てしまう
だが何も手を打たないということも許されない。聖王教会債の残高は1京ミッドにもなっている
このまま債務不履行。つまりデフォルトになることは分かっている。
金融市場では聖王教会債の価格は額面に対して20%にまで下がっている
安全保障理事会での議論の中心は誰がどのように聖王教会債の処理をするか。
聖王教会債の値下がりで金融市場では売り先行だ。買い注文がほとんどいない。
聖王教会は時空管理局と同じで債務の償還はほぼ無理。

「ミッドチルダ連邦大使。あなたはどのように考えているのですか?」

第3管理世界、現在のヴァイゼン合衆国大使がミッドチルダ連邦大使に質問をした
聖王教会の問題で最もトラブルを抱えているのは聖王教会の本部があるミッドチルダ連邦だ
他の次元世界国でもいろいろと利害関係があるので調整するのに困難を極めている
まずは聖王教会が運営していた医療機関や教育機関の移管作業。
一方で聖王教会債に対する対応だ。1京ミッドもあるのだから債務不履行で終わりというわけにはいかない
選択を誤ると状況は極めて悪化する方向に話が進んでしまう
だからこそ客観的に冷静な判断が必要である

「我が国は犯罪行為が確認された人物は裁判にかけることのみです。すべては法が裁くべきことであります」

見事に『正直』な回答である。実際は聖王教会関係者を次々と身柄を押さえる方向で話が進んでいる
クリーンな人間と問題を抱えている人間を上手く選別していく必要がある
法執行機関が様々な視点から捜査を行い、過去に犯罪行為に関与していない者は復帰。
犯罪行為があった者は裁判を受けてしっかりと罪の代償を払ってもらう
つまり刑務所に収監する。絶対に見逃すわけにはいかない
だからこそ次元世界連合加盟国は各国の法執行機関を運用して捜査を行っている
ミスは許されない。人の人生がかかっているのだから

「今はミスをすることなく少しずつ進めるように話を進めましょう」

ある次元世界連合の大使がそう言うとほかの大使も頷いた。
どの次元世界国でも、今はまだ証拠集めの真っ最中なのだ。
全容解明には少しずつ時間をかけていく事が必要である


--------------------------

東区東部区域 時空管理局機動六課駐屯基地付近 地区パトロール事務所 情報センター

エルガは相変わらず待機任務に就いていた
情報センターで機動六課組の情報収集に専念していた

「どうだ?」

この地区パトロール事務所のリーダーをしているパトロール捜査官から質問に、
エルガはあまり良い状況ではないと答えた。確かにエルガの言う通りだ
状況は良くない。機動六課を守るのも任務も含まれている。
だからこの辺りを管轄しているこの地区事務所のパトロール捜査官は忙しく対応していた

「今に花火でも起こされるかもしれないな。警戒態勢を厳重に。隠れてな」

エルガが行った隠れてとはパトロール捜査官の制服ではなく私服で警戒するようにとの命令だ
仮にパトロール捜査官を制服で投入したらこちらにまで火の粉が降りかかる可能性がある
それを避けるためにも今は内密で警戒する方が良い

「街灯観測システムの監視カメラ映像で不審者がいないか確認だな」

今この近辺にどういった人物がいるかを顔認証システムで照合
問題がありそうな人物がいれば職質をかけて一度この事務所に来てもらう
表向きは近隣に住んでいたり仕事をしている人々から騒音の申し立てがあったという言い訳をしてだが
それでも理由がなくては引っ張るわけにはいかないのだ。
とりあえず今は機動六課組を守るために必要な事なのだから
機動六課の基地正面ゲートは封鎖されている。
海側には9300t級駆逐艦[ 艦船形式:アーレイバーク級ミサイル駆逐艦 ]が1隻警戒している。
海側から機動六課が攻撃を受けることを阻止するためと機動六課自体の監視が主な任務だ。

「静かなところが危険地帯とはな」

今は機動六課組に物資を搬入するのはヘリを使った空輸と海上から輸送艦を使った供給が中心だ
彼らの行動監視もクラナガン捜査局にとっては重要な事である。

『ピーピーピー』

エルガの携帯電話が着信を告げていた
発信者はシエル首席捜査官からだ。電話の理由は状況把握である事は察しがついていた

「シエル首席。エルガ・ジャーニーです」

『機動六課の基地周辺の状況はどんな感じ?』

エルガはありのままを報告した。シエルは報告を聞き終えるとある指示を出した

『忙しいところ悪いけど。機動六課の基地近くで終点になっている鉄道駅で問題発生よ?』

クラナガン市内には市内範囲を営業路線としている鉄道会社が8社もある
他には国内全域に鉄道路線を持つ鉄道会社が3社がある
市内を網羅している鉄道路線の数は全部で360路線も存在が確認されている
豊富な路線を抱えているのはクラナガン市が広く多くの市民が住んでいるからだ
今も新しい鉄道路線の建設が進んでいる。多くの鉄道路線が整備されたことにより、
自動車での通勤を減らすことが大きな目的。

「何かトラブルですか?」

そうでなければ今この場所を外れろというわけがない。いったいどういう理由があるのか

『痴漢常習者が拘束されたわ。先月出所したばかりなのさっそく同じことをしてくれたらしいわ』

被害に遭った女性はかなりの恐怖心を持っているはず。
女の敵を摘発するのは当り前のことだ。レイプ・盗撮・痴漢などの性犯罪として罪が重いのだ
サウスクラナガン刑務所で罪の重さについてわかっていたはずなのだが。
性犯罪は簡単にやめる事はできない。麻薬と同じで中毒性がある
それゆえに簡単に性犯罪はやめることができないのだ
性犯罪者は連邦法で自らの住所をその地域を所管する警察組織などに報告、
また性犯罪者が市内でレイプや痴漢の加害者にはGPS追跡装置の着用も義務付けられている
これらによりレイプや痴漢などの性犯罪発生時に素早く身柄拘束ができるように市法で定められている

「名前は?」

『レスカル・コーロト。36歳。3年間の刑務所生活を終えて1時間後には再度捕まった』

クラナガン市法では痴漢行為の最高刑罰は懲役3年となっている
エルガは正直なところ、バカな奴だと思っていた。誰だってそう考える。
出所してすぐに性犯罪を起こすとは。欲求に耐えることができないとは呆れてしまう

「今はどこにいる?」

『今そちらに身柄を移送中よ』

痴漢被害者の女性は別のパトカーに乗って向かっているとのことだ。
エルガには事情聴取をよろしくとのことだ。別に難しいことではない
通常業務の範囲だ。性犯罪は被害者の心に大きな傷をつけてしまう
犯罪被害者救済担当官に連絡して精神的ケアを受けれるように手配をかける必要がある

「あとはこっちで対応する」

『奴にしっかり思い知らせて。罪の代償をね』

了解とエルガは答えると通話を終えた
彼は痴漢行為をしたレスカル・コーロトに関する情報を詳細に集めていった
彼が刑務所に入る前はワンワールドカンパニーの幹部だった
だが3年前に地下鉄専門会社のクラナガンメトロが運行していた列車で痴漢をして逮捕された
当時は時空管理局の影響があるかと思われたが、意外にも何も圧力をかけられる事もなかった
おまけにレスカル・コーロトもすぐに犯行を認めたのですぐに裁判は結審した
その結果は懲役3年の刑罰が確定したのだ。更生したかと思っていたがそうはならなかった
それだけは間違いない。更生していたら刑務所生活を終えてすぐに痴漢行為をするなんてありえない
刑務所に再び戻りたいのだろう。自業自得だと言えばそこまでの話だ

「出所して1時間でまたしても痴漢行為をするとは呆れた奴だ」

エルガはそう言うとレスカル・コーロトの個人情報について収集を開始した
ワンワールドカンパニーの幹部をしていた頃は毎月50万ミッドも給与を受け取っていた
貯金は痴漢で刑務所に収監された後に心の傷を負ったとして女性に大部分は支払っていた
つまりお金はほとんど残っていないということは間違いなかった
そんな事を分かっていながら再犯をするとは呆れるしかない

「トラブルが増えたな」

地区事務所の所長をしているパトロール捜査官からの言葉にいつものことだと答えた
トラブルはいつも増えていく。特に捜査部捜査官はあらゆる事案に対応できる。
そのため、面倒を押し付けられることが多い。それでも全力で対応しなければならない
犯罪者を見つけるためにはどんな手段を使う

「取り調べをしても素直に自供するだろうな。現行犯だからな」

下手に黙秘権を行使すれば、罪は重くなっていく
素直に認めれば刑罰はある程度は軽くなるかもしれない
だが刑務所から出所してすぐに痴漢行為をした。情状酌量の余地があるとは思えない
今度こそ長い刑期を務めてもらうしかない。狭い個室で。
クラナガン市内の刑務所や拘置所はすべて1部屋に1人だ。
個室扱いになっている。面会はあくまでもテレビモニタでしか行えない。
刑期満了まではずっと個室で過ごすことになる。市政府が運営している刑務所は各区に1つずつ。
つまり全部で5カ所設置されている。さらに裁判を受ける前まで収監される拘置所も5カ所がある
クラナガン市裁判所は刑事裁判の場合は3つの段階がある。
まず最初に各区に1ヵ所ずつ設置されているクラナガン市地方裁判所とクラナガン市控訴裁判所。
そして南区北部区域ビューロー地区に設置されているクラナガン市最高裁判所の3段階になっている
クラナガン市最高裁判所だけはビューロー地区にのみしか設置されているだけだ。
クラナガン市最高裁判所で刑罰が確定すると、それをひっくり返すのはかなり困難である
これらの他にも特定の分野を専門に扱う裁判所がある。
交通事故などを専門に扱う交通裁判所。家庭内の問題を専門に扱う家庭裁判所。
税金関係のトラブルを専門的に扱う租税裁判所。少額賠償や損害賠償請求を扱う少額裁判所などがある

「出所してすぐに戻りたいとは呆れる。すぐに犯罪者更生担当官との面接があるのにその前に犯行とはな」

クラナガン市政府では犯罪者が出所後にすぐに更生担当官と定期的な面接を受けることが定められている
もしすっぽかしたら仮釈放中の人間なら刑務所に逆戻りになる
よほどの理由がない限りは定期的な面接を受けなければならない
特に性犯罪者の場合は厳粛に規則を守らないと仮釈放中なら即仮釈放はなくなる
刑務所へ逆戻りになる。刑期満了で出所しても情報を州警察に提出しなかったら法律違反だ
罰金刑などが待っている。とりあえずはレスカル・コーロトが連れてこられない限り、
これ以上は調べるのは難しいのが現状だ。
レスカル・コーロトが痴漢で刑務所に収監された後は落ちていくだけだった
金も地位も失った。厄介な問題である

「どうやって攻めていくつもりだ?」

「答えは痛いところを突けばいいだけの話だ。性犯罪は重罪だ」

襲われた女性の恐怖を分からせてやるのだ。性犯罪がどれだけ罪が重いことかをしっかりと。
明確な態度で思い知らせてやらなければならない

「連行されてきたらしっかりと思い知らせてやらないとな。性犯罪がどれほどの重罪であるかを」


--------------------------

東区東部区域 セントラルクラナガン貨物ターミナルから港湾パトロール本部貨物駅

レックスが港湾本部の指揮下に入って護衛活動をしている貨物列車は再び発進して基地に向かっていた
港湾パトロール海兵隊の監視下での輸送だ。すでに1度は襲われている
再度攻撃ということも考えられるので警備に当たっているメンバーは緊張感を持って対応していた

「早く基地に到着してほしい」

レックスは貨物列車のコンテナの上でH&KG36を構えながら警戒していた
ディーゼル機関車で引っ張られている貨物列車はまもなく港湾パトロール本部基地に到着する
この出入りの瞬間が最も緊張する。攻撃を受けたら大きな被害が出るからだ。
それだけに基地の外と内側の境界付近の警戒は厳重になっている。
これは港湾パトロール本部基地に限った事ではない。
大陸側にある港湾パトロールの基地は基本的に貨物列車で貨物が搬入できるように線路が敷かれている
沖合にある島の基地には貨物船が接岸できる港湾設備が設置されている
基地外と内側の警備態勢は港湾パトロール本部基地は他の基地に比べると特に厳重になっている
緊張感のある警備は長時間するにはいろいろと苦労がある
それだけにできるだけ早く基地内にある貨物駅に到着してほしいと思うのは当然だ

『港湾本部から中央本部SA30。まもなく基地ゲート付近に入る。最大限の警戒を』

「こちら中央本部SA30。了解した」

レックスはいよいよ港湾本部基地の敷地内に入る。ここが最も狙われるところだ
貨物列車のコンテナには武器弾薬が大量に積み込まれている。
小さな火花でも爆薬に火がつくことになる。それを阻止しなければならない

『こちら港湾本部。港湾本部貨物駅への入線を許可する』

貨物列車用の出入りゲートを通過する。
港湾パトロール本部貨物駅ではすでに積み荷の貨物を降ろす準備に入っていた
作業が迅速に行われる用意を港湾パトロール後方支援隊が行っていた。
港湾パトロール後方支援隊は研究部門・港湾パトロールネットワーク・基地設備維持などを行う軍種である
名前の通り後方から戦場を支援する部隊。後方支援がなければ戦闘で勝てるはずがない
ゆえに彼らは優秀な臨機応変な対応ができるエリートでもある
素早く後方支援の在り方について方針転換を行うことが求められる

『港湾本部から中央本部SA30。港湾本部貨物駅に到着して安全確認が終了次第、任務完了を通達』

コンテナなどの積み荷に異常がなければ任務完了ということだ
レックスは了解したと無線交信をすると港湾本部貨物駅内で警戒に入った


--------------------------

北区西部区域 ノースウエストクラナガン貨物ターミナル パトロール事務所

捜査部2係の捜査官をしているサイノス・プロナードが来ていた
ノースウエストクラナガン貨物ターミナルを出入りする貨物列車やトラックの監視を行っていた
このノースウエストクラナガン貨物ターミナルは市内にある6カ所の貨物ターミナルの中で最も小規模。
小規模と言っても敷地は南北2km・東西3kmの敷地がある
ここはベルカ州から結ばれている鉄道路線がクラナガン市に入る時の最初の貨物ターミナルだ
ベルカ州からはベルカ自治区時代から農産物の輸送が多い。
クラナガン市にとっては貴重な食事の台所である
ベルカ州では大規模農場があるので、生産された農作物は貨物列車などでクラナガン市に輸送される
クラナガン市民にとって最も重要な食料供給拠点である。
ベルカ自治区時代から農作物の生産が盛んであった。生産された農作物はクラナガン市に供給されることが多い
ベルカ州に移行する前、つまりベルカ自治区時代から主な産業は農業だった
だが今はベルカ州政府に移行された後、
資源開発を一定の環境保全を行うなら州政府は資源開発の許可を出した
今のベルカ州では数多くの場所で様々な鉱物資源開発が進んでいる
ベルカ州北部に埋蔵されている原油や天然ガスの資源開発が数多く行われている
州政府は数多くの鉱区を設置してその鉱区の開発権を販売していた
その開発権を数多くの資源開発会社がオークションで分配された。
以前は採掘された原油は貨物列車のタンク貨車で運ばれていた。
僅か1年という突貫工事によって今年までに大急ぎで工事が大部分が終了していた
現在は原油や天然ガスの輸送はパイプラインを使ってベルカ州の東隣にあるマリネット州に向かう
だが農作物はパイプラインによる輸送というわけにはいかない。貨物列車かトラックなどの輸送が必要だ。
おまけにベルカ州内の街の発展によって建築資材などの輸送も大幅に増加している
以前はこのルートを利用する列車は少なかった。だが今は利用する列車大幅に増加した。
それに対応するために複線化や信号場などの整備が進められている
貨物列車の便数も大幅に増加したことから鉄道運行会社はいろいろと苦労している

「本当に貨物列車の数は増える一方だね」

1度に大量の貨物を運べる貨物船や貨物列車は環境にあまり負荷をかける事がない
さらに貨物船や貨物列車から排出される汚染物質に対応するために、
惑星汚染物質除去フィルターがミッドチルダ連邦法で装備が義務付けられている
そのため大気汚染などの環境への影響は最小限で収まっている。
貨物列車での輸送では1度に大量に引っ張る。
最大100両近い貨車を引っ張る時もある。しかし毎回それほど大量の貨車を引っ張るわけではない。
輸送する貨物が増加すると違法物資の密輸に使われることが増加する。
そんな違法な物を市内に持ち込ませたり市外に運ばれたりすることを阻止するため、
貨物ターミナルの警備は極めて厳重である。
常に見張りとして多くのパトロール捜査官がターミナル内を巡回している
少しでも不審な貨車があればチェックを行っている。
例えば何か大きな物音がするかで、必要なら裁判所に令状を請求してコンテナ内をチェックする
危険物を摘発ためにはどんな方法でも使うのだ
だがサイノスはベルカ州からやってくる貨物の数を見て対応するのは大変だと。当然である。
ノースウエストクラナガン貨物ターミナルが市内の貨物ターミナルで小規模でも大量の貨物コンテナなどが存在する。
全ての貨物を調べるのは困難である。難しくても違法物資をリストアップするしかないのだ。
それが与えられた使命なのだから。

『まもなくベルカ州南部地方サウスベルカ市から来た貨物列車が5番線に入線します』

5番線に入線してくる貨物列車のコンテナの数は60両にもなる
全てをここで降ろすわけではない。市内の別の貨物ターミナルに運ばれる予定になっている

「SA25から中央本部。危険信号は出ていないのか?」

『現在のところは確認されていない。しかし警戒態勢は維持せよ。密輸に利用されることは阻止しなければならない』

中央パトロール管制センターにいる管制官の言葉は事実だ。密輸にクラナガン市が利用されたら大問題だ。
銃火器や麻薬の流通ルートを潰さなければ、クラナガン市内だけでなく国内の安全保障に影響が出る
そんな事は絶対に許すわけにはいかない。何としても摘発しなければならないのだ

「SA25からノースウエストクラナガン貨物ターミナルにいるパトロール捜査官へ。貨物の積み荷リストを確認せよ」

サイノスはすぐに確認作業を進めるように指示した。
5番線に入線してくる貨物列車はベルカ州で生産された農作物などが運ばれてくる
貨物コンテナはここで一部を降ろしてさらに市内の別の貨物ターミナルに輸送される
トラックで運ぶよりも貨物列車で運ぶの方が効率的である。
それに環境にも優しいことやトラックで運ぶことを考えた時に定時運行が難しい場合がある。
貨物列車なら一度で大量に輸送できて事故などになる事は確率的には少ない。
クラナガン市内の鉄道は基本的にすべて高架路線か地下鉄路線になっている
開かずの踏切を0にするために交通網が整備されているのだ
実際のところは開かずの踏切はクラナガン市内にはほとんどない

『SA25へ。5番線に停車している貨物列車の積み荷チェックを進めています』

60両の貨車に積載されているコンテナを調べるのは簡単な事ではない。
透過装置ですべてを確認していく。しかしここで停車中にすべての貨物を確認するのは極めて難しい
時間との戦いなのだ。何としても押さえなけれなまらないところである

「確認作業が間に合えば良いけど」

ここでの停車時間は30分となっている。検査は時間との闘い。何としても対応しなければならない。
ベルカ州ではマリファナなどの麻薬密造が自治区時代から頻繁に行われていた
州政府に移行後は厳しい捜査によって大幅に取り締まりが行われている
麻薬密造密売組織も様々な麻薬工場の摘発によるダメージを受けていた
だからこそ麻薬密売価格は上昇しつつある。それに伴って麻薬欲しさに犯罪を起こす者も増加している

「ベルカ州警察も大変だね。州内には大量の麻薬密造工場があることが分かっているのだから」

今まで聖王教会に便宜を図ってもらうために金を払っていた。もちろん完全な違法行為だ。
その金を受け取っていた聖王教会関係者は次々と捜査対象になっている
裏金ほど汚いものはない。おまけに便宜を図っていたならかなり厄介なことに
サイノスは貨物の情報分析を進めると同時にニュース専門番組を見ていた

『セントラルベルカバンクが破綻申請で大きな影響が出ています』

証券取引所へ非上場の企業であるミーミルバンクは買収することで大きな利益を出そうとしていた
セントラルベルカバンクはかなり低価格で買収することができた。
ミーミルバンクの多次元世界グローバル企業による買収でベルカ州証券取引所の平均株価は安定しつつある
ベルカ州政府にとっても安定的な経営が行われることを望んでいた
それだけに捨て駒にされるのではないかと懸念していた時に差し伸べられた唯一の天の救いかもしれない手。
実際はセントラルベルカバンクから融資を受けていた人物には厳しいことになる。
理由は簡単である。融資を受けていた人物はあらゆる資産を差し押さえられる。
すでに融資を受けていたが返済に行き詰り、破産申請をした人物や企業はかなりの数になる
破産をすれば借金はなくなるがいろいろな制約を受けることになる。
クレジットカードを作成できないや新たな融資を受けることができない。
さらに財産になりそうなありとあらゆるものが押収される

『セントラルベルカバンクはミーミルグループに買収されましたが、ミーミルバンクは徹底的な内部監査を行うと表明』

内部監査とは実際は不正行為がなかったかなどを独自に洗い出すということだ。
どんな些細な物も見逃すことはないという意思表明である。
破産申請をした直前に財産を処分して隠し資産にしていたらそれらについても差し押さえをする
それくらいの事を行うとマスコミは報道していた。セントラルベルカバンクやワンワールドバンクも同じだ
負債があまりにも多すぎる。それだけにセントラルベルカバンクはまだ抱えている不良債権はまだ少ない方だ
だがワンワールドバンクは話が全く異なる。彼らが抱えている不良債権の金額はかなりのものになる
ワンワールドグループが抱えている不良債権は1000京ミッドにもなる
その不良債権の後始末はかなり難しいことになるだろう。
さすがにワンワールドグループが抱える不良債権の処理にはかなりの時間と労力が必要になる
問題はどこが最後の引受先になり、どこが責任を持って対応するか
そこが最大の懸念事項である。ワンワールドグループ企業が抱える不良債権は桁が違う
最後にはだれも責任を取ることができず、金融市場に大きな問題を抱えることになる
そうなる事は誰もが分かっているが口に出さないだけである
誰が悪いのかを言い出すときりがないからだ。誰もが責任の押し付け合いをする

「ワンワールドグループ企業の問題がどれくらい発展するかは想像したくはないね」

それはサイノスだけでなく多くの警察組織の法執行機関所属局員は分かっている
誰だって正義を実行しようとしている。今度こそ正しい捜査が行うことができると。
さらに時空管理局や聖王教会の関係者が絡んでいる事案は数がかなりの件数になる
それだけに捜査にはかなりの時間が必要になっている。数があまりにも多すぎるのだ
次元世界連合加盟国の全ての件数を計算すると数万件以上の事案になる
ミッドチルダは特にその件数が多い。時空管理局が誤った道を選んだ結果、不正に手を染めた
それも数多くの不正行為に。時空管理局犯罪捜査局の捜査官は苦労している
多くの次元世界国の警察組織との連携捜査が必要になっているからだ。
元々時空管理局の内部部局というだけで良い目には見られていない。
時空管理局内の情報を豊富に持っていることは事実だ
時空管理局犯罪捜査局は各次元世界国との捜査の橋渡し役をすることが求められている

「多くの法執行機関は大変だね。時空管理局が絡んでいる案件が多すぎて」

どの次元世界国も捜査する件数が大幅に増加したことによる影響は極めて高い
だが1つの問題を抱えている。各国の国民から各次元世界国の法執行機関に対して被害届の提出がある
法執行機関はさまざまな事案に対応しなければならない。
時空管理局関係の捜査に集中すれば良いというわけにはいかない
それはミッドチルダ連邦でも同じである。
毎日国内の多くの州の州警察や郡警察や市警察などに被害届が出されている

「それでも誰かがやらないといけない仕事だから、大変なことになりそうだね」

『5番線で停車中の貨物列車のコンテナの内部から大きな物音を確認』

コンテナに動物を入れることは連邦法で禁止されている。
動物の移送に関して輸送先の自然環境破壊を阻止するために厳しいルールがある
だが動物なら大きな音はしない。つまりコンテナ内に誰かが隠れているかもしれない
理由はいくつか考えられる。人身売買などだ

「何両目かな?」

『進行方向から11両目です。コンテナ情報データベースによると農作物となっていますがどうします?』

サイノスはどこが輸送を依頼したのか確認した。
結果は表向きは綺麗な会社。つまり違法性は確認されなかった
ただ念のために港湾パトロールの情報と照らし合わせた。結果は大当たりだ
会社の名前はワンワールドグループ企業と少しばかり関係があった企業だ。
主な製品は農作物。それもタバコの生産のために使われる植物を生産している
コンテナにはそのタバコ製造時に使われた植物が積み込まれていた。情報ではそうなっている
だが怪しいことがある以上、調べるしかない。サイノスはコンテナの中を調べるように指示した
判事が令状を書いてくれるまで待っていたら貨物列車は出発する。時間がない以上、賭けに出るしかない
表向き、システムトラブルでコンテナの鍵が開いていたということにするしかない

『SA25へ。これよりコンテナを開けて調べます』

「慎重に対応するように。大きな獲物が引っかかるかもしれない」

つまりバックに大きな犯罪組織が絡んでいるということだ。
そうなるとあまり良い方向に話が進まない事もある

『至急救急隊を要請します!10人の幼い女の子がコンテナの中で眠っています!2人は発作を』

10人の幼い女の子をコンテナで密輸するとはひどい扱いだ
おまけに発作を起こしている女の子が2人もいる。あきらかな人身売買の可能性が高い
さらに嫌な想像をすると臓器密売のために来たのかもしれない
幼い女の子を裏ビジネスのために利用するつもりならかなりやばい連中の可能性が高い
鉄の掟だ。犯罪組織にとっても幼い子供に手を出すことは許されない
幼い女の子を『商品』にするつもりなら、何としても犯罪組織を摘発しなければならない

「子供たちを全員保護して病院に搬送を」

『了解。他のコンテナでも不審な物がないか調べます』

人身売買の可能性が出てきているコンテナが1個見つかったのだ
あとはこちらに分がある。発車時間を延期してもらうことになった

「他も調べないといけないとなると苦労するね」

サイノスがこれから行われる作業にかなりの時間が必要だと感じた。
他にも人身売買の被害者がいるかもしれない。だからこそ最優先で取り組むことが必要がある


--------------------------

中央パトロール本部庁舎 8階捜査部1係オフィススペース

ラジェットは機動六課組に関する情報を確認していた
機動六課組の主要メンバーの受け入れで誰が誰を担当するかの調整をしていた
彼ははやてを担当するつもりでいた。
シエルにそう持ち掛けたのは捜査部の仲間を説得するための交渉材料だった
実際のところはラジェットはある意味では復讐をしたかった。
ベルカ自治区時代に聖王教会によって家族を失った。大切な家族を
だからこそ少しみっちりと厳しく教育するつもりだ。それがささやかな復讐である

「いじめるのが好きみたいね。はやて・八神は嫌な上司に当たったわね」

シエルが執務室から出てきてラジェットのデスクに近づいて発言した
確かに嫌な上司になるのかもしれない。だが時にはムチも必要だ
飴ばかりを与えていたら教育にならないのだから
2つを上手く使うことができないようであれば教導官にはなれない。
ちなみに今の捜査部に全捜査官はそのあたりはしっかりわかっている。
誰を担当するかについての教導官を指定しても問題ない

「誰だっていじめることができるなら喜んで引き受けてくれる。まぁ時には飴は必要だがな」

捜査部捜査官にとっては時空管理局は今まで数多くの捜査過程で妨害をしてきた
その時空管理局の権限や隊員数などの大幅削減。誰だって喜びたくなるものだ

「ちなみにもう素案は決まっているの?」

シエルの質問にラジェットはもう手配をかけていると答えた
つまり人選は既に完了しているし担当官に対して割り当て通知もしているという意味だ
ラジェットはシエルにその教導官割り当てに関する書類のコピーを渡した
1係ではラジェットが担当するのはもちろん[ はやて・八神 ]と[ リィンフォースツヴァイ ]
さらに同じ1係に属している捜査官のフィリー・アクシオムには[ なのは・高町 ]
エルガ・ジャーニーには[ ヴィータ・八神 ]。
2係ではカレン・アリストには[ フェイト・T・ハラオウン ]
サイノス・プロナードには[ ティアナ・ランカスター ]
3係ではカリー・ドーランに[ シグナム・八神 ]。
捜査部門からは外れるが[ シャマル・八神 ]は中央本部ラボ棟検死ラボに配置される
上記が配置予定だ。[ スバル・ナカジマ ]はクラナガン消防局が魔導師消防隊の隊員としてほしがっていた
スバル・ナカジマについては本人と相談して決定される
クラナガン消防局は魔導師消防隊は過去に不祥事に関与していないことが確認できたら転職は容易だ
魔導師だけでなく、魔法が使えない人達もクラナガン消防局に入隊して消防救急を行っている
今は魔導師でも違ってもどういう部署にも移ることができる
今、時空管理局が独占的に警察権などの治安維持権限を持っているのは次元空間での犯罪だけだ
次元空間以外は各次元世界国の警察などの法執行機関が担当している。

「相変わらず仕事が早いわね」

シエルの言葉にラジェットはこっちもプロだからなと答えた

「それにしてもラジェットは意外といじめるのは好きみたいね。どうやっていじめるの?」

「いじめるというより俺達は命をかけて仕事をしている事を分からせることが中心だ」

「やっぱり陰湿ないじめね」

シエルは人事の割り当てについて承認することを決断した
元々ラジェットに任せていた仕事なのだ。
教導官の選出に当たっては特にそれぞれの個性を尊重した

「あなたは機動六課に。できるだけ素早くこちらで受け入れるように」

「明日じゃダメなのか?」

ラジェットはシエルの言葉に事を早く進めるのはかなり早すぎるのではと考えていた
24時間という時間をかけて根回しをするべきだと考えていた
だがシエルは早急に機動六課に行って人事関係をまとめるように指示した

「本気か?」

「私はいつも本気よ。とにかく受け入れ態勢を整えて。機動六課組に関しては特にね」

シエルはそう言うと自分の執務室に戻った。
ラジェットはその教導官の割り振りを射た情報を事務部トップの首席事務官の情報端末に送った
彼はこれからの仕事の苦労を考えると頭が痛いとため息をつく。
各種鑑識道具が入った捜査キッド、そう呼ばれるカバンを持ってヘリで機動六課に向かった。
今はいろいろと面倒なことになる。シエルが早急に事を進めるならそれと歩調を合わせるしかない
ラジェットも結局はシエルの部下なのだ。与えられた任務は遂行あるのみだ


--------------------------

中央パトロール本部庁舎 2階首席事務官執務室

事務部のトップである首席事務官のリーザ・コンパーノは、
首席事務補佐官のテリオス・コンパーノと次席事務補佐官のラガー・エッサと協議をしていた
議題はもちろん機動六課組の受け入れについてである。捜査部ではすでに担当教導官を選出済みだ
その情報を基に選任を許可するか確認していた。捜査部が選任した人物を許可するかどうか
最後に判断するのは事務部だ。それだけに慎重な判断が求められる
中央本部捜査部は数多くの機密事案を取り扱う。厳しい人選が必要になる
リーザ・コンパーノは中央パトロールの事務部のトップとして、
ラジェットが下した判断に文句はない。だが他の部下や補佐官との連携が必要になる

「なぜ我々が貧乏くじを引かされるのですか?」

テリオス・コンパーノはリーザの弟だが仕事とプライベートは分けている
ただし今の事務部には大きな問題がある。極めて困難になりつつあった。
機動六課組の受け入れに賛成している者はあまりいない
もし拒否権ができるならその拒否権行使をしたいと思っているクラナガン捜査局員は多い
敵対組織に近い形であるから。

「長官から何とかしてもらえないかと言われたら断れないわ」

「長官も承諾していると?」

リーザは彼女が分かっている限りの情報をすべて話した。2人の補佐官はより険しい物になった。
結局は責任の押し付けであることがよく分かったからだ。
問題解決のためにはできるだけクラナガン捜査局員に通達を出すことが必要だ
彼らを受け入れることについてこういった保護事項があるからだと
保護しなければ存在が消されると納得すれば、
証人保護の観点からしぶしぶとはいえ納得はしてくれるだろう
あくまでも現段階ではの判断だが。今日の昼ごとに統合捜査委員会で審議をすることにした
統合捜査委員会は事件捜査において部署がまたがるケースの事案がある
そのときに参加者は中央パトロールだけでなく、市内の空港警察を担当している空港パトロール
そして軍事部門を担っている港湾パトロールの捜査部門が参加して行われる会議である
機動六課組を保護する理由の説明を行うことは求められる。
もしこの統合捜査委員会で拒否する各セクションの幹部が多いことになれば事態は悪化する
上手く妥協案を出すことが求められている事は中央本部事務部の誰もが把握している
事務部としても受け入れについて拒否できるなら拒否したいと感じている局員が多いことは事実だ
時空管理局と少しでも関係があった人物は多くの政府機関の職員に入る事は難しい
おまけに捜査のメスが入っているからこそ、時空管理局と少しでも関係があった人物の再就職は難しい
時空管理局の局員数があまりにも多かったことは事実だ。おまけに高い給与が渡されていた
JS事件前までは時空管理局に入れば安定就職先だった。公務員のように。でもそれは今は大きな違いが出てきている。
多くの時空管理局はリストラされている。その局員の再就職はかなり難しい。
ホワイトカラーの仕事からデスクワークの現場というブルーカラーの現場業務に変わったのだから
いきなり現場業務になる事を容認できることはない。プライドが邪魔する。

「膨大な人数になる時空管理局地上部隊の大幅縮小だから、多くの退役時空管理局員は苦労しているのは事実」

時空管理局員が最も多かった頃は数億人もの局員が所属していた
だが今は状況が異なり地上部隊では大多数の局員が大量リストラにより時空管理局から去っていった
地元に戻っても再就職にはかなり困っている。
各次元世界国政府は一応、時空管理局員だからと言って採用差別はしてはならない
そのような通達が出されているが、民間人からみられると冷たい視線に浴びている
仮に雇用されてもかなり下の部署の所属になる。就職先の仕事での業務はブルーカラーの仕事が多い
それでも難しいことはかなり多かった。天から地に落ちたのだ。誰もが簡単に変わることはできない。

「とにかく中央パトロールの各捜査部門に通達を。時空管理局機動六課組の受け入れに関する調整をしたいと」

リーザ・コンパーノの言葉に補佐官の2人は分かりましたと答えた。
あとはこちらで対応するだけである。統合捜査委員会で協議を行うことを議案として提案することに。
統合捜査委員会には事務部は通常は組み込まれていないが、報道官がいるので時々参加する。
3人はその後も今後の対応方法について調整をした


--------------------------

中央パトロール本部庁舎 8階捜査部2係主任捜査官執務室

ミカ・ミズノ主任捜査官は今はのんびりと休憩をしていた
デスクである報道番組を見ていた。時空管理局から大量リストラされた退役局員に関する番組だ
多くの次元世界国ではあまりにも膨大な人数にもなる退役時空管理局員の対応に追われていた
中には反政府組織やテロ組織などに入った人物もある
反政府組織やテロ組織にとっても新たに加入した退役局員が持っている情報はいろいろと役立つ
例えば麻薬や銃火器の密輸や港の警備体制などだ。
次元空間航行船に商品を積み込むためのルートを持っている人物もいればさらに組織に貢献してくれる
ただしある程度利用したら捨てるだけだが。
いつまでも負の遺産を抱えるのはどの組織に良いことではない

「いつかは切り捨てられて死ぬだけの運命になるわね」

ミカは港湾パトロール安全保障局から回されてきた報告書を見ながらため息をついた
問題を余計に発展させることになることは分かっていたからだ
元々退役時空管理局員は借金がかなりだ。収入以上の支出の生活をしていた
そんな甘い蜜を1度でも味わえば他の蜜では満足できるはずがない
もっと甘い蜜を欲しがると言ってくることになる
時空管理局の力が強かった時はいくらでも甘い蜜を味わうことは簡単だったが
今はそんなことは事実上不可能な状況に近い。各次元世界国では警察などの独自の法執行機関を編成している
その法執行機関の立ち上げにはクラナガン捜査局は数多く協力していた
おかげでクラナガン捜査局との連携は、警察的・軍事的にもという意味で極めて密にできている
ミカの執務室のドアがノックされて入ってきたのは3係主任捜査官のウル・ミズノだった

「ウル。どうしたの?」

「これを見てほしいんだけど。ベルカ州警察から通報が。ある人物の遺体が発見されたと」

彼はミカに1冊のファイルを渡した。
死亡したのは男性で元クラナガン捜査部時代に捜査官をしていたエバスト・ヴォルート
年齢は42歳。ベルカ州警察で教導官をしていた。特に射撃の腕は良かった
港湾パトロール海兵隊で狙撃部隊に所属していた経歴がある人物だ
ベルカ州警察で教導官をしていたと先に述べたが、彼は主にSWATの教導を行っていた。
それだけに彼を狙ったと思われる連中のリストはかなりの数になる。
ベルカ州警察所属時期だけでなくクラナガン捜査部時代の恨みを買った可能性も足すと数は膨大になる
だからこそ捜査に必要な情報を共有したいとのことだ。

「ベルカ州警察の担当捜査官は?」

「ハイディーツ・パラスティックが担当しているとね」

ハイディーツ・パラスティックはベルカ州警察で教育担当部の部長をしている
つまりエバストの上官かあるいは同格の人間である。人物は信頼できるとウルは言った
連絡を密にすることに異論はないと伝えてとミカはウルに伝えた

「こちらからは誰を派遣する?」

「ウル。私が直接行くと伝えて」

その言葉を聞いてウルは驚いていた。
主任捜査官自らが現場に行くとなるといろいろと重大事件とみられる
州警察だけで担当で片付かないことになる事も想定される

「2係の主任捜査官はどうする?時空管理局機動六課組の受け入れについて協議があると思うけど」

「ウル。あなたに一任するわ。誰を誰に割り当てるかはラジェットが選任しているから」

ウルは責任を押し付けられたと感じていた。聞かなければよかったと思っていたぐらいに。
主任捜査官が行う業務はかなりの数になる。部下の捜査官から数多く求められる要請に答える
例えば証拠物件欧州に必要な令状、判事に請求する時には素早さが求められる
僅かな時間的余裕を敵に与えてしまうと証拠が消されてしまう

「仲間のためだから、お願いできない?」

ミカはウルに何とか説得した。
クラナガン捜査部時代には一時期は一緒に捜査をした大切な仲間だ
見逃すわけにはいかないことは分かっている。だからこそウルは仕方がないねと言って同意した

「わかったよ。ミカには負ける。2係の方も何とかしておくよ。通達はこちらから出すから」

2係で今は現場で捜査をしている捜査部捜査官にはこちらから通達を出すと。
ミカは自分の執務室にかかってきた電話はすべてウルの執務室にある電話機に転送させるように設定した

「頑張って」

ウルはミカが鑑識道具が入ったカバンを持って捜査部オフィスから出る
エレベーターを使っておく屋上ヘリポートに向かった。ヘリで港湾パトロール本部基地に向かうためだ
捜査部にも独自のビジネスジェット機がある。通常は港湾本部基地に駐機されている
ガルフ4という無線識別コードで呼ばれているC-37[ 航空機形式:ガルフストリームG550 ]が1機ある
利用するための条件は捜査部捜査官であれば誰もが利用できる
つまり基本的には捜査部に属している今の全捜査官は必要に応じて利用することができる

「幸運を」

ウルはミカを見送る自分の主任捜査官執務室に戻った。
デスクに戻ると情報端末を使って2係の捜査官に状況を携帯情報端末に伝えた


--------------------------