午前10:08 北区西部区域 ノースウエストクラナガン貨物ターミナル パトロール事務所

サイノスは入線してくる貨物列車の検索を継続して行っていた
すでに貨物列車に大量に積み込まれていたメタンフェタミンは押収済み
それを引っ張ていた貨物列車は出発していた。
麻薬が積み込まれていた貨車は押収したのでここで待機だが

「メタンフェタミンの量はすごいだね。1回の押収量の中で最も多いかもしれない」

押収された犯罪組織にとってはかなり困惑することは確実である
せっかく金を払って購入したものが利益に繋がらないとなると余計に
奪い返すためにどんな手段を使うかわからない。
警備態勢は完全武装の状況にして北区中央区域にある北分署のラボに輸送しなければならない

「とにかくSWATの護衛をつけて北分署まで輸送を」

「わかった。そっちはどうする?」

サイノスと話をしていたのは北分署刑事課の刑事だ。
さらに組織犯罪課や麻薬捜査課の刑事も集まっていた。
今は数を集めないといけない。麻薬や銃火器を市内に持ち込むことも出さない事も必要だから

「何が襲ってくるかわからないね」

麻薬を回収するためにどんな方法を使ってくるかわからない
最大のリスクを計算に入れて作戦実行をすることが求められる

『ビービービー』

サイノスの携帯情報端末から緊急事態を示すアラート音が流れた
内容はシンプルだ。ベルカ州南部地方で発生した魔力爆弾地下爆発実験に関するものだ
市内に魔力爆弾が持ち込まれるのではないかということを警戒していた

「混乱はさらに拍車をかけるかもしれないかも」

サイノスはベルカ州からクラナガン市が接続されている場所の中で、
ここが最重要警備地区になることはすぐに理解した
問題は今後の貨物列車の運行本数だ。今はこの時間帯を通過する貨物列車は全部で数本だ。
だが僅かな不審な貨物列車があればすぐに摘発しなければならない
すでにこの貨物ターミナルには数多くのパトロール捜査官が来ているので対応は楽である
問題はすべての貨物列車の貨車を調べるには時間がないということである

「何か怪しい記録があれば良いけど」

彼は必死になって選別していった。
特にベルカ州南部地方に設置されている貨物ターミナルで積み下ろしがあった貨物列車は要注意。
何かヒットすれば良いところだけど、世の中はそれほどスムーズに事が進むことなどありえない
調べるのは簡単な事ではない。1編成の貨物列車は最大で100両近い貨車を引っ張っている事もある
それだけにすべてを調べるのはかなり難しいし時間もそれほど余裕はない
事前に調べあげて危険物が積載されている可能性がある貨車をはじき出すしかない

『クラナガン市北区を中心にこれから天候が崩れる傾向になるようです』

サイノスは天気予報の情報を聞いてさらに頭痛の種が増えたと感じた
雨が降れば証拠が流れてしまうからだ。シールド魔法展開装置を使えば雨にぬれずに鑑識などの捜査は行える
ただしシールド魔法展開装置内にある魔法粒子などの魔法関係の証拠は証拠能力としては消失する
それだけに現場鑑識ではシールド魔法展開装置を使わないようにすることが求められている

「天候が崩れる前に対応しないと」

雨があれば犬による麻薬摘発は難しい。麻薬の匂いが雨の影響で消えるかもしれないから。
それだけに雨が降ると対応は極めて難しいことに。

『中央本部からSA25へ。ノースウエストクラナガン貨物ターミナルの警戒態勢を厳重にせよ』

「了解。ちなみに何をリクエストしてもいいと?」

『市内に危険物を持ち込ませるわけにはいかない。阻止のためならどの組織とも連携する』

「とにかく港湾パトロールに連絡して、当たりがつきそうな施設の警戒を」

港湾パトロールの情報機関の総力を借りて何とかするしかない。
今は時間がないのだ。利用できる者は法的に問題にないのであれば利用しなければならない。
何としても市内に麻薬や銃火器を持ち込ませるわけにはいかない

「酷い結果になりそうだね」

サイノスはすぐに無線で急いで入線してくる貨物列車に異変がないかの監視を指示の。
彼も情報端末を使って積み荷リストをチェックした
見逃すわけにはいかない。ここが踏ん張りどころである

『19番線に停車している貨物列車を調べたい。積載物は記録によると家電製品となっています』

サイノスが操作している事務所内の情報端末で貨物品の情報を確認した
結果は一般人向けに販売される数多くの家電製品が50両近い貨物列車に積み込まれている
だが報告によると何か大きな物音がすると。またしても密航者かとサイノスは考えた
令状を待っているような時間はない。19番線に停車している貨物列車は数分後に出発予定。
人命第一であるという規則の対象を考えて貨物を調べるように指示した

『貨物コンテナ内には数多くの動物がいます。中には絶滅危惧種に指定されている動物も』

パトロール捜査官からの報告にある意味では大当たりだと思った。密輸であることは間違いない
絶滅危惧種は簡単に持ち出すことが認められていない。連邦政府の行政組織の許可なしには
絶滅危惧種の動物を欲しがる人間は多い。たとえどれだけ高値を付けられても買う人物は多い
人間はダメだというものを欲しがる欲求を簡単に我慢できない生き物なのだ

「そのコンテナは押収。さらにその列車に積み込まれているすべての貨車チェック。令状はこちらで用意する」

絶滅危惧種に指定されている動物の密輸は重罪行為だ。緊急事態を適用できるほどに。
サイノスはまずはクラナガン市裁判局に連絡して19番線の貨物列車への捜索令状の発行を要請。
緊急事態ということですぐにこちらの事務所に令状の書面データを送るように求めた
裁判所は意外にもすぐに令状を発行した。絶滅危惧に指定されている動物の密輸、
それは一歩選択を誤れば連邦裁判所の所管になる。こちらで処理すれば発行した判事は高く評価される
裁判を取り仕切る判事にも立場というものがある。
クラナガン市裁判局の中でもトップになりたいと思っている人物もいる
捜査部捜査官はそういう人物の弱みをよく知っている。
必要な時にはそこを突っつくことで素早い対応ができる

「どこが密輸しようとしたのか調べるしかないね」

サイノスはそのコンテナに行先などの情報を情報端末を使って確認した


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東区東部区域 時空管理局機動六課駐屯基地付近 地区パトロール事務所

エルガは時空管理局機動六課基地の壁に手榴弾を仕掛けようとしていた人物を顔認証システムで照合していた
身元が分かればこちらも手を打つことができる。それにもしかしたら弱い部分があるかもしれない
そういったところを取り調べで追及できればいろいろと喋るかもしれない
チャンスはそれほどないのだ。一瞬の隙を利用して一気に攻め込む
抵抗するようなチャンスを与えるようなことはさせない

「まだ名前が出てこない。いったいどうなっている?」

エルガは顔認証システムで国内のあらゆるデータベースと照合していたがまだわからない
クラナガン捜査局が運用しているスーパーコンピュータを使って照合をかけても一致しない
これではまるで幽霊に近い。数多くあるデータベースの内、9割は照合が完了している
残りの1割の照合で一致する物がなければゴースト同然。
本来なら出生証明書などのデータがどこかにあるはず。
それがないということは恐ろしいことを意味していた。
恐ろしいこととは人身売買を目的のために生まれたということだ
それなら納得できる答えだ。新暦に入ってからは出生記録に関しては時空管理局が管理してた
今は各次元世界国に移管されたが。それでも国同士の情報共有で身元特定ができるようになっている

「亡霊なのか?」

検索のスピード記録に挑んでいるとあるデータにヒットした
それは退役時空管理局員のデータベースだ。それも殉職した。
名前はフミリード・サライク。32歳。第9管理世界、正確にはバンフ共和国出身だ
実は今まで時空管理局は各次元世界国の国名ではなく管理世界という国名を採用しなかった
確かに書類上は国名は記載されているが、実質的には管理世界を番号で分類していた
JS事件後は各国の国名を大事にするという国際条約で国名で呼ぶことになった
バンフ共和国は豊富な穀物などが豊富に輸出されたりしている次元世界国である
ちなみにミッドチルダ連邦は豊富な穀物・鉱物資源の両方を抱えているあらゆる種類の資源大国である
話は戻すが殉職したはずの人物が今も生きている。それも彼は殉職した退役時空管理局員だ。
エルガはもしかしたら裏があるのではないかと考えた。

「諜報活動をしていたのかもしれないな」

エルガの想像では時空管理局の諜報部門に所属していたことが有力説だ
身元を消すために殉職させた方が記録の抹消は簡単である
その後は数多くの諜報活動をしていた。
今回機動六課の基地に爆弾を設置しようとしたのは何かの意図があるのか
そのあたりを入念に調べないといけない
退役時空管理局員であるフミリードが機動六課の敷地付近に爆弾を設置した
何か大きな企みをしていたら大変だ。動機などの証言が必要である
もしかしたらさらなるバックを探ることができるかもしれない。
例えば時空管理局の暗部であるHRに関する情報だ。もしHRの情報を持っていたら見逃す事はできない
何としても自供させることが求められる。司法取引をしてもだ
HRが数多くの時空管理局の後ろ暗いところに関わっていることはすでに分かっている
だが詳細な情報はあまり集まっていない。時空管理局の規模縮小に伴って抹消されたのだ
頼りになるのは証言してくれる証人だけということだ
機動六課組が暴いたことによる時空管理局内での数多くの不祥事。
それは聖王教会にまで飛び火しているのだ。今は2つの組織は必死になって火消しになっている
だが1度でも漏れたものを簡単に止めることは難しい。だからこそ次元世界連合が介入する隙ができた
今の時空管理局は次元世界連合傘下の下部組織。
聖王教会は表向きは独立した国際組織ではあるが次元世界連合から監視されている
大きな理由は不正行為を起こさせないようにするためである
小さな不正行為摘発が大きな不正行為の捜査に繋がることもある
だからこそどんな些細な不正行為であっても見逃すわけにはいかない。

「エルガ。連れてきたぞ」

地区事務所内にフミリード・サライクが連行されてきた
彼を取調室に入れるとエルガは尋問を開始した

「身元を隠すのは諜報関係にコネがあったからだろ?」

身元が簡単に割れない理由はそれしか考えられない
時空管理局所属時代の記録は閲覧が現段階では難しいので後回しにしている
本人がペラペラとおしゃべりをしてくれた方がありがたい

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「何も話さなければすべて解決すると思うなら大間違いだ。これが最後のチャンスだ」

エルガはなぜ機動六課基地を攻撃しようとしたと質問をした
最後のチャンスとは証言しないならそれなりの行動をするぞということを意味している
ただの犯罪者として処罰するのではなくテロリストとして裁判を受けさせる
テロリスト行為であることは認定されるかどうかは今はわからないが、
仮に認定されたら罪は一気に重くなるだけだ。最悪の場合は死刑。
良くて仮釈放なしの終身刑になってしまう。
テロリストと認定されるのは厳しい処罰を覚悟しなければならないことになる

「どうする?」

エルガは圧力をかけて証言を引き出そうとしたが効果はない
自分の今の状況を分かっていないのか。あるいは何か考えがあるのか
どうしたとしても真面な道ではない。どうやって調べあげるべきか
奴が身柄拘束時に持っていたアタッシュケースを調べても良いか質問した
身柄拘束時に押収している。今は危険物保管室に置かれている。
その部屋は小規模の爆発なら被害を最小限にすることができる頑丈な部屋である

「好きにしろ」

つまりこちらの言葉に同意したと解釈できる
エルガはすぐに爆弾処理のための爆発物対応装備を着用した
そして危険物保管室に入りロックされると慎重にアタッシュケースを開けた
何が仕掛けられているかはわからない。魔法を行使した瞬間に何が分かるかわからない。
慎重に対応しなければ。

「上手くいくか?」

エルガは慎重に対応すると意外な事に何もしかけはなかった
アタッシュケースには診察の1万ミッド紙幣が全部で5000枚。
つまり金額にして5000万ミッドも入っていた

「金がある奴はうらやましいな」

紙幣を入念に確認するとあることに気が付いた。透かしが入っていない紙幣なのだ。
ミッドチルダ連邦で発行されている紙幣には透かしが何種類も入っている
紙幣偽造を防止するためだ。おまけにインクのにおいがまだ残っている。
普通ならありえない。つまりこれは紙幣偽造犯が絡んでいるということだ
透かしが入っていない偽札が5000枚。何に使うつもりだったのか

「より詳しく偽札の方はラボで調べるしかないな」

エルガは身柄を東分署に移送するように指示。それも警備態勢を厳重にして
この偽札の裏に何か根深いものがあることを想定しての判断だ
偽札は時にはその国の経済を混乱させる。それだけに罪も重いのだ
ミッドチルダ連邦では偽札を専門に扱う捜査機関がある
ミッドチルダシークレットサービスや偽装債権債務捜査局である
シークレットサービスは連邦大統領を含む政府要人の警護の他に偽札の捜査も行う
偽装債権債務捜査局は紙幣や債券の偽造を専門に捜査を行っている
上記の2つの行政機関は常に連携して捜査に当たっている
偽札が蔓延すれば国内の経済は混乱してしまう。それだけは避けなければならない

「とりあえず東分署のラボで分析が必要だな」


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中央パトロール本部ラボ棟 2階DNAラボ

フィリーはまだ中学生であるレイス・コーリック君に対する性的行為を行った人物を割り出そうとしていた
成人していない子供に対する性的行為は死刑かあるいは仮釈放なしの終身刑になる
それだけ罪が重いということを理解しないといけない。それに犯罪者の中での鉄の掟を破った
どれだけリスクがある行為なのか。犯罪行為を1度でもしていたらDNAデータベースに登録があるはず
国内だけでなく、他次元世界でも起こしていてもデータは共有されている。
クラナガン捜査局では常に最新情報が記録されている
分析はセアト・イビーサが行っていた 

「セアト。お願いだからだれかと一致したと言って」

セアトに分析結果が出ることを願っていた。子供をも茶のように遊び連中は獣以下だ
1度でもその事実が露見されたらかなり苦しめられる

「少し待ってくれ」

「コーリック君の着衣には大量の精液が付着しているから考えてきっと新米じゃないわ」

新米ならここまで派手な事をすることはない。それも大胆すぎる
おそらく過去に逮捕された経験があるはずだ。そこを調べるしかない

『ピッ』

ヒットした。精液の持ち主は名前はログラス・バーボック。年齢は26歳
20歳のときに痴漢で捕まっている。ただし事件の捜査担当者に圧力がかけられた
圧力をかけたのは犯人であるログラスの父親だ。彼は時空管理局地上本部の幹部
6年前はまだ時空管理局の力が強かったので捜査は簡単に行われて書類送検だけ終わっていた
ただ前歴はつくことになった事は間違いない事実ではあるが
だからデータベースに登録されている。性犯罪行為者は法執行機関に住所を報告する義務がある
現住所は東区南部区域ウエストキャロライン地区6番街2丁目13番地にあるマンションの602号室
フィリーはすぐにその自宅に対する強制捜査をするための令状を手配。
さらに捜査指令をかけた。捜査指令は全クラナガン捜査局員に情報が行くことになる
逃げ道は塞がれたも同然だ。退路が断たれた上に周りが敵にしか見えないとなるとどんな方法を選んでくるか
それはあまり想像したくないが、必要ならある強引な方法を取るしかない

「有名人にするしかないわね」

テレビ番組やインターネットを使って市民の協力を得ることをそう呼んでいる
マスメディアの協力と市民の協力があればかなりの効果が期待できる
メディアの影響力は大きい。時にはそれが政治にも影響が出てしまうほどに
だからこそ慎重な扱いが必要なのだ

「いよいよ幕開けね。派手なマスコミの報道が」

フィリーはすぐに中央パトロール本部事務部報道官をしているテリオス・コンパーノに連絡した

『もうこっちでも状況は把握している。マスコミを集めての記者発表の用意はできている』

彼女はさすがは情報統制のプロだと感じた。
上手く情報をコントロールする事で敏感な動きをすることができる

「マスコミ対応は任せます。こちらは捜査に全力を注ぎます。幼い子供を犠牲にする犯人を逃がすわけにはいかない」

『こちらに任せてくれ。プロだからな』

フィリーはよろしくと言うと通話が終わった。これでマスコミに緊急ニュース速報として流される。
誘拐事件と同様の扱いにされるのだから。穏やかに事を進めるわけにはいかない
そしてテリオスは緊急記者発表を始めた報道番組をフィリーの携帯情報端末で確認した

『幼い男性を獣のように扱いました。名前はログラス・バーボック。年齢は26歳』

顔写真も公表して市内から出ることは難しい包囲網を作った
市民という強力な味方をこちらに着けることは大きな戦力になる
幼い子供に性的にイタズラすることを認める連中はいない。
逃走経路を次々と潰していくしかない。まずは長距離バスや船や長距離鉄道などを
車に関しても捜査指令が出ているのでレンタカーを借りるにしても顔写真ですぐに身元が分かる
犯人とされているログラス・バーボックもわかっている。残る手段は自家用車だ
それについてもしないと市外を結んでいる道路に配備されている車両ナンバープレート読取システム
このシステムを使う事で市外に逃げたとしても足取りは常に監視されることになる
このシステムをごまかして簡単に市外に逃げ出すことは難しい

「さてとそれにおまけをつけましょうか」

彼女はそう言うと携帯電話を取り出して暗号回線で港湾パトロール安全保障局に電話をした
情報収集を専門に行っている部署である。それも通信関係についての傍受を

「悪いんだけど手伝ってもらいたい。ログラス・バーボックを探し出してほしいの。得意でしょ?」

そう言うと通話を終えた。要請というよりも命令に近い言い方だが
彼らには貸しが山ほどある。これくらいのことは簡単に協力してくれることは分かっている

「あとはこのお祭り騒ぎがどうなるか」

事の成り行きをテレビ観戦でもしようかしらと、
フィリーはDNAラボで空いている情報端末を使ってテレビ番組を見始めた

「良いのか?こんなところでのんびりしていると後が怖いぞ」

セアト・イビーサ分析官の言葉にフィリーはこれから山ほど苦労が私に押し付けられるのよと語った

「なるほど、時空管理局機動六課組の誰かを受け持つことになるわけか」

「相変わらず情報が早いわね。公式にはまだ発表されていないけど私にも担当を割り振られたわ」

「ちなみにどう料理するつもりだ?」

「私は甘いなんて言葉では片付かないわ。手厳しく対応するだけよ」

次に言葉を出そうとしたときにフィリーの無線機に緊急の情報が流れてきた

『クラナガン捜査局から各員へ。ベルカ州で問題が発生。クラナガン市内にも影響が出る可能性あり』

ベルカ州南部地方で発生した魔力爆弾地下爆発実験に対する警戒からだろう
もしクラナガン市内に魔力爆弾が持ち込まれたら大変である
それを阻止するためにもこう魔力波長を探知するためにさまざまな装備を利用している
魔力爆弾は常に微弱とはいえ魔力波長が出ている。
その魔力波長を調べることでどこの魔石を使用・製造したかで識別できる
クラナガン捜査局が運用している各種センサーでは魔力波長を常に監視している
魔力爆弾は市内にあればすぐに特定することができる。
さらに爆発1時間前になれば魔力爆弾へのエネルギー供給が行われるので更に魔力波長が強まる
起爆装置に魔力爆弾のエネルギーが送られるためである。臨界を超えた瞬間、大爆発になる
半径数十kmは爆心地になるくらいの大爆発を。核兵器と違って放射線などの人体に有害物質を残さない
極めてクリーンな大量破壊兵器とも言える

『ミッドチルダ連邦政府は急激なミッド高を抑制するために、他の外貨への買い注文を入れることを表明』

連邦政府が時間をかけて積み立ててきた基金の中には金融市場安定化のために使う基金がある
現在は7700京ミッドも積み立てている。そしてそれらはいつでも運用できる準備がされている。
基金のお金を使って他次元世界国の通貨に買い注文を入れる
急速なミッド高を防ぐことになるのだ。最近はミッド高を防ぐために頻繁に利用される
外貨準備の評価金額で通貨ミッド計算で3600京ミッドにもなる。
その他に他次元世界国が発行した国債を8500京ミッドほど保有している
おまけに金塊が9500京ミッドにもなる評価額になるものを持っている
ミッドチルダ連邦の財政は豊富である。そこを時空管理局に出すように求められていた
しかし連邦政府も黙って従っているわけではなく、時空管理局に様々な対外工策ではじき出してきた
そのため時空管理局の予算要求に関して比較的連邦政府が優位になっていた
それでも時空管理局から求められる予算案の内、全体の7割を認めるしかないことだった
今は全く異なるが。フィリーはそのニュースを見て少し不気味絵な笑みを浮かべていた
誰もが同じことを思っている

『連邦政府は国道や州間高速道路の改修やさらなる整備を行うため、数千兆ミッドの予算をつけたいと』

予算案は連邦政府のトップである連邦大統領が一定の介入が認められている
ただしあまり強引な予算編成を禁止することを連邦法で規定されている。
連邦政府の予算を連邦議会に提出するのは行政管理予算局だ
この部局は各省庁が実行している政策評価・連邦政府の予算要求調整・予算案策定を行っている。
ただし、すべてが大統領に権限があるわけではない。
連邦政府の予算は連邦議会で審議されて無駄な予算はカットされる
公共事業の中で最も大きなものは道路の新たな整備や維持管理に使われる予算が大きい
特に州間高速道路は国内全域に張り巡らされている道路である
州間高速道路は片側2車線以上。国道は片側1車線以上の2車線道路のことの方が多い
さらに州政府が整備した州道・郡政府が整備した郡道・市道は市政府が整備した市道だ
ミッドチルダ連邦国内にある道路は上記の5種類で構成されている
道路の管理や改修工事による公共事業を連邦政府や各州政府などでも工事を行っている
これらの公共工事によって失業者を少しでも減らしたりすることが求められている
さらに海上警備のために沿岸警備隊や国防のための予算が付けられている
今年の国防予算は9000兆ミッドが組まれている。数多くの航空母艦や巡洋艦や駆逐艦が建造されている。
その軍艦の構造に関しては港湾パトロールの艦艇とほとんど類似している
実際、連邦軍には数多くの港湾パトロールの教導官が派遣されている
連邦軍は海軍と海兵隊と空軍の3つで構成されている。
陸軍がないのは海兵隊がその役割を担っているためである
さらに国内の治安業務は警察権限で対応されているためでもある

「最近はどこの行政機関もお金を使うようになったわね」

時空管理局という抑止力がなくなったことから、代わりの抑止力が必要になった事は事実である
その抑止力のために次元世界連合全加盟国では各国に軍が編成されている
ミッドチルダでも軍事組織が編成されている。
魔導師でなくても国を守れると知り、多くの国民が参加している
愛国心があるということは間違いない。軍に入るには極めて厳しい訓練を受けなければならない
だが、人々を守ることに貢献できるということもあり数多くの国民が参加
また警察業務も時空管理局から各次元世界国に返還された。その警察業務にも参加している
そのため、民間企業の就職状況はどの次元世界国でも完全な売り手市場の状態である
ただし、元時空管理局員ということが発覚しなければの話だが
元時空管理局員であるというだけで、法執行機関への参加資格は剥奪されている
もしその人物が時空管理局時代に汚職などに関与していたことを考慮しての判断からである
一方では消防や救急部門の現場で任務に就いていた時空管理局員の多くの者は、
現場をよく知っていたことから席を時空管理局から各地元自治体の消防救急部門に再雇用
給与などの水準は大幅に減額になったが無職で放り出されるよりはまだ良い方だ

「今の地上治安では時空管理局という抑止力は機能しない。JS事件でAMF装置を開発したことが理由だけど」

フィリーの言う通りだ。
時空管理局による魔法絶対主義があったことから影響はひどくなっている

「だから自業自得だというわけか?」

「否定はしないわ。悪党は悪党よ時空管理局機動六課はとんでもないパンドラの箱を開けたのよ」

自らが所属している組織を破壊するほどの。だからこそ機動六課組を敵視する人間は多い
特に退役時空管理局員からは厳しい視線を受けている。
正義が実行されたというべきなのかは所属する部局により異なるが
クラナガン捜査局からは正義が実行された。だが時空管理局や聖王教会からは嫌な目で見られている
大きな損得勘定を計算が必要なのだ

「組織の浄化機能が働かないと意味がないのに」

時空管理局には数多くの汚職があった。だからこそ今やとんでもない大火事になっている。
火消しのために必死になって動いているのだが、簡単には片付くことはない

「私達中央パトロールには査察部から厳しい調査を常に行われているから大変よね」

少しでも不審な行動が確認されたら内部調査の対象になる
クリーンであることが確認されない限り職場復帰はあり得ない
給与は最低限度しか出ることはない。辛い立場に追い込まれるというものだ
問題がなければおおよそ1週間で査問は終了する。
だが少しでも妙な動き、特に金銭関係で不審な動きがあれば休職期間は延長されるだけ
その間は給与は最も下の給与水準でしか支給されない。
処分で免職になった場合は国民年金だけで、厚生年金は降りることはない
おまけに汚職に絡んでいたとなると再就職は難しくなる。
今の退役時空管理局員と同じ立ち位置になる


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西区中央区域ノースミーミル地区 ウエストクラナガン宮殿 会議室

ウエストクラナガン宮殿の敷地施設は第97管理外世界のフランスにある『リュクサンブール宮殿』に似ている。
クラナガン市政府からミーミル財団に所有権が移され、『ソフィア・ケルベ』『セリーナ・ヘイリガ』の住居
また、ミーミル関係のパーティもこの宮殿で行われている。現在一般の立ち入りは認められていない。
今はセリーナ・ヘイリガとセフィ・ラームの2人が議論を交わしていた

「つまりセフィは了承するべきではないと?」

「セリーナ様。今の段階では火の中に飛び込む必要がないと判断します」

セリーナと呼ばれていた人物はミーミルエネルギーの最高執行責任者
ミーミルエネルギーはミーミルグループ企業の中で最も売り上げが多く、中核企業である
取扱商品は石油・石炭・鉄鉱石等の鉱物資源。小麦・木材等の農作物。魚等の魚介類になっている。
セフィと呼ばれたのはセフィ・ラームという女性だ
彼女はミーミルフィナンシャルグループの最高経営責任者をしている
つまりミーミルグループの金融機関のトップでもある。
ミーミルグループが運営している銀行・証券会社・投資銀行・クレジットカード・保険会社など多種多様だ
特にミーミルバンクが一般から預かり運用している預金総額は次元世界連合加盟国で最大規模である

「でもこれは次元世界連合から要請を受けている。再建のために力を貸してほしいと」

セリーナはベルカ州内の営業拠点をそのまま買うことができる金額としては格安だと判断していた
今までベルカ州内に金融機関の部門はあまり展開できていなかった
一番大きな理由はベルカ自治区であったことが理由である
ベルカ州では数多くの石油・石炭・天然ガスなどの鉱物資源が眠っている事から開発が進んでいる
金融機関がもっと多く必要なのだが、まだまだ少ない。それも比較的規模が大きな金融機関が
ミーミルグループの金融部門であるミーミルフィナンシャルグループで、
ベルカ州への進出の足掛かりとしたのがベルカ州内を営業範囲としているセントラルベルカバンクである。
破綻して金融機関を足掛かりにする。特別珍しいことではない
しかしセントラルベルカバンクが抱えている負債額から懸念する者が多くいるのはじじつでゃ
それでもあえて参加するのはすべてはベルカ州内の営業拠点をに入れたい
それを考えると安い買い物であると考えていた
新たに拠点を新設するよりもセントラルベルカバンクを買収する方が簡単で済む
簡単に言えば看板を変えるだけでベルカ州内の営業拠点を手に入れることができるなら安い買い物だ

「とにかくセントラルベルカバンクの買収は決定事項よ。ただし不良債権処理について素早く行うように」

その通達を受けてセフィは会議室を退室した。セリーナはある問題解決のために検討を始めた。
それはクラナガン商品取引所で売買される原油先物価格に関する対応だ
原油先物価格は多くの製品に影響してくる。
自動車燃料だけでなく発電で使用される重油や天然ガスにも。影響は広がる一方である
クラナガン原油価格は1バレル6000ミッド前後で推移している
JS事件以前とは異なり何倍にも跳ね上がっていることは事実だ。
その影響により自動車燃料価格は大きく値上がり基調にある。
国内の各州にある商品取引所で取引される石油・石炭・天然ガスの取引価格を州に異なり決められている
そのため各州で取引価格は大きく影響することになっている
少しでも安いところから仕入れたいということから国内では24時間1年中絶えることなく売買されている
エネルギー資源開発会社も一喜一憂する場面があるが以前に比べると多額の利益をつかんでいる

『トントン』

失礼しますと言って入室してきたのはソフィア・ケルベという女性だ
彼女はミーミルエネルギーの最高経営責任者と言う肩書だがそれは表向きだ
実際に指揮命令系統のトップはセリーナ・ヘイリガが握っている
ソフィアはあくまでもセリーナの護衛という立場に近い人間である

「セリーナ様。コーヒーをお持ちしました」

「ソフィア。今のこの場にはあなたしかいないのよ。堅苦しい挨拶なんて必要ないわ」

「ですがどこで誰が見ているかわからないので、警戒心を常に持つことは大切かと」

あなたは相変わらずねと言いながらも渡されたコーヒーカップを受け取る

「セントラルベルカバンクについては抵抗意識が多いことは間違いないですね」

「彼らの中には今までベルカ自治区時代の権威があったかもしれないけど、今はそんなものは通用しない」

セントラルベルカバンクの業務の中で聖王教会債の発行の主幹事を務めていたことから、
かなり大きな利益を得ていたのだが、時空管理局債と同じように聖王教会債も事実上破綻
主幹事をしていたセントラルベルカバンクはかなり落ち目にあることは疑いようのない

「本当に彼らは金を用意すれば嫌な動きでもするでしょうね。ところで自己破産者はどれくらいになっているの?」

ソフィアは1冊のファイルを手渡した。
そこにはセントラルベルカバンクの財務状況と関係する人物や企業に関する情報は事細かに記載されていた
自己破産者はかなりの数になっている。聖王教会債の運用を目的に融資を受けていた者が多かったためだ
さらに時空管理局債の運用目的で融資を受けていた者も大勢いたことは事実である。
融資を受けていた彼らが自己破産したことにより、セントラルベルカバンクの財務状況は大幅に悪化した
買収したミーミルバンクもただ逃げられるのを黙っているわけではない。
自己破産者が所持していたさまざまな財産を差し押さえて少しでも不良債権になる金額を押さえ込んでいた

「ソフィア。これは頭が痛い問題ね」

「同意見です。セリーナ様でしたらどのような良いアイデアはありますか?」

「とにかく押収できるものはすべて差し押さえて。逃げ得は許さないように」

分かりましたというとソフィアは会議室から退室した
ベルカ州内では数多くの鉱物資源の開発が進められている
ミーミルエネルギーも石油・石炭・天然ガスなどの鉱物資源開発を数多く進出している
元々豊富に眠っていることは数年前の資源調査で分かっていた。
しかし聖王教会は環境保護を根拠に開発することは認めなかった
州政府に移行後は開発権料を支払えば、
州政府と連邦政府が定めた環境基準内であれば資源開発が認められている

「念のため、裏から手を回す必要があるかもしれない」

セリーナはそう言うと携帯電話を取り出した。もちろん暗号回線のものである。
ミーミルグループとクラナガン捜査局は数多くの技術開発でタッグを組んできた
それだけにこの宮殿がある所にはパトロール捜査官が常に警備についている
不審な行動をしている者がいれば問答無用で職務質問を行っている
ここを攻撃されるといろいろな意味でまずいからだ

「ユウ・ミズノ捜査長官。こちらで分かった情報ですが、セントラルベルカバンクに関連する情報を提供します」

『あなたから情報提供とはかなり珍しいですね』

「ベルカ州の事案に関しては連携して対応しなければならない。特に経済的な問題については」

ベルカ州内の経済状況は常に把握しておかなければならない
セントラルベルカバンクの情報についてもである
州内の経済状況を把握することで聖王教会過激派が暴れることも想定される

「この情報は連邦政府や州政府にも提供します。ただ、あなた方にはこれから多大なトラブルを引き受けてもらうので」

これは事前のプレゼントであるとセリーナはミズノ捜査長官に伝えた
捜査長官は感謝しますというと関連情報をクラナガン捜査局に提供ルートの手はずを整えた

『こちらもベルカ州内の安全保障は重要な課題です。ご協力に感謝します』

民間企業だからこそ得られる情報は存在する。
政府関係の組織では得ることが難しい分野の情報も存在する。
それだけに民間企業から提供される情報は時には有益な物もあればまずい物もある

「我々ミーミルグループとしてもベルカ州で経済活動する上で安全保障が確実でなければ身動きが取れない」

そういう状況にならないことを願っていますがとセリーナは言うとあとはお任せしますと言って通話を終えた
彼女はため息をつくと会議室を退室した。

「古き時代にはさようなら。これからは新しい時代の幕開け。かなり激しい展開になるでしょうが」

セリーナはある写真を大切そうに財布から取り出してみた。
それはクラナガン捜査部を開設する時に銃火器の共同開発を記念した写真だ
クラナガン捜査局のトップであるユウ・ミズノ捜査長官とセリーナたちが写っていた
今後の事を考えながら撮影当時はどれくらいの正義が果たせる組織を生み出せるか。
それを話し合っている時の写真である。当時は時空管理局からの圧力の影響があまりに強すぎた
影響はクラナガン捜査局の前身組織であるクラナガン捜査部発足する寸前まで妨害工作は続いた
だが今は逆の立場になっている。現役時空管理局員や退役時空管理局員はさまざまな調査を受けている

『ピーピーピー』

「セリーナよ。何かあったの?」

発信者は電話番号を確認してすぐにわかった
ミーミルグループのシンクタンクでミーミル情報研究センターに在籍していた女性だ

『セントラルベルカバンクの融資焦げ付き額では全融資額の2割以上です』

かなりずさんな融資をしていた事は間違いないと
初めからある程度は予想していたが全融資額の2割以上が不良債権となるとかなり厳しい

「引き続き情報収集と分析を」

『わかりました。この情報は証券取引委員会に提供しても問題ありませんか?』

証券取引委員会(SEC)に情報を流すことで連邦行政府機関に貸しができる
今後の事を考えると大きな利益に結ばれるであろう

「任せるわ。あなたにね」

『わかりました。連邦政府と連携することで対応します』

セリーナはそう伝えると通話を終えた。
ようやく安堵できる道が開けたことに感謝していた

「ベルカ州での問題にならなけえれば良いけど」


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ベルカ州中央地方ベルカ市 郊外 港湾パトロールベルカ基地 基地管制センター

ベルカ基地のトップであるレパーズ・サットン統合軍司令官は聖王教会の状況把握に務めていた
港湾パトロールが運用している人工衛星や早期警戒管制機などを使って監視していた
聖王教会本部で何か大きな動きが出るのではないかと警戒していた
誰もが聖王教会の動きに注視していた。
何か大きな行動をするのではという疑惑があるだけに見逃すわけにはいかない。

「聖王教会過激派の問題は大きいな」

教会騎士団が大幅に縮小されて過激派の武力衝突は数多く州内で発生している
ベルカ自治区時代の栄光を取り戻そうと必死なのだ。それだけに警戒心を維持することは最重要な課題である

「何もなければ良いが」

基地管制センター内にある管制官はベルカ州内をリアルタイムで監視していた。
各種戦略システムを運用して州内に攻撃するような人物・魔導師・反政府組織がいないかどうか

「今のところは静かな状況だが。魔力爆弾の地下爆発実験をしたとなると今後に大きな問題になるかもな」

魔力爆弾はクリーンな大量破壊兵器だ。地上に汚染物質を生み出すことはない
核兵器と違って1度に多くの人々を犠牲にすることに。それを阻止するのが港湾パトロールの役割である
ベルカ州内の情勢は極めて不安定である。それを上手く抑えることで安全保障に貢献しなければならない
問題解決のためにはあらゆる努力をしなければならない。すべてはミッドチルダ連邦に住んでいる国民のためだ
例え州が異なっていたとしても国民であることは間違いない。
だから、間違いは正さないといけない。正しき流れに向かって

『ビービービー』

基地管制センターで警報音が鳴り響いた。

「州北部で未確認航空物体を観測。魔導師ではないと思われます。現在、レーダーと人工衛星による観測作業中」

管制センターはマニュアルに従いながらも臨機応変に対応していた
今後のことを検討しながらである戦略を練り始めた

「北部地方で戦闘機か。やばい展開にならないと良いんだが」

無線識別によるとクラナガン捜査局のものではなく、連邦軍のものでもない
つまり識別不明の飛行物体。それもサイズから考えて航空機の可能性が高い
例えば戦闘機など攻撃を目的とした飛行物体であることは断言できるかもしれない
残された問題はなぜベルカ州北部地方にそれがいるかだ。それを解明しない限り警戒態勢を敷くしかない

「レーダーサイトからの観測情報を常に監視。港湾本部長と捜査長官にはこちらから連絡する」

レパーズ・サットン統合軍司令官の指示に管制官たちは次々と指示を出した
問題はその識別不明航空物体がどこに向かうかだ。
すでにベルカ州北部地方ノースベルカ市に警戒監視のために駐屯している戦闘機飛行隊
第702戦闘飛行隊がスクランブルしている。第702戦闘飛行隊はF/A-18Eで構成されている飛行隊だ
ノースベルカ市の空港には現在4機が派遣されている。最悪の事態になることは避けなければならない
ベルカ州内でクーデターを起こされるわけにもいかない

「F/A-18Eのネヴァン1と2がノースベルカ空港からスクランブル。針路012に向かっています」

「警戒監視を続けろ。それとネヴァン1と2に指示。最悪の場合は自衛権の行使を認めると」

つまり臨機応変な対応を認めるということである。
現場では指示を待っていては死ぬことは多い。最悪の事態に備える必要がある

「識別不明航空機はやはり大型航空機です。レーダーによる観測情報で確認」

レパーズ・サットン統合軍司令官はすぐにその情報を港湾本部と連邦国防省などに提供するように指示した
国家安全保障に関わる大問題なら当然である。最悪の事態に備えて行動しなければならない

「ベルカ州政府にも連絡をしろ。何か問題事案が発生した時に素早く対応できるようにな」

州知事には各州内に駐屯している港湾パトロールや連邦軍の部隊運用で限定的ではあるが権限は存在する
必要に応じて運用することで素早い行動をすることができるのだ
連邦政府の判断を待っていたら被害が拡大するだけという自然災害も存在する。
ミッドチルダ連邦の各州知事には州内の限定的災害対応を専門とする緊急事態管理局がある
緊急事態管理局というのは州によって名称は少し異なるが大筋の権限は一致する
クラナガン市ではクラナガン緊急事態管理局と呼ばれている。
市内で大規模災害や安全保障上の脅威が発生した場合はまずはここが権限をフル活用する
その後連邦行政府である国土安全保障省傘下のミッドチルダ緊急事態管理庁と共同でタッグを組む
素早い対応が必要なら国防省や連邦軍も対応に動く。人命第一で対応するのだ

『ピーピーピー』

レパーズ・サットン統合軍司令官の携帯電話に着信が入ってきた
発信者は港湾本部長のリヴィナ・トラヴィック港湾本部長だ

『レパーズ。状況報告を』

「ベルカ州北部地方で戦闘機と思われる航空物体を確認。現在、詳細な情報を確認中」

何かリクエストがあるなら対応できる範囲で素早く動きますがと伝えた
リヴィナからはデフコンレベルの変更可能性があるなら、素早く対応するようにと伝えてきた
確かにデフコンレベルが変わるほどに事態が悪化したらかなり状況は危険だ。
これ以上状況が悪化するのは好ましいことではない

『確定するにはどれくらいの時間が必要なの?』

「最短で数分以内。人工衛星と対空レーダーで観測中。魔導師ではなく航空機であることは間違いない」

『できるだけ素早い対応を行うように。それと問題が解決するまでにはベルカ州内の警戒態勢は厳重に』

それは十分わかっている。今のベルカ州はある意味ではポップコーンと同じである
破裂するタイミングを待っているような状況だ。1度破裂すると連鎖反応を示すことになるかもしれない
その影響を避けるためには苦労も多いのだ

『とにかく未確認飛行物体が何かを最優先で割り出して。必要なら人工衛星とレーダーシステムをフル活用』

リヴィナ・トラヴィック港湾本部長の指示に了解ですとレパーズは答えた
今は状況が穏やかに進むかどうかの瀬戸際なのだ。油断はできない

「連邦空軍の航空機ではないことは間違いないのですか?」

『国防省にも問い合わせたけど、彼らは一切そのような事はしていないと発言しているわ』

リヴィナは念のため港湾パトロール安全保障局に情報を調べるように指示している
連邦軍が何かのトラブルでこちらの空域に入ってきた可能性はある。あくまでも可能性だが
そこでリヴィナは国防省の統合参謀本部に問い合わせた。
だが彼らはそういった事はしていないとの回答であった。彼らもこちらとトラブルを起こすようなことはしないだろう
お互い連携体制があるからこそ、今のミッドチルダ連邦首都防衛があるのだから

「とにかくこちらは最優先で正体不明機の所属などを確認する。現場に向かっている戦闘機には自衛を容認している」

『それに関しては異論はないわ。仲間を守るには当然なのだから』

リヴィナからはとにかく情報収集を最優先としながらも必要なら迎撃を許可した
難しい選択ではあるが、自衛権の行使は国際法上でも認められた権利である

「了解。港湾本部長」

レパーズ・サットン統合軍司令官はリヴィナ・トラヴィック港湾本部長との通信を終えると司令を出した
迎撃に向かっている戦闘機に攻撃準備命令を出したのだ。
さらに基地に配備されている巡航ミサイルのトマホークの発射態勢にも入っていた
正確な目標設定はまだだが、いつでもトラブルの基になりそうな拠点に攻撃準備指令を出すのは当然。
リスクは最小限にしなければならないのだ

「それにしても厄介なことになったな。連邦軍でもなければこちらの部隊でもない。どこのバカなのか割り出さないと」

状況悪化になるだけの方向に進むというのは好ましいことではない。

「未確認飛行物体はベルカ州北部地方のノースベルカ市中心部を基点に針路183度で飛行中」

「かなりまずい展開だな。このまま事が続くとどうなるか」

『人工衛星から撮影撮影された画像を受電中』

管制官がそう報告するとレパーズが操作している情報端末にその画像が送られてきた
雲の上を飛行中だったため、すぐに機種の特定に成功した

「機種は爆撃機か。それもB-52。状況はかなり危険な方向だな」

B-52には大量の爆弾が搭載可能だ。最大100発近い対地爆弾を搭載できる
もしそれらがどこかに向かって投下されたら、州政府の管轄で片付く話ではない
国家安全保障において問題になるのだ。連邦大統領とトップとする連邦政府事案になる
それにその中に魔力爆弾が含まれていたら状況は最悪になる
念のため魔力数値を計測したが魔力爆弾が積み込まれていると確証を得るほどの数値は出なかった
状況はかなり危険であることは疑いようのない事実だ。B-52には100発近い対地爆弾を搭載することができる。
重要ライフラインの拠点に攻撃をされたら、州内の安全保障に大きな影響が出てしまう
そんな事は絶対に阻止しなければならない。だからこそミサイル攻撃に関してはシビアな選択が求められる

「対空ミサイルの発射準備に入れ。ベルカ州政府に対して警報を発令」

州政府に警報を出すということは攻撃される可能性が極めて高いことを示している
警報を受電した州政府は危機管理部門をフル活用して対応に入らなければならない

「州政府にこちらで得られた情報を提供。トラブルになる事を避けないといけないからな」

基地管制センターの1人の管制官が無線周波数からある組織が使用する通周波数を割り出した

「時空管理局がこちらに対して攻撃を仕掛けてきたか」

それは時空管理局地上本部が使用していた無線周波数と同じだった
偽装のために使用しているのかどうかはわからないが、攻撃態勢に入ること事態に問題はない
ただ唯一分かっていることは民間旅客機や貨物航空機ではないということ。
それと連邦軍の航空機でもない事だ。つまり攻撃するのに十分な材料はそろっていることを示している
もう待つ必要はない。何としても迎撃しなければならないことは間違いない

「大統領に連絡して攻撃許可をもらうしかないな」

レパーズ・サットン統合軍司令官はアンナ・ランシング連邦大統領に許可をもらう準備に入った。
ただ現時点で直接、大統領に許可をもらうのではなく、クラナガン捜査局にも指揮命令系統にルールがある
クラナガン捜査長官と港湾パトロール統合参謀本部の承諾を得なければならない
時間的余裕がないが、規則は守らなけえればならない。
今の段階では港湾パトロールが自衛権行使をするための理由としては少し弱い
だがこれ以上事態が悪化することは何としても阻止しなければならない
ベルカ州内で大量の対地爆弾を投下させる余裕を与える暇を持たせてはならない
レパーズは今後の状況について、かなり危険な見通しを示していた。
もし搭載されている対地爆弾が投下されたらどれほどの被害になるか
そんなことなど想像したくもない。だからこそ急ぐ必要がある

「守らなければならないことは事実だ。このベルカ州に住んでいる国民のためにも」

レパーズはそう言うとすぐに関係組織の幹部に情報を流す。
行動するための命令が下りるのを待つ事にした。

「爆撃機はどこに向かっている。この針路から計算するとベルカ市に向かっているようだな」

レパーズは狙いは聖王教会かそれともこちらに対する攻撃か
それを判断するには情報が少ない。とにかく今は情報収集を行わなければならない

『ノースベルカ空港からスクランブル発進したネヴァン1と2から情報が入電』

爆撃機には大量の対地爆弾が搭載されているということだ。
投下されたらどうなるかは簡単に想像できる。唯一の幸運は魔力爆弾が搭載されていない事だ
だがそれでも僅かな安全確保ができたに過ぎない。

『ピーピーピー』

レパーズが操作していた情報端末にホットラインを示す番号から通信が入ってきた

「捜査長官。どうします?」

通信をしてきたのはクラナガン捜査局のトップであるユウ・ミズノ捜査長官だ

『大統領に報告を入れたところだよ。でも波が来るなら撃墜命令を出すことを視野に入れて行動を』

波というのは攻撃される可能性があるならという意味だ。
つまり所属不明航空機が不審な動きをしたら対空ミサイル攻撃をしても良いと
その後始末を捜査長官は面倒を見てくれるということである。
それならこちらもいろいろな選択オプションがある。
まずは無線などの通信で降伏の呼びかけ。それがだめなら機関銃での威嚇射撃
それでもだめというなら、ミサイル攻撃をして最悪の事態になる前に片づける

「ネヴァン1から無線交信あり。爆撃機はこちらの指示に従って現場空域付近にある飛行場に着陸すると」

それは良いニュースだ。今後の事を考えるととりあえずは山頂まで到着した
だが問題はここからだ。いったいその爆撃機がどこの所属で誰が運用していたのか
それを調べないと反政府組織にまでたどり着く事はできない。ゴールへの近道などはないのだ

「飛行場に港湾パトロール海兵隊を。安全確保のためにマリネット基地へ協力要請だ」

今は少しでも多くの兵員が求められる。それも俊敏に動ける部隊が求められる。
自爆されたら最悪だ。それを阻止するためにも着陸予定の飛行場にはできれば先遣部隊を送り込みたい
例えそれが間に合わなくても部隊編成は必要になる。

『いったいどこの連中が締め上げるしかないな』

レパーズ・サットン統合軍司令官は口で言うのは簡単ではあるが、
問題解決には長い時間が必要になることが分かっていた
それでも努力するしかない。見逃すことは許されない
首都防衛のためにも安全確保は最優先で行わなければならない

「状況把握を詳しく行わないとまずいな」


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南区北部区域ハーディー地区5番街5丁目10番地 地区パトロール事務所

ワンワールドバンクの立てこもり事案については膠着状態だ
今のところ何の動きもない。それが少し問題であることは間違いない
何も動静がないということは、今後の対応方法の選択肢が少しずつ減少するということだ

「それは少し難しいというものである」

アルシオーネは次の行動について検討に入っていた。残された手段は限られている。
それに少しでもこちらからキリカードがなくなれば大きな事にもなりかねない
被害を最小限にしながらも対応しなければならないのだ。難しい物である

「何か良い方法でもあれば良いけど」

彼女は地区事務所の情報センターから支店内を映し出しているの監視カメラ映像を見ていた
中央本部刑事課のクリー・ヴランド刑事はどうすると質問をしてきた。
誰もがこの状況の中で対応の難しさを分かっていた
強行突入をすれば立てこもり犯は自爆をする可能性は極めて高い
だがこちらも待っていることは難しいことは十分理解している
メリットとデメリットを上手く計算をしたうえで行動する事が求められる
リスク管理を考えると、強行突入を選ぶわけにはいかない
最悪の事態に備えて行動すれば最小限のリスクで事態の収拾がつくかもしれない
あくまでも可能性の段階ではあるが。

「人質も時間が経過すれば耐える事はできないでしょうね」

人間というのはどこかでこれ以上は耐える事はできないというラインを超えると、
暴走することは珍しいことではない。それを考えると何とかしなければならない
これ以上事態の悪化を防ぐためにもだ。何としてもできるだけ早期に事件解決しなければならない

「人質の動きはどうなっている?」

クリー・ヴランド刑事の質問にアルシオーネは今のところは冷静だと答えた
銀行支店内にある監視カメラの映像をこちらに回してもらうことで早期に対応することができる
だが今のところ、一気にことを進めるほどの材料は何もない
穏やかに人質事件の解決に話を向けたいが今の段階で手も出せばどうなるか見当もつかない。
状況は圧倒的にこちらに対して完全に不利。問題解決のためには事態の悪化を最小限にすることが求められている

『ピーピーピー』

アルシオーネの携帯電話が着信を告げていた
発信者は中央パトロール管制センターからだ。何か状況に変化が出た可能性がある

「アルシオーネ・トラヴィックです。何か問題解決に繋がりそうな情報がありましたか」

『バッドニュースだ。マスコミが報道合戦を始めた。気をつけろ。それとFBIも動き出している』

それは良くないニュースだ。FBIが動くとなると現場指揮権に関してもめることは確実である
トラブルが増えることは避けるためにも早期解決が必要だ。

「こちらに到着するまでの時間は?」

『およそ15分と言ったところだろう。少し短くなるかもしれないが』

「それまでに決着をつけるしかないわね」

『そうしてくれるとこちらも後始末は楽です。FBIに管轄権を握られるのは好きではありませんので』

つまり銀行強盗犯と人質の監禁。
もう1つ罪が適用されたら三振法で仮釈放なしの終身刑か死刑だ
三振法になれば一生刑務所から出ることはない。
仮に出ることがあるとするなら死体になった時だけだ

「昔の同僚の言葉を思い出すわ。バディを組んでいた時の」

「何を言われたんだ?」

「時には完璧に対応することができない事があっても、私達にはそれが求められる」

アルシオーネはそういうことを何度も言われていたわと。
それは当たっている。クラナガン捜査局には完璧であることが求められている
どんな状況であってもそうすることが当たり前なのだから

「ワンワールドバンクのハーディー支店人質事案に関わっている者に通達。今は手を出すな」

アルシオーネは無線で指示を出すと携帯電話を取り出してある番号に電話をかけた

「協力を要請します。お願いできませんか?」


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東区東部区域 港湾パトロール本部基地 中央区域 港湾パトロール本部庁舎 後方支援隊司令官執務室

後方支援隊とはまさに前線で戦闘をしている港湾パトロール飛行隊は港湾パトロール艦隊や海兵隊など、
彼らの活動を後ろから下支えをしている部隊である。
時には厳しく指導監督をすることもあれば後方支援として前線を支える
まさに戦闘部隊にとってはなければならない部隊である
その後方支援隊司令官をしているのはホール・マヴィックである。
彼は港湾パトロールに入局する前は民間船舶会社で船長をしていた
新暦70年に入ると港湾パトロール艦隊に転職。73年に海賊船拿捕時の負傷の影響で前線部隊から離れた
それでも後方支援という形で任務遂行を志願したことから後方支援部隊に配置転換
昨年に後方支援隊司令官に着任した。
港湾パトロール艦隊に所属していた事から後方支援の必要性はよく理解していた
だからこそアルシオーネは彼を経由することで実働部隊を動かせる人材であるということを理解していた

「面白くなってきたな」

現在の港湾パトロールに属する部隊展開の状況把握を執務机の情報端末で確認していた
ベルカ州内での爆撃機の対応になると州内に爆撃攻撃をする気はあったのかもしれない
それが事実ならどこの敵対勢力が動いているかを調べなければならない

『ピーピーピー』

ホール・マヴィック後方支援隊司令官の携帯電話に着信が入ってきたのはアルシオーネだ
捜査部捜査官は数多くの港湾パトロールの部隊司令官と連携が取れる
部隊の司令官だけでなくさまざまな情報機関の幹部とも顔を知りあっている関係である
だからこそ少しの無茶が簡単に通るケースが存在する

「何かトラブルでも起きたようだな」

アルシオーネから連絡をしてくるということは、
港湾パトロールの部隊が何かのために動いてもらうことを求めていることを彼は察した。
だからこそトラブルの内容を聞く必要がある。

『ワンワールドバンク関係となるとさらにひどい事案に拡大する可能性があります。そこでお願いが』

「嫌な予感だな。何をリクエストか聞いてからでないと判断できないが」

『特殊部隊にあることをお願いしたいのです。港湾本部長に直通で伝えると問題になるかもしれないですし』

アルシオーネ・トラヴィックはある人身売買の被害者だ
その時に彼女を含む3人がクラナガン捜査局に同時に保護された
保護された後はミーミル財団とクラナガン捜査局が共同運営をしている保護孤児院で暮らしていた
3人の子供の名字が分からなかったので、名前はトラヴィックという名字で統一された
リヴィナ・トラヴィックは港湾パトロール本部長。セレナ・トラヴィック空港パトロール本部長。
港湾パトロールと空港パトロールのそれぞれ幹部職だ。唯一アルシオーネだけは捜査部で在籍している。
3人の仲は極めて良好で常に情報共有を行っている
簡単に言えば最悪な事態になっても臨機応変に対応できるように裏口の門番役をしている
中央本部捜査部はさまざまな事件や組織間抗争を取り扱う。
それだけに多くの機密情報を見ることが増えている。
上層組織ではクラナガン捜査局でつながっていても、
他の部署の機密情報にアクセスさせることは期待できない。
理由は1つだ。上部組織が同じであっても手のうちを簡単に見せることは難しい
互いに利害関係が絡むとなおさらだ。

「後方支援隊司令官の俺を通すことで港湾本部長には事後報告で済ませるつもりか」

アルシオーネはお察しの通りですと答えた。
中央パトロールから港湾パトロールに依頼すると手順というものに囚われる
だが今はそんな猶予は残されていない。だからこそアルシオーネは友人である彼に連絡してきたのだ

『何とかできませんか?お互いのためにも』

「良いだろう。ただし条件がある。手柄はこちらでもらう」

部隊を動かすにはそれなりの理由が必要だ。
安全保障上必要な状況であっても。

『異論はありません。人質が全員無事に救出できるなら、手段を選ぶことはしません』

アルシオーネは手柄はお好きにしてくださいと彼女は通話を切った
ホール・マヴィック後方支援隊司令官はすぐに動きを見せた。
彼はすぐにアーク・レイリ統合軍司令官に電話で状況を説明。
部隊出動に関する要請を出した。こちらには手柄が舞い込んでくるという情報もセットでだ
見返りが十分であれば強力には大きくつながることは期待できる
退役時空管理局員のユラザーク・ギャスシーの身柄を拘束することができれば、
大きな成果を得ることができるかもしれない。
そのためにも最優先で問題解決することが必要だと説得した
退役時空管理局員がそこまで追い詰められると司法取引でいろいろと何かを喋るかもしれない
簡単な話でえさの配分さえ間違えなければ、時空管理局が過去に起こした不祥事の情報が得られるかもしれない

『その情報で本当に上を説得してから部隊を動かしたいけど余裕はないわけね』

「こちらとしても見返りがあるなら何とか対応するべきかと」

『良いわ。手続きはこちらで済ませるから港湾パトロール海兵隊を派遣させる』

港湾パトロール本部基地に配置されている部隊の統合司令官である彼女が許可すれば多少無茶でも話は通る
事後に部隊を動かしたことの正当性が証明できれば何とかなる
これくらいのことで処分になるようならとっくの昔になっている。
運も実力かもしれない。時には飛び込んできた支援によって情勢が大きく変わることになる

「港湾パトロール海兵隊の第9海兵特殊作戦軍を動かしたい」

第9海兵特殊作戦軍は名前の名の通り、特殊部隊である。総兵力1000人ほど
司令部は港湾パトロール本部基地になっている。
今はベルカ州に一部の部隊が派遣されているが少しの人員確保をするのは簡単な事である

『良い手ね。彼らは特殊部隊の中でもプロ中のプロ。バライド・ジョーシック大将に連絡して準備指令を出すわ』

バライド・ジョーシック大将は港湾パトロール海兵隊の特殊部隊で4年間ついていた戦士だ
さらに政治的背景などの読みもよく理解している。
時には港湾パトロール部隊運用の戦略会議では時には奇抜な提案をすることも
だがそれは1人も犠牲者を出さない作戦を立案実行するためである
時には奇抜な作戦が求められる事があるのだ

「運命の玉を転びだしたな」


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東区中央区域 上空3000m UH-60(無線識別:BH6)

ラジェットが搭乗しているヘリは順調に時空管理局機動六課基地に向かっていた
情勢はかなり危険であることは分かっていた。
ベルカ州でのトラブルが機動六課組に影響が出ることを懸念していた

「機動六課の警戒を増強するしかないな」

彼は機動六課基地が近くにある地区パトロール事務所と連絡を取り合っていた
もし基地が強襲されたら、はっきり言って簡単に物事を解決することはない
それゆえに安全確保は行う必要がある

『今のところ機動六課基地の周辺にはパトロールカーが5台待機している』

「さらに増強しろ。中央本部と港湾本部に連絡して、人工衛星からの監視も強化だ」

ラジェットの指示にそこまでする必要があるのかと言った感じだった
問題を少しでも増やさないためにも必要な措置だ
被害を最小限にしないといけない

『港湾本部からBH6へ。中央本部SA11に連絡事項があるので無線傍受を』

ラジェットはすぐに無線を聞くことにした。
港湾本部からの無線内容によってはかなり危険な事になるかもしれない
連絡事項はシンプルのものである。『機動六課基地への攻撃態勢をする反政府組織がある』とのことだ
それはかなり危険である。ただでさえ破裂寸前の風船のような状況なのだ

「中央本部SA11から港湾本部。機動六課基地の護衛要員について配置準備指令は出せるか」

今は警備に力を注ぐしかない。
反政府組織であることが断定されれば、先制攻撃を仕掛けるかもしれない
だがそれも断定ができなければ部隊を動かす事はできない。
それに港湾パトロールの各部隊の最高司令官はミッドチルダ連邦大統領なのだ
つまりアンナ・ランシング大統領が部隊を動かすことに同意しなければ認められない

「クラナガン市長に緊急の災害対策のために部隊運用を求めろ。大統領には事後報告する」

『そんな事をしたら責任を取るのはこちらだ。承諾できない』

「なら大統領を説得すればすぐに動ける部隊準備をしてくれるか?大統領は俺が説得する」

そこに港湾本部長のリヴィナが通信に割り込んできた

『ラジェット。リヴィナだけど、いくらあなたでも無茶よ。大統領を本気で説得するつもり?』

「リヴィナ。これ以上血が流れるような事態は避けたい。何としても穏便に事を収めることが求められる」

『口で言うのと実行するのは全く状況が異なるわよ』

彼女の言う通りだ。
口で言うのと実際に説得するのを比べると比較は難しい

『本当に説得できる材料はあるの?元々機動六課基地の東隣の海にある海域には艦船が配備されているのよ』

「誰かがしないといけない事だ。とにかく部隊編成に関しては任せる。警戒レベルを引き上げてくれ」

ラジェットはすぐにアンナ・ランシング大統領にコンタクトを取った
大統領とはすぐに連絡を取ることができた

「大統領。お願いがあります」

『すでにこちらでもいろいろと情報を確認しています。ですが本気で私から命令を出してほしいと?』

「時空管理局機動六課を強襲されたら被害は甚大になる。そんなバカな結末は迎えたくない」

『何とかしましょう。有効的な方向に話を持っていくべきとあなたが言うなら』

ラジェットはできるだけ早く機動六課基地の安全が担保されなければ危険なことになりかねない
状況が悪化する方向に進むこともだ。そのためにもあらゆる方法で防衛準備態勢に入るべきだ

「機動六課基地上空を人工衛星で常に監視。魔導師の動きがあれば即時戦闘態勢に入るように準備を」

『大統領の説得は任せるわ。上手くやりなさい』

「任せておけ。俺は必要なら神様とだって取引してみせる」

そう言うとラジェットは無線交信を終えた。携帯電話を取り出してある短縮ボタンを押した
その番号は機密扱いになっている大統領府の通信センターに繋がる番号だ

『ラジェット。あなたからコールとは恐ろしいわね、何を考えているの?』

暗号回線でアンナ・ランシング大統領と直通でつながった

「時空管理局機動六課基地の警備のために港湾パトロールの部隊展開の増強を依頼したい」

『問題は何か出ているの?』

「状況によっては考えられる。機動六課は我々中央パトロール本部捜査部で預かる予定です」

その直前に攻撃を受けたらいろいろと面倒なことになるとラジェットは分かっていた
クラナガン捜査局にとっては身柄保護対象者にトラブルが起きる事は避けるべきだと
本来なら証人保護対象者に対する保護を担当するのは連邦保安局の担当になる
だがクラナガン市内では中央パトロールの査察部が証人保護を行うことが多い
確かに連邦保安局とも連携して対応しているが。それでも彼らだけに任せるわけにはいかないのだ

『つまり早期の証人保護対象者リストに名前を乗せたいと?』

「はやて・八神が聖王教会のカリム・グラシアと関係が密接だったことは把握していますね?」

『もちろんよ。ベルカ州の最大の困難はそこになるのだから』

聖王教会と機動六課組の関連が深いことから大きな問題になることは想定されている
連邦政府と次元世界連合は聖王教会が過去に犯した犯罪について徹底的に調べ上げている
どんな些細な情報であっても見逃すことは許されない。
連邦政府や次元世界連合は聖王教会の不祥事を探し出そうと必死だ
すでに何千件ものトラブルを抱えていることが確認されている
だがそれでは調査している部局は許すつもりはなかった。さらに念入りに調べ上げようとしていたのだ。
下手をすれば聖王教会を潰すような興味深い話がないか徹底的に。
もうここまで来ると何が出てくるかわからない。
聖王教会側は想定したくないだろうが、次元世界連合はもっと仕掛けようという覚悟を持っている

「フローレンス州の方はどうですか?」

クラナガン市の西隣の州であるフローレンス州にはクラナガン市の周辺の州であり、
この『ご近所』で時空管理局の災害対策部隊の基地が設置されている
トラブルがいくつか発生している事はラジェットの耳にも入っていた
それを大統領はどのような方向性でケリをつけるかを聞き出そうとしていた

『あそこが厄介なことになっている事は把握しているわよね』

「大統領。もちろんです。何かトラブルが?」

ラジェットは大統領の発言から少しばかり大きなトラブルが出たことを察したのだ
ベルカ州とフローレンス州は首都を守る時の脅威判定で上位にランクされている

『早速引き起こしてくれたわ。それも9時から10時の間で2件も。州警察では手が追えず、FBIに話を放り投げたわ』

州警察も面倒を抱えるのは嫌なのだろうことはラジェットにもすぐに察しがついた
フローレンス州としても時空管理局の基地があることでフローレンス州政府は危機感を持っている
些細なトラブルであっても州政府の存続に関わりかねない。
だからこそ面倒な事を片付けたがるのだ。

「どんなトラブルですか?」

『FBIからの報告によるとベルカ州での魔力爆弾地下爆発実験の次に聖王教会の一部部隊が動いたそうよ』

「過激派と呼ばれている連中ですか」

聖王教会過激派、今までベルカ自治区時代に政治を握り好き勝手にしてきたが州政府に移行後は権力を失った
だからこそ、このタイミングを狙った。いや狙ったのではなくこの状況を作り出したのかもしれない

「それは面倒なことに。魔力爆弾がクラナガン市内に持ち込まれた可能性があるということですか?」

『それを調べるのがクラナガン捜査局だと私は考えているわ。このようやく安定した平和を何とかするためにも』

アンナ・ランシング大統領の発言を受けて分かりましたとラジェットは答えた
ミッドチルダ連邦の首都を守るためには時には手順を待っている暇がないこともある
事後納得させるだけの根拠があれば良いのだが

「大統領。念のため港湾パトロールに連絡を。警備態勢を最高レベルまで引き上げるように」

『すぐに命令を出すわ。何としても2つの州でのトラブルを解決しないと』

「我々も早急に対応できるように手はずを整えておきます」

ラジェットはそう言うと通話を終えた。いよいよ物語は一気に盛り上がってことになる
ベルカ州では今も聖王教会過激派に属する人間が多く活動している
かつての栄光を取り戻そうと必死なのだ。そんな事はもうありえないのに
それでも甘い汁を吸う事しか考えていない。
蜜の味を覚えてしまうとそれを欲するためにどんなことでもするのが生き物だ

『ラジェット。あなたがいじめる相手のはやて・八神さんにはある意味では同情するわ』

「大統領。こちらが手厳しく対応しなければ死ぬだけですので」

ラジェットは手厳しくするのは当然であるという感じで大統領に報告した

『機動六課組の情報は何か上がっているの?』

「どうやら狙われていることは事実です。まだ詳細な情報は分かりません」

時間がないことは分かっていますので素早く対応するとラジェットは大統領に報告した
ラジェットにとってはクラナガン市を守ることが優先的な課題。

「大統領。クラナガン市と近隣州を守るためにもデフコンレベルについてはクラナガン捜査長官と慎重に論議を」

ラジェットのそのような政治的権限はない。だが裏社会を熟知している。
後始末を少しでも楽にする方法を選ぶ者は政府関係者の中にも多い

『ラジェット。機動六課に関しては厳重に警戒するように。この任務はあなたを信じているから任せているのよ』

「とにかく今は機動六課基地施設の警戒レベルを引き上げてください。危険なのは間違いありません」

『あなたにはいろいろと恩があるから手助けはするわ。それにわざわざ自らリスクがある仕事を引き受けてくれたし』

ラジェットは感謝しますというと報告を終えた
彼は機動六課の捜査部への入局に反対しているクラナガン捜査局内部の情報について
査察部内部調査課と通信で確認した

「忙しいところ悪いが。ある情報を確認してほしい。機動六課と利害関係のある人物を調べてほしい」

『機動六課を孤立無援にしようと?』

「必要なら俺は港湾パトロール安全保障局に連絡しても良いが。そちらの顔を立てておきたい」

つまり中央パトロールの査察部の立場を考慮に入れて連絡したのだ
彼らにとっても『問題人物』を引き受けることにかなり否定的の立場である
それでも証人保護と言われてしまうと仕方がない。捜査長官からの命令である以上仕方がない

『相変わらず、組織の動かし方をよく理解しているな。何とかしてみるがあまり期待するな』

「根回しはこちらでしておく。トラブルになることはないだろう」

『相変わらず裏工作が好きだな。もう絵図はできているのだろう?』

「今の俺は簡単に外で頻繁に活動できる状況ではないのに、シエル首席捜査官は無茶を通している事は百も承知だ」

『それは言えているな。捜査部のナンバー2の呼び声で有名人であるラジェットならな』

「できるだけ活動できる時間を作るしかない」

苦労するのはいつも俺たち現場の人間だと彼は言うと通信を終えた
ラジェットは経済ニュース専門チャンネルで報道を見始めた

『政策金利が6%にまで上がったことで通貨ミッドがミッド高になりつつあります』

『一部関係者の中にはさらに政策金利の引き上げについても慎重に判断すると』

「退役時空管理局員は苦労しているだろうな。固定金利で融資を受けていたならまだ良いが」

もし変動金利で融資を受けていたら金利は連邦準備銀行が定めている政策金利と連動する
その結果が融資を受けている変動金利も連動するので、上に上がれば融資の金利にも大きく影響がでてくる

「金融機関では融資が焦げ付いて不良債権になるだけだ。回収にはかなり苦労するだろう」

『中央本部からSA11。時空管理局機動六課基地に関する警戒態勢を引き上げられた』

基地の周囲には通常よりも多くのパトロール捜査官と刑事が配備している
それでも安全が完全に担保されているとは言い難い。
悪く言えば、この情報がマスコミに漏れるとクラナガン捜査局の市民からの視線にも影響してくる
慎重に事を進めなければならないが

「盛り上がってきたな。中央本部でも人工衛星からの監視を強化」

『すでに手配済み。港湾パトロールにも協力を打診した。全面的に協力してくれると』

港湾パトロールが何も見返りなく素直に協力するとは何か裏話でもあるのが想定される
秘密を抱えるのが好きなのが港湾パトロールなのだから
だからこそ、彼らが素直に協力してくれることに疑いを持たなければならない

「何を考えているのか?」


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東区東部区域 港湾パトロール本部基地 中央区域 港湾パトロール統合司令センター

アーク・レイリ統合軍司令官は人工衛星や無人偵察機を運用して機動六課を監視していた

「今のところは何もないようね。基地の外では相当揉め事が起きているようだけど」

アーク・レイリ統合軍司令官はすでに機動六課を人工衛星とレーダーなどで監視している
その情報を統合司令センターの自分の情報端末を使って確認していた
38歳と若いが艦船の艦長として数多くの密漁船や密輸船の摘発に貢献してきた
そして実績が認められて首都であるクラナガン統合軍司令官に就任した
クラナガン統合軍司令官は他の基地にある統合軍司令官と異なる。
必要なら上官指示で他の基地の駐屯部隊を出動させるように命令を出すことができる

「司令。問題が発生。連邦軍スタントン基地から、その基地を基点に南500km地点で潜水艦を確認」

クラナガン市の東隣にあるスタントン州はクラナガン捜査局の管轄区域ではない
だがレーダーサイトや通信中継基地局などの設備が配備されている
いくら連邦軍の管轄だからと言っても港湾パトロールには首都防衛にはレーダー設備は重要だ
ちなみに連邦軍と港湾パトロールは共同の設備を運用している
少しでも無駄なコストをかけないようにするためである。
そのため港湾パトロールが分かっている情報は連邦軍に伝わる
その逆でもある連邦軍が感知している事は港湾パトロールが把握している
お互い共同戦線で戦う必要があることを想定しての部隊の共同運用訓練も何度も行っている
報告を受けたアーク・レイリはすぐに連邦軍のスタントン基地司令官と通信を始めた

「連邦軍はどういった行動を?」

『現在、現場に向かって海軍が運用している対潜哨戒機P-8が2機向かっている』

現場海域に到着できるのは1時間後とのことだ。
それまでは人工衛星からの監視にとどめるとのことだ

「スタントン基地司令も面倒な事を押し付けられたようね」

『まったくだ。問題は大きいが対応しなければならない』

国内には数多くの犯罪組織や反政府組織が存在する
時空管理局員が大量リストラされた結果、
そういった組織に加入していることが情報機関で分かっている
ただ犯罪組織や反政府組織でも元時空管理局員はある意味で、
トカゲのしっぽきりのような扱いを受けることが多発している
組織の幹部にとっても所詮はただの捨て駒に過ぎないと言ったところなのだろう
面倒が発生すると組織はそのトラブルの元を海に投げ入れる。
そういう形で葬り去ったりすることが十分把握している
時空管理局を大量リストラされた退役局員は分かっていても生活のためには必要なのだ
例え捨て駒にされる運命にあったとしてもだ

「潜水艦の大きさを割り出す事はできるの?」

アーク・レイリ統合軍司令官は今後の展開に不安材料があるかもしれないと考えていた

『かなりの大きさになる潜水艦だ。魔力精製炉搭載の潜水艦であることは事実だ』

大きい潜水艦となるもしかしたら弾道ミサイル搭載が疑われる
弾道ミサイルの弾頭に魔力爆弾が搭載されていたら爆発の規模は見たくもないことになる
それを確認するには人工衛星や偵察航空機などを使って魔力波長を観測するしかない
正確に観測するにはかなり接近する必要がある。つまり攻撃を受ける可能性があるということだ
そのリスクを背負ってでも観測するしかないのだ

「こちらでも人工衛星などを使って観測を行う。連邦軍でも把握できた情報はリアルタイムで観測を提供を」

『いつもの通りだ。手順に従う。だが気を付けるべき事案だ』

スタントン州にある連邦軍機の基地司令官の言う通りだ。
もし連中が本気で動き出したら反政府活動は一気に燃え上がる
他の反政府組織や犯罪組織もビジネスチャンスと見るかもしれない

『港湾パトロール艦隊から空母を派遣できないか?』

「すでにラーズグリーズ級航空母艦スルーズが向かっている。空母から必要なら対潜哨戒機を発艦させる用意にも」

ラーズグリーズ級航空母艦[形式:ジェラルド・R・フォード級航空母艦]には艦載機が数多く配備されている
F/A-18Eが32機やFRX-00が32機などが数多く搭載されて運用されている
戦闘機に対艦ミサイルか魚雷を搭載させて発艦させることで攻撃することは可能だ
だがリスクはかなりのものがついてくる。
魔力精製炉搭載型潜水艦を持てるほどの反政府組織と犯罪組織はかなり限定される
運用にはかなりの資金が必要である事と魔力精製炉を作るには高度の技術が必要になる
それだけのものを持っているとなると抵抗組織の規模はかなりのものになることは確実である
押さえ込むにはそれなりの動機づけが必要になってくる

「警戒態勢を発令用意。港湾本部長に連絡してすぐに警戒態勢の審査を」

クラナガン捜査局にはいくつかの警戒レベルが設定されている
中央パトロールで運用されているのが無線コードだ
コード1からコード4がある。コードブルーは安全であることが確保されたということだ
コード1は最も危険ということだ。速やかに応援が大量に必要だということを示している
安全確保のためにはコード4が出るまでは危機感を持って対応しなければならない
港湾パトロールで運用されている警戒ランクは数種類がある
防衛準備状態(通称:デフコン)があるデフコン5が平和である証
デフコン5:[ 平時における防衛準備状態 ]
デフコン4:[ 情報収拾の強化と警戒態勢の上昇 ]
デフコン3:[ 通常より高度な防衛準備状態 / 警備に当たる艦船・航空機が増加 ]
デフコン2:[ 最高度に準じる防衛準備状態 / 保有する全艦船・航空機に対して出動準備態勢 ]
デフコン1:[ 最高度の準備 / 事実上の戦争状態 ]

テロ警戒レベルがある。分類は全部で4種類
ブルー :[ テロ発生の脅威がない ]
イエロー:[ テロ発生の可能性が疑われる ]
オレンジ:[ テロ発生の可能性が高い ]
レッド :[ テロ発生の脅威が深刻的な状況 ]

そして最後に海賊警戒レベルだ
レベル5:[ 海賊が海域に確認できず、平和な海 ]
レベル4:[ 海賊が海域にいる可能性が疑われる ]
レベル3:[ 海賊が海域にいる可能性が高い  / 注意するべき状況 ]
レベル2:[    武装した海賊が確認された /    危険な状況 ]
レベル1:[  武装した海賊が多数確認される / 極めて危険な状況 ]

これらの警戒レベルを定める時はミッドチルダ連邦大統領・国防省統合参謀本部・港湾パトロール統合参謀本部が参加
常に情報を共有することでミッドチルダ連邦政府は反政府組織達や犯罪組織の攻撃を抑止することに動いている
本当に戦争になれば事はもっと複雑になることは警察関係者や国防関係者の誰もが理解している

『アーク・レイリ統合軍司令官。あなたの見込みでは危険度はどの程度なの?』

リヴィナ・トラヴィック港湾本部長からすぐに電話会議のための通信が入ってきていた
彼女も危険性の高さを十分に把握していることは事実だ

「今のところデフコン3にするべきかと」

デフコン3。つまり警備に当たる艦船・航空機が増加が行われる
負けるわけにはいかないのだ。港湾パトロールは首都防衛の要なのだから
部隊運用を正確に行うことで問題を少しでも改善することが求められる

「港湾本部長。できればこちらに来ていただけますか?迅速な対応が必要と考えています」

リヴィナはすぐに向かうわと伝えると通話を切った