午前10:14 中央パトロール本部庁舎 8階捜査部オペレーションルーム

『クラナガン市準備銀行が市内を主な営業範囲としている金融機関に緊急融資をする用意に入っています』

『一部金融関係者からは自己資本比率が悪化したことから公的資金の注入を検討していると』

「マスコミは好き勝手に報道してくれるわね。おかげでクラナガン証券取引所の金融機関の株価は下落気味ね」

シエルは呆れながら報道番組を見ていた
誰だって泥船から降りるのは当然だ。沈んですべてを失うくらいなら少しでも金が残る方を選ぶ
人間としては当然の行動である。金融機関の株は一時的に値下がりはするだろうが、
それが風説の流布ということがある程度わかってくると再び価格が値上がりになる
見極めることが重要なのだ。

『ピーピーピー』

「シエル・ミズノよ。エリから連絡なんて不吉な予感があるけど」

シエルの携帯電話に連絡してきたのは統合管理官のエリ・ミズノだ
ある疑惑の捜査のために捜査官を配置してほしいとのことだ

『市内にある聖王教会の支部には見張りをつけているけど、すべてを統括管理できる人間が欲しいの』

「聖王教会に何かトラブルがあったの?」

『聖王教会騎士団の一部が市内に入ったことが確認された。港湾パトロール安全保障局殻の情報だから』

正確な情報だと思うけど、警戒態勢を敷くように手配を求めてきた
捜査部捜査官に少し人員を何とかしてほしいらしい。
つまり前日に夜勤で今日はお休みの捜査官を動かしてほしいと
いろいろと迷惑をかけるから手当は割増しでつけるからと言ってきた。
何かメリットがなければ簡単に動きを出すのは難しいことはエリもわかっている
特別手当をつけることで今日は休みの予定の捜査官を市内の主要拠点の見張りをつける。
そのために休んでいる捜査官の携帯情報端末に緊急招集を手配した
できればそういうことはしたくないが今は緊急事態なのだ。

「了解。至急手配をかけるわ。次元世界連合に通達を。聖王教会騎士団の行動に関して正式な手順を踏んでいるか」

『もう確認したわ。結果はNOよ』

最悪だ。何をするつもりかはわからないが正面切って一気にことを進めるつもりはあるかもしれない
そうなればしないで全面戦闘になる可能性もある。それを阻止することがクラナガン捜査局の任務だ
たとえどんな大義名分があったとしてもしないで好き勝手にさせるわけにはいかない
この街の治安を守っているのはクラナガン捜査局。そして中央パトロールなのだから

「次元世界連合の承諾を得ないで活動するのは国際法違反よね。つまり捕まえても良いわけね」

『ええ。その通りよ。さっさと制圧してもらえると助かるわ。連中にうろうろされると面倒だし』

「了解」

聖王教会の財政は極めて危険な状況である。債務超過の状況にあることは明白である
次元世界連合の聖王教会の調査部門では数多くの不祥事の件数は1日当たり数百件単位で増加している
対応することはかなり難しい。もっと早く引き返すことができていたらここまでになることはなかった
そうなるはずがなかったが、現実には聖王教会はかなり追い詰められている。
このままではかなり危険である。聖王教会騎士団の過激派が市内で暴れると対応するのは難しい
そうなる前に抑え込むことが求められている。聖王教会から追放された人物の通信傍受を行う必要がある
些細な通信内容でもあっても今は重要な情報である
それらを回収して分析するには時間と人員が必要。だがそれを急いで解析しなければならない
そのためにはクラナガン捜査局内にある数多くの情報機関と連携しなければならない

「ギブリ。聖王教会騎士団過激派に指定されている連中の通信をすべて傍受して分析」

「そんなことをしても良いのか?上層部が黙っていないと思うが」

縄張り争いになることを考慮に入れての発言だ
土足で足を踏み込んだら問題になる。今後の捜査においての連携にも影響が出る
だが今はしないでテロ活動が行われるかどうかの瀬戸際だ
文句を言っているような暇はない。手段を問わずにトラブルをつぶすしかない

「とにかく聖王教会関係の通信をすべて傍受。必要なら情報機関に通信解析の補佐を依頼して」

シエルはそういうとオペレーションルームを出ていった。
ギブリはため息をつくとすぐに通信傍受のための手続きに入った。
港湾パトロールが運用している通信傍受システムにアクセス。
犯罪組織対策法に登録されている多くの犯罪組織や反政府組織。
そして犯罪者の通信の解析作業に入った。
だが膨大な通信であることからすべてを調べるのは簡単にはいかない

『港湾本部から各員へ通達。聖王教会の過激派が動き出しているの情報あり。警戒されたし』

ギブリはますます危険指数が上がっていることを理解した。
防衛を担っている港湾パトロールが警報を出すということは攻撃のリスクがある
そういうことを示しているのだ。万が一に備えての行動が求められる

「市内のさまざまな通信の解析は港湾パトロールに協力してもらうか」

こちらだけでは手に負えない可能性がある。
分析能力が高い港湾パトロールの協力があった方が効率的だ
ギブリはすぐに港湾パトロール安全保障局の通信傍受と解析を行っている部署に連絡
協力を打診すると意外なことに素直に協力すると。いつもなら渋ることが多いのだが
今はそんなことを言っていられない状況であることが疑われる。
とにかく協力体制は取り付けた。あとは時間との戦いだ

「俺たちの探し物は簡単に見つからないだろうな。クラナガン捜査局の機密情報が洩れていたら始末に困る」

ギブリの言うことは事実だ。
クラナガン捜査局の機密情報が洩れていることが確実なら首都防衛が手薄になる

「首都防衛のために人員を割いてもらうしかないな」

港湾パトロール本部基地に配置されている港湾パトロール海兵隊第1海兵遠征軍に出動を求める手続きに入っていた
第1海兵遠征軍は2万人の兵員を確保している。もしもの場合には出動命令を市長が出すことができる
コネは必要になるが、もしもの場合に備えて対応準備に入ることは必要である
ギブリはすぐにスカフ・フェットル港湾パトロール海兵隊司令官に連絡した
部隊出動に備えて事務的手続きを依頼しなければならない
同じく捜査部オペレーションルームの管制官であるカリフ・ボーラと話し合いをした
お互いの意見をまとめるためである。もし意思疎通がうまくできていないと後々困ることになる
お互い常に最新情報を把握して対応する。それが管制官の任務の1つだ

「カリフ。港湾パトロール海兵隊司令官とは親しいか?」

「それなりにコネはあるがどうするつもりだ?」

「第1海兵遠征軍に治安維持を名目とした部隊出動準備に入るように交渉してほしい。俺は市政府と連邦政府を担当する」

市政府と連邦政府を説得するのは口で言うほど簡単にはいかない
かなり裏から手をまわさないと車輪が進む事はない
それだけに安全な手法が必要である。政府を動かすのは並大抵のことでは動いてくれない
後ろからかなり勢いよく背中を押さない限りは難しいのが現実だ
必要なら圧力をかけることができる人物に依頼をしなければならない
捜査部で言えばシエル首席捜査官が最も権限を持っている
必要ならシエル首席捜査官に判断を仰ぐことを検討した

『ベルカエアライン24便が目標空港であるノースクラナガン空港への針路を急に変更。現在東に向かっている』

いったいどこに向かっているのかが重要である
もし航空機を爆弾代わりにどこかに急降下する可能性がある。
港湾パトロール飛行隊の戦闘機、F/A-18Eが3機が警戒のために哨戒している
最悪の場合は対空ミサイルで攻撃という選択もある。どこに向かっているのかがわからないのが恐ろしい
クラナガン航空管制センターは様々な周波数で呼びかけているが応答はない
どう見てもまともな状況にあるとはいいがたい。いったい何を考えているのか

「ベルカエアライン24便に攻撃準備命令は出ていないことはまだ良いが」

ギブリはそれは時間の問題であることはわかっている。
いつ攻撃命令が出るかは検討もつかない。最後の判断をするのはミッドチルダ連邦大統領である

「カリフ。ベルカエアライン24便に関する情報を集めてくれ。乗客に危険人物がいないかも含めてな」

もし危険人物が登場しているとなると何をするか想像したくない
最悪のシナリオを想定して行動することが求められる

『ベルカエアライン24便は針路98度。高度7000mを飛行中。F/A‐18Eが3機が常に監視中』

「対空ミサイルによる攻撃準備命令が出ている。かなりやばいな」

このままの針路をとると状況はかなり危険である

『クラナガン商品取引所でクラナガン原油先物価格が1バレル7000ミッドもまで急上昇』

『これについてトレーダー関係者は今後継続的に原油価格が高値で値動きがあると』

「原油価格の値上がりか。自動車燃料も値上がりするだろうな」

通常、クラナガン捜査局員が仕事で使っている車の自動車燃料はクラナガン捜査局から支給される
だが原油価格が急上昇すると予算が足りなくなることがあるので、
クラナガン市政府に補正予算を組んでもらうしかない。そこが最も難しいところである。
簡単に補正予算といってもクラナガン市の市議会の承認を得なければならない
もし時間的余裕がないと判断された場合はクラナガン捜査局が運用している財務基金から一時的にねん出する。
市議会の認可が出ると財務基金にねん出した額と同額の資金を返納する

「トラブルだらけの日常だな」

ベルカエアライン24便はいったいどこに向かっているのか
それだけでもわかればいいのだが。今のところは何も情報は出ていない
ベルカエアライン24便はミーミルエアクラフト747-8(型式:ボーイング747-8)である
最大航続距離は1万5000㎞にもなる。
つまり今の段階ではクラナガン市と近隣州のどこにでも向かうことができる
機内に爆弾があれば結末はあまりに悲惨なものになることはわかっている

「本当にトラブルが発生しているな」

ギブリの言葉にカリフも同意した。問題は減るどころか次々と増加している
1件でも減らそうと努力しているが、簡単にそうなることなどありえない
ギブリはベルカエアライン24便の乗客名簿を取り寄せた。
聖王教会関係者がその航空機に搭乗していないか確認した
ギブリは手際よく乗客リストを照合した。結果は恐ろしい者が含まれていた
名前はイフォース・コラインス。32歳。男性でもと聖王教会の財政部門にいた人物だ
不正行為に関与しているのかと聞かれるとかなり難しいところである
次元世界連合の聖王教会調査委員会の調査対象に含まれる予定になっていた
正確には昼からベルカ州警察で事情聴取を受けるはずだった
ところが午前中に尾行を巻いて足取りがわからない状況になっていた
気が付いたころにはベルカ州内の空港から州外に逃亡していた
次元世界連合聖王教会調査委員会はミッドチルダ連邦だけでなく次元世界連合全加盟国に指名手配をしていた
それでも逃げ出すことができたということは何者かが逃亡に協力していることは疑える

「次元世界連合聖王教会調査委員会にこの件に関しての情報を提供するか」

ギブリはすぐに次元世界連合に連絡して状況を報告。
またFBIやベルカ州警察にも身柄をこちらで拘束する用意に入ると通達した
あとは身柄を拘束するだが航空機にいるとなると簡単にはいかない
航空機という密室空間なのだ。逃走するほどの人物となると何を仕掛けてくるか危険な想定が必要

「カリフ。ベルカエアライン24便に燃料が減少しているため着陸を優先的に行うように連絡」

もちろんそんなことは嘘だ。
だがもしハイジャックならこの無線連絡でどういうアクションを仕掛けてくるか
対応方法を検討しなければならない。
もしクラナガン市本土の東にある沖合の島への特攻攻撃を仕掛けてくるなら最悪の結末になる
リスクを少しでも減らすことも重要な任務だ。クラナガン航空管制センターに無線連絡を入れるように指示
戦闘機のパイロットにはその無線を受電した直後の行動監視を依頼した
もしベルカエアライン24便が急激に針路変更を行えば、
その針路上に危険ポイントが確認された段階で撃墜を考えなければならない
クラナガン市本土沿岸部には数多くの石油コンビナートがあるのだ。
おまけに発電所も数多くある。そこを狙うようなコースに転針すれば大問題になる
大型旅客航空機を使った自爆攻撃をされたら被害はとんでもないことになる
極めて苦しい決断だが、必要ならばやらないわけにはいかないのだ
罪のない人々を守るのがクラナガン捜査局の使命である
それに石油コンビナートに民間航空機で自爆攻撃されたら被害は甚大だ
様々なことを天秤にかけたら、仕方がないことである
市内への被害を最小限にするにはつらい決断をしなければならないときは多い
多くの人間を救うためなら被害が最小限で済むうちに対応しなければならない
ギブリはすぐにシエルに連絡した。彼女はすぐにオペレーションルームに入ってきた

「ギブリ。状況は?」

「かなり危険だ。このままの海に落ちるならまだいいがどこで何をするか見当もつかない」

「24便が針路を西の方向に向けたらすぐに攻撃できるように準備を。陸の上より海の上なら被害は最小限で済む」

「何百人もの命を犠牲にしろと?」

ギブリもわかっているがあえて質問した。
被害の規模を計算したときに数百人で問題が解決するなら仕方がない
これ以上好き勝手にベルカエアライン24便を自由にするわけにはいかない

「連邦軍統合参謀本部に連絡。港湾本部にも。とにかく被害を最小限にすること」

「連邦軍の管轄ではないがいいのか?本来ならベルカエアライン24便がいる空域は港湾パトロールの管轄だ」

「縄張り争いしている暇はないわ。最優先で対応するために後ろから背中を押す人間が必要ってだけよ」

つまり港湾パトロールが反対したとしても連邦大統領が承認したら反対論を封じることができる
港湾パトロールの各部隊の最高司令官はミッドチルダ連邦大統領である
連邦大統領が承認すれば即座に攻撃を行えるようにした準備をするのだ
あとはマスコミ対策だが、聖王教会の関係者が登場して首都への攻撃を仕掛けようとしていたと記者発表する
物事はそれで解決する。とりあえずはだが

「大統領は認めると思うか?」

「ギブリ。国民を守るためには非情な決断が求められる時がある。あなたもよく知っているでしょ?」

連邦大統領はミッドチルダ連邦の国民を守るために存在する
必要なら血なまぐさい決断が求められる。仕方がないのだから当然である
とにかく何とかしなければならない。

「国防省と捜査長官に通達を。ベルカエアライン24便の撃墜準備の承認を得るのよ」

シエルのあまりな過激な発言にギブリやカリフは大丈夫なのかと驚いていた
時間的余裕がないことは誰の目から見ても明らかだ。これ以上市内にトラブルを持ち込ませるわけにはいかない
決断する時は時間が経過すればするほど選択肢は減っていく
今はいつでも攻撃できる体制づくりが重要なのだ

「それとしないで活動し始めている聖王教会の関係者の警戒レベルを引き上げて。テロを起こさせないためにも」

ギブリとカリフは了解したと少し納得はしていないが、与えられた指示に従って通達を出し始めた
いついかなる時であっても即座に対応できることが今は求められている
時間的余裕はないことは明白だ。ベルカエアライン24便のコースに注視するしかない


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東区東部区域港湾パトロール本部基地 中央区域 港湾パトロール本部庁舎 地下統合司令センター

クラナガン統合軍司令官をしているアーク・レイリクラナガン基地統合軍司令官は厳しい判断が迫られていた
このままの状況ではどんな状況になるかは検討もつかない
もしクラナガン市内の石油コンビナートに特攻攻撃がされたら被害総額はとんでもないことになる

「本当に困ったものね」

アーク・レイリ統合軍司令官はいつでも攻撃命令が出せる準備に入っていた。
あとは連邦大統領の許可があれば対空ミサイルで攻撃できる

「連邦軍のクラナガン基地からF-22がスクランブル発進を確認。指揮官政権に関しては我々に従うとのこと」

連邦空軍から戦闘機がスクランブル発進したということは何を考えているのか
連邦軍と港湾パトロールの各部隊とは常に連携して対応している
こちらが攻撃することなく連邦軍が解決することができれば彼らに港湾パトロールは恩を売れる
ただし、上でどんな交渉が行われているかによって大きな問題になるかもしれない

「港湾本部長。どうします?」

『今、連邦軍の友人と交渉したけど、彼らも撃墜命令が出た場合は最悪のことを想定しなければならないってね』

連邦軍も活動することで国民に正義が果たされていると示すことができる
それだけに管轄権ではいろいろと話し合いをしなければならない
管轄権でもめている時間はない。手伝いをしてくれるなら何としても問題解決をしなければ
とにかく今は首都へのテロ行為を止めることが最重要課題である
1つのミスが多くの人々の命が対価になるのだ。冷静な判断能力が必要になってくる

『今は連邦軍と共同戦線を。縄張り争いをしている暇はないわ』

首都へのテロ攻撃は何としても食い止めなければならない
そのための港湾パトロールなのだから、当然の任務である

『ベルカエアライン24便の予定針路コースに問題施設はあるの?』

問題施設とはクラナガン市や近隣州に影響が出るようなライフライン施設である
もし発電所への攻撃となれば迷っている暇はない。今はあらゆる無線チャンネルで呼びかけているが応答はない
かなり危険な状況であることは間違いない。トラブル解消のためには仕方がない時もある

『ベルカエアライン24便からクラナガン航空管制。針路を87度に取りたい』

民間航空無線を傍受しているとようやく反応が出てきた。
それはそれで良いことだが問題は東に向かって何をするつもりがあるのか
最大の疑念はそこである。本土沖合の島への自爆攻撃を仕掛けてくるか
それとも別の何かを狙っているのかを探りださないといけない

『クラナガン航空管制からベルカエアライン24便に。緊急事態を宣言するか?』

『現時点では燃料などの問題はありません。マナサス島にある空港への着陸を求めます』

マナサス島はノースクラナガン空港の沖合400㎞にある島の空港だ
その島の主産業は農業や漁業だけでなく、極めて高純度の鉄鉱石の採掘がおこなわれている
鉱物資源の開発で有名な島である。島の基幹産業の1つである。多くの島民が採掘作業に従事している

「マナサス島の鉄鉱石採掘場が攻撃対象かもしれないわね」

アーク・レイリ統合軍司令官はすぐにマナサス島を基点として半径30㎞圏内の飛行禁止命令の発令準備に
すべては究極の脅威に想定してだ。おまけに戦闘機にいつでも対空ミサイル発射の準備を指示
これで少しでも怪しいそぶりを見せたら撃墜する。仕方がないのだ。
島の人々を守るためにはこれしか方法がない

『中央本部から港湾本部へ東区南部区域キャロル地区1番街2丁目の建設現場から不発弾を発見したとの通報あり』

ミッドチルダでは過去の数多くの戦争で大量の不発弾が眠っている
クラナガン市だけでも1年間で200個以上の不発弾が見つかっている
大小さまざまになるが不発弾が見つかった場合は現場の安全確認のため、
港湾パトロールから不発弾処理を担当している部隊が真っ先に向かう手順になっている
もし爆発の可能性がある場合は速やかに避難勧告などを発令する決まりになっている

「こちら港湾本部。速やかに第92爆発物処理団の隊員を送り込む。不発弾が発見されたエリアの現場隔離を行うように」

第92爆発物処理団は港湾パトロール艦隊に部隊の1つだ。
主な任務は不発弾・機雷の処理など、兵器処理を担当
ちなみに爆弾処理をするときに野次馬が発生すれば不発弾処理に時間がかかってしまう
それを阻止するためには近隣住民の一時的な対比が必要になるのだ
市民を守るためにも必要なことである

『こちら中央本部。速やかに野次馬を排除する』

不発弾は極めて危険な存在だ。信管がまだ接続されている状況ならいつ起爆するかわからない
早急に現場の安全確保をするために近隣区画を封鎖しなければ。

「面倒が増えてきたわね」


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東区東部区域 クラナガンハイウェイ4号線(東線) 西行き

エルガは不発弾の無線を聞いて進行方向を変更することにした
万が一に備えて捜査部捜査官が向かえば、いろいろと対応も簡単にできる

『東分署から東区南部区域キャロル地区事務所へ。不発弾の安全処理をするために避難勧告を』

「不発弾の対応はクレージーだからな」

不発弾は一歩間違えれば大爆発する。それを避けるためにも市民の避難は優先事項だ
市内には数多くの不発弾が今も眠っている。
建物の建設で掘り返すときには金属探査がクラナガン市法で義務付けられている
建設中に不発弾が起爆したらとんでもない大災害になるからだ

『中央本部から東分署へ。不発弾が発見された現場の避難命令の発令を行え』

中央パトロール管制センターからの無線命令が出ていた。
中央本部から東分署へ直接指示を出すことはかなりの緊急事態を示している

「SA12から東分署。不発弾の種類はわかるか?」

『現在わかっているだけで1トン爆弾と思われますが詳細な情報はまだ入っていません』

1トン爆弾はかなり危険だ。信管が作動したら大きな爆発になるかもしれない
それを避けるためにも冷静で慎重な対応が求められる
今は現場付近の立ち入り規制を行い、避難命令を出すことができることだ
1人でも犠牲者を出さないようにするためにはこれが重要である

「不発弾を発見されたエリアの半径1km圏内に立ち入り規制を敷け。マスコミにも上空からの撮影だけだ」

『了解』

1トン爆弾となるとどれほどの被害が出るか想像もしたくない
今は何としても安全対策が必要になる

『中央本部からSA12。現場指揮権はSA12に移管する。現場到着後は速やかに安全対策に入れ』

「港湾パトロールの不発弾処理チームの到着は何分後だ?」

『すでにヘリで出動している。現場到着には10分前後』

エルガは今はとにかくマスコミと連携して市民の安全確保のために避難命令を出すように指示した
迷っている暇はない。不発弾はいつ爆発するかわからないからだ
安全に処理するのは港湾パトロールの部隊の中でも特別な資格を持っているものに限定されている
特別な資格とは兵器解体に関するあらゆる知識があることが条件だ

『東分署から各員へ。不発弾処理に伴い避難指定地区の警戒レベルを厳重にせよ』

避難しているときに空き巣事件が多発することが頻繁にあるからだ
不発弾処理をしているときは厳重な警戒パトロールが求められている

『東分署からSA12。不発弾を双眼鏡で確認したところ、信管が接続されていることを確認』

信管があるとなるといつ起爆するかわからない。
早急に爆処理しなければならない。時間が経過すればするほど余裕はない

「SA12から東分署。不発弾発見現場の半径5km圏内の完全隔離を」

これを最優先で行うようにとエルガは指示した。
現場指揮権はエルガにあるのでそれなりに自由な指揮命令ができる
不発弾は状況によってはいつ爆発するかわからない。不用意に振動などを与えると着火する
そんな振動を避けるためには避難誘導コースを調整することが必要になる

「本当に不発弾は面倒だな」

エルガはそんなことを言いながらも最悪の状況になることを考慮、
不発弾問題を担当している局員に指揮命令を次々と出した
不発弾からは距離を取らせなければ1トン爆弾が爆発するかもしれない
高架鉄道や地下鉄の運行を止めることが必要になる。鉄道運行により振動が発生するからだ
車なら少しで済むが鉄道は振動は大きい。だが鉄道運行を止めるのは楽に進む事はない
市内の鉄道運行ダイヤを一部だとしても止めるとなると混乱が生じる

「SA12から中央本部。不発弾現場付近に鉄道路線があればすぐに運行中止だ」

『すでに作業に入っている。不発弾処理のために不発弾が発見された現場の半径1kmの鉄道路線を止める作業中』

「もし信管に引火したら最悪だ。とにかく冷静な対応で行え」

もし混乱が生じたら大きな騒ぎになる。パニックになれば事態を抑え込むのは簡単ではない
そのためにも多くのパトロール捜査官を投入するしかない

『東区で不発弾が見つかったとのクラナガン捜査局が発表。クラナガン市政府は立ち入り禁止エリアを設定』

『中央パトロール本部は通常よりの人員を多く派遣して空き巣騒動などを阻止する配置をしていると』

「マスコミの協力は必要だが。不安を拡大するような行為はしてほしくないな」

不発弾処理にはマスコミの協力は必要だ。だが報道が過熱すれば危険ななるケースもある
難しい線引きともいわれている。

『中央本部からSA12。問題発生。不発弾から煙が出ているとの報告あり』

1トン爆弾が爆発したら大きな被害が出てしまう
最小限にするためにも何としても、解決策を見つけるしかない

「不発弾発見地区を含んだ周辺地区に緊急避難エリアを設定してくれ。マスコミのヘリもシャットアウトだ」

『了解。ほかにリクエストは?』

「現場で警戒しているパトロール捜査官や刑事にはいつでも逃げ出せるようにスタンバイをさせておいてくれ」

不発弾と一緒に心中させるわけにはいかない。
被害を最小限にするためにも現場ではいつでも退避できる準備をさせなければならない

『退避エリアをさらに拡大させるか?』

それはそれで大変である。
空き巣対策のためにパトロール捜査官の巡回を増強しなければならない
だからこそ適切なエリアに限定した区域に絞り込むしかない

「街灯観測システムを使っての監視体制を確立。必要に応じて問題があればパトロール捜査官を派遣対応へ」

街灯観測システムとは市内のあちらこちらに設置されている街灯型の観測システム
通称:街灯観測システム。主な機能は監視カメラ・気象観測・位置測位・無線中継・携帯電話の電波中継だ
このシステムをうまく運用することで危険地帯の警備を必要最小限まで抑え込む
人的被害を出さないようにするにはこれしか方法がないのだ

『了解した。街灯観測システムを使って監視体制の強化を行う』

街灯観測システムは市内全域に、様々な位置に配置されているので
アリバイ確認などを迅速に行うことができる。
犯罪に巻き込まれた人物のアリバイ確認を素早く行うことができるのだ
それは捜査機関にとっても最も効率よく捜査を行うことができるのだ
不審人物をすぐさま割り出すことも可能であり、指名手配犯がどこにいるか顔認証システムで照合できる
素早い捜査体制の構築に大きく貢献している。
また犯人逮捕の包囲網を敷くにあたっても大きく貢献しているのだ
必要最低限の人員で無駄なく素早い犯罪捜査が可能な理由でもある

『不発弾対応に港湾パトロールから部隊は迅速に展開中』

『第92爆発物処理団のチームが現場に急行中。現場指揮は中央本部捜査部のエルガ・ジャーニーが担当』

「SA12から中央本部。不発弾発見現場の周辺の封鎖作業を最優先に行え。何か問題があれば即時報告」

『こちら中央本部。了解した。現在現場の封鎖作業に入っている』

さらに中央本部はある指示を出していた。
魔導師が魔法行使で信管が作動することを警戒して魔法を使わないようにと指示を出した
珍しいことではない。魔導師が魔法を行使した瞬間に爆発するケースは過去に何件か確認されている
問題解決には細心の注意が必要になってくる。ミスをすればとんでもない問題になる
過去に何件か。時空管理局の魔導師が不発弾を見つけて処理をした際に大爆発を起こしたケースがある
不発弾処理というのは極めて難しいものなのだ。生死にかかわる重要な任務なので冷静な判断が必要だ
不発弾処理を担当する舞台はあらゆる爆弾に関する知識が必要になる
1人のミスが仲間の命が犠牲になるからだ

「とにかく最優先で安全確保だ。マスコミを使って避難させろ」

『中央本部からSA12。了解した。最速タイムで不発弾発見現場の人払いを行う』


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西区東部区域 クラナガンハイウェイ12号線( 外環状線 )反時計回り路線

ユウ・ミズノ捜査長官が乗り込んでいる車は中央パトロール本部庁舎に向かっていた
彼はリヴィナ・トラヴィック港湾本部長と通信をしていた

「それでベルカ州に関係する問題はどうなっているのかな?」

『ベルカ州から出発したベルカエアライン24便がクラナガン航空管制の無線交信に応答しない状況です』

「戦闘機は出ているのかな?」

『すでに対空ミサイルを装備した戦闘機がいつでも攻撃できる状態でスタンバイ中』

彼は携帯情報端末で航空機の位置情報を詳細に確認。
危険になりそうな攻撃ポイントがあるかを慎重に見極めた。
もし誘導に従わないならこちらは徹底的に攻撃する

「攻撃準備は常に行い、その情報は連邦政府とこちらに常に情報通達を」

『わかりました』

通信を終えるとかなり危険な予兆になることを感じていた。
もし攻撃目標が石油コンビナートや国際機関の施設や政府機関の建物ならとんでもないことになる
目標が明確になった場合の対応策をいくつも作り、すぐに対応できるようにしなければならない
彼はすぐにクラナガン捜査局安全保障問題補佐官をしているイーサ・フィヨルに連絡した

「イーサ。ベルカエアライン24便のトラブルについてあらゆる選択肢をとれるようにマニュアル作りを」

『早急に取り掛かります』

「それとこの問題はクラナガン市政府と連邦政府にも入れておくように。連携して対応できないと困るから」

『了解です』

その時、緊急ニュースが携帯情報端末に入ってきた

『先ほど聖王教会過激派がベルカ州西部地方に武装蜂起。ベルカ州西部地方の多くの町を実効支配したと表明』

「最悪のシナリオになってきたね」

ベルカ州西部地方には魔石鉱脈やニッケル鉱脈。
さらに石炭鉱脈があることで聖王教会過激派はそれらの多くの地域を支配することで反政府活動の資金源になる
もちろんそんなことを許すわけにはいかない。速やかに対応しなければならないのだ

「リヴィナ。ベルカ州の案件だけど、大至急港湾パトロール海兵隊を送り込んで制圧を」

『速やかに作戦実行ができるように部隊展開を開始します』

ベルカ州中央地方ベルカ市郊外には港湾パトロールベルカ基地がある
そこには第7海兵遠征軍が配置されている。総兵力5000人。
戦闘訓練は手慣れたものだ。素早い対応が必要になる

『すぐにベルカ基地から港湾パトロール海兵隊をスクランブルさせます』

「マスコミの報道が過熱する前に制圧するように」

それとベルカ州政府施設の警戒態勢を最大限にすることを指示した
州政府まで抑えられた問題解決にはかなりの時間が必要になる

『アルス・トーシン州知事から港湾パトロールに治安維持を目的とした部隊展開を緊急に要請が出ています』

州知事が要請するとはかなり危険ということを意味している。
問題解決のためには手段を選んでいるような状況ではないことも明白だ。
ベルカ州はただでさえ問題が多い。これ以上問題が増えることは容認できない
政治家なら誰だって同じことを考えているはず

「州知事がすぐに要請を出すということはかなり焦っているみたいだね。トーシン州知事は有能だから」

アルス・トーシン州知事は75年までは港湾パトロール海兵隊に属していた
州政府に移行した際に州知事選挙に立候補した。もちろん港湾パトロール海兵隊から予備役兵に移行。
彼は選挙にあたり反聖王教会活動をしていたベルカ解放同盟の構成員、
彼らに対して民主政治に移行することで連携しようと呼びかけた
現在のベルカ自由党に移行した彼らや州内の国民の多くの支持率を得ることで州知事に当選した
州知事は州内の鉱物資源開発で人々に農業だけでなくほかの選択肢があること、
それを見せることを大きな政策の柱としていた
麻薬の密造密売などの非合法行為をする必要がないことを示すこと、
治安が良くなることをアピールしようとしている
それだけにベルカ州内でのトラブルは大きな影響が出てくるかもしれない

「本当にベルカ州の問題は大変だね。そのためにベルカ基地が設置されているのだけど」

『ベルカ州政府は州の西部地方に緊急事態宣言を発令する用意だと表明しました』

州政府が緊急事態宣言を発令すると連邦政府も絡んでくることになるので指揮命令系統が少し複雑になる
それでも何を手を打たないよりかは問題を早期に解決できるという利点はある
連邦軍が派遣されてくる可能性は極めて高い。ベルカ州は港湾パトロールの管轄区域になる
しかし連邦軍とは常に連携している。緊急時には双方がタッグを組んで対応している
最悪の大惨事を防ぐためには裏口は開けている

「港湾パトロール海兵隊には苦労を掛けることになりそうだね」

地上攻撃を担当している港湾パトロール海兵隊。
上空から爆撃攻撃をする港湾パトロール飛行隊とは常に共同対応しなければならない
1つのミスが多くの港湾パトロールに属している隊員の命を失うことになるからだ
ベルカ基地に配置されている港湾パトロール海兵隊をさらに増強する必要がある
ベルカ州の南隣にある港湾パトロールイーストフローレンス基地からも港湾パトロール海兵隊を派遣するべきか、
ユウ・ミズノは速やかに対応することを検討し始めた。
ベルカ州の西部地方での限定した区域でのクーデターとしても、問題は極めて大きな課題になる
国内でクーデターが起こされるとなるとかなり危険なことになる。次元世界連合は戦争行為は禁止している。
しかし国内での反政府活動を阻止するための自衛権の行使で武力行使はできる
自衛権の行使に関しては境界線が極めて難しいことが事実である。
次元世界国間の問題は次元世界司法裁判所によって武力を使わないで国家間の争いを阻止する
そのように国際法で定めている。ちなみに応訴義務が条件となっているので、必ず出廷することが義務付けている

「国内でクーデターになるなんて危険だね。最悪のシナリオを想定して行動しないと」

聖王教会が本格的にクーデター行為を実行したら大問題だ。
そのためにベルカ州に港湾パトロールの基地が設置されている。
ベルカ州内の安全保障を維持するために開設されたのだから
ベルカ基地に配置されている港湾パトロール飛行隊と港湾パトロール海兵隊の司令官は
ベルカ統合軍司令官を務めているレパーズ・サットン大将。ベルカ基地の最高責任者でもある
ユウ・ミズノ捜査長官はすぐに彼に通信を行った

「レパーズ、状況はどうなっているの?」

『現在、人工衛星や無人偵察機を使って情報収集を行っています。今のところ大きな動きはありません』

ただし最悪の事態にいつでも対応できるように部隊展開の用意を行っていると
クラナガン捜査局では数多くの人工衛星を運用している。
その数だけでも様々な軌道に多くの人工衛星が配備されている。
すべて合わせると1000基以上の人工衛星にもなる。ミッドチルダ連邦国内の安全保障が保たれている
運用している人工衛星の機能で1つの人工衛星に様々な機能がある
機能の内訳は気象・通信・衛星電話・衛星インターネット・位置測位・魔法監視・偵察・早期警戒・デブリ監視
様々な機能があることから国内全域を常に監視することができていた
犯罪組織対策法のブラックリストに登録されている組織の通信情報をリアルタイムで傍受できる
それらの情報分析は港湾パトロール安全保障局などの港湾パトロールの情報機関が解析している

「とにかくベルカ州でクーデターが行われることは阻止すること。必要なら大統領に報告して爆撃を許可する」

『本気ですか?』

「僕はいつも本気だよ。罪のない人々を守るために手段を選ぶ余裕がないならどんなに汚い方法でも選ぶ」

それが法執行機関のトップとして当たり前のことだよと彼はレパーズに伝えた
早急に対応しますというと通信は終了した

『連邦政府はベルカ州西部地方に対して連邦軍の派遣準備に入っていると公表しました』

『クラナガン捜査局とも連携して部隊展開することを用意に入るとも発表』

「さすがは連邦政府だね。情報把握とトラブル解消に素早く対応するなんて」

連邦軍がベルカ州に派遣されたら指揮命令系統のトップは連邦大統領になる
港湾パトロール統合参謀本部と連邦軍統合参謀本部は情報を常に共有している。
港湾パトロール管轄区域外から弾道ミサイルが発射された場合などに備えてである
弾道ミサイル攻撃が港湾パトロールの管轄区域外であっても迎撃できるなら弾道ミサイル防衛を行う
様々な手順が本来は必要だが緊急時にはそんなことを言っているような暇はない
だからこそ連携が取れていることが重要なのである

「連邦軍と連携して対応しないといけないとなると状況はかなり危険になるかもしれない」


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中央区中央区域セントラル地区2番街 連邦大統領府(ホワイトハウス) 大統領執務室

アンナ・ランシング大統領は国家安全保障問題大統領補佐官のマディソン・ビュローから報告を受けていた

「現在、港湾パトロールベルカ基地から港湾パトロール海兵隊が出動。人工衛星や無人偵察機からの偵察画像も」

「彼らはどこまでやる気があるの?」

「どれほどの人数が反政府活動に入ったのかわかっていないので不明です」

「とにかく情報収集を。大掛かりになる前に対応するのよ」

マディソンは了解というと退室した
彼女は極めて有能だ補佐官につく前は連邦下院議員を10年にもわたって務めていたベテラン議員だ
政治についてはよく理解している。ベルカ州には豊富な鉱物資源が眠っている
石油や石炭だけでなくレアメタルやレアアースもかなりの量が埋蔵されている
今はベルカ州内で資源開発がかなり激しく行われている。もちろん連邦法や州法が定めている環境基準法に従って
豊富に埋蔵されているが輸送ルートはそれほど多くない。だからこそ数多くの公共工事が行われている
州内に多くの道路やライフラインの構築のための公共工事がかなりの件数になっている

「本当に面倒なことになったわね。まぁベルカ州の景気はかなり良好。クーデターが発生したら影響が広がるわね」

アンナ・ランシング大統領の言葉は正論だ。
州内でクーデターが起きればベルカ州証券取引所や商品取引所での様々な銘柄に影響が出る
ベルカ州証券取引所での株価は大きく下落している。大統領は情報端末で経済的影響を確認した
ベルカ州証券取引所の平均株価は20%も急落していた。これだけで解決するとは思えない
過激派はさらなるプランを練り上げているかもしれない。
ベルカ州政府を破壊するだけでなく次元世界連合まで壊す
時空管理局に多くの権力を持てるように取り戻せるように動くことになるだろう
そこに複数の人物が入ってきた。1人目は連邦軍統合参謀本部議長のアレストル・ハンパース大将
連邦軍の前には港湾パトロール海兵隊に属していて統合軍司令官をしていた
指揮命令などの情報分析能力は極めて有能である
2人目は連邦国防長官のエドガー・クロウフォード。3人目は国土安全保障長官のウィル・ヘンリーだ
国家の危機の際に重要な政府意思決定の中心になるメンバーだ

「ベルカ州にある国家安全保障局支部からの情報によると聖王教会の一部過激派が反乱を起こしたことを確認」

国家安全保障局は偵察衛星や通信傍受によって情報収集活動を行っている諜報機関だ
国内の各州に1か所は支局を設置している。常に国家安全のために活動をしている。
今は時空管理局と聖王教会の動向を常時監視。
犯罪組織対策法のブラックリストに登録されている危険組織も監視している

「聖王教会の動きは極めて危険です。ここは次元世界連合安全保障理事会の承諾を得る形で強制捜査を」

国土安全保障省の長官であるウィル・ヘンリーの言う事は正論だ。
何も土足で聖王教会に足を踏み込むのは許されない。聖王教会と時空管理局は一応国際機関だ
手順を踏んで行動しなければこちらにどんな苦情が来るか想像もしたくない

「緊急事態で安全保障理事会開催を各国に呼び掛けて、今後の対応について協議を」

アンナ・ランシング大統領の命令に分かりましたというとウィル・ヘンリーは退室した
問題は連邦軍を動かすかどうかだ。ベルカ州は港湾パトロールの管轄区域だ
何も連絡なしで動けば問題が起きることは十分想定される
連邦軍を動かすには明白な根拠がなければ自衛権の行使という段階では済まない
戦争行為と認定されてしまう。それだけは認められない
国際機関である時空管理局と聖王教会の微妙な関係を調整しなければ強制捜査は危険すぎる
小さな問題が大きなことに発展する。証拠をすべて抹殺して真実を闇に消すことは確実だ
これからは時間との戦いだ。クーデター行為の目的次第で戦略が変わってくる
ここはあらゆる法執行機関や諜報機関が連携して対応しなければことが大きくなるばかり

「人工衛星を利用してベルカ州内を常に監視。州内の通信に関しても要監視」

国家安全保障局なら通信傍受はお手の物である。
それが彼らにとって与えられた任務なのだから。
中央情報局(CIA)も聖王教会に潜入している諜報員を使って情報を収集している
だが、聖王教会そのものがクーデター活動を開始したかはわからない
そういった情報が確定するかには少し時間が必要なのだ

「とにかく聖王教会と時空管理局の監視活動を。何か不審な動きを見せたら次元世界連合を通じて活動停止を」

次元世界連合安全保障理事会の傘下には時空管理局監視委員会と聖王教会調査委員会がある
この2つの委員会は時空管理局と聖王教会の監視や過去の不正行為の調査が主な任務だ

「問題はベルカエアライン24便は港湾パトロールはいつでも攻撃できる体制が整っているのね?」

「はい。港湾パトロールからは情報が入っています。攻撃命令を出すのは大統領が必要だとも」

民間航空機を攻撃すると大きな問題になる。何百人もの乗員乗客が犠牲になるのだ
リスクがあることはわかっている。時間がないのだが、速やかに解決するしかないのだ。
連邦軍統合参謀本部議長のアレストル・ハンパース大将は今後も民間航空機の位置を常に把握
航空管制の指示に従わない場合は最後の決断をしないと状況は悪化すると大統領に報告した
彼の言うとおりだ。民間航空機を爆弾代わりに利用されたら被害はこんなものでは終わらない
おまけに撃墜するチャンスはそれほどないことも事実だ。
市街地の上空で撃墜することになればマスコミは騒ぎ立てる
撃墜をしてしまったら航空機の残骸が地上に落下することになる
そうなれば二次被害を出してしまう可能性がある。仮に撃墜をするなら海上の方が安全だ
被害は最小限にすることができるからである。海上警戒に法はまだ港湾パトロールが主に担当できる
問題はベルカ州内の警戒にある。もし州内に弾道ミサイルサイロがあれば大きな問題になる
その弾道ミサイルの暖冬に魔力爆弾が積み込まれていたら大きな被害が出てしまう
弾道ミサイルだけでなく巡航ミサイルを使って首都であるクラナガン市に攻撃されたら被害は甚大だ
巡航ミサイルにも魔力爆弾を積み込むことができるほどの独自技術があれば問題は複雑になる
弾道ミサイルならまだ人工衛星から発射される直前にすぐに割り出すことができる
だが巡航ミサイルはそれほど大きくない。巡航ミサイルの代表であるトマホークなら全長6mほど
ミサイルの直径は0.5mになる。トラックで持ち運びができるため、どこからでも発射できる
最大射程距離は3000kmにもなる。ベルカ州から発射しても十分にクラナガン市を攻撃できる
それだけに早期警戒衛星やレーダー監視が最重要である

「港湾パトロールにベルカ州とクラナガン市のレーダー監視強化を働きかけるべきかと」

アレストル・ハンパース大将の提案にランシング大統領は首都防衛のためならいかなる手段をと命令した
ベルカ州にはさまざまな危険な施設があることは国家安全保障を理解している者はわかっている

「港湾パトロール飛行隊にベルカ州に常時2機のE-767を展開させるのよ」

早期警戒管制機を展開することで攻撃があっても即時探知をすることができる
そして発射ポイントを正確に割り出せる。
港湾パトロールベルカ基地には第711警戒監視飛行隊にE-767が4機ある
ベルカ州では常に1機が上空に展開している。
不審な行動をしている航空機や飛行魔法を行使している魔導師の監視をしている
この警戒監視は港湾パトロールの基地が設置されている基地がある州の上空では常に行われている
上空での警戒監視を行うことで、民間航空無線の中継施設で問題が出た場合にバックアップ機能として機能する
いつ何がわからないことが現実なのだから当然の警戒である

「スタントン州に配置されている連邦軍にも警戒態勢を呼び掛けを」

今は東側から攻め込んでくる勢力は確認されていない
だがそれもいつ何が起きるかわからないために警戒は怠ることはできない
今回の騒動の大本は今もわかっていない。
表向き聖王教会過激派だと想定して行動しているが、真相は今も闇の中だ

「今回はクラナガン捜査局を利用しましょう。彼らも表立って反抗はしてこないはず」

連邦政府と全面対立をするはずがない。そんなことをすれば両者の関係性が悪くなる。
政治的プレーがわかっているなら文句をいう連中はいないはず。
ましてやクラナガン捜査局の意思決定組織のメンバーなら政治的アクションについてはよく理解している
時間的余裕はほとんどないことは事実である。それでも何とかするのがプロの証だ

「スカフ・フェットル港湾パトロール海兵隊司令官に指示を。ベルカ州に一定数の兵員派遣を」

ベルカ州内に配置されている港湾パトロール海兵隊員の人数を増やすにはそれなりの手順がある
急に増派をすれば問題がすぐに解決するというわけではないのである
少しずつ派遣することでほかの州に影響が出ないように調整しなければならない
連邦統合参謀本部議長であるアレストル・ハンパース大将はわかりましたと返事をするとすぐに大統領執務室から退室した
国防省に戻って港湾パトロール海兵隊に命令を出すのだ
あとはベルカ州西部地方でクーデター行為をしている反政府組織の正確な割り出した
おそらく聖王教会騎士団過激派と考えられるが、正確な情報はわからない
それにこれがベルカ州だけで片付く問題であるかもわからないことも懸念するべきだ
近隣の州だけでなくミッドチルダ連邦国内全域でクーデター行為が行われたら対応に苦慮する
最大限の警戒心で取り組まなければならない


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東区東部区域 上空2000m CH-46

ラジェット達が搭乗していたCH-46は港湾パトロール本部基地に向かっていた
今はCH-46を警護するためにアパッチヘリなどの武装ヘリなどを使って警護体制が配置されている
最悪の事態に想定しての行動だ。とにかく今は機動六課関係者を基地施設から脱出させることが最優先だ
もし機動六課基地に攻撃があれば次元世界連合が乗り出してくる。
そういうことを起こさないためにも今の対応は必要なことである
ラジェットは携帯情報端末を展開すると周辺の各種レーダー情報を確認した。
その結果あるヘリが存在することを確認した

「方位120。距離2000mに民間ヘリを確認。大至急退避通告を発令せよ」

2000mに対応できるようにラジェットはもしもの場合に備えて
ヘリに装備されている対物ライフルをいつでも発砲できるようにした

「それってライフルですか?」

なのはの質問にラジェットは対物ライフルであるバレッタM82だと伝えた
このライフルの最大射程は2000m。民間ヘリの位置にぎりぎり到達することができる

「SA11から港湾本部。射程にとらえた。あちらがアクションを起こしたらいつでも反撃できる」

ラジェットは実弾ではなくマガジンに12.7x99mm弾薬を装填していつでも引き金を引ける体制にした。
港湾本部から許可が下りたら即時発砲だ。こちらは命のやり取りをしているのだ。
それに飛行制限区域に近づいている。こちらの誘導に従わなければ違反行為になる

『こちら港湾本部。引き続き待機せよ。こちらがゴーサインを出すまではスタンバイ』

ラジェットは了解と返答すると、狙撃スコープで構えに入った
射程ぎりぎりの距離なので当たるかどうかは少し賭けのようなものに近い
それでも何もしないという選択肢はない。

「SA11から港湾本部。射程にとらえた。射撃許可があれば即時に発砲する」

「民間ヘリを相手に本気で撃つつもりなんか?」

「はやて・八神。俺たちの仕事は人々を守ることだ。必要なら血を流すことも当たり前の戦場だからな」

『港湾本部からSA11。中止せよ。中止せよ。民間ヘリは連邦空軍のヘリである。こちらの警護支援とのことだ』

「了解。射撃中止に入る」

ラジェットは銃の安全装置をかける。発砲態勢を排除した

「SA11から港湾本部。どこの部隊が動いている?」

『連邦空軍クラナガン基地に配置されているヘリだ。表向きは民間ヘリと飛行申請が出されていた』

「念のため針路20度に取るように要請を」

『こちら港湾本部。針路変更するように通告を開始する。動きがなければ警戒態勢を』

了解したとラジェットは答えた。
念のため携帯情報端末を使って今のこの近辺のレーダー情報を確認した
まさかこんなところで今動きはないだろう。だが警戒は必要になってくる
こちらはただでさえ『危険物』を抱えているのだから。

「まったく連邦軍も何を考えているのか知りたいところだ。こっちに連絡してこないで陰でこっそり警護とは」

ラジェットの言葉にはやてはどういう事やと聞いてきた。

「はやて・八神。お前は政治的駆け引きを知らないということだ。政治的駆け引きが必要だ」

政治的駆け引きができなければ、捜査の利害関係の調整ができるはずがない
捜査部捜査官では当たり前のことである。その時新たな無線連絡が入ってきた

『ナイトウォッチ1から中央本部捜査部SA11へ。一部空域で飛行制限で対応する方向で話が進んでいる』

ナイトウォッチ1は空中作戦管制機のE-4Bの無線識別コードだ
大統領が空中から連邦軍の作戦指揮をすることができるように様々な装備が組み込まれている
基本的にはエアフォース1と同じように飛行を行うことが義務付けられている
エアフォース1だけでは連邦軍作戦指揮を行うのは難しい。
そのために危険地域に行く場合はE‐4Bに大統領が搭乗することが多い
ちなみにクラナガン捜査長官も乗り込むことを考慮して小部屋が設置されている
通常はクラナガン市の中央区にある連邦軍基地に駐機されている。
ミッドチルダ連邦大統領が搭乗しない場合は動くことは訓練飛行のときを除くと地上待機になる
それが今は上空で飛行しているということは何か事情があることを示している

「こちらSA11。飛行制限区域の発動による影響はどうなる?」

『民間航空機の離着陸をしている市内の主要空港のうちセントラルクラナガン空港は離着陸は制限される』

残るのはノースクラナガン空港とサウスクラナガン空港。
そして西区の比較的中心部にあるウエストクラナガン空港。
この3つでセントラルクラナガン空港に着陸できない民間航空機を対応するしかない
セントラルクラナガン空港は市内で最も規模の大きい空港である。
3つの空港に分散させたとしてもすべてをカバーできる保証はない
まだこの情報はマスコミにはほとんど知られていないことが不幸中の幸いだ
もし漏れたら事態の収拾にかなりの時間と労力が必要になる
クラナガン市民も不安からどんな行動をするか、簡単に想定できないことも大きな理由な一つである
予想がたてばまだ状況のコントロールができる。だがそれができないような状況になれば大きな問題だ
国家安全保障へ与える影響は大きくなりかねない。おまけに経済的にも急激な変化がみられる
今は情報封鎖をすることで安全性を確保することが最も重要である

「SA11から港湾本部。ナイトウォッチ1の飛行目的は把握しているか?」

『ナイトウォッチ1はスタントン州で明日行われる予定の連邦空軍の護衛訓練に参加するために展開中』

連邦軍クラナガン基地を離陸した後は港湾パトロールの支援を行うために連携しているとのことだ
ありがたいというべきなのかそれとも横槍を入れるための用意なのか
どちらなのかは今の時点ではまるで分らない。
そこで探りをやんわりと入れるのではなくストレートで港湾本部に伝えた

「連邦軍が介入する用意に入っているのか?」

『それに関しては港湾本部は正確な返答はできません』

「了解した」

ラジェットは無線交信を終えるとバレットM82を片付けた

「SA11から中央本部。港湾本部基地を経由して中央本部に戻る」

『こちら中央本部。了解した』

「ところで聞いておくが、機動六課組の受け入れについて許可は下りているのか?」

『港湾本部には貨物が届くと伝えています。意味は分かりますよね?』

その返答を聞いてラジェットはため息をついた。港湾本部基地には上層部だけが知っているということだ
面倒なことをすべて押し付けて高みの見物を決め込むつもりだ。

「面倒を押し付けられるのは現場か。境界線をいくつ飛び越えたら満足する?」

『それはお答えするのは時期早々です。では通信終わり』


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中央パトロール本部庁舎 9階統合管理官執務室

エリ・ミズノ統合管理官は市内の経済情報に関して記載された報告書を見ていた
経済犯罪課から報告されてきたものだ。経済犯罪を主に担当するため、様々な経済情報が入ってくる

「セントラルベルカバンクの影響がかなり出てきたわね」

ベルカ州を主な活動拠点としていたセントラルベルカバンクの破綻。
ミーミルバンクが買収したが財務状況はかなり危険なレベルになっていた
不良債権となっている融資がかなりの金額になっている。
不良債権になったとしても買収したミーミルバンクは債権回収のために資産差し押さえを徹底的に行っていた
現在、差し押さえで回収できたのは不良債権金額のうち7割ほど。
残りの3割は回収できないことはほぼ確実であった

「どうしたものかしら」

『ワンワールドグループ企業の社債の価値が喪失に伴いそれを担保として融資を受けていた企業や人物は破産の可能性が』

ワンワールドグループ企業は優良企業としてお墨付きをもらっていたのが一気になくなってしまった
それらの社債を担保として銀行が融資していたところは回収しなければならない
多くの金融機関は危険な状況になっていることが問題になっている
不良債権の問題は今までなかったが、今は多くの金融機関では割合が大幅に増加している
銀行は資金回収のために徹底的な財産差し押さえを行っているのだ。
どの銀行も不良債権を少しでも減らそうと必死なのだ。
もし自己資本比率の基準に満たなければ金融機関としては致命的になる
金融機関にとって自己資本比率は極めて重要な指標になっている
基準に満たなければ金融機関同士の取引に影響が出てくる。
最悪の場合、連邦政府が公的資金の注入ということも考えられる

「金融機関だけでなく高利貸しも必死でしょうね。時空管理局の幹部は高利貸しにとって大きな融資先だから」

『トントン。ギャラン・フォルティスです。少しお話が』

彼は統合管理官首席補佐官を務めている。エリの右腕と言っても良い優秀な人材だ
クラナガン捜査部時代には捜査官として活動していた
クラナガン捜査局に組織変更後はエリの秘書官役を担当していた。
さらにクラナガン捜査部に入る前はミッドチルダ連邦政府のシークレットサービスをしていた
連邦政府・州政府・クラナガン市政府などの様々な政府機関との調整を担当している
彼は入室するとあるファイルをエリに手渡した。題名には時空管理局機動六課受け入れに関する調整事項
そのように記載されていた。機動六課を受け入れで問題が想定されるかが細かく記載されていた
最も問題視されていたのは捜査部と他の部署との連携である。捜査部は中央パトロール最重要部署だ。
あらゆる分野の犯罪捜査を担当するだけに連携が取れないと問題が生じることは大きい
だからこそ、中央パトロールでは捜査部が機動六課のメンバー受け入れにあまり良い感情を持っていない
それでも各部署と捜査部は深い絆があるので当面の間は何とかなると思われる
実際のところは運用してみないことには詳細にはわからない

「ほかに報告することはあるの?」

「市内の金融機関の動向についての情報がかなり上がってきています」

彼はエリに金融機関の財務情報に関する報告書を渡した。
クラナガン市と近隣州を主な活動範囲とする金融機関が10ほど存在する
多くの金融機関では時空管理局員というだけで安全な融資先としてかなりの資金を流していた
今はそれがかなり危険な状況にある。徹底的な資産差し押さえを行うなど、回収業務に必死だ
資金繰りに行き詰まりを見せればクラナガン市政府が独自に運営しているクラナガン市準備銀行、
そこから公的資金の注入という最後の助け舟がある。
だがそれを受けたら旧経営陣は真っ先に様々な捜査を受ける
経営陣だけでなく銀行の資金のやり取りに問題がないかどうかの調査を受けることもある
それだけに自分たちで対応しなければ破滅することはわかっている
セントラルベルカバンクはクラナガン市内にも支店がいくつもあった。
しかし今は連邦政府に破産申請をしたので支店のシャッターは下りた状態になっている
セントラルベルカバンクの預金者は違法行為がないことが確認された口座は一定の制限範囲内で利用できる
規制の範囲内とは引き下ろしできる預金金額はすべてを自由に引きおろしをすることはできないルールになっている
破産申請をした金融機関は連邦証券取引委員会が調査することが義務付けられている
セントラルベルカバンクの場合はミーミルバンクが低価格で買収した
連邦証券取引委員会とミーミルバンクが共同でセントラルベルカバンクの資産運用に問題ないかを調査している

「まったく抜け目がないわね。とにかく市内の銀行などの金融機関の警戒態勢を厳重に」

セントラルベルカバンクの影響でほかの銀行にまで影響が出ることは市内の安全保障において問題になる
今は穏やかに解決するために表立っての警備はできない。それでも一定の巡回の回数の増加で対応する
銀行強盗などを起こされることを抑制するには必要な方法だ

「ところでシエル首席捜査官が機動六課組の内部構成員に関して秘密裏に調べさせているようだが」

「そのあたりはシエルに任せておきましょう。こちらから横槍を入れるとトラブルが起きるかもしれないしね」

エリの指示を聞くと彼は退室した。ベルカ州だけの経済問題であればまだ対応はできる
だがクラナガン市にも影響してくると国内全域に影響が出てくる
それどころか次元世界連合の全加盟国にも影響が出てくる
経済問題をひどくなるばかりである。できれば穏便に事が片付けておきたい

「ワンワールドグループ企業の影響はかなりひどくなりそうね」


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中央区サウスサーストン地区5番街付近 クラナガンシティバンクサーストン支店 現場指揮拠点

シエナは銀行に立てこもりをしている犯人に対しての対応方法を検討していた
犯人は大量リストラされた退役時空管理局員であることはわかっている
彼らはクラナガンシティバンクから融資を受けて資産運用を行っていた
時空管理局債や聖王教会債。ワンワールドグループ企業の株や社債など金融商品を取引していたが大赤字になった
銀行からの融資で金融市場で取引していた。
しかしJS事件で返済することができなくなり逆恨みしたことは明らかである

『クラナガンシティバンクサーストン支店では現在強盗犯が立てこもりを行っています』

『犯人たちは借金の棒引きと差し押さえられた資産の返却を求めているとの情報もあります』

シエナはため息をついた。マスコミは好き勝手に報道してくれるのは仕方がない
だがこちらの内部情報が漏れるのは極めて危険である。

「相手の要求を呑むわけにはいかないし、戦略を練らないと」

問題はどうやって犯人を逮捕するかである。
今のところ、シナリオは何もない。銀行の窓ガラスは防弾仕様ガラスだ
普通の銃では貫通するには時間がかかる。対物ライフルであるバレットM82を使えば話は別だが
1度こちらから何らかのアクションを起こせば彼らがどんな行動をするかは想像したくない
下手をすれば自爆することも考慮に入れなければ。そんなリスクを背負うわけにはいかない

「SA24から中央本部。こちらは現在も膠着状態。何かいい方法はあるの?」

『狙撃許可はだめだ。生かして確保するように』

つまり死体で確保することは駄目であるということ。
証人として利用価値があるとどこかの組織が判断して無理を通すつもりなのだろう
時空管理局や聖王教会の暗い過去を調べるために必要であると
口で言うのは簡単だが現実はかなり難しい。この状況をどのように突破するか。
相手は退役時空管理局員だ。こちらの無線や通信は傍受できていないだろう。
だが、捜査のやり方は彼らはわかっているはず
捜査手法を分かっているということはこちらの動き方もわかっていることを意味している
それだけに簡単に動けない

「連中はいくらの損失したのかわかっているの?」

『わかっているだけで10億ミッド以上です。担保のワンワールドグループ企業の社債が暴落』

その後は言われなくてもわかる結果だ。10億ミッドを回収するためにあらゆる財産を差し押さえた
恨みを持つのは当然ではあるが。身から出た錆である。

「自らの欲のために破滅したのだから当然のようね。銀行を恨むのも」

気持ちとしてはわかるけど、
副業をするならもう少し金に困るようなことをしなければよかったはずだ
自らが招いたトラブルを関係者以外にぶつけるなんて馬鹿なすることだ
自分の欲のおかげで自らが落ちるところまで落ちたのだから

「SA24から中央本部。報道状況をリアルタイムでチェック。危険な方向に流れるような内容があれば即時通達」

『こちら中央本部。了解した。報道状況を常に監視して問題がないかを確認させます』

マスコミの報道が盛んになれば事態収拾に時間がかかってしまう
今は何とか抑え込んでいるが、どれくらいの時間に対応できるかはわからない
時間が経過すればするほど危険指数は上がっていく
クラナガン捜査局はマスコミとの間で協定を締結している
誘拐事件の時は誘拐被害者の情報をマスコミが緊急ニュースとして報道してもらっている
誘拐事件は時間との戦いだ。少しでも遅れたら誘拐被害者の助かる確率は下がってしまう
銀行強盗犯である退役時空管理局員は何としても金を欲しがるのだろう
その理由は想像するのは簡単。犯罪組織から金を借りている
犯罪組織から金を借りている状況なら犯罪組織は必死になって回収するつもりだ
連中はJS事件の後に多くの次元世界国の法執行機関があらゆる犯罪組織に強制捜査に踏み込んだ
結果はかなり効果的に作用していた。
多くの犯罪組織が強制捜査で組織の金と金になりそうな物が押収されて金欠だ
犯罪組織は金欠になった結果、犯罪組織内で抗争事件になっている。
犯罪組織の幹部は組織内で大量の血を出して組織のリーダーを勝ち取ろうとひどいことになっている

「もし犯罪組織に身柄を抑えられたら保険金で返済しろと言われることは確実。彼らは生死の境目であることは事実ね」

犯罪組織は金を回収するためにはどんな方法でも取るだろう
彼らも必死である。金を集めることができなければもう自殺でもするか高跳びするかの2つだ
逃げることもできなければどういう経路をたどるかは容易に想像できる
シエナは銀行内の図面を見ながら、抜け道になるところがないか慎重に確認し始めた
今は状況判断を少しでも危険な方向に向かうとどうなるか想像したくない
自爆することも考えられる。逃げ道がない立場に追い込まれると良い方向な結果にはならない

「もう少し粘るしかないわね」


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中央パトロール本部庁舎 8階捜査部3係オフィススペース

カリーは教導する相手のシグナム・八神に関する個人情報が詳細に記載されている情報を見ていた
シグナムの過去に発生した情報を見てため息をついた。闇の書事件の時の記録が最大の要因だ。
闇の書事件の過去があるという事だけに面倒だ

「ラジェットも面倒な役を私に回してくれたわね。どうして機動六課組の教導官役をするなんて」

闇の書事件の中心人物を受け持つことにカリーはため息をついた
もし捜査に影響が出てしまうとどうしたものかと。事件捜査は信頼関係で成り立っている
互いに疑心暗鬼になると捜査に大きな影響が出る

「影響が出ないと助かるけど、簡単にはいかないでしょうね」

クラナガン捜査局員の大部分は機動六課組の受け入れには大多数は反対している
仮に受け入れをしている局員がいてもそれは表面上だけの方が多い
すぐに受け入れを歓迎しますと思う人間がいる方がありえない

「嫌な話」

『ハーディーバンクはクラナガン市準備銀行に緊急の資金融通を要請したことがわかりました』

『不良債権の金額が大きいからだと金融市場では話が流れています。ただし確実な情報は今のところはありません』

クラナガン市準備銀行から数千億ミッド単位の融資を受け入れて資金不足にならないことを目指しているのだろう
資金ショートになれば株価が急落することは想定される。自己資本比率の基準以下になれば問題になる
無担保コール翌日物で資金ショートになればもう最悪だ。
信頼度が最も高い金融機関同士の資金のやり取りに影響が出る
仮にハーディーバンクが無担保コール翌日物の資金のやり取りで借り入れた借金が返済できなければ、
最も信頼度が高い銀行間取引でのやり取りに大きな影響が出る。
連邦準備銀行やクラナガン市準備銀行が長期的時間での返済を認める代わりに資金を貸し付ける
それによって銀行間取引での資金ショートにならないようにする。
リスクは覚悟しているが無担保コール翌日物で資金ショートになれば金融不安になる

『連邦準備銀行は公開市場操作で必要に応じて買いオペを行うと』

中央銀行が行う買いオペとは民間の金融機関が保有している数多くの次元世界国の国債を購入して資金を流す
金融市場にある資金供給量を増やすことで国内経済に安心感を与える
ただし連邦準備銀行が買い入れることができるのは次元世界国が発行している国債や企業の社債である
ミッドチルダ国内は今は極めて景気が良好であるため、連邦政府の国債はわずか30兆ミッド
だから買い入れをするとなると社債がメインになる。その社債もある程度安全性が高い企業の社債が条件だ
ワンワールドグループ企業やその関連企業の社債を購入したら償還ができるかどうかわからない
つまり連邦中央銀行の帳簿が赤字になることはダメなのだ
難しい選択である。だからミッドチルダ以外の他次元世界国の国債を主な買い入れするしかない

「時空管理局の大規模縮小とワンワールドグループ企業の破綻であらゆる国の経済状況は最悪ね」

特にワンワールドグループ企業と関係があった下請けなどをしていた会社は破綻する件数が大幅に増加
退役時空管理局員も本来もらえるはずだった年金が大幅減少で生活苦に
おかげで犯罪に走るケースが多くの次元世界国で発生している。
誰がこうなることを予想していたかと思うと限られた企業や法執行機関だけだろう
退役時空管理局が犯罪に関与するケースは以前はほとんどなかったのに今はかなりの件数になっている
金がなければ何とかして生活費を作るために手段は問わない

『ピーピーピー』

「中央本部捜査部のカリー・ドーランよ」

『北分署刑事課です。北区南部区域イーストカタラウガス地区2番街3丁目13番地401号室から死体発見の通報あり』

「了解。ヘリで向かうから現場の隔離はしっかりとよろしく」

もちろんですというと通話を終えた。カリーはすぐに捜査キッドをチェック
捜査キッドに鑑識作業に必要なものがすべて入っているかを確認するとカリーはエレベーターに向かった
携帯電話でヘリの離陸準備を手配すると同時にエレベーターのドアが開いた
カリーはそれに乗り込むと屋上のボタンを押した

「本当に面倒を押し付けてくれるわね。泥をかぶるのは現場ってわかっているのかしら」

屋上までエレベータは直通で到着するとヘリはいつでも離陸できる状態で待機していた
彼女はヘリに乗り込むと北区に向かうように指示を出した


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北区西部区域 ノースウエストクラナガン貨物ターミナル パトロール事務所

サイノスはベルカ州からくる貨物列車の情報を調べていった
怪しい1本の貨物列車の情報について詳細に調べ上げていた。
積み込まれている貨物などの情報を中心に。さらにクラナガン市からベルカ州に向かう貨物列車が2編成。
それらがこのノースウエストクラナガン貨物ターミナルに入る。
この2編成の貨物列車はそれぞれ50両の貨車を連結しているが、大部分は積み荷は空のコンテナである
ベルカ州に空のコンテナを運んでいき、ベルカ州内で積み荷を積載してそれを今度は別の州に運ぶ
こういったことは珍しいことではない。問題は本当にそのコンテナに何も入っていないかだ
それについても調べなければならないが、時間的な余裕はそれほどないことは事実である
彼は空のコンテナの足取りを追跡した。どこに向かう予定なのか調べることで分かることもある

「この貨物列車のコンテナはほとんどがある工場に運ばれるみたいだね」

ベルカ州南部地方の大型工場に運ばれることになっていた。レトルト食品を製造している工場である。
工場の詳細情報を確認作業を行った。その食品加工工場の持ち主は退役時空管理局員の親族が経営している
今の経営状況にまで調査をしたところ、金融機関から融資をかなりの金額になるまで受けていた
20億ミッドもだ。それほどの金額が必要な理由についても確認作業をした
食品加工工場は今年に入って2億ミッドの融資を返済を求められた
融資をしていたのはベルカファーストバンクだ。食品加工工場の経営そのものは問題なかった
だが食品加工工場を運用している経営母体の企業は少し問題になっている
ワンワールドグループ企業の社債を担保として使って融資を受けていた。4億ミッド
その担保が価値がなくなったことで銀行は融資した資金の回収に必死になった
もし融資したお金が返済できなければ銀行の経営に影響が出る
ベルカファーストバンクは小口融資を専門に扱っている銀行だ
そんな銀行が20億ミッドも融資するのはよほどの何か事情があるはず
ベルカファーストバンクはJS事件直前に大きな金額の融資を行っていた
件数は50件。1件当たりの平均融資額は10億ミッドほど
ほとんどはセントラルベルカバンクからの借り換えだ
セントラルベルカバンクから融資を受けていた企業が新しい融資先を確保するためである
セントラルベルカバンクが倒産したことで新たな融資先を見つけなければ、
自らの会社が破綻することを素早く察知しての経営判断。そんなところだろう
危機管理ができてくるのかと質問するならできている方だろう
ただしベルカファーストバンクから融資を受けるときはかなり苦労していたことは事実である
会社の財務状況をあらゆる角度から検証されて問題ないことが確認されたのでつなぎ融資を受けれた
それもあくまでも非常手段だ。同じ手が何度も通用するはずがない

「念のため、積み荷のコンテナを調べてみようかな」

本当に空のコンテナなのかどうかを調べることをサイノスは決断した。
時間的余裕はないが安全保障上の問題が拡散することを考えると当然の措置だ

「急がないとかなり危険になるかもしれない」

空のコンテナに違法物資、つまり重火器や麻薬が積み込まれていたら最悪だ
他の州にそれらが持ち込まれてしまうと大きな問題になる。
クラナガン市内のことは市内で解決するべき。

「SA25からノースウエスト貨物管制へ。空のコンテナを積載している貨物列車の臨検を行うように」

非破壊検査でコンテナに本当に何も積み込まれていない稼働を調べることができる
すべてチェックするには時間が必要になる。でも何もしないよりも動いた方が安全である

『こちらノースウエストクラナガン貨物管制。ベルカ州に向かう貨物列車の積み荷確認を行います』

ただし時間的な余裕がないことから、全てをチェックすっることは難しいと
それでも今ここでやれる範囲のことをするだけである
クラナガン市内から違法なものが近隣州に持ち込まれることは何としても阻止しなければならない
中央パトロールの役目なのだから

「何も出なければ良いけど」


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西区南部区域ヒルズボロ地区5番街5丁目10番地 地区パトロール事務所 取調室

エディは男の取り調べをしていた。指紋から男の身元はすぐに分かった
ザエーズ・キット。34歳。犯罪歴はかなりのものだが毎回不起訴
バックにかなり強力のコネがあるのだろう。

「お前は重罪行為を犯したんだぞ。刑務所が好きなようだな」

「好きにしろ。俺はどうせすぐに釈放される。お前たちがどんなことをしても守られているからな」

かなり余裕があるようだ。
それほどの余裕があるということは何かコネを使って、事案を潰すことができると。
そこまで容易に想像できた。どんなコネなのかはわからないが理由が知りたいところである

「言っておくが、お前にどんなバックがあったとしても刑務所生活は長いぞ」

エディが探りを入れてみるが不起訴になることがわかっているのだろう
余裕な笑みを浮かべていた。

『トントン』

取調室のドアがノックされた。エディは1度取調室を出ると部屋の外のスーツ姿の男性がいた
腰にFBIのバッチをつけていた。奴が期待しているコネの到着と思ったが、
彼は1冊のファイルを渡して後は好きにしてくれていいというと地区パトロール事務所を出ていった
エディはそのファイルの内容を確認すると少し笑みを浮かべた
とんでもないプレゼントが来たようなものだからである
そのファイルを持って取調室に戻ると奴は釈放されると思っていた
だが実際は全く逆の方向に進んでいた。

「お前の使い道はもうないことが分かった。お前はある犯罪組織の情報屋をしていたらしいな」

エディの言葉に少し表情を曇らせた。少し危険であることを理解したからだろう
ファイルの題名はクラナガン市内に存在する聖王教会過激派についてだ。
どれほどの聖王教会過激派が市内にどれくらい存在して資金力や組織力に関するもだ
報告書によるとクラナガン市内には1万人近い聖王教会過激派が存在すると記載されていた
だが聖王教会の内情を次元世界連合が調査していることから表立って活動することは減少していた
派手に動きをすれば過激派はもちろんであるが、過激派と関与していない聖王教会にまで影響が出る。
それを少しでも減らすためにどんな手を打ってくるかはわからない

「お前が聖王教会過激派の情報をFBIに送っていたことで助かると思うなら大間違いだ」

FBIはお前を切り捨てる道を選んだようだと伝えると少し焦りのような表情を出した
まさか見捨てられるとは思っていなかったようだ。だがそんなことはこちらには関係ない

「お前がどれほど聖王教会過激派の情報を流して社会貢献をしていたとしても用済み」

刑務所で長い刑期を務めることになるぞとまで追求する
刑務所でじっくりと生活を楽しんでくるんだなとエディは伝えて取調室を出ようとしたところ奴が呼び止めた

「良い情報がある!取引しないか?」

「お前を保護するほどの価値がある情報なのか?」

「市内でテロを起こす予定の聖王教会過激派のメンバー情報だ。連中が拠点にしている情報がある」

エディは少し興味が出てくる話だと言って退室するのをやめて話を聞くことにした

「俺たちが納得できるような情報とは言えないな」

「もっと良い情報がある!聖王教会過激派はクーデターを仕掛けることに関してだ!」

「残念だか、その情報に取引する価値はない。刑務所でじっくりと過ごしてくるんだな」

そういうとエディは奴を拘置所に移送するように指示した
奴はかなり必死に抵抗していたがパトロール捜査官は問答無用で拘置所に移送した
FBI連邦捜査官から渡されたファイルによると奴はFBIの情報の一部を流していた
だからこそ彼らは奴を切ることにしたのだ。ルール違反したのだから当然である
情報屋としてある程度機能していた時は誤魔化すことはできたかもしれないが
一線を越えたら許すつもりはない。先ほどもらった報告書はそういうことを意味している
報告書には詳しい聖王教会過激派に関係する情報が書かれていた
これが事実ならとんでもない大騒ぎになることは間違いない
何としても連中の動きを制圧しなければ事態はさらに悪化していくだけだ
想像している以上の大騒ぎになる

『ピーピーピー』

エディの携帯電話が着信していた。
発信者は港湾パトロールクラナガン統合軍司令官のアーク・レイリだった

「アーク・レイリ統合軍司令官。エディ・サンチェスだが、何か問題があるのか?」

『聖王教会が派手に動く情報があるのは間違いないのね?』

「こちらはFBI連邦捜査官から資料をもらったが、可能性は極めて高いことは間違いない」

『どうやって絞り込むつもり?』

「この報告書の通りに動きを見せだす可能性がある。聖王教会過激派の拠点に強制捜査へ」

『判事は説得できるかもしれないけど、上層部はもめるかもしれないわよ』

令状発行をする判事の大多数は強制捜査の令状にサインしてくれる
だが情報が漏れる可能性も高まることを意味している。発行と同時に強制捜査をしなければ
おまけに証拠隠滅の可能性があることから迅速な行動が必要になってくる

「そこであなたに依頼を。連邦判事に頼んでいただけないかと」

『相変わらず無茶な話ね。連邦判事も簡単に令状を発行してくれる保証はないわよ』

「市裁判所の判事だと情報が漏れる可能性が高いことは明白です」

クラナガン市裁判局の判事にはまだ聖王教会と関係が疑われている人物が存在する
そこから漏れると少し面倒になる。こちらの情報が漏れることが増えればさらに問題に
これ以上問題が拡大する前に抑えるにはこれしかないのだ

「港湾パトロールで情報通信を傍受してもらえますか?」

『聖王教会関係の情報を傍受するなら令状が必要になるわよ』

聖王教会過激派だったとしても、それを特定するだけの必要な情報がなければ令状は出ない
簡単なことではない。建物への強制捜査と通信傍受とでは全く異なる
通信傍受は少しレベルが高い。

『何とかしてみるわ。知り合いにいくつか当たってからね』

エディはよろしくお願いしますというと通話を終えた
アーク・レイリ統合軍司令官ならコネはあるがあちらにも手順というのは存在する
だからこそ無理を押し通すわけにはいかない。それぞれの立場があるから
お互いの境界線をうまく超えながら情報収集を行わなけ得ればならない
だからこそ組織はまるでシステムのように機能している

「誘拐事件で使用された紙幣がいまさら出てくるとは」

問題は1000満ミッドも金庫に入っていた家の住人の尋問だ
通報してきた女性の持ち物かどうかを調べなければならない
女性は別の取調室で事情聴取を受けている。女性が相手となると同じ女性の方が話を行いやすい
彼は彼女がいる取調室の方に向かうと通報してきた女性が手錠をされていた
そこだけを見て結果が分かった。誘拐事件を関係していることが決まったようなものだからだ

「自白したか?」

「お金を預かったことは認めました。ですが誘拐事件があった当時はスタントン州に住んでいたことは確認されています」

金を預かっただけでも違法行為だ。汚れた金だと知っていたならなおさらだ
犯罪で得たお金となると余計に。DV被害にあっていたのはレイナ・ゴロード。女性で23歳
現在の職業は投資銀行に勤めている。チェイス投資銀行という企業に
ここはかなりの金を動かすことで有名である。預かっている資産は総額500京ミッドになる
金の動かし次第では企業の生死を決める企業である。投資を引き上げたら、その企業は破綻することに

「金に困っているような人物に見えないな。それに10年前となると13歳の時だから事件性はないと思うが」

エディは念のため彼女の金融情報を調べることにした
裏があるかもしれない。レイナ・ゴロードは2年前までは時空管理局の事務部門に配置されていた
不正を行ったかどうかについても確認したところ、次元世界連合時空管理局調査委員会の対象になっていた
不正行為の内容はある事件のもみ消しを行ったことが大きな理由である
そのもみ消しを行った事件は犯罪組織から押収した麻薬の横流しだ
麻薬押収を行ったのは時空管理局本局である。押収した麻薬はヘロインである
量は200kg。純度がかなり高いためかなりの高額でさばくことができたはず
麻薬の押収したときの状況を報告書で確認すると押収した麻薬は書類上では焼却処分されていた
だが実際はある犯罪組織に密売されていた。
時空管理局の不正な資金獲得のために利用されていたことが明確になる事例でもある
こういったことは何千件も確認されている。
時空管理局は自ら不正な資金獲得方法をとっていたことが明らかである。

「時空管理局の内部トラブルが多すぎる。俺たちにとばっちりをくらわされるのは迷惑な話だな」

捜査部捜査官だけでなくクラナガン捜査局員のだれもが思っていることだ
自分たちで暴走して自分たちでつぶれた。その影響がこちらに来るのだから迷惑なことである

『中央本部から各員へ 西区南部区域サウスヒルズボロ地区2番街4丁目と8丁目の間の通りで不審人物がいるとの通報』

無線連絡では確認作業を行えとの通達だった。ここからすぐそばの場所である
エディは無線ですぐに急行すると中央本部に報告すると地区パトロール事務所の前に止めている車に乗り込む
現場に急行する中でも絶えず無線連絡が入ってきていた

『不審人物は麻薬でかなり興奮状況の可能性あり。救急隊に出動を要請中。対応は慎重にせよ』

「ジャンキー相手となると少しまずいことになるかもしれないな」

麻薬で興奮しているなら何をするかわからない。できるだけ興奮している時間を抑え込むことが求められてくる
中毒者ほど、身柄を安全に確保するのは極めて難しい。
彼らはあまりに暴走することから身柄確保には慎重さが必要だ
それに麻薬中毒者となると摂取した麻薬の種類と血中量によっては早い医療措置が必要だ

『西区南部区域サウスヒルズボロ地区2番街4丁目と8丁目の間の通りの不審人物ですが、銃型魔法デバイスを所持』

その無線連絡を聞いてエディは一気に緊張感を高めた
もしかしたらということになるかもしれないからだ。
こちらに人的被害を避けるためにも最悪の事態に備えなければならない

「SA38から中央本部。現在西区南部区域サウスヒルズボロ地区2番街4丁目と8丁目の間の通りに急行中」

彼は迅速に周辺の市民の安全確保のために動くようにと指示した
トラブルが解決するまで、民間人に被害が出ないようにするのも仕事のうちである

『こちら中央本部。周辺地区を含めて安全確保のためにパトロール捜査官を配置する』

現場の安全確保のために、最大限を人員展開をする必要がある

『WP6233から中央本部。麻薬ジャンキーと思われる不審人物ですが、銃型魔法デバイスいつでも発砲できる状態に』

「SA38からWP6233。現場の安全確保のために非殺傷兵器を使っての身柄拘束は可能か?」

『現状ではかなり困難です。逃走されないように警戒するのが限界と思われます』

「とにかく周辺住民の安全を最優先で確保しろ。乱射騒ぎになると問題になる。それも大きな」

乱射騒ぎで現場周辺が混乱することで最悪のシナリオが想定される
そんな状態になることは許されない。クラナガン捜査局として罪のない人々を守ることが任務である
麻薬中毒者がどんな行動をするかは予想することは極めて難しい。どんな行動をするかわからないからだ。
時空管理局から大量リストラされた退役時空管理局員の大部分は年金を受け取ることができなくなった。
退役時空管理局員の多くは退役後に受け取るはずだった年金の運用をワンワールドグループに任せていた
グループ企業が破綻したことにより多くの人々が年金を受け取ることができなくなった
全てを失ってしまい麻薬に手を出した。そんなことは珍しい話ではない
麻薬の手を出してしまった退役時空管理局員はかなりの数になる

『WP6233からSA38。不審人物は銃型魔法デバイスを使用して暴れている。慎重な対応を』

「了解した。周辺住民の退避は完了しているのか?」

退避できていない人間がいるようなら外に出ないように通達をとエディは無線で伝えた
現場に近づいていくと何かが破壊される音が聞こえてきた。どう見てもまともな状況ではない

『すでに拡声器で近隣住民には外出しないように通告済み。現在6人のパトロール捜査官で対応中』

「こちらはあと少しで到着する。それまで時間を稼いでくれ」

そちらで身柄確保ができるならしてくれても問題ないがと伝えた
ただし現実的にはそれは簡単なことではない。できる限り生かして身柄を確保しなければならないのだ
安全第一で対応するなら問題は簡単にはいかない

「魔導師相手となると少し面倒かもしれないな」


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東区東部区域 港湾パトロール本部基地 北部区域 港湾パトロール飛行場 駐機場

ミカはヘリで到着するとすでに離陸準備が完了しているC-37[ 航空機形式:ガルフストリームG550 ]がいた

「本当にごめんなさいね。忙しいのに」

ミカは駐機場でいつでも動けるように機体整備をしている整備スタッフに話しかけた
彼らはいつものことなので問題ありませんと答えた。ミカがC-37に乗り込むとすぐに機体が動き出した
座席に座りシートベルトを着用した。機体はすぐに滑走路に移動を開始した

『これより滑走路に入ります。安全確認を再度行ってください』

パイロットからの指示にミカはシートベルトの確認を行った
問題はなかった。機体は一気にエンジン出力を上げて離陸していった
ベルカ州中央地方ベルカ市にあるベルカ州警察本部に向かった
彼女は携帯情報端末を使ってベルカ州警察の捜査部門のトップに連絡した
現場の捜査を担当しているのはハイディーツ・パラスティック捜査官だ

『ミカ主任。お久しぶりです。あなた自らの現場参加とは大きなことになりそうですね』

「エバスト・ヴォルートは私達の教え子よ。こちらで活動していたころに恨みを買っている可能性が高い」

それだけに中央パトロールからも機密情報にアクセスできる人間が必要だとミカは語った
殺された被害者であるエバスト・ヴォルートはベルカ州警察で教導官をしていた人物だ
様々な機密情報にアクセスすることができる立場の人間である。
もしかしたら機密情報を得るために拷問を受けていた可能性も考えられる
捜査は慎重に進めなければならない。

『それは言えていますね。我々はいろいろと恨まれているケースは多いですから』

捜査を担当している法執行機関に対して犯罪組織や反政府組織などはかなりの恨みを持っている
おまけにベルカ州では聖王教会関係の問題が頻発している
州警察だけでなく、州内の郡警察や市警察などの法執行機関は過去に聖王教会が不正に関与していなかったか
それらを徹底的に調べているのだ。問題が1つでもあれば連邦組織や次元世界連合に報告
強制捜査へ踏み切ることに。ただ、聖王教会もこちらの動きを分かっているはず。
証拠隠滅の可能性があるためできるだけ素早い対応が求められてくる
もし証拠隠滅されたら様々な不正行為の立件ができなくなってしまう。それだけは避けなければならない。
すでに次元世界連合の聖王教会調査委員会によって大部分の資料は押収されている
調査委員会は今は押収した資料を徹底的に分析している
少しでも怪しいところがあれば即座に関係者の身柄を拘束して事情聴取を行う。
1人でも証人を確保するためには必要なことである
聖王教会でも内部で汚れた任務を行ってきた構成員は証拠を消すことで必死だ
1つでも真実にたどり着くようなものが残っていたら身の破滅である

『今は聖王教会関係で恨まれていないかを調べている。何かあればすぐにミカ主任の携帯情報端末にデータを送る』

「できるだけ急いで関係者の身柄を拘束するのよ。証拠が消される前に」

了解とあちらは言うと通信は終了した。ミカは本当に危険な展開になることを想像した。
真実を知る者は逃げる道を選ぶだろう。逮捕されたら懲役25年は固い
刑務所暮らしは楽しいとは言えないのだから。個室でずっと缶詰。良い話はない
それに刑務所のセキュリティがどれほど高いものだとしても完全にとは言えない
何者かを利用して真実を知る者を抹殺することは十分に考えられる
全てを闇に葬ることでしか対応できない事例は存在する
ミカは携帯情報端末でニュース専門チャンネルの報道番組を見始めた

『聖王教会過激派がクーデター行為を行ったことについて、危険リスクがあることは事実です』

「マスコミの情報収集能力は高いわね。時空管理局と聖王教会関係の話題なら視聴率が稼げるけど」

ミカの言うとおりだ。マスコミにとって悪いニュースほど高値で売れる
視聴者は騒動を見るのが好きなのだから

『ベルカ州西部地方で武装蜂起を行ったことについて連邦政府はクーデターは認めることはないと』

『ピーピーピー』

ミカの携帯電話が着信を告げていた。彼女はすぐに電話に出た
発信者は港湾本部長のリヴィナ・トラヴィックからだった

「リヴィナ。調子はどんな感じなの?」

『こちらはクーデター騒動で大変よ。あなたも気を付けておきなさい』

それはつまり狙われる可能性があるということだ。そんなことはわかっている
クラナガン捜査局の管理職など、上層部の人間を人質にして何かをする連中は存在する
それだけにいつでも攻撃されても対応できるように準備する方がいい

「了解。護衛機はつけてくれるの?」

『E-767が港湾パトロールの管轄区域の各州に展開中。警戒監視のために戦闘機も配置しているわ』

つまり最悪の事態に備えているということを意味している
問題解決には素早い状況判断が求められる。連邦政府と常時連携をとること。
それと州政府とも連携をとることで安全確保をすることができるのだ
ただし世の中全て簡単にはとはいかない。多少の障害物は存在する。
それをどうやって乗り越えるかが重要に。

「クーデターを起こしたのは間違いなく聖王教会過激派であることは間違いないのね?」

『港湾パトロール安全保障局も確認したわ。教会過激派であることは事実よ』

このままクーデターが進行すればいつか大きな火薬庫に火が付く。ベルカ州政府がつぶれることを意味している。
ようやく安定し始めたベルカ州政府は州内の様々な自治体の安全保障を守ることは当然である

「港湾パトロール海兵隊の派兵に関してはどういう形をとっているの?」

『基本的にはベルカ基地に配置されている第7海兵遠征軍で対応する予定よ。連邦国防省とも調整は必要だけど』

リヴィナの言葉にミカは連邦海兵隊も参加するのか質問してきた
現時点ではまだ決定されていないけど、今後どうなるかは不明だと回答してきた
問題は聖王教会本部がどう動くかを見定めなければならない
もし聖王教会過激派だけでなく聖王教会そのものもクーデターに参加していたら危険である

「リヴィナ。聖王教会の監視強化を。教会本部の人の出入りはもちろんだけど、資金面で動いているかについても」

聖王教会が今回のこのクーデターに資金を出していたら危険である
諜報活動を行い金融情報を監視するのは当然だ。

『もちろん調査を行うわ。聖王教会過激派が派手に動きを見せているから警戒しないと』

クーデターがベルカ州西部地方だけでなく州内全域に展開されると州政府そのものが脅かされる
州政府もそんなことは望んでいない。民主主義のルールを侵すことは許されない

「ベルカ州内の安全保障に大きな影響が与える展開になってきたわね」

『その通りですね。ミカ主任は戦場に行くのがよほどお好きと見れる』

「管理職はストレスがたまる仕事なのよ。あなたも定期的に射撃訓練をしているらしいわね」

ミカのセリフにリヴィナはいつ何時も自らを守ることができるようにしているだけだと答えた
港湾本部長という立場はいろいろと利用価値があると考える悪党は多い。それだけに常に銃を携帯している。
港湾本部庁舎の出入りは危険物探知機とIDチェックを受けなければ入館できない
簡単に侵入することはできない。身分を偽装しているIDを使ったとしてもだ
IDのセキュリティシステムにアクセスするのは簡単なことではない
もしクラナガン捜査局のメインコンピュータにアクセスするときにはさまざまな手順が必要になる
1人の局員がアクセスするにはかなりのコネがなければできることではない

「リヴィナ。気を付けることね。港湾本部基地にどんな攻撃されるかはわからないから」

『もちろん警戒態勢を敷いているわ。私の執務室の前には港湾パトロール海兵隊員が警護しているから大丈夫よ』

「ほかに危険な情報はあるの?」

『魔力精製炉発電所で使われる魔石を積み込んだ貨物船が1時間以内にクラナガンミーミルコンビナートに入港する』

クラナガンミーミルコンビナートには魔石を魔力精製炉で使用できるように濃縮度を高める施設がある
魔力精製炉発電所とはミッドチルダはもちろんであるが、次元世界連合加盟国のほとんどの国で入手できる鉱石。
原子力発電所で使われるウラン鉱石と類似している
ただウラン燃料と違って魔石燃料は危険な放射性物質を出すことがないのでクリーンなエネルギー源だった
AMF装置や技術が拡散した影響で、今までは魔力精製炉発電所が多くの次元世界国で電源としていた
しかしそれではダメとして火力や水力や再生可能エネルギーなどの電源分散化が必要になった
ミッドチルダでは以前から少しずつ魔力精製炉発電所の発電出力比率を分散化してきた
このような政策はミッドチルダだけでなく、多くの次元世界連合加盟国で行われている

「ちなみに貨物船は常に警戒しているのよね?」

『もちろんです。マニュアルに従って警戒態勢を敷いています。人工衛星や無人偵察機なども使って監視を』

魔石燃料を濃縮率を高めれば核兵器と同じ、
あるいはそれ以上の大爆発を起こすことができる魔力爆弾が製造できる
それだけに魔石鉱石の採掘や加工工場は警戒監視対象と国際条約で定められている
その監視を行っているのは国際魔力エネルギー機関である
またミッドチルダ連邦政府も独自に監視体制を行うために連邦行政機関の魔法規制委員会が監視している
多くの次元世界連合加盟国がミッドチルダ連邦と同じような形でチェックしている

「今は何が起きるかわからないのが現実だから気を付けて」

『はい』

リヴィナとの通信も終了した。ミカは現在の港湾パトロールの各種レーダー情報を確認した
各種レーダーで問題があるとすればベルカエアライン24便のことだけだ
通信が順調なのかと質問すればそれは正常とは言えない
まだ何かあるかもしれないのだ。警戒は怠るわけにはいかない

「今はノースクラナガン空港に接近中か。何もなければいいけど」


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中央区東部区域セントラルパーク 中央区域 

セントラルパークはクラナガン市中央区に位置している公園。
敷地内には池・森などがある。公園の地下には地下雨水貯水池が設置されている
捜査部3係のエバック・アリオンはそこである人物を見張っていた
尾行対象者は性犯罪者。それも幼い子供に性的嫌がらせを何度もしてきた常習者。
過去に3回逮捕したがなぜかすぐに保釈された。どう考えても誰かの圧力がかかっていることはわかっていた
だからこそこのチャンスに賭けることにしたのだ。今度こそ一生刑務所に放り込んでおきたい

「何としてもぶち込んでやる」

3回も性的嫌がらせ行為をしてきた。もう逃がすなんてしたくない
すると監視対象の男がエバックの方向を見た。次の瞬間慌てて逃げだした
エバックはすぐに追いかけた。逃げるということはそれなりに理由があるということである

「SA39から中央本部!セントラルパーク中央区域で不審人物を追いかけている。応援をよこしてくれ」

『こちら中央本部。直ちにセントラルパークの封鎖作業に入る』

セントラルパーク内にも地区パトロール事務所が設置されている。
セントラルパーク内のトラブルや事件事故に対応するためである
車の出入りはかなり限定されてくる。
公園内には外から一般車両が入ることができないようになっている
広い大都会であるクラナガン市の中でセントラルパークのような広い公園は5か所設置されている
都会のど真ん中にある自然豊かな貴重な場所だ。多くの動植物が存在している

「待て!」

必死になって逃げる男性は後ろを見る余裕すらないようだ
明らかに何かトラブルを抱えていることは間違いない
その時、前方から2人のパトロール捜査官がこちらに向かってきた。
ようやく追い詰めることができるタイミングが来たようだ
パトロール捜査官は前方からタックルをして身柄を確保した

「アリオン捜査官。誰ですか?こいつは」

「ブディス・サコイル。過去に性的嫌がらせ行為を。今まではどこかの誰かさんが圧力をかけてきたが」

それもここで終わりを迎えると伝えるとパトロール捜査官は手錠をかけた

「公務執行妨害の容疑で事情を聞かせてもらうからな」

エバックはセントラルパーク内にある地区パトロール事務所に向かった
パトロール捜査官2名と逃走犯1人と一緒に。
地区パトロール事務所は身柄を拘束した場所の近くにあったのですぐに到着した
とりあえず取調室で事情聴取を行うことにした

「それで公園で何をしていたんだ?」

エバックは尋問をするがブディス・サコイルは何も答えない
それどころか、どこか余裕な表情を浮かべていた。また釈放されると思っているのだろう
こいつにどんな後ろ盾があるかについてはある程度はわかってきている
時空管理局地上本部の上級幹部である。その幹部は横領などの行為で時空管理局犯罪捜査局が捜査を行っている
現在の住所はクラナガン市内の拘置所だ。もうコネは使えるはずがない
つまり自由の身で過ごせるのは今が最後の時である。

「公園で俺を見て突然逃げ出した。公務執行妨害と言われても仕方がない」

わざといたずら目的で自らをクラナガン捜査局員を誘導するような行動をする
その行動自体が公務執行妨害に該当する。軽犯罪ではあるが訴追や身辺高速には十分な材料になる

「セントラル分署に連絡。児童ポルノ捜査課の刑事に話をしておいてくれ」

「わかりました」

「良いか。刑務所で少し頭を冷やしてくるんだな。今度ばかりは少しは刑務所暮らしがつらいものかわかるかもな」

刑務所がいくら個室とはいえ、狙われる保証が完全にないとは言い切れない
出所するのを外で待ち続ける人間も存在する
永久に安全な場所などが存在するとは限らないのだから

「刑務所で殺される可能性はかなり高いな」


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東区東部区域サウスクラナガン港 サウスクラナガン港分署ラボ棟 2階マルチメディアラボ

ダイナはサウスクラナガン港で300kgのコカインを押収した漁船の動きを調べていた
連邦法で国内の船舶には人工衛星に位置情報が州政府や連邦政府に通知が行くようになっている
これは遭難や船舶事故が起きた時に迅速に行動できるように動けるようにシステム設計されている
だからこそ位置情報は常にわかる。ダイナは麻薬を密輸しようとした人物の記録についても調べた
名前はレポズ・カース。45歳。前歴はいくつかあるが軽犯罪が中心だ
麻薬関係の犯罪歴は今まではなかった。300kgのコカインを密輸するとなると入手ルートはかなり限定されてくる
犯罪組織や麻薬密造組織と密接な関係がなければできるはずがない
これだけの麻薬をどこにさばくつもりだったのかを入念に調べなければならない
末端価格はかなりの値打ちだ。そんな危険なビジネスに手を出すリスクをなぜ犯したのか
再度、レポズ・カースの記録を調べた。金融情報を調べたところ、投資で大失敗をしていた
ワンワールドバンクの社債を2億ミッド購入していた。破産と同時に社債は価値を失った
社債購入の原資は金融機関からの融資だ。だからこそ焦ったのだろう。
船を差し押さえられたら生活はできない。だから手っ取り早く金を稼ぐ方法を選んだ
そんなところだろうというのは想像できる。だが今は想像の域を出ない
何か明確な根拠がなければ真実を追求することはできない

「自白をするような奴じゃないだろうな」

犯罪組織の情報を漏らしたら状況はかなり危険なことになるかもしれない
刑務所に殺し屋を手配される可能性は十分にあるのだから
ダイナはとりあえずマルチメディアラボを出るとサウスクラナガン港分署庁舎の3階に向かった
そこには密輸密航者捜査課が設置されている。もちろん同じフロアに刑事課も設置されている
2つの組織は常に連携して対応している。
港を経由して麻薬や重火器などの違法なものが輸出入する事例はかなり増加している
今までもあったのかもしれないが時空管理局の捜査部門の幹部が金を受け取り情報を流していたと疑われている
そういった事例はミッドチルダだけでなく数多くの次元世界でも確認されているのだ
時空管理局は金を集めるためならどんな手段を使ったとしても迷いがない
ある意味迷惑なことをしてくれる組織だ
サウスクラナガン港分署庁舎の3階のフロアに入ると取り調べが行われていたが沈黙を守っているようだ
刑務所であっても逃げ場がないことをよく理解している証である。
どういう道を選んだとしても最後に待っているのはヒットマンが送り込まれることは間違いない
ダイナは取調室をマジックミラー越しに見える部屋に入り観察していた

『お前の船にコカインが300kgもあった。これはどう説明してくれるか知りたいな』

『知らないな。俺は海上に流れているものを拾っただけだ。それでも罪になるのかよ』

この手の言い訳でよく使われるものだ。海上でただ拾っただけ
そうすれば捜査を乗り切れると考えているようだが、今回はそうはいかない

「麻薬所持で立件するように検事局に連絡するか」

明確に彼が麻薬購入に絡んでいるかを証明しなければ裁判でもかなり苦しいが
何もしないよりかはまだいい。48時間は分署の拘置室で待たせることができる
その間により詳細な個人情報を調べまくるしかない

「偶然海上で麻薬を拾うなんてありえない。おそらく大きな麻薬密造組織が絡んでいるはず」

コツコツ掘り下げるしかない。捜査のためには多くの時間と人員が必要
どこでコカインを回収したかを確認することでどこの組織が密造したものかがわかってくる
ダイナは取調室に入るとレポズ・カースと直接話をした

「麻薬を使ったことはあるか?」

「俺がジャンキーだと言いたいのか?ふざけるな。毎日魚釣りで忙しい」

確かに漁業で生活をするのはいろいろと苦労がある
漁業をするにはクラナガン市政府に申請が必要だ。市政府から最大漁獲量が定められている
もし少しでも漁獲枠から超える漁業をすればすぐに免許はく奪だ
ちなみにクラナガン市の東側の海は豊富な魚が存在する。それに連邦法では養殖業を推進している
過剰に漁業をすると漁業資源が減ってしまう。連邦政府や州政府では養殖業のために補助金を出している
養殖業を行っている漁師はかなりの人数になる。個人だけでなく企業も養殖業を行っている
おかげでミッドチルダ連邦国内の養殖事業を行っている個人と企業をすべて合計するとかなりの数になる
養殖業の方が安定的に収入を得ることができる。
普通の漁業ではその時々で大きな振れ幅があることは事実だ

「なら麻薬検査をしても良いな?」

「血液検査でもなんてもしてみろ。俺は麻薬なんてやらない」

レポズ・カースがここまで断言するということは血中から麻薬は出ないだろう
念のため、血液検査をすることにした。
少しでも麻薬成分が検出されれば麻薬使用で裁判にかけることができる
ただしここまで自信があるのだから、麻薬を使っている可能性は低い
それでも確認作業をしなければならない。それが定められたマニュアルである

「医務官を呼んで血液サンプルを採取してくれ。奴のすべてが知りたい」

ダイナはそういうと取調室を出ていった
あとはこの分署の医務官が血液サンプルを採取して分析するだけ


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西区東部区域ウエストクルック地区3番街2丁目と4丁目の間の通り

クレスタはそこで不審車両ナンバー[クラナガンセントラルAQER-0025]にある爆弾の解体を行っていた
場薬の量はかなりの物になる。一歩間違えれば天国に旅立つほどに

「これほどの緊張感がある任務は久し振りだ」

爆薬の解体は簡単なことではない。おまけにこの爆弾にはタイマーがセットされている
早く解体しないと大爆発。爆弾を製造する人間は起爆タイマーの数字を正確に設定しているとは限らない

「嫌な仕事だ」

慎重にワイヤーを切断していった。ミスをすれば死ぬことになる
爆弾解体はプロの仕事だ。それもかなりの実力がなければすることは危険すぎる

「かなりの腕が良い奴が製造したものだな。無事に解体できればいいが」

彼はかなり苦戦していた。爆弾の構造そのものはシンプルだが起爆用のワイヤーが複数ある
1つを切れば予備の1つで爆発する。2つを同時に切断しなければならないのだ
おまけに魔導師が魔法を行使した瞬間でも起爆するセンサーがあった
用意周到なうえにプロフェッショナル。利口な人間すぎる。
なぜここまで手の込んだ爆弾を作ったのか。この辺りは国際政治の中心だ
何か大きなことをするつもりであることは確実と言ってもいいかもしれない
とにかくそういうことを前提で捜査を進める。その前にこの爆弾を解体しないと

「あと少しで解体できるが、赤と白のどちらか。それとも両方同時なのか」

クレスタはまさに運命の分かれ道に来ていた。どういう方法でカットすればいいのか
1つでも手順を間違えたら最悪である。何としても安全確保で行わなければならない
彼はリード線を同時に2本とも切断することにした
成功するかどうかはかなりのリスクだが、これ以上良い方法があるわけではない
心を押し付けてリード線を2本とも同時にカットした
爆弾の起爆タイマーは停止した。すぐに爆薬と信管を引き離して安全確保を行った
爆薬を起爆スイッチから離したので安全確保ができたことは間違いない

「クリアだ!」

クレスタがそう言うと爆薬を専用の容器に収容すると無線連絡で爆弾処理が完了したと報告した
あとはラボでこの爆薬について詳細に調べなければならない
純正の爆薬か密造の爆薬か。それを判断するのにはさまざまな分析が必要になる

「本当に命がけの仕事だな」

信管を詳しく確認すると製造番号が刻まれていた。
製造したのはフローレンス兵器の刻印がされていた
フローレンス兵器はクラナガン市の西隣にあるフローレンス州で武器弾薬などを製造している企業だ
今は次元世界連合が武器の製造現場の監査を行っている。
次元世界連合が承認しない限りは武器弾薬などの軍事物資の生産は認められない
正確には次元世界連合と関係がある質量兵器監視機構の許可がなければ武器製造どころか研究もできない
おまけに製造工場などに質量兵器監視機構の検査官が配置されて密造行為が行われていないかチェックする
厳しい基準があるからこそ質量兵器の拡散防止につながっている
もし武器を犯罪組織や反政府組織に販売したことがわかると国際条約により企業は倒産する
それだけ厳粛に決まりごとがあるが利益が出るビジネスでもある。
簡単に言えば違法行為をすれば大儲けできる。でもそれをすればすべてを失う
刑務所行きは決定である。情状酌量はなく最低でも懲役5年は待っている

「クルック分署のラボで分析をすればいろいろと分かってくるだろう」

各種爆薬にはそれぞれ識別マーカーの成分は入っている
この識別マーカーを分析することで卸元がわかるかもしれない
それにしても国際政治の中心であるこんなところで車爆弾とはかなりイカレタ連中だ
そうでなければよほどの度胸があることでもある

「SA23からクルック分署。車爆弾の解体に成功。念のため引き続き警戒監視を行え」

『こちらクルック分署。引き続き警戒監視を続行する』

他にも仕掛け爆弾があることは容易に想像できる
これ以上の混乱は望ましいことではない。迅速に対応するためにも人員の確保が必要に

『クルック分署から各員へ。クルック地区および周辺地区の警戒態勢を厳重にせよ』

「戦争の始まりの鐘がなったな。あとはどこまで話が進むかだが難しい判断に迫られるだろう」

クレスタは最悪のシナリオを想定していた。
もしそれが的中したらただの騒ぎでは片付くことはない
大騒ぎになることは間違いない。問題解決にはありとあらゆるプランが必要になってくる
携帯情報端末でマスコミの報道情報を確認すると状況がかなり危険であることを示していた

『ミッドチルダ連邦政府大統領報道官は緊急の声明を発表。ベルカ州でのクーデターは絶対に容認できないと』

『必要に応じて自衛権の行使を行う用意があるとも発表しました』

『クーデター情報が流れてすぐに為替レートは大きく変動しています』

国際取引で使われる通貨ミッドが売りの圧力が強まっていますとも報道されていた
その報道を見てクレスタは大きなため息をついた。
基軸通貨である通貨ミッドの変動は国際貿易に大きな影響が出る

『様々な通貨取引に大きな影響が出ると。連邦準備銀行は急激な為替レートの変化は好ましくないと』

当然のことである。基軸通貨の信用性が失われると国際貿易に大きな影響が出る
そうなれば通貨ミッドの安定性が失われるとミッドチルダ連邦政府の信用問題にもなる
それを避けるためにもミッドチルダ連邦国内が安定していることを示さなければならない
もし少しでも経済的に危険要素が出てくると投資家などはすぐに金を一斉に動かす
そうなれば国内の証券取引所などの株価に大きな影響が出てくる
外国為替も同じく、通貨ミッドがすぐに売りだされて通貨安を招いてしまう
ミッドチルダ連邦政府と連邦準備銀行は必要に応じて外国為替に介入して影響を最小限にしなければならない

『ベルカ州西部地方のクーデター事案で聖王教会本部は関与していないと表明しています』

「当然だな。聖王教会そのものが関わっていたら大騒動だ」

『クルック分署から各員へ。サウスウエストクルック地区でも爆弾を仕掛けたとの犯行予告あり』

その無線を聞いてクレスタはため息をついた
これではいくつ発生するか想像もつかない。できるだけ問題の内容に対応したい
こちらの手の内を探るために様々な仕掛けをしていることも考えなければならない
それは危機管理上許されることではない。
こちらの行動マニュアルが知られると犯罪者たちには有利になる賭け率が成立する

「SA23からクルック分署。警戒態勢を厳重にしろ」

『さらに3件の不審車両があり爆弾をセットしているとの通報を受電している』

クレスタはその言葉に最悪と思いながらも今は状況把握が最優先だと判断した
ここまで攻めてくるとなると対応はかなり忙しくなる
マスコミが騒ぎ出したらとんでもない事態に発展する
ベルカ州の問題だけでも苦労しているのにクラナガン市内にまで問題が持ち込まれたらさらに面倒だ
阻止することは絶対条件である

「SA23からクルック分署。サウスウエストクルック地区に向かう。爆弾が設置された場所はわかるか?」

『現在捜索中』

クレスタは何としても見つけろと命令した。クラスターのような状況になることは絶対にダメである
今この場で押さえつけないといけない。それがクルック分署の役割なのだから
こちらの情報が漏れたら騒ぎはこんなもので済むはずがない

「FBIと国土安全保障省に連絡して、この辺りにテロリストがいないか調べないとな」

国土安全保障省はミッドチルダ連邦国内のあらゆるトラブルに対応している
常に国内に危険分子になりうる個人や組織の監視も行っている
クレスタはすぐに国土安全保障省の友人であるバラード・ニュインに連絡して市内のテロ情報の収集を依頼した

『クルック地区で大問題が発生しているらしいな』

「ああ。そんなところだ。そっちで何か情報はつかんでいるか?」

『こちらでも情報収集を関係組織と連携して対応している。今はどこも大騒ぎだ』

当然である。首都であるクラナガン市でテロ攻撃を受けるとなると騒ぎは簡単には収まらない
事態の取集をするのは簡単なことではないことは誰もがわかっている。
難しいことであることは確実だが何とかしなければならない

『クルック分署からSA23。爆弾を設置した場所が判明』

場所は西区東部区域サウスウエストクルック地区7番街1丁目と2丁目の間の通りにある車だと
できるだけ急がなければならない。問題解決にはいろいろと問題はあるが

「SA23からクルック分署。今、サウスウエストクルック地区に急行している。間に合うと良いが」

もし爆発したら悲惨な犯罪現場の誕生だ。おまけに証拠はすべて汚染されて使い物にならない
証拠能力はなくなってしまう。爆弾事件で最も捜査が難しくなるのは証拠が破壊されることである
部品が貴重な証拠であるが、爆弾が爆発すると調べるのはかなり苦労する
というよりも事実上不可能になる。だからこそ少しでも爆弾を無傷の状態で確保することが重要なのだ

「頼むから間に合ってくれ」

クレスタは急いで現場に急行する。
そしてサウスウエストクルック地区7番街1丁目と2丁目の間の通りに到着するとパトロール捜査官は避難活動をしていた
民間人や周辺建造物内にいる人々を守るためである
クレスタはすぐに爆弾が設置されていると報告されたセダンタイプの車に接近した
もちろんかなりリスクがあるが爆発させるわけにはいかないのだ。
安全に爆弾を解体して爆弾犯を見つけ出さないとならない。
爆弾犯を自由にさせるわけにはいかないのだ。少し強引な方法を使っても逮捕への道を進むしかない

「爆弾を解体できればいいが」

『クルック分署からSA23へ。爆弾処理班が先着した。現在慎重に解体している』

良いニュースである。無事に爆弾を解体処理できればいい方向になるがミスすれば死を招く
クレスタは無事に爆弾の解体をすることができれば良いが、万が一に備えるべきだ
必ずバックアップをしなければ計画は失敗する可能性が高まる

「何もなければ」

解体作業をしているのは本職の爆弾処理班だ
彼らがミスをする可能性はほとんどない。プロ中のプロなのだから
それでも世の中には絶対という言葉はないのだ
万が一に備えて避難をさせている

「SA23から中央本部。クルック地区の爆弾騒ぎだがマスコミを通じて警告を」

『本気で言っているのか?大騒ぎになるぞ』

クレスタはこれ以上被害を出さないようにするためには必要なことだと回答した
もう人的被害が出るようなことは避けなければならない

『こちら中央本部。クルック地区と近隣地区のテロ警戒レベルをレベル3とする』

レベル3ということは特定地区における緊急警戒態勢
指定された地区は車や人の動きが大幅に制限される

『ノースクルック地区8番街7丁目と8丁目の間の通りで不審な行動をする人物を確認。職質中』

今はどこで何があるかわからない。対応は慎重にしなければならない
現れる様々な課題は次々と解消しなければいけない

「本当にここを狙ってきたのかもしれないな」

そこにクルック分署にいるカレン・アリストから携帯電話に連絡が入った

『クレスタ。わかっているとは思うけど慎重な対応を』

カレンに言われなくてもそんなことはわかっている
今はここと近隣地区の安定が求められる

「街灯観測システムを使って周辺地区に問題人物がいないかを検索しろ」

『すでに行動開始しているけど、対応には時間がかかるわ。大切なことは冷静な判断だから』

カレンの言うとおりだ。今必要なのは冷静な判断だ。
どれだけ厳しい決断であっても市内の治安維持のために必要なら荒業も実施するしかない

『何か不審人物がいたらすぐに連絡する』

クレスタはカレンに素早い迅速な対応が必要だと伝えた
不審人物がいれば大ごとになる。だからこそクルック地区と近隣地区には検問所が設置されている
検問所を出入りできるのは専用のIDがある人物に限定されてくる。
クルック分署が警備を担当している。検問所の警備も担当している
クルック分署の許可なしにはID発行がされることはない。
さらに連邦国務省の許可がなければ立ち入りは厳しく制限されている
数多くの次元世界国の外交官はミッドチルダ連邦に入国するときに身元確認がされている
スパイ行為が行われた場合は外交官関係条約に基づいて連邦捜査機関やクラナガン捜査局が捜査を担当する
外交官関係条約では外交官特権などの国際ルールがある
外交官であっても特権が適用されない場合がある。スパイ行為実行者や重犯罪行為者だ
犯罪は外交官特権でも逃れることができないことをしっかりと定められている

「どうしてこれだけのトラブルが発生するんだろうな」