魔法と科学が入り混じった世界、ユーフォニア

そんな世界の王室でのちょっとしたいつもの日常
時には楽しく、時には悲しい出来事も経験しながら大きくなっていく少女の物語です

「こら!待ちなさい!」

そう怒られながら逃げるのは5歳の少女だった。
追いかけるのは生みの親である母親だった

「嫌だもんね!今日こそ、このお城から逃げてやるんだから」

まるで少しやんちゃがきいた男の子のような発言だが、
逃げているのは髪も腰まである銀髪の少女だった
少女はお城の広い廊下を大急ぎで走って逃げていた
一方の母親のほうは、さすがに疲れが溜まってきたのか
ペースが遅くなってきた。
このうちに逃げようとしたが目の前に大きな狼が現れた

「フェンリル!どいて!」

「リリア、今日こそは捕まえるぞ」

フェンリルと呼ばれた狼は人語を理解もできるし話せるようだった
リリアと呼ばれた少女は目の前に立ち塞がった大きな狼を巧みにかわして逃げようとするが
その前に捕まってしまった。
王立騎士団の人々だ。

「追いかけっこはここまでです。リリア様」

王立騎士団のリーダー、スヴァン・リコールが言った

「スヴァン、私をお城の外まで出して!」

「だめです。国王様からまだ早いと言われたばかりでしょ」

まるで子供をあやすかのように言うと、ようやく追いついてきた母親にリリアを差し出した

「こら、リリア、お勉強から逃げたらだめでしょ」

母親であるユリアーナはリリアをしかるが
リリアは話は右から左と聞く耳を持っていなかった

「だってお勉強だけの毎日だけだと飽きちゃうんだもん」

そこにフェンリルも話に参加してきた

「リリア、勉強は大事だぞ。お前は将来の女王様なんだからな」

「フェンリル、毎日毎日お勉強だけだなんて飽きちゃう。1週間に1日だけでもいいから城下街に行かせてよ!」

リリアの言葉に周囲はため息を漏らした。
確かに勉強だけの毎日は退屈だろう。
籠の鳥ではないのだから。
そこでユリアーナが妥協案を出してきた

「ちゃんと勉強することを約束するなら、1週間に1度、城下町に行くことを許可しましょう」

「本当!」

リリアは目の色を輝かせて返事をした

「ええ、私とリリアの約束よ」

ユリアーナの言葉にリリアは絶対だよといった

「約束は守るわ。その代わりリリアもお勉強はしっかりするのよ」

その言葉に少し嫌な表情を浮かべたが
約束は約束だ。守れば城下町に遊びに行ける

「それじゃ、明日、遊びに行ってもいいよね」

「今日は逃げずにお勉強をすることを約束できる?」

「約束します!」

リリアはユリアーナに敬礼をしながら返事をした
その様子を見て、周囲に笑いを誘った