翌日、前日にたっぷりとお勉強をしたリリアは城下町に行くことを楽しみにしていた
生まれてからずっとお城から出たことがないリリア
今日のお出かけのために『普通』の格好をしていた
いつものお城の中で着ているドレス姿ではなく
町娘の格好をしていた

「お母さん。早く行こう!」

リリアは待ちきれない様子だった
今にも飛び出していきだしそうだった。
そこにユリアーナが現れた。
彼女もドレス姿ではなく町娘の格好をしていた
さらに2人の護衛役としてスヴァンが普通の騎士の格好をしていた
王立騎士団の格好ではなく、普通の騎士だ
ユーフォニア国は広い領土を持ち、多くの資源を持ち
安定した治安を持つ国だった。周辺諸国とは友好条約を結び
平穏が続いている国だ。とはいえ、城下町には悪党は存在する
それを守るのがスヴァンの仕事だ

「スヴァン、今日は普通の騎士の格好なんだね」

スヴァンは普通の格好に腰に剣を携えているだけだった
彼は魔法も行使することができる有能な騎士だった

「当たり前です。王立騎士団の格好しては王女様や姫様をお守りすることはできませんから」

確かにそのとおりだ
王立騎士団の武装をしていれば、すぐに王女と姫様だとすぐに発覚するだろう
それを阻止する為に普通の騎士の格好をしているのだ
スヴァンなりの配慮のつもりだ
姫様は普通に町を探索したいのだ
城下町を見てみたい。ただそれだけの願望しかない
純粋な思いを踏みにじるわけには行かない
だからこそ、スヴァンは極秘裏に姫様が行きそうなコースに王立騎士団の騎士を派遣していた
表向きは一般の市民としてだが

「それでは、行きましょうか。王女様、姫様」


お城の門が開かれ、リリアとユリアーナ、
そしてスヴァンの3人は城下町の探索に向かった
リリアには何もかもが新鮮に感じるようで興奮していた

「お母様、私!たっくさん遊びたいです!」

リリアの興奮は止まるところを知らないようだ
門を出てしばらく歩くと市場が見えてきた
市場には朝だというのに活気あふれていた
リリアは市場にある商品に目があちらこちらに向いていた

「お母様!おいしそうです!」

「そうね」

ユリアーナはリリアの頭をなでて落ち着かせようとするが
どうやら止まるところは知らないようだ
それを上手くユリアーナがコントロールしているようだった
あまり効果は期待出てきていないが
それでも暴走しないだけましだ。
娘を愛してやまない夫が娘の行方不明を知ればどういう結末になるか
それだけは、ユリアーナとスヴァンは考えたくもない表情を浮かべていた
夫であり、国王でもあるドヴィンはリリアの事をもっとも大事にしていた
それこそ、ユリアーナが止めに入らなければ籠の鳥にしてしまいそうなくらい

「お母様!あれ、食べたいです!」

リリアが指差したのはりんご状のアメだ。
少しリリアの口には大きいが問題ないだろう。
ユリアーナが1つもらえますかというと、お金を払いリンゴアメを買った
それをリリアに渡した。リリアはそれを大喜びで受け取ると、舐め始めた。
市場にいる人たちもここに王女たちがいることにまったく気づく気配はない
それはスヴァンたちが用意した変装用の街娘の格好が良く似合っているからに他ならない

「お母様。もっと奥にも行ってみたいです!」

何度も言うが、リリアは暴走列車のごとく止まることをまるで知らないようだ。
ユリアーナとスヴァンは仕方がないとしてリリアの好きにやらせてあげることにした
3人はそろって市場の中心部に向かって歩いて行った
活気あふれる市場に、リリアの目は光輝くダイヤモンドかのように輝いていた

「お母様、あそこに噴水があります!」

それは市場の中心部に来たことを指し示していた。
市場はこの噴水を中心に四方八方に伸びているのだから

「リリア、今度またつれてきてあげるから今日はここで帰りましょう」

ユリアーナの提案に不満げな表情を浮かべるが。
また連れて来てくれるという言葉を聞き喜んでいた
リリアたち3人は城に戻っていった