私は大きな城内の廊下を歩きながらお父様の執務室に向かっていた。
珍しい事もあるものだと思っていた。お父様が執務中に私を呼び出したことは今まで1度もなかった。
いつも家族一緒に食事をする時間に話をしてくるからだ
それだけ忙しいという事だ。だから私はお父様にはあまり駄々をこねないようにしていた
お母さまは私のことを分かっていたため、いつも付き合ってくれていたが、それでもお母様も忙しい立場なのだ
それでも子供である私に付き合ってくれていた。そのため夜遅くにお仕事をしているところを何度か見たことがある
だから私は大人になろうと考えたのだ。これ以上お母様に迷惑をかけるわけにはいかないと
そして私は場内の廊下を歩いていき、お父様の執務室の前に到着すると護衛騎士がドアを開けた
「リリア、お前に紹介したい騎士がいる」
そう言ってお父様はいきなり話を始めた。お父様の隣にはかなりの美形の若い騎士がいた
どうやら私専属の騎士をつけるつもりのようだ。王国の決まりで王族の女性には専属の護衛がつくことになっている
私は今までそういう事に無頓着だったことや場内での行動がほとんどだったためつけられることはなかった
しかし、城の外に出る事が増えたためだろう。そのため、わたしにも専属騎士をつけるつもりなのだろう
「王女様。レースト・パルスと申します。よろしくお願いします」
「お父様!私は!」
「これは決まりだから。分かりなさい」
お父様の強い口調に私は黙るしかなかった。確かにお父様の言うとおりだ
これは決まりなのだ。だけど私には今はフェンリルがいる。彼がいれば護衛としては十分のはずだ
でも彼は狼だ。規則では人間の護衛をつける事が定められている。
「リリア。これは決まりだから。それに彼は優秀な騎士だよ」
「命に代えてもお守りします」
レーストは私の前で腰を下ろして、私の手を取ると忠誠の証の行動をした
私は戸惑いながらも仕方がないと納得すると、よろしくお願いしますと言って了承する返事をした
「リリア、今後は彼が護衛の任を担う事になるからね」
お父様の言葉に私は分かりましたと返事をすると執務室を出ていき自分の部屋に戻っていった
その間も私の前をレーストが歩いて注意を払っていた。城内とはいえ危険があると考えるのが、守護騎士の役割なのだ
執務室の前にはフェンリルが待っていた。
「リリア、守護騎士がついたか」
「フェンリル様、今後は私が護衛につきます」
「たしかレーストだったな。騎士学校で成績トップだったな。それに貴族出身」
「覚えていたのですか?」
「ああ、俺を本気にさせた奴はお前だけだ。あの時は楽しませてもらった。お前ならリリアのことを任せられる」
こんなじゃじゃ馬には苦労するだろうがなと余計な事を言ってくれる
「フェンリル、私は大人の態度でいる事に決めたの」
「だが体は子供だ。それに時には子供になりたい時があるだろ。我慢し続けると体に悪いぞ」
そう言うとフェンリルは城内の巡回に向かった
「先に私が入ります。リリア様は私の後に続いてください」
そう言うと彼は先に私の執務室に入った。そして安全を確認した
「私はドアの外にいますので何かあればすぐに呼んでください」
そう言うと彼は執務室の外のドアの前で守護に入った