午後2時50分に隣町の駅に到着すると私は駅前のロータリーに車を駐車した
ロータリーと言っても砂利道の広場のようなところだが。一応みんなはロータリーと言っている
バスも止まっているのでそう言っている。ただバスと言っても1時間に1本だけ
電車も同じようなものだ。田舎なのだから仕方がない
そして午後3時になったの私は車から降りて駅に向かった
ちょうどその時駅に1両編成の電車がやってきた。非電化路線のディーゼル電車だ
普段はめったに利用客はいない。ほとんどの人が車を利用するからだ
そのとき1人の女性が電車から降りてきた。私が近づくと彼女は軽く礼をした

「水川カオリさんですね」

「はい」

彼女は私に名刺をくれた。そこには弁護士事務所の名前などが記載されていた

「弁護士の長澤エリと言います。あなたにお話があります」

そう言うと彼女はどこかでゆっくりとお話をできる場所はありませんかと聞いてきたので駅の近くにある喫茶店を提案すると

「ではそちらで」

私はエリさんを軽自動車までエスコートすると、助手席に乗るように促した。
彼女はすぐに乗り込んだので私はドアを閉めると運転席に回り込むとすぐそばの喫茶店に向かった
お店の前に車を富まさせてもらうと一番奥のテーブルで話を始めた

「突然のお電話に驚かれたと思いますが。あの電話は私の依頼人からの物です。あなたにどうしても渡してほしいものがあるそうです」

これをというと数枚のA4サイズの紙を渡した。私はそれを受け取ると少し臆病になりながらも目を通した
そこにはある物が記載されていた。遺産相続に関連する物だと

「どういうことですか?」

「あなたの実のお父さんが昨夜、お亡くなりに。彼は会社を興して財産を。あなたが失踪してからもずっとお探しになられていました」

1年前に私が住んでいる旅館がある雑誌の特集に載せられた。その時に初めて生存を知ったという事だった
ただ、当時は生存していたことが信じられず。探偵に調査をさせた。そして、密かに毛髪を採取してDNA鑑定までさせたとのことだった

「どうして」

「あなたのお父さんは、持病からあまり自宅から動くことができない状況になっていたので。こちらにくることはできませんでした」

でもせめて、忘れていたわけではないという事を伝えるために実の母を通じて手紙を書いてもらってずっと愛している事を伝えたかったと

「これが幼いころのあなたの写真です。ちょうど15歳の時の誕生日の物です」

渡された写真には確かに16歳で保護された時とそっくりの私と男性と女性が写っていた。
テーブルの上には大きなバースデーケーキが

「お母さんはどうしているんですか」

「あなたの実のお母さんは生きています。ただ、あなたに会う前に、真実を話して決めてほしいと言われました」

「私の本当の名前は?」

「皆川レナ。それがあなたの本当の名前です。ですが今は水川カオリさんとしてお話をした方が良いですよね」

書類を見るとそこには何百億円以上もの財産目録が記載されていた。
お金だけではない。不動産も大企業の会社の株式も含まれていた

「どうして‥‥‥‥‥‥‥‥今更ですよ。3年間、私がどんな思いをしてきたか・・・・・・・」

私は彼女に書類を投げつけると喫茶店から出ていってしまった。そして車に乗り込むとすぐに旅館に引き返してしまった
全ては今更なのだ。3年というあまりに長い時間は私にとって重すぎた。
それをいまさらになってお金だのそんなものはどうでも良かった
ただ、会いに来てほしかっただけなのに。

「どうして本当の家族が来ないのよ!」