翌朝、私は旅館の自室で目が覚めた。
いつも通りの起床だ。ただ、今日はいつもと違っていた。いつもは着用しない全身黒の服装だった
この町で3年しかいないが。お葬式などにはお付き合いで顔を出したことがある
ただ、そこまで密接した関係を持った町の人で亡くなった方はいなかったので簡単な喪服のように全身黒の服装でだが
私はいつもの朝食も食べる事もなく、お父さんがいる本館のカウンターに向かった

「カオリ、その服装」

「うん、少し事情ができたから。今日は帰れないかもしれないけど連絡するから。だから………」

その続きを言おうとしたがお父さんは抱きしめてくれた

「お前がどんな選択をしても俺の大切な娘には変わらない。だから自分の目と耳できちんと判断してこい」

「お父さん」

「お母さんには俺から話をしておくから。行ってこい」

私ははいと返事をすると外に出るとすでにセダン車両が止まっていた
車の前には昨日会った弁護士の女性がたっていた。運転席には男性が乗り込んでいた。
運転手付きだなんて知らなかった
ただ、私は真実が知りたかったのかもしれない。私は何も言わずに挨拶の代わりに礼をすると彼女は後部座席のドアを開けた

「どうぞ」

そう言って
私は車の後部座席に乗り込むと彼女はドアを閉めて助手席に回り込んで乗り込むと車は発進した

「昨日は本当にすみません」

「いえ、お気になさらないでください。当然の結果ですから。1つお聞きしても良いですか?」

「何ですか?」

「どうして心変わりを?」

「分かりません。私にも。ただ‥‥‥‥」

そう私にもわからない。ただ確認しておきたかったのかもしれない。
お金なんかよりも私のことを本当に今も愛してくれているのかどうかを
都内の病院についたのはお昼過ぎだった。私は彼女と一緒の病院の霊安室に向かった


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「ここですか」

「ええ、そうです」

霊安室の前には警備をしているのだろう2人の男性がたっていた。私は弁護士の彼女と一緒にドアを通るとベットに横たわった男性を見た
すると彼女はある物を差し出した

「もし来てくれたら渡してほしいと最後のお手紙です」

私は手紙を受け取り内容を読み始めた
レナ、いやカオリさん。本当に申し訳ない。こんな形でしか愛情を表現することができない私を
お前のことは片時も忘れた事は無い。ずっと愛していた。
お前があの町で暮らしている事を知って1度だけ見に行ったことがあるのは知らないだろう
その時に気づいたのだ。カオリ、お前にはお前の人生がある。私達が強制するものではないと。だから直接会う事はしなかった
お前を傷つけてしまう事を恐れた。お前はあの町で幸せに生きている。たとえ記憶が無くてもお前のあの笑顔を見た時に思ったのだ
お前の最高の笑顔を。それを壊したくはなかった。だから、本当にこんなことをしてすまない。
だが幸せに生きてくれているなら何よりも私は嬉しい事だ
どうか、これからも幸せに生きてくれ。それが私の願いだ。
これからお前の人生は大変になるかもしれないが。お前が幸せになるならどんな選択をしても良いと思っている

私は手紙を読んで最後の方では涙を流してしまった。愛してくれていたのだと
例え、どんな形でも、ちゃんと私のことを見守ってくれていたと。

「ごめんなさい。お父さん」

私は記憶はないが実のお父さんが愛してくれていたことは十分にわかった。見守ってくれていたのだと
だから手紙をくれたのだと。それがお父さんなりの愛情表現だったのだと。不器用なことかもしれないけど